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出てくるもの (1):1本の軌道の熱と仕事

2026年10月15日7分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第1章 確率熱力学の入口
目次
  1. Sekimoto の熱と仕事
  2. 積の取り方を間違えると何が起きるか
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第4部 第1章 §4.1.3 ★★★ Sekimoto の定義:仕事は設定を動かしたことによるエネルギーの変化、熱は液体の力が粒子にした仕事。1本の軌道ごとに第一法則 ΔU=Q+W\Delta U=Q+W が厳密に成り立つ

Sekimoto の熱と仕事

マクロな熱力学では、仕事は外から変えるパラメータ(体積など)を通じて系に入るエネルギー、熱はそれ以外の経路で熱浴から入るエネルギーである。Sekimoto は、この区別を Langevin 方程式の1本の軌道 x(t)x(t) の上にそのまま持ち込んだ(K. Sekimoto (1997), J. Phys. Soc. Jpn. 66, 1234;K. Sekimoto (1998), Prog. Theor. Phys. Suppl. 130, 17)。

粒子のエネルギーは U(x(t),λt)U(x(t),\lambda_t) である。これが変わる原因は2つある。設定 λ\lambda を人が動かすこと(粒子が動かなくても UU が変わる)と、粒子が動くこと(設定を止めても UU が変わる)である。前者を仕事、後者を熱と呼ぶ。後者が熱と呼べるのは、粒子を動かしているのが液体の力だからで、式 (4.1.1) から液体が粒子に及ぼす力の合計 −γx˙+ξ-\gamma\dot x+\xi は ∂xU\partial_xU に等しい。

定義 4.1.2(1本の軌道の仕事と熱)

時刻 00 から tft_{\mathrm f} までの軌道 x(⋅)x(\cdot) と設定の変え方 λt\lambda_t(プロトコルと呼ぶ)について

W[x]≔∫0tf∂λU(x(t),λt) λ˙t dt,Q[x]≔∫0tf∂xU(x(t),λt)∘dx(t)=∫0tf(−γx˙+ξ)∘dx(4.1.11)W[x]\coloneqq\int_0^{t_{\mathrm f}}\partial_\lambda U(x(t),\lambda_t)\,\dot\lambda_t\,\mathrm{d} t,\qquad Q[x]\coloneqq\int_0^{t_{\mathrm f}}\partial_xU(x(t),\lambda_t)\circ\mathrm{d} x(t)=\int_0^{t_{\mathrm f}}\bigl(-\gamma\dot x+\xi\bigr)\circ\mathrm{d} x\tag{4.1.11}

と定める。WW は系がされた仕事、QQ は系が液体から受け取った熱である。∘\circ は Stratonovich の積(区間の中点で被積分関数を評価する積)を表す。

Stratonovich の積では普通の微積分の連鎖律がそのまま成り立つので、dU=∂xU∘dx+∂λU dλ\mathrm{d} U=\partial_xU\circ\mathrm{d} x+\partial_\lambda U\,\mathrm{d}\lambda から

U(x(tf),λtf)−U(x(0),λ0)=Q[x]+W[x](4.1.12)U(x(t_{\mathrm f}),\lambda_{t_{\mathrm f}})-U(x(0),\lambda_0)=Q[x]+W[x]\tag{4.1.12}

が軌道ごとに成り立つ。これが1本の軌道の第一法則である。W[x]W[x] も Q[x]Q[x] も軌道ごとに違う値をとる確率変数で、平均をとったものがマクロな熱と仕事になる。液体の側から見ると、液体は粒子に QQ だけのエネルギーを渡したので、液体のエネルギーは −Q-Q 変わり、液体のエントロピーは(液体を温度 TT の大きな熱浴とみなして)−Q/T-Q/T 変わる。

平均の熱の流れは、確率の流れで書ける。Stratonovich の積の平均は ⟨∂xU∘x˙⟩=∫∂xU j dx\langle \partial_xU\circ\dot x \rangle =\int\partial_xU\,j\,\mathrm{d} x になるので

⟨W˙⟩=∫∂λU λ˙ p dx,⟨Q˙⟩=∫∂xU j dx(4.1.13)\langle \dot W \rangle =\int\partial_\lambda U\,\dot\lambda\,p\,\mathrm{d} x,\qquad \langle \dot Q \rangle =\int\partial_xU\,j\,\mathrm{d} x\tag{4.1.13}

である。2つ目は、Fokker–Planck 方程式 (4.1.2) を使って ddt⟨U⟩=⟨W˙⟩+∫U ∂tp dx=⟨W˙⟩−∫U ∂xj dx\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} t}\langle U \rangle =\langle \dot W \rangle +\int U\,\partial_tp\,\mathrm{d} x=\langle \dot W \rangle -\int U\,\partial_xj\,\mathrm{d} x を部分積分したものと一致する。平均の第一法則 ddt⟨U⟩=⟨W˙⟩+⟨Q˙⟩\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} t}\langle U \rangle =\langle \dot W \rangle +\langle \dot Q \rangle も成り立つ。

積の取り方を間違えると何が起きるか

式 (4.1.11) で Stratonovich の積を指定したのは、乱雑な力を含む積分では、被積分関数を区間のどこで評価するかで答えが変わるからである。区間の始点で評価する Itô の積 ∂xU⋅dx\partial_xU\cdot\mathrm{d} x を使うと、Itô の公式 dU=∂xU⋅dx+kBTγ∂x2U dt+∂λU dλ\mathrm{d} U=\partial_xU\cdot\mathrm{d} x+\frac{ k_{\mathrm B} T}{\gamma}\partial_x^2U\,\mathrm{d} t+\partial_\lambda U\,\mathrm{d}\lambda から

∫∂xU⋅dx=Q[x]−kBTγ∫∂x2U dt(4.1.14)\int\partial_xU\cdot\mathrm{d} x=Q[x]-\frac{ k_{\mathrm B} T}{\gamma}\int\partial_x^2U\,\mathrm{d} t\tag{4.1.14}

となり、第一法則 (4.1.12) が右辺の第2項の分だけ破れる。dx\mathrm{d} x の2乗の平均が dt\mathrm{d} t の1次(2kBT dt/γ2 k_{\mathrm B} T\,\mathrm{d} t/\gamma)であることによって、この余分な項が現れる。Itô の積は確率過程の計算には便利だが、熱を定義するときは、エネルギーの保存を軌道ごとに保つ Stratonovich の積を使う。

例題 4.1.3 平衡にある粒子の熱の流れ ★★

オリジナル調和ばね U=k2(x−λ)2U=\frac k2(x-\lambda)^2 の設定を止め、粒子は平衡分布 πλ\pi_\lambda にあるとする。

  1. (1) Stratonovich の積で定義した熱の平均の流れ ⟨Q˙⟩\langle \dot Q \rangle が0であることを示せ。
  2. (2) Itô の積で同じ量を計算するとどうなるか。例題 4.1.1 の粒子で数値を求めよ。
解答

(1) 平衡分布では式 (4.1.4) の jj がどこでも0なので、式 (4.1.13) から ⟨Q˙⟩=0\langle \dot Q \rangle =0 である。Stratonovich の積を短い時間で書くと ∂xU∘dx=∂xU⋅dx+12∂x2U (dx)2\partial_xU\circ\mathrm{d} x=\partial_xU\cdot\mathrm{d} x+\frac12\partial_x^2U\,(\mathrm{d} x)^2 で、⟨∂xU⋅dx⟩=−1γ⟨(∂xU)2⟩dt=−k2γσeq2dt=−kkBTγdt\langle \partial_xU\cdot\mathrm{d} x \rangle =-\frac1\gamma\langle (\partial_xU)^2 \rangle \mathrm{d} t=-\frac{k^2}{\gamma}\sigma_{\mathrm{eq}}^2\mathrm{d} t=-\frac{k k_{\mathrm B} T}{\gamma}\mathrm{d} t、⟨12∂x2U(dx)2⟩=12k⋅2kBTγdt=kkBTγdt\langle \frac12\partial_x^2U(\mathrm{d} x)^2 \rangle =\frac12k\cdot\frac{2 k_{\mathrm B} T}{\gamma}\mathrm{d} t=\frac{k k_{\mathrm B} T}{\gamma}\mathrm{d} t なので、和は確かに0である。粒子は液体に熱を渡したり受け取ったりしているが、平均すると出入りは釣り合っている。

(2) Itô の積だけを残すと ⟨Q˙⟩Itoˆ=−kkBT/γ=−kBT/τr\langle \dot Q \rangle _{\text{Itô}}=-k k_{\mathrm B} T/\gamma=- k_{\mathrm B} T/\tau_{\mathrm r} になる。例題 4.1.1 の粒子ではkBT/τr=4.14×10−21/1.88×10−2=2.20×10−19 Wk_{\mathrm B} T/\tau_{\mathrm r}=4.14\times10^{-21}/1.88\times10^{-2}=2.20\times10^{-19}\,\mathrm W、つまり毎秒 53 kBT53\, k_{\mathrm B} T の熱が平衡にある粒子から液体へ流れ続けることになる。平衡の粒子のエネルギーは一定(平均 kBT/2k_{\mathrm B} T/2)なので、これはエネルギーの保存と矛盾し、Itô の積が熱の定義として誤りであることを示している。

木下の勉強ステータス

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