出てくるもの(2):臨界系の対数の破れ
AI 生成・木下が未勉強
相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第5部 第1章 §5.1.4 ★★ gap が閉じると1次元でもエントロピーが で増え、係数の中心電荷 は模型の細部によらない
一様な鎖では対数で増える
二量体化をなくした の一様な鎖は、半分の占有で gap が閉じる(Fermi 準位に状態がある)。無限に長い鎖の基底状態の相関行列は、1粒子のエネルギー (格子定数を1とする)の負の部分を占めた Fermi の海から計算でき、
となる。相関は距離の 乗でしか減らず、相関の長さは無限大である。式 (5.1.13) で区間の長さ のエントロピーを計算すると、 で 、、、、、、、 になり、 を2倍にするたびにほぼ一定の ずつ増える。 なので、
である(図 5.1.2)。境界は2点のままなのに は際限なく増えるので、面積則は対数の分だけ破れる。
図 5.1.2 無限に長い自由フェルミオンの鎖(半分の占有)で、長さ の区間のエンタングルメント・エントロピーを相関行列の方法 (5.1.13) で厳密に計算した値(点と点線)。一様な鎖(、gap なし)は傾き の直線(細い実線。漸近形 (5.1.15))に乗り、二量体化した鎖(gap )は飽和する。値は verify_ch5-01.py で計算した
中心電荷
係数 は、この模型だけの偶然ではない。1次元の臨界点の長距離の振る舞いは、多くの場合、スケール変換と共形変換で不変な場の理論(共形場理論)で記述され、その理論は中心電荷 という1つの数で分類される。無限に長い系の中の長さ の区間について
が成り立つ( は格子定数)。この形は C. Holzhey、F. Larsen、F. Wilczek が示し1C. Holzhey, F. Larsen, F. Wilczek (1994), Nuclear Physics B 424, 443–467。下の脚注へ、P. Calabrese と J. Cardy が有限温度・有限の系を含む形に広げた2P. Calabrese, J. Cardy (2004), Journal of Statistical Mechanics: Theory and Experiment, P06002。下の脚注へ。スピン鎖の数値計算でこの形を確かめたのは G. Vidal、J. I. Latorre、E. Rico、A. Kitaev である3G. Vidal, J. I. Latorre, E. Rico, A. Kitaev (2003), Physical Review Letters 90, 227902。下の脚注へ。自由フェルミオン(スピン鎖では XX 模型)は 、横磁場 Ising 模型の臨界点は である。区間の端が2つあるので係数は で、開いた鎖を端から切る場合は端が1つになり になる。
対数になる理由は次のように説明できる。臨界点では長さの尺度がないので、 から までの間のどの尺度も同じだけエントロピーに寄与する。長さの尺度を で等間隔に区切ると、区切りの数は に比例するので、エントロピーは で増える。係数 は、1つの尺度の区切りあたりに境界をまたいでもつれる自由度の量で、 は臨界点の自由度の数を数えた量と読める。
高い次元では事情が異なる。 次元の自由フェルミオンで Fermi 面があると、 になって面積則が対数の分だけ破れる(M. M. Wolf4M. M. Wolf (2006), Physical Review Letters 96, 010404。下の脚注へ、D. Gioev と I. Klich5D. Gioev, I. Klich (2006), Physical Review Letters 96, 100503。下の脚注へ)。一方、gap のない自由なボソン場でも2次元以上では面積則が成り立つ(M. Srednicki が3次元の球の内外で を数値で示した6M. Srednicki (1993), Physical Review Letters 71, 666–669。下の脚注へ)。gap がないことは面積則を破る十分条件ではなく、1次元の臨界系と Fermi 面を持つ系が破れる例である。
近似の裏付け
型 B(極限) | 小さいもの (格子定数が区間の長さに比べて小さい。連続の場の理論への極限) | 証明 条件付き(臨界点の長距離の振る舞いが共形場理論で書けることを仮定。自由フェルミオンの鎖では Toeplitz 行列式の漸近公式から係数 が導かれている〔B.-Q. Jin, V. E. Korepin (2004), Journal of Statistical Physics 116, 79–95〕) | 行き先 近似の数理 第1章
例題 5.1.4 短い区間の厳密な値と中心電荷の読み取り ★★
オリジナル一様な鎖(、半分の占有)の相関行列 (5.1.14) を使う。
解答
(1) では で、。1サイトの占有は半々で、そのサイトは外と最大にもつれている。 では なので 、固有値は である。 は について対称なので
(2) から 。自由フェルミオンの に一致する。
(3) 漸近形は で、厳密な値 との差は である。 でもかなり近いが、小さい では漸近形に入らない補正の分だけずれる。
ほかの巻では
- ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部第3章:一様な鎖のバンドと Fermi 点を離散 Fourier 変換で出しており、相関行列の式の出どころが読める
1 C. Holzhey, F. Larsen, F. Wilczek (1994), Nuclear Physics B 424, 443–467。
2 P. Calabrese, J. Cardy (2004), Journal of Statistical Mechanics: Theory and Experiment, P06002。
3 G. Vidal, J. I. Latorre, E. Rico, A. Kitaev (2003), Physical Review Letters 90, 227902。
4 M. M. Wolf (2006), Physical Review Letters 96, 010404。
5 D. Gioev, I. Klich (2006), Physical Review Letters 96, 100503。
6 M. Srednicki (1993), Physical Review Letters 71, 666–669。
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