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出てくるもの(1):盗聴は乱れを残す

2026年10月15日11分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第10章 量子鍵配送
目次
  1. 複製不可能定理
  2. 測って送り直す攻撃
  3. Bell 対角な状態での情報と乱れの関係
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第3部 第10章 §3.10.3 ★★★ 複製不可能定理と、Bell 対角な状態での等式 I(Az;E)=H(λ)−hb(ez)≤hb(ex)I(A_z;E)=H(\lambda)-h_{\mathrm b}(e_z)\le h_{\mathrm b}(e_x)。ZZ の鍵を知るには XX を乱すしかない

複製不可能定理

Eve にとって最も都合のよい攻撃は、送られてきた量子ビットを複製し、1つを Bob へ送り、もう1つを手元に残すことである。これは量子力学で禁じられている。

定理 3.10.5(複製不可能定理 ★★)

2つの状態 ∣ψ⟩| \psi \rangle、∣ϕ⟩| \phi \rangle のどちらに対しても U^(∣ψ⟩⊗∣0⟩)=∣ψ⟩⊗∣ψ⟩\hat U(| \psi \rangle \otimes| 0 \rangle )=| \psi \rangle \otimes| \psi \rangle と U^(∣ϕ⟩⊗∣0⟩)=∣ϕ⟩⊗∣ϕ⟩\hat U(| \phi \rangle \otimes| 0 \rangle )=| \phi \rangle \otimes| \phi \rangle を満たすユニタリ U^\hat U があるなら、⟨ψ∣ϕ⟩=0\langle \psi | \phi \rangle =0 か ∣⟨ψ∣ϕ⟩∣=1\lvert \langle \psi | \phi \rangle \rvert =1 である。

証明

2つの式の内積をとる。左辺は U^\hat U がユニタリなので ⟨ψ∣ϕ⟩⟨0∣0⟩=⟨ψ∣ϕ⟩\langle \psi | \phi \rangle \langle 0 | 0 \rangle =\langle \psi | \phi \rangle、右辺は ⟨ψ∣ϕ⟩2\langle \psi | \phi \rangle ^2。x=⟨ψ∣ϕ⟩x=\langle \psi | \phi \rangle が x=x2x=x^2 を満たすので x=0x=0 か x=1x=1 である。複製の結果に位相が付くことを許しても、絶対値について同じ議論が成り立つ。

この定理は W. K. Wootters と W. H. Zurek、D. Dieks が 1982 年に示した1W. K. Wootters and W. H. Zurek (1982), Nature 299, 802; D. Dieks (1982), Phys. Lett. A 92, 271.下の脚注へ。BB84 の4つの状態には重なり 1/21/\sqrt2 の組があるので、Eve は4つすべてを複製することができない。ただしこの定理は「完全な複製ができない」と言うだけで、不完全な複製や部分的な測定でどれだけ情報が得られ、どれだけ乱れるかは教えない。それを量で言うのがこの節の残りである。

測って送り直す攻撃

最も素朴な攻撃は、Eve が乱数で基底を選んで測り、測った結果の状態を作り直して Bob へ送るものである(測定・再送攻撃)。ふるい分けで残る回(Alice と Bob の基底が一致した回)について考える。Eve の基底が Alice と一致する確率は 1/21/2 で、そのとき Eve はビットを正しく知り、Bob にも正しい状態が届く。一致しないとき(確率 1/21/2)、Eve の結果は Alice のビットと無関係で、Eve が作り直した状態を Bob が正しい基底で測ると、半分の確率で誤る。したがって誤り率は

Q=12⋅0+12⋅12=14(3.10.8)Q=\frac12\cdot0+\frac12\cdot\frac12=\frac14\tag{3.10.8}

になる。Eve は基底の公開を聞いてから、自分の基底が合っていたかを知る。合っていた半分の回だけ Alice のビットを知っているので、I(A;E)=12ln⁡2I(A;E)=\frac12\ln2、つまり 0.5 ビットである。一方 Bob は誤り率 1/41/4 の2値対称通信路の出力を持つので I(A;B)=ln⁡2−hb(1/4)I(A;B)=\ln2-h_{\mathrm b}(1/4)、ビットで 0.1890.189 である。Eve の方が多く知っているので、式 (3.10.7) の右辺は負になり、鍵は取れない。

Eve が全体の割合 λ\lambda の量子ビットにだけこの攻撃をすると、Q=λ/4Q=\lambda/4、I(A;E)=λ2ln⁡2I(A;E)=\frac\lambda2\ln2 である。この攻撃に限れば ln⁡2−hb(λ/4)>λ2ln⁡2\ln2-h_{\mathrm b}(\lambda/4)>\frac\lambda2\ln2 の範囲、すなわち λ<0.682\lambda<0.682(Q<0.171Q<0.171)で鍵が取れる。しかし Alice と Bob は Eve がどの攻撃を使ったかを知らない。誤り率だけから、あらゆる攻撃に対して成り立つ上界を作る必要がある。

Bell 対角な状態での情報と乱れの関係

量子もつれで言い直した形(3.10.1節)で考える。Alice と Bob の対の状態が、Bell 状態の確率混合

ρ^AB=∑P∈{1,X,Y,Z}λP (1⊗P)∣Φ+⟩⟨Φ+∣(1⊗P)(3.10.9)\hat\rho_{AB}=\sum_{P\in\{\mathbf 1,X,Y,Z\}}\lambda_P\,(\mathbf 1\otimes P)| \Phi^+ \rangle \langle \Phi^+ |(\mathbf 1\otimes P)\tag{3.10.9}

になっているとする(Bell 対角な状態)。(1⊗X)∣Φ+⟩=∣Ψ+⟩(\mathbf 1\otimes X)| \Phi^+ \rangle =| \Psi^+ \rangle、(1⊗Z)∣Φ+⟩=∣Φ−⟩(\mathbf 1\otimes Z)| \Phi^+ \rangle =| \Phi^- \rangle、(1⊗Y)∣Φ+⟩=i∣Ψ−⟩(\mathbf 1\otimes Y)| \Phi^+ \rangle =\mathrm{i}| \Psi^- \rangle なので、λP\lambda_P は Bob の量子ビットに Pauli の誤り PP が起きた確率と読める。XX は ZZ 基底の結果を反転させ、ZZ は XX 基底の結果を反転させ、Y=iXZY=\mathrm{i} XZ は両方を反転させる。したがって2つの基底の誤り率は

ez=λX+λY,ex=λZ+λY(3.10.10)e_z=\lambda_X+\lambda_Y,\qquad e_x=\lambda_Z+\lambda_Y\tag{3.10.10}

である。eze_z をビットの誤り率、exe_x を位相の誤り率と呼ぶ。鍵は ZZ 基底の結果 AzA_z から作るとする。

定理 3.10.6(Eve の情報は位相の誤りで押さえられる ★★★)

Bell 対角な状態 (3.10.9) の純粋化を Eve が持つとき、Alice の ZZ 基底の結果 AzA_z について

I(Az;E)=H(λ)−hb(ez)≤hb(ex)(3.10.11)I(A_z;E)=H(\lambda)-h_{\mathrm b}(e_z)\le h_{\mathrm b}(e_x)\tag{3.10.11}

が成り立つ。ここで H(λ)=−∑PλPln⁡λPH(\lambda)=-\sum_P\lambda_P\ln\lambda_P である。等号は「ビットの反転が起きたか」と「位相の反転が起きたか」が独立のときに限る。

証明

ρ^ABE\hat\rho_{ABE} は純粋なので、S(E)=S(AB)=H(λ)S(E)=S(AB)=H(\lambda) である(Bell 状態は正規直交なので ρ^AB\hat\rho_{AB} の固有値は λP\lambda_P)。Alice が AA を ZZ で測って結果 aa を得ると、残りの BEBE は純粋状態になる(純粋状態の一部を射影測定しても、残りは純粋のまま)。純粋状態の2つの部分のエントロピーは等しいので、S(ρ^Ea)=S(ρ^Ba)S(\hat\rho_E^a)=S(\hat\rho_B^a) である。ρ^Ba\hat\rho_B^a を求める。∣Φ±⟩| \Phi^\pm \rangle では AA が aa なら BB も aa、∣Ψ±⟩| \Psi^\pm \rangle では BB は a⊕1a\oplus1 で、ρ^AB\hat\rho_{AB} は Bell 基底で対角なので、異なる Bell 状態の間の干渉の項は無い。したがって

ρ^Ba=(1−ez)∣a⟩⟨a∣+ez∣a⊕1⟩⟨a⊕1∣,S(ρ^Ea)=hb(ez)\hat\rho_B^a=(1-e_z)| a \rangle \langle a |+e_z| a\oplus1 \rangle \langle a\oplus1 |,\qquad S(\hat\rho_E^a)=h_{\mathrm b}(e_z)

で、aa は確率 1/21/2 ずつ出る。命題 3.10.2 から I(Az;E)=S(ρ^E)−∑a12S(ρ^Ea)=H(λ)−hb(ez)I(A_z;E)=S(\hat\rho_E)-\sum_a\frac12S(\hat\rho_E^a)=H(\lambda)-h_{\mathrm b}(e_z) である。

不等号を示す。Pauli の誤り PP を、ビットの反転の有無 FF と位相の反転の有無 GG の組に対応させる(1↦(0,0)\mathbf 1\mapsto(0,0)、X↦(1,0)X\mapsto(1,0)、Z↦(0,1)Z\mapsto(0,1)、Y↦(1,1)Y\mapsto(1,1))。この対応は1対1なので H(λ)=H(F,G)H(\lambda)=H(F,G) で、式 (3.10.10) から FF と GG の周辺の分布はそれぞれ eze_z、exe_x の2値分布である。劣加法性H(F,G)≤H(F)+H(G)=hb(ez)+hb(ex)H(F,G)\le H(F)+H(G)=h_{\mathrm b}(e_z)+h_{\mathrm b}(e_x) を代入すれば式 (3.10.11) を得る。等号は I(F;G)=0I(F;G)=0 のときである。

この定理は、ZZ 基底の鍵について Eve が知ることができる量は、XX 基底の誤り率だけで上から押さえられると言っている。Eve が ZZ の値を読もうとすれば、その分だけ XX 基底の相関を壊すことになり、Alice と Bob はそれを exe_x として見ることができる。ex=0e_x=0 なら I(Az;E)=0I(A_z;E)=0 で、これは 3.10.2節で純粋な対について示したことの量的な形である。測定・再送攻撃では Q=ex=1/4Q=e_x=1/4、I(A;E)=0.5I(A;E)=0.5 ビットで、上界 hb(1/4)/ln⁡2=0.811h_{\mathrm b}(1/4)/\ln2=0.811 ビットより小さい。この攻撃は Eve にとって最良ではない。

Bell 対角の仮定は計算を見通しよくするためのもので、上界 hb(ex)h_{\mathrm b}(e_x) そのものは一般の状態でも成り立つ。それは次の節で不確定性関係から示す。図 3.10.2 に、Bob の情報量 ln⁡2−hb(Q)\ln2-h_{\mathrm b}(Q)、Eve の情報量の上界 hb(Q)h_{\mathrm b}(Q)、測定・再送攻撃での Eve の情報量 2Qln⁡22Q\ln2 を誤り率 QQ(ez=ex=Qe_z=e_x=Q)に対して示す。

図

図 3.10.2 Bob の情報量 I(A;B)=1−hb(Q)/ln⁡2I(A;B)=1-h_{\mathrm b}(Q)/\ln2(実線)と、Eve の情報量の上界 hb(Q)/ln⁡2h_{\mathrm b}(Q)/\ln2(点線、定理 3.10.6 で ex=Qe_x=Q)、測定・再送攻撃を割合 λ=4Q\lambda=4Q で行ったときの Eve の情報量 2Q2Q(破線)。単位はビット。I(A;B)I(A;B) が上界を上回る Q<0.110Q<0.110 ではどんな攻撃に対しても鍵が取れ、破線を上回る Q<0.171Q<0.171 は測定・再送攻撃に対してだけ鍵が取れる範囲である。

例題 3.10.3 Bell 対角な状態での Eve の情報量 ★★★

オリジナルAlice と Bob の対が Bell 対角な状態で、(λ1,λX,λY,λZ)=(0.90, 0.04, 0.01, 0.05)(\lambda_{\mathbf 1},\lambda_X,\lambda_Y,\lambda_Z)=(0.90,\,0.04,\,0.01,\,0.05) とする。Eve は純粋化を持つ。

  1. 誤り率 eze_z、exe_x を求めよ。
  2. I(Az;E)I(A_z;E) をビットで求め、上界 hb(ex)h_{\mathrm b}(e_x) と比べよ。
  3. λ\lambda を知っているときの鍵率 I(Az;Bz)−I(Az;E)I(A_z;B_z)-I(A_z;E) と、eze_z・exe_x だけから言える下界 ln⁡2−hb(ez)−hb(ex)\ln2-h_{\mathrm b}(e_z)-h_{\mathrm b}(e_x) を、ビットで比べよ。
解答

(1) 式 (3.10.10) から ez=0.04+0.01=0.05e_z=0.04+0.01=0.05、ex=0.05+0.01=0.06e_x=0.05+0.01=0.06。

(2) H(λ)/ln⁡2=0.6051H(\lambda)/\ln2=0.6051 ビット、hb(0.05)/ln⁡2=0.2864h_{\mathrm b}(0.05)/\ln2=0.2864 ビットなので、I(Az;E)=0.6051−0.2864=0.3187I(A_z;E)=0.6051-0.2864=0.3187 ビット。上界は hb(0.06)/ln⁡2=0.3274h_{\mathrm b}(0.06)/\ln2=0.3274 ビットで、0.3187<0.32740.3187<0.3274。ビットと位相の反転の結合分布は (F,G)(F,G) が (0,0)(0,0) に 0.900.90、(1,0)(1,0) に 0.040.04、(1,1)(1,1) に 0.010.01、(0,1)(0,1) に 0.050.05 で、Pr⁡(F=1,G=1)=0.01≠ezex=0.003\Pr(F=1,G=1)=0.01\ne e_ze_x=0.003 なので独立でなく、上界との差 I(F;G)=0.0087I(F;G)=0.0087 ビットが残る。

(3) I(Az;Bz)=ln⁡2−hb(ez)I(A_z;B_z)=\ln2-h_{\mathrm b}(e_z) なので、λ\lambda を知っているときの鍵率は ln⁡2−hb(ez)−[H(λ)−hb(ez)]=ln⁡2−H(λ)\ln2-h_{\mathrm b}(e_z)-[H(\lambda)-h_{\mathrm b}(e_z)]=\ln2-H(\lambda)、ビットで 1−0.6051=0.39491-0.6051=0.3949。誤り率だけから言える下界は 1−0.2864−0.3274=0.38621-0.2864-0.3274=0.3862 ビットで、差は (2) の I(F;G)I(F;G) と同じ 0.00870.0087 ビットである。

1 W. K. Wootters and W. H. Zurek (1982), Nature 299, 802; D. Dieks (1982), Phys. Lett. A 92, 271.

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