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回路と同じ力を持つ2つの型:測定型と断熱型

2026年10月15日14分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第6部 第1章 回路モデルと万能性
目次
  1. 測定型:テレポーテーションを繰り返す
  2. 断熱型:基底状態をゆっくり運ぶ
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第6部 第1章 §6.1.5 ★★ もつれた資源状態を1量子ビットずつ測るだけの「測定型」と、Hamiltonian をゆっくり変える「断熱型」は、どちらも回路と多項式の手間で互いに真似し合える

測定型:テレポーテーションを繰り返す

測定型量子計算(一方向量子計算)では、ゲートを当てる代わりに、初めに大きなもつれた状態を用意し、あとは1量子ビットずつ測るだけで計算を進める。用意する状態はクラスター状態で、格子の各点に ∣+⟩=(∣0⟩+∣1⟩)/2| + \rangle =(| 0 \rangle +| 1 \rangle )/\sqrt2 を置き、隣り合う点の対すべてに CZ を当てて作る。CZ は互いに交換するので、当てる順序によらない。

基本の操作は1段の測定である。測る基底を、角 θ\theta を選んで

∣±θ⟩=12(∣0⟩±eiθ∣1⟩)(6.1.8)| \pm_\theta \rangle =\frac{1}{\sqrt2}\bigl(| 0 \rangle \pm\mathrm{e}^{\mathrm{i}\theta}| 1 \rangle \bigr)\tag{6.1.8}

とし、∣+θ⟩| +_\theta \rangle が出たら結果 m=0m=0、∣−θ⟩| -_\theta \rangle が出たら m=1m=1 と書く。

命題 6.1.12(1段の測定 ★★)

1つ目の量子ビットに任意の状態 ∣ψ⟩| \psi \rangle、2つ目に ∣+⟩| + \rangle を置いて CZ を当て、1つ目を基底 (6.1.8) で測る。結果 mm はどの ∣ψ⟩| \psi \rangle と θ\theta についても確率 1/21/2 で出て、2つ目の量子ビットの状態は

Xm H P(−θ)∣ψ⟩(6.1.9)X^m\,H\,P(-\theta)| \psi \rangle\tag{6.1.9}

になる。

証明

∣ψ⟩=a∣0⟩+b∣1⟩| \psi \rangle =a| 0 \rangle +b| 1 \rangle と書く。CZ は1つ目が ∣1⟩| 1 \rangle のときだけ2つ目に ZZ を当て、Z∣+⟩=∣−⟩Z| + \rangle =| - \rangle なので、CZ の後の状態は a∣0⟩∣+⟩+b∣1⟩∣−⟩a| 0 \rangle | + \rangle +b| 1 \rangle | - \rangle である。1つ目を ⟨±θ∣\langle \pm_\theta | に射影すると、⟨±θ∣0⟩=1/2\langle \pm_\theta | 0 \rangle =1/\sqrt2、⟨±θ∣1⟩=±e−iθ/2\langle \pm_\theta | 1 \rangle =\pm\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\theta}/\sqrt2 から、2つ目に残るのは12(a∣+⟩±e−iθb∣−⟩)=12H(a∣0⟩±e−iθb∣1⟩)=12HZmP(−θ)∣ψ⟩\frac{1}{\sqrt2}\bigl(a| + \rangle \pm\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\theta}b| - \rangle \bigr)=\frac{1}{\sqrt2}H\bigl(a| 0 \rangle \pm\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\theta}b| 1 \rangle \bigr)=\frac{1}{\sqrt2}HZ^mP(-\theta)| \psi \rangleである。HZ=XHHZ=XH から HZm=XmHHZ^m=X^mH で、ベクトルの長さの2乗 1/21/2 が結果 mm の確率になる。

1段の測定は、状態を1つ目の量子ビットから2つ目へ移しながら、ゲート HP(−θ)HP(-\theta) を当てる。これはテレポーテーション(第3部第6章)の簡単な形で、XmX^m は測定結果で決まる「副産物」の Pauli 行列である。結果が確率 1/21/2 ずつで ∣ψ⟩| \psi \rangle によらないことは、測定の結果と入力の状態の相互情報量が 00 であることを意味する。測定は入力の情報を1ビットも取り出さず、計算に要る情報はすべて、どの角で測るかという選択の側にある。

副産物は、後の測定の角を変えて吸収できる。XP(φ)X=eiφP(−φ)XP(\varphi)X=\mathrm{e}^{\mathrm{i}\varphi}P(-\varphi) なので、次の段の角を θ\theta から (−1)mθ(-1)^m\theta に変えれば、XmX^m を測定の後ろへ送り出すことができる。こうして直線に並んだクラスター状態を端から測ると、HP(−θ1)HP(-\theta_1)、HP(−θ2)HP(-\theta_2)、…\dots を順に当てたことになり、HP(−θ)H∝Rx(−θ)HP(-\theta)H\propto R_x(-\theta) と P(−θ)∝Rz(−θ)P(-\theta)\propto R_z(-\theta) から、3段で ZXZ の Euler 角の回転、すなわち任意の1量子ビットのゲートが作れる(総合問題)。2次元のクラスター状態では、縦の結合が2本の直線の間の CZ の役をし、2量子ビットのゲートも作ることができる。こうして測定型は回路と同じ計算を、多項式の個数の量子ビットと測定で行える1R. Raussendorf and H. J. Briegel (2001), Physical Review Letters 86, 5188–5191。詳しい構成は R. Raussendorf, D. E. Browne and H. J. Briegel (2003), Physical Review A 68, 022312。下の脚注へ。

図

図 6.1.3 直線のクラスター状態による測定型の計算。1つ目の量子ビットに入力 ∣ψ⟩| \psi \rangle を置き、残りは ∣+⟩| + \rangle。線は CZ を表す。3個を角 θ1,θ2,θ3\theta_1,\theta_2,\theta_3 で順に測ると、出力の量子ビットに HP(−θ3)HP(−θ2)HP(−θ1)∣ψ⟩HP(-\theta_3)HP(-\theta_2)HP(-\theta_1)| \psi \rangle が副産物の Pauli 行列つきで現れる。

例題 6.1.5 1段の測定で何ができるか ★★

オリジナル命題 6.1.12 の1段の測定について答えよ。

  1. θ=π/2\theta=\pi/2 と θ=π/4\theta=\pi/4 のとき、結果 m=0m=0 で2つ目の量子ビットに当たるゲートを H,S,TH,S,T とその逆で書け。
  2. ∣ψ⟩=∣0⟩| \psi \rangle =| 0 \rangle、θ=π/4\theta=\pi/4 として、結果 m=0,1m=0,1 の確率と、それぞれの出力の状態を求めよ。
解答

(1) P(−π/2)=S†P(-\pi/2)=S^\dagger、P(−π/4)=T†P(-\pi/4)=T^\dagger なので、それぞれ HS†HS^\dagger と HT†HT^\dagger が当たる。前者は Clifford 群の元、後者は Clifford 群の外の元である。測定型でも、Clifford 群の外へ出るには π/2\pi/2 の倍数でない角での測定が要る。

(2) P(−π/4)∣0⟩=∣0⟩P(-\pi/4)| 0 \rangle =| 0 \rangle、H∣0⟩=∣+⟩H| 0 \rangle =| + \rangle なので、m=0m=0 なら出力は ∣+⟩| + \rangle、m=1m=1 なら X∣+⟩=∣+⟩X| + \rangle =| + \rangle で同じ状態になる。確率は命題のとおりどちらも 1/21/2 である。この入力では副産物 XX が状態を変えないので、結果を気にする必要がない。一般の入力では XmX^m の分だけ出力が違い、次の段の角で吸収する。

断熱型:基底状態をゆっくり運ぶ

断熱型量子計算2E. Farhi, J. Goldstone, S. Gutmann, J. Lapan, A. Lundgren and D. Preda (2001), Science 292, 472–475。下の脚注へでは、答えを基底状態に持つ Hamiltonian H^1\hat H_1 と、基底状態が簡単に用意できる Hamiltonian H^0\hat H_0 を選び、

H^(s)=(1−s)H^0+sH^1,s=s(t),s(0)=0, s(tf)=1(6.1.10)\hat H(s)=(1-s)\hat H_0+s\hat H_1,\qquad s=s(t),\quad s(0)=0,\ s(t_{\mathrm f})=1\tag{6.1.10}

に沿って時間 tft_{\mathrm f} をかけてゆっくり変える。量子力学の断熱定理によれば、H^(s)\hat H(s) の最低の固有値が次の固有値から幅 g(s)>0g(s)>0 で離れている限り、十分ゆっくり変えれば状態は基底状態にとどまる3T. Kato (1950), Journal of the Physical Society of Japan 5, 435–439。誤りの明示的な上界は S. Jansen, M.-B. Ruskai and R. Seiler (2007), Journal of Mathematical Physics 48, 102111。下の脚注へ。どれだけゆっくりかの目安は

tf≫ℏ max⁡s∥∂sH^∥gmin⁡2,gmin⁡=min⁡sg(s)(6.1.11)t_{\mathrm f}\gg\frac{\hbar\,\max_s\lVert \partial_s\hat H\rVert }{g_{\min}^2},\qquad g_{\min}=\min_sg(s)\tag{6.1.11}

である。終わりに測れば H^1\hat H_1 の基底状態、すなわち答えが得られる。

この型の手間は時間 tft_{\mathrm f} で測り、それはエネルギーの間隔の最小値 gmin⁡g_{\min} で決まる。回路の大きさに当たるのが tft_{\mathrm f} である。Aharonov らは、大きさ LL の回路を、LL の多項式の時間で動く断熱型の計算で真似できることを示した4D. Aharonov, W. van Dam, J. Kempe, Z. Landau, S. Lloyd and O. Regev (2007), SIAM Journal on Computing 37, 166–194。下の脚注へ。回路の各段の状態を「時計」の量子ビットと組にした状態の重ね合わせを基底状態に持つ局所的な Hamiltonian を作り、その間隔が 1/L1/L の多項式より速くは閉じないことを示す。逆向き(断熱型を回路で真似する)は、時間発展を細かく区切ってゲートの積で書けばよい。こうして断熱型も回路と同じ力を持つ。

例として、NN 個の候補 ∣1⟩,…,∣N⟩| 1 \rangle ,\dots,| N \rangle から印のついた1つ ∣w⟩| w \rangle を探す問題を考える。∣ϕ⟩=∑x∣x⟩/N| \phi \rangle =\sum_x| x \rangle /\sqrt N を一様な重ね合わせとし、エネルギーの単位を E0E_0 として

H^(s)=E0[(1−s)(1−∣ϕ⟩⟨ϕ∣)+s(1−∣w⟩⟨w∣)](6.1.12)\hat H(s)=E_0\bigl[(1-s)(\mathbf 1-| \phi \rangle \langle \phi |)+s(\mathbf 1-| w \rangle \langle w |)\bigr]\tag{6.1.12}

と置く。H^(s)\hat H(s) は ∣w⟩| w \rangle と ∣ϕ⟩| \phi \rangle が張る2次元の部分空間を保ち、その中の2つの固有値の差(エネルギーの間隔)を計算すると

g(s)=E01−4(1−1N)s(1−s),gmin⁡=g(1/2)=E0N(6.1.13)g(s)=E_0\sqrt{1-4\Bigl(1-\frac1N\Bigr)s(1-s)},\qquad g_{\min}=g(1/2)=\frac{E_0}{\sqrt N}\tag{6.1.13}

となる(図 6.1.4)。ss を一定の速さで変えると、式 (6.1.11) から tf≫Nℏ/E0t_{\mathrm f}\gg N\hbar/E_0 が要り、全部の候補を1つずつ調べるのと同じ手間になる。Roland と Cerf5J. Roland and N. J. Cerf (2002), Physical Review A 65, 042308。下の脚注へは、間隔が広い所では速く、狭い所では遅く進む速さ ds/dt=κ g(s)2/(ℏE0)\mathrm{d} s/\mathrm{d} t=\kappa\,g(s)^2/(\hbar E_0)(κ≪1\kappa\ll1)を選んだ。このときかかる時間は

tf=ℏκE0∫01E02 dsg(s)2=ℏκE0 NN−1arctan⁡N−1 ≈ π2κN ℏE0(6.1.14)t_{\mathrm f}=\frac{\hbar}{\kappa E_0}\int_0^1\frac{E_0^2\,\mathrm{d} s}{g(s)^2}=\frac{\hbar}{\kappa E_0}\,\frac{N}{\sqrt{N-1}}\arctan\sqrt{N-1}\ \approx\ \frac{\pi}{2\kappa}\sqrt N\,\frac{\hbar}{E_0}\tag{6.1.14}

で、N\sqrt N に比例する。これは回路で探す Grover のアルゴリズム(第6部第4章)と同じ速さである。

図

図 6.1.4 探索の Hamiltonian (6.1.12) の最低の2つの固有値の間隔 g(s)g(s)(式 (6.1.13)、厳密な値)。s=1/2s=1/2 で最小値 E0/NE_0/\sqrt N をとり、NN が大きいほど狭い谷が深くなる。

例題 6.1.6 探索の断熱型計算の時間 ★★

オリジナル式 (6.1.12) で N=1024N=1024 とする。

  1. gmin⁡g_{\min} と、一定の速さで変えるときの目安 ℏE0/gmin⁡2\hbar E_0/g_{\min}^2 を求めよ。
  2. 速さ ds/dt=κg(s)2/(ℏE0)\mathrm{d} s/\mathrm{d} t=\kappa g(s)^2/(\hbar E_0) を κ=0.2\kappa=0.2 で選んだときの tft_{\mathrm f} を求めよ。
  3. (2) の tft_{\mathrm f} のまま、時間を数値で追うと、終わりに ∣w⟩| w \rangle が見つかる確率は 0.9990.999 になる。同じ tft_{\mathrm f} を一定の速さに使うと確率は 0.170.17 にとどまる。この違いを説明せよ。
解答

(1) gmin⁡=E0/1024=E0/32=0.03125 E0g_{\min}=E_0/\sqrt{1024}=E_0/32=0.03125\,E_0。目安は ℏE0/gmin⁡2=1024 ℏ/E0\hbar E_0/g_{\min}^2=1024\,\hbar/E_0。

(2) 式 (6.1.14) の積分は NN−1arctan⁡N−1=102431.98×1.5395=49.29\frac{N}{\sqrt{N-1}}\arctan\sqrt{N-1}=\frac{1024}{31.98}\times1.5395=49.29 で、π2N=50.27\frac\pi2\sqrt N=50.27 に近い。tf=49.29/0.2=246.4 ℏ/E0t_{\mathrm f}=49.29/0.2=246.4\,\hbar/E_0 である。(1) の目安の約4分の1で済む。

(3) 一定の速さでは、s=1/2s=1/2 の近くの間隔が狭い区間(幅はおよそ 1/N1/\sqrt N)を、他の区間と同じ速さで通り過ぎる。この区間で状態は基底状態についていけず、励起状態へ移る。局所の速さは時間の大半をこの狭い区間に使い、間隔が広い両端は速く通り過ぎる。条件 (6.1.11) を全体の最小値でなく各 ss の g(s)g(s) で満たすように時間を配ったので、同じ総時間でも基底状態にとどまる。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの ℏ∥∂sH^∥/(tf gmin⁡2)→0\hbar\lVert \partial_s\hat H\rVert /(t_{\mathrm f}\,g_{\min}^2)\to0(変化の速さに比べてエネルギーの間隔が大きい) | 証明 証明済み(H^(s)\hat H(s) が ss について滑らかで、追う固有値が他のスペクトルから間隔 g(s)>0g(s)>0 で隔たっていること。Kato 1950。誤りの明示的な上界は Jansen–Ruskai–Seiler 2007) | 行き先 近似の数理 第7章

ほかの巻では

1 R. Raussendorf and H. J. Briegel (2001), Physical Review Letters 86, 5188–5191。詳しい構成は R. Raussendorf, D. E. Browne and H. J. Briegel (2003), Physical Review A 68, 022312。

2 E. Farhi, J. Goldstone, S. Gutmann, J. Lapan, A. Lundgren and D. Preda (2001), Science 292, 472–475。

3 T. Kato (1950), Journal of the Physical Society of Japan 5, 435–439。誤りの明示的な上界は S. Jansen, M.-B. Ruskai and R. Seiler (2007), Journal of Mathematical Physics 48, 102111。

4 D. Aharonov, W. van Dam, J. Kempe, Z. Landau, S. Lloyd and O. Regev (2007), SIAM Journal on Computing 37, 166–194。

5 J. Roland and N. J. Cerf (2002), Physical Review A 65, 042308。

木下の勉強ステータス

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