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出てくるもの(3):少ない情報で書ける状態=行列積状態

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第5部 第1章 エンタングルメント・エントロピーと面積則
目次
  1. Schmidt 分解を繰り返す
  2. 切り捨てと面積則
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第5部 第1章 §5.1.5 ★★★ どの切れ目でも Schmidt 階数が χ\chi 以下の状態は、χ×χ\chi\times\chi の行列の積で Ndχ2Nd\chi^2 個の数で書け、面積則はその χ\chi が小さくて済むことを保証する

Schmidt 分解を繰り返す

1次元の鎖の純粋状態 ∣Ψ⟩=∑s1,…,sNΨs1⋯sN∣s1⋯sN⟩| \Psi \rangle =\sum_{s_1,\dots,s_N}\Psi_{s_1\cdots s_N}| s_1\cdots s_N \rangle を考える(si=1,…,ds_i=1,\dots,d)。サイト kk と k+1k+1 の間で鎖を切って左右に Schmidt 分解すると、Schmidt 階数 χk\chi_k と係数 λα(k)\lambda^{(k)}_\alpha が決まる。切れ目のエンタングルメント・エントロピーは Sk=H(λ(k))≤ln⁡χkS_k=H(\lambda^{(k)})\le\ln\chi_k である。逆に、すべての切れ目で Schmidt 階数が χ\chi 以下なら、係数 Ψs1⋯sN\Psi_{s_1\cdots s_N} は行列の積で書ける。

命題 5.1.5(行列積状態 ★★★)

すべての切れ目で Schmidt 階数が χ\chi 以下の状態は、各サイト ii と各 sis_i に対する行列 A[i]siA^{[i]s_i}(大きさは高々 χ×χ\chi\times\chi、両端は 1×χ1\times\chi と χ×1\chi\times1)を使って

Ψs1s2⋯sN=A[1]s1A[2]s2⋯A[N]sN(5.1.17)\Psi_{s_1s_2\cdots s_N}=A^{[1]s_1}A^{[2]s_2}\cdots A^{[N]s_N}\tag{5.1.17}

と書ける。必要な数の個数は高々 Ndχ2Nd\chi^2 である。

証明

係数を d×dN−1d\times d^{N-1} の行列 Ψs1,(s2⋯sN)\Psi_{s_1,(s_2\cdots s_N)} とみて特異値分解する:Ψ=UΣV†\Psi=U\Sigma V^\dagger。UU の列の数は1番目の切れ目の Schmidt 階数 χ1≤χ\chi_1\le\chi で、Aα[1]s1=Us1αA^{[1]s_1}_{\alpha}=U_{s_1\alpha}(1×χ11\times\chi_1)とおく。残り ΣV†\Sigma V^\dagger は (α,s2)(\alpha,s_2) を行、(s3⋯sN)(s_3\cdots s_N) を列とする χ1d×dN−2\chi_1d\times d^{N-2} の行列とみて、もう一度特異値分解する。その階数は2番目の切れ目の Schmidt 階数 χ2\chi_2 に等しい(左側 s1s2s_1s_2 の空間で見た行列と、UU のユニタリ性で行の基底を取り替えただけなので階数が同じ)。こうして左から順に分解していけば、Aαβ[k]skA^{[k]s_k}_{\alpha\beta}(χk−1×χk\chi_{k-1}\times\chi_k)が得られ、式 (5.1.17) になる。各サイトの数の個数は dχk−1χk≤dχ2d\chi_{k-1}\chi_k\le d\chi^2 である。

この形を行列積状態(MPS)と呼び、χ\chi を結合次元と呼ぶ。行列の積の形は M. Fannes、B. Nachtergaele、R. F. Werner が無限に長い鎖の状態として調べた1M. Fannes, B. Nachtergaele, R. F. Werner (1992), Communications in Mathematical Physics 144, 443–490。下の脚注へ。図 5.1.3 のように、各サイトの行列を「物理の足」sis_i が1本、「結合の足」が2本出た箱で描き、つながった足は添字の和を表す。この図では、ある切れ目で鎖を左右に分けると、またぐ足は結合の足1本だけになり、その次元 χ\chi が Schmidt 階数の上限を与えることが見て取れる。

図

図 5.1.3 行列積状態 (5.1.17) の図。箱が行列 A[i]siA^{[i]s_i}、下に出た足が物理の添字 sis_i、横の線が和を取る結合の添字(次元 χ\chi)を表す。サイト3と4の間(赤い破線)で切ると、左右をつなぐのは結合の足1本だけなので、Schmidt 階数は χ\chi 以下、エントロピーは ln⁡χ\ln\chi 以下になる

切り捨てと面積則

実際の状態は、どの切れ目でも Schmidt 係数が無限に(あるいは dN/2d^{N/2} 個まで)続く。そこで各切れ目で大きい方から χ\chi 個の係数だけを残し、残りを捨てる。1つの切れ目だけで切り捨てたとき、正規化しないままの近似 ∣Ψχ⟩=∑α≤χλα∣uα⟩∣vα⟩| \Psi_\chi \rangle =\sum_{\alpha\le\chi}\sqrt{\lambda_\alpha}| u_\alpha \rangle | v_\alpha \rangle との差は

∥∣Ψ⟩−∣Ψχ⟩∥2=∑α>χλα≕ϵχ(5.1.18)\lVert | \Psi \rangle -| \Psi_\chi \rangle \rVert ^2=\sum_{\alpha>\chi}\lambda_\alpha\eqqcolon\epsilon_\chi\tag{5.1.18}

で、捨てた係数の和(捨てた重み)そのものである。すべての切れ目で切り捨てる場合は、誤差の2乗が各切れ目の捨てた重みの和の2倍以下になることがF. Verstraete と J. I. Cirac によって示されている2F. Verstraete, J. I. Cirac (2006), Physical Review B 73, 094423。下の脚注へ。

面積則がここで意味を持つ。1次元で gap のある基底状態では、どの切れ目の Schmidt 係数も急速に減り、捨てた重みを ϵ\epsilon にするのに要る χ\chi が鎖の長さ NN について多項式でしか増えない(Hastings 2007)。体積則に従う乱数の状態では、Schmidt 係数がほぼ平らに dN/2d^{N/2} 個並ぶので、χ\chi は NN について指数関数的に要る。注意が1つある。エントロピー SS が小さいことだけでは χ\chi は小さくならない。S=−∑λln⁡λS=-\sum\lambda\ln\lambda は大きな係数で決まり、捨てた重みは小さな係数の裾で決まるからである。次の例題でそれを確かめる。

1次元の基底状態を数値で求める密度行列くりこみ群(DMRG)の方法3S. R. White (1992), Physical Review Letters 69, 2863–2866。下の脚注へは、結合次元 χ\chi の行列積状態の中でエネルギーの期待値を最小にする方法と読める。試行状態を狭い集合に限ってエネルギーを最小にするので、近似の数理 第4章の Rayleigh–Ritz 法と同じ A 型(射影)の近似である。ただし行列積状態の集合は線型な部分空間ではない(2つの行列積状態の和は結合次元が足し算で増える)。

近似の裏付け

型 A(射影) | 小さいもの 結合次元 χ\chi の行列積状態の集合(線型部分空間でなく曲がった集合) | 証明 証明済み(切り捨ての誤差は捨てた重みの和で押さえられる〔Verstraete–Cirac 2006〕。1次元・有限の範囲の相互作用・縮退のない gap のある基底状態では、χ\chi は NN の多項式で足りる〔Hastings 2007〕。2次元以上は未解決) | 行き先 近似の数理 第4章

例題 5.1.5 切り捨てに要る結合次元と GHZ 状態の行列積 ★★

オリジナル

  1. ある切れ目の Schmidt 係数が幾何級数 λα=(1−r)rα−1\lambda_\alpha=(1-r)r^{\alpha-1}(α=1,2,…\alpha=1,2,\dots、r=12r=\frac12)であるとする。この切れ目のエントロピーを求めよ。捨てた重みを 10−610^{-6} 以下にするのに要る最小の χ\chi を求め、ln⁡χ\ln\chi と SS を比べよ。
  2. N=100N=100、d=2d=2、χ\chi を (1) の値として、行列積状態の数の個数の上限 Ndχ2Nd\chi^2 と、係数 Ψs1⋯sN\Psi_{s_1\cdots s_N} の個数を比べよ。
  3. NN 個のスピンの GHZ 状態 12(∣0⋯0⟩+∣1⋯1⟩)\frac{1}{\sqrt2}(| 0\cdots0 \rangle +| 1\cdots1 \rangle ) が、周期的な形 Ψ=12Tr⁡(As1⋯AsN)\Psi=\frac1{\sqrt2}\operatorname{Tr}(A^{s_1}\cdots A^{s_N}) でA0=diag(1,0)A^0=\mathrm{diag}(1,0)、A1=diag(0,1)A^1=\mathrm{diag}(0,1) と書けることを示し、どの切れ目でも S=ln⁡2S=\ln2 であることを確かめよ。
解答

(1) S=−∑α(1−r)rα−1ln⁡((1−r)rα−1)=−ln⁡(1−r)−r1−rln⁡rS=-\sum_\alpha(1-r)r^{\alpha-1}\ln\bigl((1-r)r^{\alpha-1}\bigr)=-\ln(1-r)-\frac{r}{1-r}\ln r。r=12r=\frac12 で S=ln⁡2+ln⁡2=2ln⁡2=1.386S=\ln2+\ln2=2\ln2=1.386。捨てた重みは ∑α>χ(1−r)rα−1=rχ\sum_{\alpha>\chi}(1-r)r^{\alpha-1}=r^\chi なので、2−χ≤10−62^{-\chi}\le10^{-6} から χ≥6log⁡210=19.93\chi\ge6\log_210=19.93、最小は χ=20\chi=20(2−20=9.5×10−72^{-20}=9.5\times10^{-7})。ln⁡20=3.00\ln20=3.00 は S=1.39S=1.39 の2倍以上で、SS だけを見て χ≈eS=4\chi\approx\mathrm{e}^S=4 としたのでは、捨てた重みは r4=0.06r^4=0.06 にしかならない。

(2) Ndχ2=100×2×400=8.0×104Nd\chi^2=100\times2\times400=8.0\times10^4 個。係数の個数は 2100=1.27×10302^{100}=1.27\times10^{30} 個で、比は 10−2510^{-25} 程度である。

(3) A0A^0、A1A^1 は対角行列なので、s1,…,sNs_1,\dots,s_N に 00 と 11 が混ざると積の対角成分は (1,1)(1,1) 成分も (2,2)(2,2) 成分も 00 になり、トレースは 00 である。すべて 00 なら Tr⁡(A0)N=Tr⁡ diag(1,0)=1\operatorname{Tr}(A^0)^N=\operatorname{Tr}\,\mathrm{diag}(1,0)=1、すべて 11 なら同じく 11 なので、Ψ=12\Psi=\frac1{\sqrt2}(この2つの配置)、他は 00 で GHZ 状態になる。どこで切っても ρ^A=12(∣0⋯0⟩⟨0⋯0∣+∣1⋯1⟩⟨1⋯1∣)\hat\rho_A=\frac12(| 0\cdots0 \rangle \langle 0\cdots0 |+| 1\cdots1 \rangle \langle 1\cdots1 |) で S=ln⁡2=ln⁡χS=\ln2=\ln\chi である。結合次元 2 の行列積状態は ln⁡2\ln2 以上のもつれを持てないが、GHZ はちょうどその上限にある。

1 M. Fannes, B. Nachtergaele, R. F. Werner (1992), Communications in Mathematical Physics 144, 443–490。

2 F. Verstraete, J. I. Cirac (2006), Physical Review B 73, 094423。

3 S. R. White (1992), Physical Review Letters 69, 2863–2866。

木下の勉強ステータス

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