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出てくるもの (3):フィードバックで粒子に階段を登らせる

2026年10月15日6分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第7章 実験で見る情報熱力学
目次
  1. らせん階段のポテンシャル
  2. 一般化 Jarzynski 等式の の形
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第4部 第7章 §4.7.5 ★★ 回転するコロイド粒子で、なされた仕事より多い自由エネルギーを粒子に与えた。一般化 Jarzynski 等式のもう1つの形 ⟨eβ(ΔF−W)⟩=γ\langle \mathrm{e}^{\beta(\Delta F-W)} \rangle =\gamma を確かめ、γ\gamma は逆向きの手続きで元の軌道が出る確率の和である

らせん階段のポテンシャル

情報を自由エネルギーに変える最初の実験は S. Toyabe, T. Sagawa, M. Ueda, E. Muneyuki and M. Sano (2010), Nature Phys. 6, 988 である(数値は arXiv:1009.5287 の版による)。直径 287 nm287\,\mathrm{nm} のポリスチレンの粒子を2つつなげた二量体を、ガラス面に1点で留める。粒子はその点のまわりに回転の Brown 運動をする。4つの電極に 1 MHz1\,\mathrm{MHz} の電圧をかけて、回転の角度について周期 180∘180^\circ の正弦波のポテンシャルと、一定のトルクを同時に加える。ポテンシャルは傾いた周期の山で、1段の高さは kBTk_{\mathrm B} T の程度、平均すると粒子は傾きにそって下る(らせん階段を下りる)。

フィードバックは次のとおりである。tc=44 mst_{\mathrm c}=44\,\mathrm{ms} ごとに粒子の角度を測り、粒子が階段の「上がり口」にあたる領域 S にいれば、遅れ tdt_{\mathrm d} の後にポテンシャルの山と谷を入れかえる(位相を半周期ずらす)。入れかえると粒子は谷の上り側の斜面に置かれ、上の段へ転がる。S にいなければ何もしない。S は、入れかえの前のポテンシャルが入れかえの後より必ず高い領域に選んであるので、入れかえの仕事はいつも負か0である。遅れ tdt_{\mathrm d} が短いと粒子は階段を登り、長いと下る。周期 tc=44 mst_{\mathrm c}=44\,\mathrm{ms} は井戸の中の緩和(10 ms10\,\mathrm{ms} ほど)より長く、隣の井戸への跳び移り(1 s1\,\mathrm s ほど)より短い。

最も短い遅れ td=1.1 mst_{\mathrm d}=1.1\,\mathrm{ms} で、粒子が S にいる確率は p=0.059p=0.059、1周あたりの自由エネルギーの増えと仕事の差の平均は ⟨ΔF−W⟩=0.062 kBT\langle \Delta F-W \rangle =0.062\, k_{\mathrm B} T だった。測定に誤りが無いので、得た情報は hb(0.059)=0.22h_{\mathrm b}(0.059)=0.22 nat で、そのうち 0.062/0.22=28%0.062/0.22=28\% が自由エネルギーに変わった。第二法則 ⟨ΔF−W⟩≤0\langle \Delta F-W \rangle \le0 は破れているが、式 (4.7.14) の ⟨ΔF−W⟩≤kBT I\langle \Delta F-W \rangle \le k_{\mathrm B} T\,I は守られている。

一般化 Jarzynski 等式の γ\gamma の形

沙川と上田は、式 (4.7.14) と並べてもう1つの形

⟨eβ(ΔF−W)⟩=γ,γ≔∑mP~m(m)(4.7.15)\langle \mathrm{e}^{\beta(\Delta F-W)} \rangle =\gamma,\qquad\gamma\coloneqq\sum_m\tilde P_m(m)\tag{4.7.15}

を示した(第4部第4章)。P~m(m)\tilde P_m(m) は、測定結果 mm のときに行ったフィードバックの手続きを時間について逆にたどり、最後に測定したとき結果 mm が出る確率である。γ\gamma は情報をどれだけ使えたかを表す量で、測定結果を全く使わなければ γ=1\gamma=1 で普通の Jarzynski の等式に戻り、KK 通りの結果を完全に使えば γ=K\gamma=K まで大きくなる。Jensen の不等式から ⟨ΔF−W⟩≤kBTln⁡γ\langle \Delta F-W \rangle \le k_{\mathrm B} T\ln\gamma が出る。Toyabe らは逆の手続きを別に行って γ\gamma を測り、式 (4.7.15) が遅れ tdt_{\mathrm d} の広い範囲で成り立つこと、普通の Jarzynski の等式(右辺が1)はフィードバックがあると破れることを示した。tdt_{\mathrm d} を長くすると γ\gamma は1に近づいた。

4.7.4 節の理想化した単電子箱では γ\gamma を書き下せる。測定結果 m=0m=0 の手続きの逆は、縮退点から ngn_{\mathrm g} を準静的に 1/2−Δng1/2-\Delta n_{\mathrm g} まで動かし(平衡のまま)、速く 1/21/2 に戻して測る、というものである。動かした先の平衡で状態 0 にいる確率は 1/(1+x)1/(1+x) で、誤り率 ε\varepsilon の測定で結果 0 が出る確率は 1−ε1+x+εx1+x\frac{1-\varepsilon}{1+x}+\frac{\varepsilon x}{1+x} である。m=1m=1 も対称なので

γ=2(1−ε+εx)1+x(4.7.16)\gamma=\frac{2(1-\varepsilon+\varepsilon x)}{1+x}\tag{4.7.16}

である。一方、式 (4.7.12) から ⟨e−βW⟩=(1−ε)21+x+ε2x1+x\langle \mathrm{e}^{-\beta W} \rangle =(1-\varepsilon)\frac2{1+x}+\varepsilon\frac{2x}{1+x} で、確かに γ\gamma に等しい。

例題 4.7.5 2つの上限を比べる ★★

オリジナル(a) Toyabe らの p=0.059p=0.059 から hb(p)h_{\mathrm b}(p) を求め、情報から自由エネルギーへの変換の割合を確かめよ。pp が 1/21/2 なら上限はいくらか。(b) 理想化した単電子箱で ε=0.05\varepsilon=0.05、βΔE=4.30\beta\Delta E=4.30 のとき、γ\gamma と ln⁡γ\ln\gamma、I(X;M)I(X;M)、実際の −β⟨W⟩-\beta\langle W \rangle を比べよ。2つの上限のうちどちらが厳しいか。

解答

(a) hb(0.059)=0.059×2.830+0.941×0.0608=0.167+0.057=0.224h_{\mathrm b}(0.059)=0.059\times2.830+0.941\times0.0608=0.167+0.057=0.224 nat で、0.062/0.224=0.280.062/0.224=0.28 である(論文は I=0.22I=0.22 と丸めて 28%)。p=1/2p=1/2 なら情報は ln⁡2=0.693\ln2=0.693 nat が上限で、実験の 0.0620.062 はその9%にあたる。S を狭く選ぶと、S にいる確率 pp が小さく情報も小さいが、S にいたときに確実に登らせることができる。

(b) x=e−4.30=0.0136x=\mathrm{e}^{-4.30}=0.0136 で、γ=2(0.95+0.05×0.0136)/1.0136=1.876\gamma=2(0.95+0.05\times0.0136)/1.0136=1.876、ln⁡γ=0.629\ln\gamma=0.629 である。I=ln⁡2−hb(0.05)=0.495I=\ln2-h_{\mathrm b}(0.05)=0.495 で、実際の値は例題 4.7.4 の 0.4650.465 である。0.465≤0.495≤0.6290.465\le0.495\le0.629 で、この場合は相互情報量の上限のほうが厳しい。γ\gamma はフィードバックの手続きを決めてから定まる量で、II は測定だけで決まる量である。

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