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出てくるもの1:Knill–Laflamme 条件と環境の無知

2026年10月15日13分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第9章 量子誤り訂正
目次
  1. 環境に漏れる情報
  2. Knill–Laflamme 条件
  3. 誤りの離散化
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第3部 第9章 §3.9.3 ★★★ 訂正できる条件 P^E^a†E^bP^=cabP^\hat P\hat E_a^\dagger\hat E_b\hat P=c_{ab}\hat P を、参照系と環境の相互情報量 I(R;E)=D(ρ^RE ∥ ρ^R⊗ρ^E)=0I(R;E)=D(\hat\rho_{RE}\,\|\,\hat\rho_R\otimes\hat\rho_E)=0 として読む。誤りの離散化もここから出る

環境に漏れる情報

雑音のチャネル N(ρ^)=∑aK^aρ^K^a†\mathcal N(\hat\rho)=\sum_a\hat K_a\hat\rho\hat K_a^\dagger は、系と環境を合わせた全体のユニタリな時間発展を環境について部分トレースしたものとして書ける(Stinespring 表示。第3部第1章)。環境の初めの状態を ∣0⟩E| 0 \rangle _E とすると、全体の写像は等長写像

V^∣ψ⟩=∑aK^a∣ψ⟩⊗∣a⟩E(3.9.6)\hat V| \psi \rangle =\sum_a\hat K_a| \psi \rangle \otimes| a \rangle _E\tag{3.9.6}

で、{∣a⟩E}\{| a \rangle _E\} は環境の正規直交基底である。系について部分トレースすると、環境に残る状態

Nc(ρ^)≔Tr⁡Q(V^ρ^V^†)=∑a,bTr⁡(K^aρ^K^b†)∣a⟩⟨b∣E(3.9.7)\mathcal N^{\mathrm c}(\hat\rho)\coloneqq\operatorname{Tr}_Q\bigl(\hat V\hat\rho\hat V^\dagger\bigr)=\sum_{a,b}\operatorname{Tr}\bigl(\hat K_a\hat\rho\hat K_b^\dagger\bigr)| a \rangle \langle b |_E\tag{3.9.7}

が得られる(QQ は符号の量子ビットの全体)。Nc\mathcal N^{\mathrm c} を相補チャネルと呼ぶ。雑音とは、系の情報の一部が環境へ写されることである。環境の行列要素 Tr⁡(K^aρ^K^b†)\operatorname{Tr}(\hat K_a\hat\rho\hat K_b^\dagger) が ρ^\hat\rho に依れば、環境の状態から ρ^\hat\rho について何かを推すことができる。

参照系 RR を用意し、論理量子ビットを RR と最大にもつれさせた状態 12(∣0⟩R∣0L⟩+∣1⟩R∣1L⟩)\frac1{\sqrt2}(| 0 \rangle _R| 0_{\mathrm L} \rangle +| 1 \rangle _R| 1_{\mathrm L} \rangle ) を作って符号の量子ビットに雑音を当てると、RR・出力 Q′Q'・環境 EE の全体は純粋状態になる。純粋状態では2つに分けた両側のエントロピーが等しいので(Schmidt 分解。第3部第4章)、S(RQ′)=S(E)S(RQ')=S(E)、S(RE)=S(Q′)S(RE)=S(Q') が成り立ち、

I(R;Q′)+I(R;E)=[S(R)+S(Q′)−S(E)]+[S(R)+S(E)−S(Q′)]=2S(R)(3.9.8)I(R;Q')+I(R;E)=\bigl[S(R)+S(Q')-S(E)\bigr]+\bigl[S(R)+S(E)-S(Q')\bigr]=2S(R)\tag{3.9.8}

を得る。RR についての相関の総量 2S(R)2S(R) は、出力と環境に分けて配られるだけで、増えも減りもしない。誤りを訂正できるのは I(R;Q′)=2S(R)I(R;Q')=2S(R)、すなわち RR との相関がすべて出力に残っているときで、式 (3.9.8) によりそれは

I(R;E)=D(ρ^RE ∥ ρ^R⊗ρ^E)=0(3.9.9)I(R;E)=D\bigl(\hat\rho_{RE}\,\|\,\hat\rho_R\otimes\hat\rho_E\bigr)=0\tag{3.9.9}

と同値である。I(R;E)=0I(R;E)=0 を「環境が参照系から切り離されている(デカップリング)」という。S(Q′)−S(E)S(Q')-S(E) をコヒーレント情報と呼び、完全に訂正できる条件を「コヒーレント情報が S(R)S(R) に等しい」と書いたのは Schumacher と Nielsen である1B. Schumacher and M. A. Nielsen (1996), Phys. Rev. A 54, 2629。下の脚注へ。

図

図 3.9.3 雑音を Stinespring 表示で書いた図。参照系 RR と論理量子ビットのもつれ(相関の総量 2S(R)2S(R))は、雑音の後に出力 Q′Q' と環境 EE へ分けて配られる。回復ができるのは環境に何も渡っていない I(R;E)=0I(R;E)=0 のときである。

Knill–Laflamme 条件

I(R;E)=0I(R;E)=0 を誤りの演算子で書き直したのが次の定理である2E. Knill and R. Laflamme (1997), Phys. Rev. A 55, 900。下の脚注へ。誤りの演算子 {E^a}\{\hat E_a\} は雑音の Kraus 演算子そのものでもよいし、それらを線形結合で書くための基になる演算子の組でもよい。

定理 3.9.2(Knill–Laflamme 条件 ★★★)

符号空間 C\mathcal C の射影子を P^\hat P、雑音の Kraus 演算子を {E^a}\{\hat E_a\} とする。次の3つは同値である。

  1. (i) 符号空間のすべての ρ^\hat\rho について R(N(ρ^))=ρ^\mathcal R(\mathcal N(\hat\rho))=\hat\rho となる量子チャネル R\mathcal R が存在する。
  2. (ii) ある行列 c=(cab)c=(c_{ab}) があって、すべての a,ba,b について

P^E^a†E^bP^=cabP^.(3.9.10)\hat P\hat E_a^\dagger\hat E_b\hat P=c_{ab}\hat P .\tag{3.9.10} 3. (iii) 相補チャネル (3.9.7) が符号空間の上で定数である。すなわち符号空間のすべての ρ^\hat\rho、σ^\hat\sigma について D(Nc(ρ^) ∥ Nc(σ^))=0D(\mathcal N^{\mathrm c}(\hat\rho)\,\|\,\mathcal N^{\mathrm c}(\hat\sigma))=0。

証明

(ii) ⇒\Rightarrow (iii):符号空間の ρ^\hat\rho は ρ^=P^ρ^P^\hat\rho=\hat P\hat\rho\hat P を満たすので、Tr⁡(E^aρ^E^b†)=Tr⁡(P^E^b†E^aP^ρ^)=cbaTr⁡ρ^=cba\operatorname{Tr}(\hat E_a\hat\rho\hat E_b^\dagger)=\operatorname{Tr}(\hat P\hat E_b^\dagger\hat E_a\hat P\hat\rho)=c_{ba}\operatorname{Tr}\hat\rho=c_{ba}。環境の状態は ρ^\hat\rho に依らない。

(iii) ⇒\Rightarrow (ii):Tr⁡(P^E^b†E^aP^ρ^)\operatorname{Tr}(\hat P\hat E_b^\dagger\hat E_a\hat P\hat\rho) がすべての符号状態 ρ^\hat\rho で同じ値 cbac_{ba} を取るなら、P^E^b†E^aP^−cbaP^\hat P\hat E_b^\dagger\hat E_a\hat P-c_{ba}\hat P は符号空間のすべての状態で期待値が 00 の演算子である。符号空間の上で、純粋状態の期待値がすべて 00 の演算子は 00 なので(偏極恒等式で行列要素がすべて決まる)、式 (3.9.10) が出る。

(ii) ⇒\Rightarrow (i):cc はエルミートかつ半正定値(∑xˉacabxb P^=P^F^†F^P^\sum\bar x_ac_{ab}x_b\,\hat P=\hat P\hat F^\dagger\hat F\hat P、F^=∑xbE^b\hat F=\sum x_b\hat E_b)なので、ユニタリ行列 uu で c=u diag(dk) u†c=u\,\mathrm{diag}(d_k)\,u^\dagger と対角化できる。F^k=∑auakE^a\hat F_k=\sum_au_{ak}\hat E_a と組み直すと Kraus 演算子の組み替えなので同じチャネルを表し、P^F^k†F^lP^=dkδklP^\hat P\hat F_k^\dagger\hat F_l\hat P=d_k\delta_{kl}\hat P となる。dk>0d_k>0 の kk について U^k≔F^kP^/dk\hat U_k\coloneqq\hat F_k\hat P/\sqrt{d_k} は符号空間を等長に写し、k≠lk\ne l の像は互いに直交する。像への射影子を P^k=U^kU^k†\hat P_k=\hat U_k\hat U_k^\dagger とし、「{P^k}\{\hat P_k\} を測って kk を知り、U^k†\hat U_k^\dagger を当てて戻す」操作を R\mathcal R とする(足りない分は射影子 1−∑kP^k\mathbf 1-\sum_k\hat P_k で補う)。N(ρ^)=∑kdkU^kρ^U^k†\mathcal N(\hat\rho)=\sum_kd_k\hat U_k\hat\rho\hat U_k^\dagger なので R(N(ρ^))=∑kdkρ^=ρ^\mathcal R(\mathcal N(\hat\rho))=\sum_kd_k\hat\rho=\hat\rho(∑kdk=Tr⁡c=1\sum_kd_k=\operatorname{Tr} c=1 はトレースの保存から)。

(i) ⇒\Rightarrow (ii):R\mathcal R の Kraus 演算子を {R^m}\{\hat R_m\} とする。R∘N\mathcal R\circ\mathcal N は Kraus 演算子 R^mE^a\hat R_m\hat E_a を持ち、符号空間の上で恒等写像である。純粋な符号状態 ∣ψ⟩| \psi \rangle に当てると ∑m,aR^mE^a∣ψ⟩⟨ψ∣E^a†R^m†=∣ψ⟩⟨ψ∣\sum_{m,a}\hat R_m\hat E_a| \psi \rangle \langle \psi |\hat E_a^\dagger\hat R_m^\dagger=| \psi \rangle \langle \psi | で、右辺は階数1なので、各項の R^mE^a∣ψ⟩\hat R_m\hat E_a| \psi \rangle は ∣ψ⟩| \psi \rangle に比例する。比例係数が ∣ψ⟩| \psi \rangle に依ると重ね合わせの状態で矛盾するので、R^mE^aP^=λmaP^\hat R_m\hat E_a\hat P=\lambda_{ma}\hat P と書ける。∑mR^m†R^m=1\sum_m\hat R_m^\dagger\hat R_m=\mathbf 1 を挟んでP^E^a†E^bP^=∑mP^E^a†R^m†R^mE^bP^=(∑mλˉmaλmb)P^\hat P\hat E_a^\dagger\hat E_b\hat P=\sum_m\hat P\hat E_a^\dagger\hat R_m^\dagger\hat R_m\hat E_b\hat P=\bigl(\sum_m\bar\lambda_{ma}\lambda_{mb}\bigr)\hat P。

(iii) は、環境に残る状態から論理状態について何も推せないということで、前の小節の I(R;E)=0I(R;E)=0 と同じ内容である。環境の状態 Nc(ρ^)\mathcal N^{\mathrm c}(\hat\rho) そのものはエントロピーを持っていてよい。雑音は環境を乱してかまわないが、乱し方が論理状態に依ってはならない。

誤りの離散化

条件 (3.9.10) は E^a\hat E_a について線形である(E^a†\hat E_a^\dagger の側は反線形)。したがって {E^a}\{\hat E_a\} が条件を満たせば、その線形結合 F^=∑afaE^a\hat F=\sum_af_a\hat E_a をいくつ加えても条件は保たれる。1量子ビットの任意の演算子は 1,X,Y,Z\mathbf 1,X,Y,Z の線形結合で書けるので、各量子ビットについて Xj,Yj,ZjX_j,Y_j,Z_j の誤りを訂正できる符号は、1量子ビットに当たる任意の誤り(小さな回転も、振幅の減衰も)を訂正できる。連続的な誤りは、シンドロームの測定によって「どの Pauli 誤りが起きたか」に射影され、離散的な誤りに変わる。冒頭の第三の障害はこうして消える。

Shor の9量子ビット符号は、XX を直すビット反転符号と、ZZ を直す位相反転符号(基底を ∣±⟩=(∣0⟩±∣1⟩)/2| \pm \rangle =(| 0 \rangle \pm| 1 \rangle )/\sqrt2 に替えた∣0L⟩=∣+++⟩| 0_{\mathrm L} \rangle =| {+}{+}{+} \rangle、∣1L⟩=∣−−−⟩| 1_{\mathrm L} \rangle =| {-}{-}{-} \rangle)を入れ子にしたもので、∣0L⟩∝(∣000⟩+∣111⟩)⊗3| 0_{\mathrm L} \rangle \propto(| 000 \rangle +| 111 \rangle )^{\otimes3}、∣1L⟩∝(∣000⟩−∣111⟩)⊗3| 1_{\mathrm L} \rangle \propto(| 000 \rangle -| 111 \rangle )^{\otimes3} と書ける。各量子ビットの XX と ZZ が直せるので、Y=iXZY=\mathrm{i} XZ も直せ、上の離散化により任意の1量子ビットの誤りを直すことができる。

例題 3.9.3 ビット反転符号で環境に移る情報 ★★

オリジナルビット反転符号 (3.9.2) を参照系 RR と最大にもつれさせ、ε=0.1\varepsilon =0.1 とする。

  1. (1) 誤りの組 {1,X1,X2,X3}\{\mathbf 1,X_1,X_2,X_3\} について行列 cabc_{ab} を求め、Knill–Laflamme 条件を確かめよ。
  2. (2) Kraus 演算子 1−3ε 1\sqrt{1-3\varepsilon }\,\mathbf 1、ε Xj\sqrt\varepsilon \,X_j(j=1,2,3j=1,2,3)の雑音について、環境のエントロピー S(E)S(E) と I(R;E)I(R;E) を求めよ。
  3. (3) Kraus 演算子 1−ε 1\sqrt{1-\varepsilon }\,\mathbf 1、ε Z1\sqrt\varepsilon \,Z_1 の雑音について I(R;E)I(R;E) を求め、訂正できない理由を説明せよ。
解答

(1) P^XjXkP^\hat P X_j X_k\hat P を調べる。j=kj=k なら Xj2=1X_j^2=\mathbf 1 で P^\hat P。j≠kj\ne k なら XjXkX_jX_k は ∣000⟩| 000 \rangle を重み2の状態(例 ∣110⟩| 110 \rangle)へ写し、それは符号空間と直交するので P^XjXkP^=0\hat PX_jX_k\hat P=0。P^ 1 XjP^\hat P\,\mathbf 1\,X_j\hat P も同じく Xj∣000⟩X_j| 000 \rangle が符号空間と直交するので 00。よって cab=δabc_{ab}=\delta_{ab}(単位行列)で、条件 (3.9.10) を満たす。

(2) (ii) ⇒\Rightarrow (iii) の計算により、環境の状態は Tr⁡(K^aρ^K^b†)=wawb cba\operatorname{Tr}(\hat K_a\hat\rho\hat K_b^\dagger)=\sqrt{w_aw_b}\,c_{ba}(w=(0.7,0.1,0.1,0.1)w=(0.7,0.1,0.1,0.1))で、diag(0.7,0.1,0.1,0.1)\mathrm{diag}(0.7,0.1,0.1,0.1) になる。

S(E)=−0.7ln⁡0.7−3×0.1ln⁡0.1=0.2497+0.6908=0.9404.S(E)=-0.7\ln0.7-3\times0.1\ln0.1=0.2497+0.6908=0.9404 .

環境は乱されているが、その状態は論理状態に依らないので ρ^RE=ρ^R⊗ρ^E\hat\rho_{RE}=\hat\rho_R\otimes\hat\rho_E となり、I(R;E)=0I(R;E)=0。

(3) Z1Z_1 は符号空間で ZLZ_{\mathrm L} として働く(P^Z1P^=ZLP^\hat PZ_1\hat P=Z_{\mathrm L}\hat P で、P^\hat P の定数倍でない)ので、条件 (3.9.10) が a=1a=\mathbf 1、b=Z1b=Z_1 で破れる。このとき雑音は論理量子ビットに確率 ε\varepsilon の位相緩和を当てたのと同じで、RR・論理量子ビット・環境の3つの純粋状態を計算するとS(R)=ln⁡2S(R)=\ln2、S(E)=hb(ε)S(E)=h_{\mathrm b}(\varepsilon )(RR について平均すると ⟨ZL⟩=0\langle Z_{\mathrm L} \rangle =0 なので環境の非対角成分が消える)、S(RE)=S(Q′)=ln⁡2S(RE)=S(Q')=\ln2(位相緩和した完全混合状態)。

I(R;E)=ln⁡2+hb(0.1)−ln⁡2=hb(0.1)=0.3251.I(R;E)=\ln2+h_{\mathrm b}(0.1)-\ln2=h_{\mathrm b}(0.1)=0.3251 .

論理量子ビットの ZLZ_{\mathrm L} の値との相関 0.32510.3251 nat が環境に移ったので、式 (3.9.8) により出力には 2ln⁡2−0.32512\ln2-0.3251 しか残らず、どんな回復も元に戻せない。

1 B. Schumacher and M. A. Nielsen (1996), Phys. Rev. A 54, 2629。

2 E. Knill and R. Laflamme (1997), Phys. Rev. A 55, 900。

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

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