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当てる D の性質:Holevo 量とデータ処理不等式

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第10章 量子鍵配送
目次
  1. Eve の情報量は Holevo 量
  2. Eve の測定:Holevo 限界
  3. Eve は純粋化を持つとしてよい
  4. 鍵率の定理
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第3部 第10章 §3.10.2 ★★★ Eve の情報量は Holevo 量で、どんな測定でもそれを超えない。Eve は純粋化を持つと仮定してよく、そのとき鍵率は I(A;B)−I(A;E)I(A;B)-I(A;E)

Eve の情報量は Holevo 量

cq 状態 (3.10.3) の相互情報量は、Eve の状態の集まり {p(a),ρ^Ea}\{p(a),\hat\rho_E^a\} だけで書ける。

命題 3.10.2(cq 状態の相互情報量 ★★★)

I(A;E)ρ=∑ap(a) D(ρ^Ea ∥ ρ^E)=S(ρ^E)−∑ap(a)S(ρ^Ea)=χ({p(a),ρ^Ea}).(3.10.5)I(A;E)_\rho=\sum_ap(a)\,D(\hat\rho_E^a\,\|\,\hat\rho_E)=S(\hat\rho_E)-\sum_ap(a)S(\hat\rho_E^a)=\chi(\{p(a),\hat\rho_E^a\}).\tag{3.10.5}

証明

ρ^AE\hat\rho_{AE} と ρ^A⊗ρ^E=∑ap(a)∣a⟩⟨a∣⊗ρ^E\hat\rho_A\otimes\hat\rho_E=\sum_ap(a)| a \rangle \langle a |\otimes\hat\rho_E はどちらも aa ごとのブロック対角なので、対数もブロックごとにとれる。ブロック aa の寄与は Tr⁡[p(a)ρ^Ea(ln⁡p(a)ρ^Ea−ln⁡p(a)ρ^E)]=p(a)D(ρ^Ea ∥ ρ^E)\operatorname{Tr}[p(a)\hat\rho_E^a(\ln p(a)\hat\rho_E^a-\ln p(a)\hat\rho_E)]=p(a)D(\hat\rho_E^a\,\|\,\hat\rho_E) である。2つ目の等号は、∑ap(a)Tr⁡ρ^Ealn⁡ρ^E=Tr⁡ρ^Eln⁡ρ^E\sum_ap(a)\operatorname{Tr}\hat\rho_E^a\ln\hat\rho_E=\operatorname{Tr}\hat\rho_E\ln\hat\rho_E を使って展開すれば得られる。

右辺の χ\chi は Holevo 量で、第3部第2章(第3部第2章)で凹性の差として、第3部第7章(第3部第7章)で通信の上限として現れた量である。各値 aa に対する Eve の状態が、平均の状態からどれだけ離れているかを相対エントロピーで測り、確率で平均したものになっている。Eve の状態が aa によらなければ χ=0\chi=0 で、Eve は何も知らない。

Eve の測定:Holevo 限界

Eve が手持ちの系 EE を POVM {M^y}\{\hat M_y\} で測って結果 YY を得たとする。測定は、ρ^↦∑yTr⁡(M^yρ^)∣y⟩⟨y∣\hat\rho\mapsto\sum_y\operatorname{Tr}(\hat M_y\hat\rho)| y \rangle \langle y | という量子チャネルである。これを EE に当てると ρ^AE↦ρ^AY\hat\rho_{AE}\mapsto\hat\rho_{AY}、ρ^A⊗ρ^E↦ρ^A⊗ρ^Y\hat\rho_A\otimes\hat\rho_E\mapsto\hat\rho_A\otimes\hat\rho_Y となるので、量子データ処理不等式(第3部第3章)から

I(A;Y)=D(ρ^AY ∥ ρ^A⊗ρ^Y)≤D(ρ^AE ∥ ρ^A⊗ρ^E)=χ({p(a),ρ^Ea})(3.10.6)I(A;Y)=D(\hat\rho_{AY}\,\|\,\hat\rho_A\otimes\hat\rho_Y)\le D(\hat\rho_{AE}\,\|\,\hat\rho_A\otimes\hat\rho_E)=\chi(\{p(a),\hat\rho_E^a\})\tag{3.10.6}

を得る。これが Holevo 限界で、どんな測定を選んでも Eve が得る古典の情報量は χ\chi を超えない。

鍵配送でこの限界が要る理由は、Eve が測定を遅らせられることにある。Eve は量子ビットに触れたあと自分の系を量子のまま保存しておき、Alice と Bob が基底や誤り訂正の情報を公開し終えてから、その情報に合わせて測定を選ぶことができる。このため安全性は、特定の測定で得られる情報量でなく、どの測定に対しても成り立つ上限 χ\chi で評価する必要がある。

Eve は純粋化を持つとしてよい

Alice と Bob の対の状態を ρ^AB\hat\rho_{AB} とする。Eve の系 E′E' が何であっても、3つを合わせた ρ^ABE′\hat\rho_{ABE'} の純粋化 ∣ψ⟩ABE′R| \psi \rangle _{ABE'R} をとれば、E=E′RE=E'R は ρ^AB\hat\rho_{AB} の純粋化を持つ系になり、E′E' は EE から RR を部分トレースで捨てて得られる。部分トレースは量子チャネルなので、データ処理不等式から I(A;E′)≤I(A;E)I(A;E')\le I(A;E) である。ρ^AB\hat\rho_{AB} の純粋化は、純粋化する側のユニタリ(等長写像)の違いを除いて1つに決まる(第3部第1章)。そのユニタリは I(A;E)I(A;E) を変えないので、I(A;E)I(A;E) は ρ^AB\hat\rho_{AB} だけで決まる。したがって、Eve の情報量の上界は、Eve が ρ^AB\hat\rho_{AB} の純粋化を持つとして計算すればよい。それ以上の情報を得る方法は Eve にはない。

この見方から、量子もつれの重要な性質が出てくる。

命題 3.10.3(純粋な対は外と相関しない ★★★)

ρ^AB\hat\rho_{AB} が純粋状態なら、どんな拡張 ρ^ABE\hat\rho_{ABE} も ρ^AB⊗ρ^E\hat\rho_{AB}\otimes\hat\rho_E の形である。

証明

I(AB;E)=S(AB)+S(E)−S(ABE)I(AB;E)=S(AB)+S(E)-S(ABE) で、S(AB)=0S(AB)=0 である。Araki–Lieb の不等式(第3部第2章)から S(ABE)≥S(E)−S(AB)=S(E)S(ABE)\ge S(E)-S(AB)=S(E) なので I(AB;E)≤0I(AB;E)\le0 となる。一方 I(AB;E)=D(ρ^ABE ∥ ρ^AB⊗ρ^E)≥0I(AB;E)=D(\hat\rho_{ABE}\,\|\,\hat\rho_{AB}\otimes\hat\rho_E)\ge0 だから I(AB;E)=0I(AB;E)=0 で、Klein の不等式の等号条件から ρ^ABE=ρ^AB⊗ρ^E\hat\rho_{ABE}=\hat\rho_{AB}\otimes\hat\rho_E である。

Alice と Bob が ZZ でも XX でも結果が完全に一致すると確かめたとする。すると ρ^AB\hat\rho_{AB} は Z⊗ZZ\otimes Z と X⊗XX\otimes X の両方の固有値 +1+1 の固有空間に入る。2つの演算子は交換し、同時固有値 (+1,+1)(+1,+1) の固有空間は ∣Φ+⟩| \Phi^+ \rangle だけが張る1次元の空間なので、ρ^AB=∣Φ+⟩⟨Φ+∣\hat\rho_{AB}=| \Phi^+ \rangle \langle \Phi^+ | である。命題 3.10.3 から Eve の系は対と無相関で、I(A;E)=0I(A;E)=0 になる。誤りが 00 なら鍵は完全に秘密である。誤りが小さいときにこれがどう崩れるかを、3.10.3節で量的に調べる。

鍵率の定理

Alice と Bob と Eve が同じ状態 ρ^ABE\hat\rho_{ABE} の独立な nn 個の写しを持ち、Alice と Bob はそれぞれ自分の系を測って古典の値 AA・BB を得たとする(Eve は量子のまま)。Alice から Bob への1方向の公開通信だけを使って取り出せる鍵の長さを ℓn\ell_n とする。

定理 3.10.4(Devetak–Winter の定理 ★★★)

n→∞n\to\infty で ℓn/n\ell_n/n が達成できる値(鍵率)rr は

r≥I(A;B)−I(A;E)ρ=S(A ∣ E)ρ−H(A ∣ B)(3.10.7)r\ge I(A;B)-I(A;E)_\rho=S(A\,|\,E)_\rho-H(A\,|\,B)\tag{3.10.7}

を満たす(単位は nat。ビットで数えるときは ln⁡2\ln2 で割る)。

証明は I. Devetak と A. Winter による1I. Devetak and A. Winter (2005), Proc. R. Soc. A 461, 207. Eve も古典の値を持つ場合は I. Csiszár and J. Körner (1978), IEEE Trans. Inf. Theory 24, 339 が示していた。下の脚注へ。等号の右側は、I(A;B)=H(A)−H(A ∣ B)I(A;B)=H(A)-H(A\,|\,B) と I(A;E)=H(A)−S(A ∣ E)I(A;E)=H(A)-S(A\,|\,E) を引き算したものである。

式 (3.10.7) の2つの項には、それぞれ手順の意味がある。H(A ∣ B)H(A\,|\,B) は、Bob が自分の値から Alice の値を復元するのに足りない情報量で、誤り訂正のために Alice が公開しなければならない量になる。公開した分は Eve にも知られるので鍵から差し引く。S(A ∣ E)S(A\,|\,E) は、Eve から見た Alice の値の不確かさで、秘匿性増幅で残せる鍵の量になる。2つとも 3.10.5節で手順として確かめる。式 (3.10.7) は「比べる2つの分布」の相対エントロピー2つの差 D(pAB ∥ pApB)−D(ρ^AE ∥ ρ^A⊗ρ^E)D(p_{AB}\,\|\,p_Ap_B)-D(\hat\rho_{AE}\,\|\,\hat\rho_A\otimes\hat\rho_E) になっている。Bob の方が Eve より多く知っていれば鍵が取れる、という形である。

例題 3.10.2 直交しない2状態を盗み見る ★★

オリジナルAlice は確率 1/21/2 ずつで ∣ψ0⟩=∣0⟩| \psi_0 \rangle =| 0 \rangle と ∣ψ1⟩=∣+⟩| \psi_1 \rangle =| + \rangle を送る。Eve はこの量子ビットそのものを手に入れたとする。

  1. Eve の情報量の上限 χ\chi をビットで求めよ。
  2. 2つの状態を誤り確率が最小になるように見分ける測定(Helstrom の測定)は、誤り確率 Pe=12(1−1−c2)P_{\mathrm e}=\frac12\bigl(1-\sqrt{1-c^2}\bigr)(c=∣⟨ψ0∣ψ1⟩∣c=\lvert \langle \psi_0 | \psi_1 \rangle \rvert)を達成する。この測定で Eve が得る情報量 I(A;Y)I(A;Y) をビットで求め、式 (3.10.6) を確かめよ。
解答

(1) 純粋状態なので S(ρ^Ea)=0S(\hat\rho_E^a)=0、χ=S(ρˉ)\chi=S(\bar\rho) である。ρˉ=12(∣ψ0⟩⟨ψ0∣+∣ψ1⟩⟨ψ1∣)\bar\rho=\frac12(| \psi_0 \rangle \langle \psi_0 |+| \psi_1 \rangle \langle \psi_1 |) の固有値は、∣ψ0⟩±∣ψ1⟩| \psi_0 \rangle \pm| \psi_1 \rangle の方向に (1±c)/2(1\pm c)/2 で(c=⟨ψ0∣ψ1⟩=1/2c=\langle \psi_0 | \psi_1 \rangle =1/\sqrt2 は実数)、

χ=hb(1+c2)=hb(0.8536)\chi=h_{\mathrm b}\Bigl(\frac{1+c}{2}\Bigr)=h_{\mathrm b}(0.8536)

で、ビットに直すと χ=0.601\chi=0.601 ビットである。

(2) Pe=12(1−1/2)=0.1464P_{\mathrm e}=\frac12(1-1/\sqrt2)=0.1464。測定の結果は、誤り確率 PeP_{\mathrm e} の2値対称通信路を通った AA と同じ分布になるので、I(A;Y)=ln⁡2−hb(0.1464)I(A;Y)=\ln2-h_{\mathrm b}(0.1464)、ビットでは 1−0.6009=0.3991-0.6009=0.399 である。0.399<0.6010.399<0.601 で、式 (3.10.6) が成り立っている。Eve が状態を量子のまま保存しても、そこから1回の測定で読み出せる情報量は χ\chi より小さい。ただし後から公開される情報に合わせて測定を選べるので、安全性の評価は χ\chi で行う。

1 I. Devetak and A. Winter (2005), Proc. R. Soc. A 461, 207. Eve も古典の値を持つ場合は I. Csiszár and J. Körner (1978), IEEE Trans. Inf. Theory 24, 339 が示していた。

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