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比べる2つの状態:もつれた状態と分離可能な状態

2026年10月15日11分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第4章 エンタングルメント
目次
  1. 分離可能な状態の定義
  2. 純粋状態のもつれと Schmidt 分解
  3. 比べる相手
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第3部 第4章 §3.4.1 ★★★ 分離可能な状態は「古典的な通信で作れる相関」で、もつれはその外にある相関である。純粋状態では Schmidt 係数がもつれのすべてを決める

前の2つの章(第3部第2章・第3部第3章)では、量子相対エントロピーD(ρ^ ∥ σ^)=Tr⁡ρ^(ln⁡ρ^−ln⁡σ^)D(\hat\rho\,\|\,\hat\sigma)=\operatorname{Tr}\hat\rho(\ln\hat\rho-\ln\hat\sigma) が負にならないこと(Klein の不等式)と、量子チャネルを通すと増えないこと(量子データ処理不等式)を示した。第3部第2章では、2つの系 AA、BB の状態を周辺の積 ρ^A⊗ρ^B\hat\rho_A\otimes\hat\rho_B と比べて量子相互情報量を作り、条件付きエントロピー S(A ∣ B)S(A\,|\,B) が負になりうることを見た。そこで「負になるのはもつれの目印である」と書いたが、もつれとは何か、どれだけもつれているかはまだ定義していない。この章でそれを定義する。

この章で比べる2つの状態は、調べたい状態 ρ^AB\hat\rho_{AB} と、分離可能な状態(離れた2人が古典的な通信だけで用意できる状態)の集合のうちで ρ^AB\hat\rho_{AB} にいちばん近いものである。その間の相対エントロピーを相対エントロピー・オブ・エンタングルメント ERE_{\mathrm R} と呼ぶ。当てる性質は量子データ処理不等式で、「離れた2人が手元の操作と古典的な通信(LOCC)だけを使っても ERE_{\mathrm R} は増えない」がそこから1行で出る。出てくるものは3つある。純粋状態では ERE_{\mathrm R} が部分系の von Neumann エントロピー S(ρ^A)S(\hat\rho_A) に等しいことと、LOCC で純粋状態を別の純粋状態へ変えられる条件(Nielsen の定理)。混合状態でもつれを判定する部分転置の方法と、いくつかあるもつれの測度の大小関係。最後に、多数のコピーから最大にもつれた対(ebit)を何組取り出せるかという蒸留の率で、純粋状態ではそれがちょうど S(ρ^A)/ln⁡2S(\hat\rho_A)/\ln2 になる。

この章の対数は自然対数で、情報量の単位は nat とする。最大にもつれた2量子ビットの対1組を 1 ebit と数え、1 ebit=ln⁡21\ \mathrm{ebit}=\ln2 nat である。Pauli 行列は XX、YY、ZZ、恒等演算子は 1\mathbf 1 と書く(第3部第2章と同じ)。系はすべて有限次元で、AA の次元を dAd_A、BB の次元を dBd_B とする。AA を持つ人を Alice、BB を持つ人を Bob と呼ぶ。

分離可能な状態の定義

Alice と Bob が遠く離れていて、量子系を送り合うことはできず、電話(古典的な通信)だけが使えるとする。2人が協力して作れる状態はどこまでか。Alice は手元で好きな状態 ρ^A(k)\hat\rho_A^{(k)} を、Bob は ρ^B(k)\hat\rho_B^{(k)} を用意できるので、積状態 ρ^A(k)⊗ρ^B(k)\hat\rho_A^{(k)}\otimes\hat\rho_B^{(k)} は作れる。さらに Alice が確率 pkp_k で番号 kk を引いて電話で伝え、2人がその番号に対応する状態を用意してから番号を忘れれば、全体の状態は混合∑kpkρ^A(k)⊗ρ^B(k)\sum_kp_k\hat\rho_A^{(k)}\otimes\hat\rho_B^{(k)} になる。これより多くは作れない。

定義 3.4.1(分離可能な状態・もつれた状態)

ABAB の密度行列 σ^AB\hat\sigma_{AB} が、確率 pkp_k と AA、BB の密度行列 σ^A(k)\hat\sigma_A^{(k)}、σ^B(k)\hat\sigma_B^{(k)} を使って

σ^AB=∑kpk σ^A(k)⊗σ^B(k)(3.4.1)\hat\sigma_{AB}=\sum_kp_k\,\hat\sigma_A^{(k)}\otimes\hat\sigma_B^{(k)}\tag{3.4.1}

と書けるとき、σ^AB\hat\sigma_{AB} は分離可能であるという。分離可能な状態全体の集合を SEP\mathrm{SEP} と書く。分離可能でない状態をもつれた状態(エンタングルした状態)と呼ぶ。

この定義は R. F. Werner による1R. F. Werner (1989), Physical Review A 40, 4277–4281。下の脚注へ。SEP\mathrm{SEP} は混合を取っても外へ出ないので凸集合であり、各 σ^A(k)\hat\sigma_A^{(k)}、σ^B(k)\hat\sigma_B^{(k)} を固有値分解すれば、式 (3.4.1) の各項は純粋な積状態 ∣ak⟩⟨ak∣⊗∣bk⟩⟨bk∣| a_k \rangle \langle a_k |\otimes| b_k \rangle \langle b_k | に取り直せる。有限次元では SEP\mathrm{SEP} は閉じた有界集合でもある(項の数は (dAdB)2(d_Ad_B)^2 個で足りることが Carathéodory の定理から分かる)。

分離可能な状態にも相関はある。例えば 12(∣00⟩⟨00∣+∣11⟩⟨11∣)\frac12(| 00 \rangle \langle 00 |+| 11 \rangle \langle 11 |) は、Alice と Bob の測定結果がいつも一致する。ただしこの相関は、硬貨を投げて結果を2人に知らせれば作れる種類の相関で、古典の確率変数の相関と変わらない。もつれた状態の相関は、このやり方では作れない相関である。

純粋状態のもつれと Schmidt 分解

純粋状態 ∣Ψ⟩AB| \Psi \rangle _{AB} が分離可能になるのは積状態 ∣a⟩⊗∣b⟩| a \rangle \otimes| b \rangle のときに限る。∣Ψ⟩⟨Ψ∣=∑kpkσ^(k)| \Psi \rangle \langle \Psi |=\sum_kp_k\hat\sigma^{(k)} と分解すると、両辺を ∣Ψ⟩| \Psi \rangle に直交する任意の ∣ϕ⟩| \phi \rangle で挟んで 0=∑kpk⟨ϕ∣σ^(k)∣ϕ⟩0=\sum_kp_k\langle \phi | \hat\sigma^{(k)} | \phi \rangle になり、各項は 00 以上なのですべての σ^(k)\hat\sigma^{(k)} は ∣Ψ⟩| \Psi \rangle に直交する方向を持たない。つまりすべての σ^(k)\hat\sigma^{(k)} が ∣Ψ⟩⟨Ψ∣| \Psi \rangle \langle \Psi | に等しく、∣Ψ⟩| \Psi \rangle 自身が積状態でなければならない。

純粋状態がどれだけ積状態から離れているかは、第3部第2章の Schmidt 分解(第3部第2章)で読む。

∣Ψ⟩=∑k=1rλk ∣uk⟩⊗∣vk⟩,λ1≥λ2≥⋯≥λr>0,∑kλk=1(3.4.2)| \Psi \rangle =\sum_{k=1}^{r}\sqrt{\lambda_k}\,| u_k \rangle \otimes| v_k \rangle ,\qquad \lambda_1\ge\lambda_2\ge\dots\ge\lambda_r>0,\quad\sum_k\lambda_k=1\tag{3.4.2}

で、{∣uk⟩}\{| u_k \rangle \}、{∣vk⟩}\{| v_k \rangle \} はそれぞれ AA、BB の正規直交系である。係数の行列 cab=(⟨a∣⊗⟨b∣)∣Ψ⟩c_{ab}=(\langle a |\otimes\langle b |)| \Psi \rangle の特異値が λk\sqrt{\lambda_k} で、個数 rr を Schmidt 階数と呼ぶ。部分系の状態は ρ^A=∑kλk∣uk⟩⟨uk∣\hat\rho_A=\sum_k\lambda_k| u_k \rangle \langle u_k |、ρ^B=∑kλk∣vk⟩⟨vk∣\hat\rho_B=\sum_k\lambda_k| v_k \rangle \langle v_k | で、同じ固有値を持つ。積状態であることは r=1r=1 と同じで、それは ρ^A\hat\rho_A が純粋状態であることとも同じである。

Alice と Bob がそれぞれの手元でユニタリ U^A⊗U^B\hat U_A\otimes\hat U_B を当てても、基底 {∣uk⟩}\{| u_k \rangle \}、{∣vk⟩}\{| v_k \rangle \} が回るだけで λk\lambda_k は変わらない。逆に、λk\lambda_k が同じ2つの純粋状態は局所ユニタリで移り合う。したがって純粋状態のもつれに関する性質は、確率分布 λ=(λ1,…,λr)\lambda=(\lambda_1,\dots,\lambda_r) だけで決まる。この分布の Shannon エントロピーに名前を付けておく。

定義 3.4.2(もつれのエントロピー)

純粋状態 ∣Ψ⟩AB| \Psi \rangle _{AB} のもつれのエントロピーを

E(Ψ)≔S(ρ^A)=S(ρ^B)=H(λ)=−∑kλkln⁡λk(3.4.3)E(\Psi)\coloneqq S(\hat\rho_A)=S(\hat\rho_B)=H(\lambda)=-\sum_k\lambda_k\ln\lambda_k\tag{3.4.3}

で定める。0≤E(Ψ)≤ln⁡min⁡{dA,dB}0\le E(\Psi)\le\ln\min\{d_A,d_B\} で、E=0E=0 は積状態、上限は λk\lambda_k がすべて等しいとき(最大にもつれた状態)に限る。

2量子ビットでは、4つの Bell 状態

∣Φ±⟩=12(∣00⟩±∣11⟩),∣Ψ±⟩=12(∣01⟩±∣10⟩)(3.4.4)| \Phi^\pm \rangle =\frac{1}{\sqrt2}(| 00 \rangle \pm| 11 \rangle ),\qquad | \Psi^\pm \rangle =\frac{1}{\sqrt2}(| 01 \rangle \pm| 10 \rangle )\tag{3.4.4}

がどれも λ=(1/2,1/2)\lambda=(1/2,1/2) で E=ln⁡2E=\ln2、つまり 1 ebit を持つ。4つは ∣Φ−⟩=(Z⊗1)∣Φ+⟩| \Phi^- \rangle =(Z\otimes\mathbf 1)| \Phi^+ \rangle、∣Ψ+⟩=(X⊗1)∣Φ+⟩| \Psi^+ \rangle =(X\otimes\mathbf 1)| \Phi^+ \rangle、∣Ψ−⟩=−(XZ⊗1)∣Φ+⟩| \Psi^- \rangle =-(XZ\otimes\mathbf 1)| \Phi^+ \rangle のように Alice だけの操作で移り合う。

比べる相手

純粋状態では E(Ψ)E(\Psi) という自然な量があるが、混合状態では S(ρ^A)S(\hat\rho_A) はもつれの量にならない。12(∣00⟩⟨00∣+∣11⟩⟨11∣)\frac12(| 00 \rangle \langle 00 |+| 11 \rangle \langle 11 |) は分離可能なのに S(ρ^A)=ln⁡2S(\hat\rho_A)=\ln2 である。部分系の混ざり具合には、もつれによる分と、古典的な混合による分が区別なく入ってしまう。そこでこの章では、第1部で「独立な分布までの DD」として相互情報量を定義したのと同じやり方を取り、ρ^AB\hat\rho_{AB} を分離可能な状態の集合と比べる。図 3.4.1 はその見取り図である。比べる相手を周辺の積 ρ^A⊗ρ^B\hat\rho_A\otimes\hat\rho_B 1点に取れば相互情報量で、それは古典的な相関も含めた全部の相関を測る。相手を SEP\mathrm{SEP} 全体に広げて最も近い点を選べば、古典的な通信で作れる相関の分が差し引かれ、もつれの分だけが残る。

図

図 3.4.1 比べる2つの状態の見取り図(模式図)。凸集合 SEP\mathrm{SEP} の外にある ρ^AB\hat\rho_{AB} から SEP\mathrm{SEP} までの相対エントロピーの最小値がもつれの量 ERE_{\mathrm R}(実線)で、周辺の積までの相対エントロピーが相互情報量 I(A;B)I(A;B)(破線)である。周辺の積は SEP\mathrm{SEP} の1点なので ER≤I(A;B)E_{\mathrm R}\le I(A;B)

例題 3.4.1 3つの項からなる状態の Schmidt 分解 ★★

オリジナル2量子ビットの状態 ∣Ψ⟩=13(∣00⟩+∣01⟩+∣10⟩)| \Psi \rangle =\frac{1}{\sqrt3}(| 00 \rangle +| 01 \rangle +| 10 \rangle ) を考える。

  1. ρ^A\hat\rho_A を求め、その固有値から Schmidt 係数 λ1\lambda_1、λ2\lambda_2 を求めよ。
  2. もつれのエントロピー E(Ψ)E(\Psi) を nat とビット(ebit)で求めよ。
  3. 項が3つあっても Schmidt 階数は2であることを、係数の行列から説明せよ。
解答

(1) 係数の行列は c=13(1110)c=\frac{1}{\sqrt3}\begin{pmatrix}1&1\\1&0\end{pmatrix}(行が AA、列が BB の添字)で、ρ^A=cc†=13(2111)\hat\rho_A=cc^\dagger=\frac13\begin{pmatrix}2&1\\1&1\end{pmatrix} である。固有方程式 λ2−λ+19=0\lambda^2-\lambda+\frac{1}{9}=0 から

λ1,2=3±56=0.8727, 0.1273.\lambda_{1,2}=\frac{3\pm\sqrt5}{6}=0.8727,\ 0.1273.

(2) E=−λ1ln⁡λ1−λ2ln⁡λ2=0.3813E=-\lambda_1\ln\lambda_1-\lambda_2\ln\lambda_2=0.3813 nat。ln⁡2\ln2 で割ると 0.5500.550 ebit である。最大の ln⁡2\ln2 の半分強のもつれを持つ。

(3) 係数の行列 cc は 2×22\times2 で、行列式が −1/3≠0-1/3\neq0 なので階数は2である。Schmidt 階数は係数の行列の階数で、項の数ではない。項の数は基底の選び方で変わるが(例えば ∣0⟩⊗(∣0⟩+∣1⟩)+∣1⟩⊗∣0⟩| 0 \rangle \otimes(| 0 \rangle +| 1 \rangle )+| 1 \rangle \otimes| 0 \rangle と書けば2項)、階数は局所的な基底の取り替え c→UAcUBTc\to U_AcU_B^{\mathsf T} で変わらない。

1 R. F. Werner (1989), Physical Review A 40, 4277–4281。

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