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出てくるもの(3):誤り訂正と秘匿性増幅

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第10章 量子鍵配送
目次
  1. 誤り訂正:公開した分だけ Eve の不確かさが減る
  2. 秘匿性増幅:ハッシュで縮める
  3. 漸近の鍵の長さ
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第3部 第10章 §3.10.5 ★★ 誤り訂正で公開する分 H(A ∣ B)H(A\,|\,B) を引き、2-universal なハッシュで S(A ∣ E)S(A\,|\,E) まで縮める。漸近では Devetak–Winter の鍵率になる

誤り訂正:公開した分だけ Eve の不確かさが減る

ふるい分けと誤り率の見積もりの後、Alice は nn ビット AnA^n、Bob はそれと少し違う BnB^n を持っている。Alice は AnA^n の関数 C=f(An)C=f(A^n)(たとえば線形符号のシンドローム)を公開し、Bob は BnB^n と CC から AnA^n を復元する。Slepian と Wolf の定理1D. Slepian and J. K. Wolf (1973), IEEE Trans. Inf. Theory 19, 471.下の脚注へによれば、n→∞n\to\infty で必要な公開の量は1ビットあたり H(A ∣ B)H(A\,|\,B) で足りる。ビットの誤り率が eze_z の対称な誤りなら H(A ∣ B)=hb(ez)H(A\,|\,B)=h_{\mathrm b}(e_z) である。

公開した CC は Eve も聞いている。Eve の不確かさがどれだけ減るかは、次の式で押さえられる。CC は AnA^n の関数なので S(AnC ∣ E)=S(An ∣ E)S(A^nC\,|\,E)=S(A^n\,|\,E) で、条件付きエントロピーの連鎖律と H(C ∣ E)≤ln⁡∣C∣H(C\,|\,E)\le\ln\lvert \mathcal C\rvert(∣C∣\lvert \mathcal C\rvert は CC のとりうる値の数)から

S(An ∣ EC)=S(AnC ∣ E)−H(C ∣ E)≥S(An ∣ E)−ln⁡∣C∣(3.10.16)S(A^n\,|\,EC)=S(A^nC\,|\,E)-H(C\,|\,E)\ge S(A^n\,|\,E)-\ln\lvert \mathcal C\rvert\tag{3.10.16}

である。公開したビット数の分だけ、Eve の不確かさは最大で減る。誤り訂正の後に Eve に残る不確かさは、1ビットあたり S(A ∣ E)−H(A ∣ B)S(A\,|\,E)-H(A\,|\,B) 以上ある。

秘匿性増幅:ハッシュで縮める

誤り訂正の後、Alice と Bob は同じ nn ビットを持つが、Eve はそれについて部分的な情報を持っている。2人は公開の乱数で関数 ff を選び、nn ビットを ℓ\ell ビットの f(An)f(A^n) に縮める。ℓ\ell が Eve の不確かさより十分小さければ、縮めた鍵は Eve からほとんど独立で一様になる。これを秘匿性増幅と呼ぶ2C. H. Bennett, G. Brassard, C. Crépeau and U. M. Maurer (1995), IEEE Trans. Inf. Theory 41, 1915. Eve が量子の系を持つ場合は R. Renner (2005), 博士論文(ETH Zürich), arXiv:quant-ph/0512258.下の脚注へ。

関数の選び方には次の性質を課す。nn ビットから ℓ\ell ビットへの関数の集まり F\mathcal F が 2-universal であるとは、異なる x≠x′x\ne x' のどの組についても、F\mathcal F から一様に選んだ ff で f(x)=f(x′)f(x)=f(x') となる確率が 2−ℓ2^{-\ell} 以下になることをいう。ℓ×n\ell\times n の 0/1 行列 M^\hat M 全体から一様に選び f(x)=M^xf(x)=\hat Mx(2を法とする積)とすると、x⊕x′≠0x\oplus x'\ne0 に対して M^(x⊕x′)\hat M(x\oplus x') は ℓ\ell ビットの一様な乱数になるので、衝突の確率はちょうど 2−ℓ2^{-\ell} である。

Eve の不確かさの測り方として、Eve が AA を1回で当てる確率の最大値 pguess(A ∣ E)p_{\mathrm{guess}}(A\,|\,E) を使い、Hmin⁡(A ∣ E)=−ln⁡pguess(A ∣ E)H_{\min}(A\,|\,E)=-\ln p_{\mathrm{guess}}(A\,|\,E) を最小エントロピーと呼ぶ3当てる確率による解釈は R. König, R. Renner and C. Schaffner (2009), IEEE Trans. Inf. Theory 55, 4337.下の脚注へ。秘匿性増幅の保証は次の形をとる(ハッシュの残り物の補題)。2-universal な F\mathcal F から一様に選んだ ff について

12∥ρ^f(A)FE−12ℓ1⊗ρ^FE∥1≤12exp⁡(−Hmin⁡(A ∣ E)−ℓln⁡22)(3.10.17)\frac12\bigl\|\hat\rho_{f(A)FE}-\tfrac{1}{2^\ell}\mathbf 1\otimes\hat\rho_{FE}\bigr\|_1\le\frac12\exp\Bigl(-\frac{H_{\min}(A\,|\,E)-\ell\ln2}{2}\Bigr)\tag{3.10.17}

が成り立つ(FF は選んだ関数を記録した古典の系で、Eve も知っている)。左辺は、実際の鍵と理想の鍵(一様で Eve と独立)のトレース距離である。3.10.1節では秘密の度合いを相対エントロピーで測ったが、Pinsker の不等式 12∥ρ^−σ^∥1≤D(ρ^ ∥ σ^)/2\frac12\|\hat\rho-\hat\sigma\|_1\le\sqrt{D(\hat\rho\,\|\,\hat\sigma)/2} により、相対エントロピーが小さければトレース距離も小さい。右辺を ε\varepsilon 以下にするには、ビットで数えて

ℓ≤Hmin⁡(A ∣ E)ln⁡2−2log⁡212ε(3.10.18)\ell\le\frac{H_{\min}(A\,|\,E)}{\ln2}-2\log_2\frac1{2\varepsilon }\tag{3.10.18}

にすればよい。

漸近の鍵の長さ

最小エントロピーは von Neumann エントロピー以下で、一般には小さい。しかし独立な写しが nn 個あるとき、小さな確率 ε′\varepsilon ' の分だけ状態をならした最小エントロピー Hmin⁡ε′H_{\min}^{\varepsilon '} について1nHmin⁡ε′(An ∣ En)→S(A ∣ E)\frac1nH_{\min}^{\varepsilon '}(A^n\,|\,E^n)\to S(A\,|\,E) が成り立つ(量子の漸近等分割性)4M. Tomamichel, R. Colbeck and R. Renner (2009), IEEE Trans. Inf. Theory 55, 5840.下の脚注へ。これは第1部第2章(第1部第2章)の典型系列の量子版で、ほとんどの確率がエントロピーで決まる大きさの典型的な部分に集まるために成り立つ。これと式 (3.10.16) を合わせると、誤り訂正と秘匿性増幅の後に残る鍵は1ビットあたり

ℓn→S(A ∣ E)−H(A ∣ B)\frac{\ell}{n}\to S(A\,|\,E)-H(A\,|\,B)

で、Devetak–Winter の式 (3.10.7) と一致する。定理 3.10.4 の2つの項は、それぞれ「誤り訂正で公開した分」と「秘匿性増幅で残せる分」だった。

有限の nn では、誤り率を見積もるときの統計的なゆらぎと、漸近等分割性の n\sqrt n 程度の補正を差し引く必要がある。それらを無視した粗い見積もりは、BB84 でℓ≈n[1−2hb(Q)/ln⁡2]−2log⁡2(1/ε)\ell\approx n[1-2h_{\mathrm b}(Q)/\ln2]-2\log_2(1/\varepsilon ) になる。n=106n=10^6、Q=0.02Q=0.02、ε=10−10\varepsilon =10^{-10} なら、誤り訂正で公開する量が n hb(0.02)/ln⁡2≈1.41×105n\,h_{\mathrm b}(0.02)/\ln2\approx1.41\times10^5 ビット、鍵は ℓ≈7.17×105\ell\approx7.17\times10^5 ビットである。ε\varepsilon の分の 2log⁡2(1010)=662\log_2(10^{10})=66 ビットは、この大きさの nn ではわずかである。

例題 3.10.5 排他的論理和で縮める ★★

オリジナルAlice の値は一様な2ビット A=(a1,a2)A=(a_1,a_2) である。Eve は確率 1/21/2 ずつで a1a_1 か a2a_2 のどちらか一方を知り、どちらを知ったかも知っている。

  1. I(A;E)I(A;E) と最小エントロピー Hmin⁡(A ∣ E)H_{\min}(A\,|\,E) をビットで求めよ。
  2. 1ビットに縮めた鍵 f(A)=a1⊕a2f(A)=a_1\oplus a_2 について、I(f(A);E)I(f(A);E) を求めよ。
  3. 1×21\times2 の 0/1 行列 M^=(m1,m2)\hat M=(m_1,m_2) の4つ全体から一様に選び f(A)=m1a1⊕m2a2f(A)=m_1a_1\oplus m_2a_2 とする。命題 3.10.1 の秘密の度合い ln⁡2−H(f(A) ∣ E)\ln2-H(f(A)\,|\,E)(ff を公開した後)を4つの ff について平均し、ビットで求めよ。式 (3.10.17) の右辺と比べよ。
解答

(1) Eve はどちらの場合も1ビットを知り、残る1ビットは一様なので H(A ∣ E)=1H(A\,|\,E)=1 ビット、I(A;E)=2−1=1I(A;E)=2-1=1 ビット。Eve が AA を当てる確率は 1/21/2 なので Hmin⁡(A ∣ E)=ln⁡2H_{\min}(A\,|\,E)=\ln2、すなわち1ビットである。

(2) Eve が a1a_1 を知っていても、a2a_2 が一様で独立なので a1⊕a2a_1\oplus a_2 は一様である。a2a_2 を知っている場合も同じなので、f(A)f(A) は Eve の情報と独立で、I(f(A);E)=0I(f(A);E)=0。

(3) M^=(0,0)\hat M=(0,0) では f(A)=0f(A)=0 に決まり、H(f(A) ∣ E)=0H(f(A)\,|\,E)=0 なので秘密の度合いは1ビット。(1,0)(1,0) では f(A)=a1f(A)=a_1 で、Eve が a1a_1 を知る半分の場合に 00、残り半分で1ビットの不確かさがあるのでH=1/2H=1/2 ビット、秘密の度合いは 1/21/2 ビット。(0,1)(0,1) も同じで 1/21/2。(1,1)(1,1) は (2) から 00。平均は (1+12+12+0)/4=0.5(1+\frac12+\frac12+0)/4=0.5 ビットである。式 (3.10.17) の右辺は Hmin⁡=ln⁡2H_{\min}=\ln2、ℓ=1\ell=1 で 12e0=12\frac12\mathrm{e}^0=\frac12 となり、トレース距離について何も保証しない。ℓ\ell を Hmin⁡H_{\min} と同じ大きさにとると、縮める操作に余裕が無く、平均では秘密にならない。(2) の ff はたまたま良い関数を選んだ場合である。

1 D. Slepian and J. K. Wolf (1973), IEEE Trans. Inf. Theory 19, 471.

2 C. H. Bennett, G. Brassard, C. Crépeau and U. M. Maurer (1995), IEEE Trans. Inf. Theory 41, 1915. Eve が量子の系を持つ場合は R. Renner (2005), 博士論文(ETH Zürich), arXiv:quant-ph/0512258.

3 当てる確率による解釈は R. König, R. Renner and C. Schaffner (2009), IEEE Trans. Inf. Theory 55, 4337.

4 M. Tomamichel, R. Colbeck and R. Renner (2009), IEEE Trans. Inf. Theory 55, 5840.

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