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物理実装の地図と授業で習った形との対応

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第6部 第1章 回路モデルと万能性
目次
  1. ゲートは時間発展である
  2. 物理実装の地図
  3. 行列の並べ方の流儀
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第6部 第1章 §6.1.6 ★ ゲートは装置の Hamiltonian による時間発展 exp⁡(−iH^t/ℏ)\exp(-\mathrm{i}\hat Ht/\hbar) そのもので、量子力学の授業のスピンの歳差運動と Rabi 振動がそのまま1量子ビットのゲートになる。行列の並べ方の流儀の違いにも注意する

ゲートは時間発展である

量子力学の授業では、磁場の中のスピン 12\tfrac12 の歳差運動を習う。Hamiltonian を H^=12ℏωZ\hat H=\tfrac12\hbar\omega Z と書くと、時間 tt の発展は

exp⁡(−iH^tℏ)=exp⁡(−iωt2Z)=Rz(ωt)(6.1.15)\exp\Bigl(-\frac{\mathrm{i}\hat Ht}{\hbar}\Bigr)=\exp\Bigl(-\mathrm{i}\frac{\omega t}{2}Z\Bigr)=R_z(\omega t)\tag{6.1.15}

で、Bloch ベクトルは zz 軸のまわりに角速度 ω\omega で回る。回路の言葉では、時間 tt だけ待つことが Rz(ωt)R_z(\omega t) のゲートである。たとえば ω/2π=5 MHz\omega/2\pi=5\,\mathrm{MHz} なら、t=25 nst=25\,\mathrm{ns} で ωt=π/4\omega t=\pi/4 となり、全体の位相を除いて TT ゲートになる。

xx 軸や yy 軸のまわりの回転は、共鳴の振動数の電磁波(マイクロ波やレーザー)を当てて作る。授業の Rabi 振動の計算では、電磁波の振動数で回る座標系に移り、速く振動する項を落として(回転波近似)、Hamiltonian を H^=12ℏΩX\hat H=\tfrac12\hbar\Omega X と書いた。Ω\Omega は Rabi 周波数である。このとき時間 tt の発展は Rx(Ωt)R_x(\Omega t) で、Ωt=π\Omega t=\pi の「π\pi パルス」は全体の位相を除いて XX、Ωt=π/2\Omega t=\pi/2 の「π/2\pi/2 パルス」は ∣0⟩| 0 \rangle を赤道へ倒す。電磁波の位相を 90∘90^\circ ずらせば yy 軸のまわりの回転になり、ZZ を当ててから yy 軸のまわりの π/2\pi/2 パルスを当てると Ry(π/2)Z=HR_y(\pi/2)Z=H になる(H=eiπ/2Ry(π/2)Rz(π)H=\mathrm{e}^{\mathrm{i}\pi/2}R_y(\pi/2)R_z(\pi) と Rz(π)=−iZR_z(\pi)=-\mathrm{i} Z から)。ZYZ 分解(定理 6.1.3)は、実験では「待ち時間と、位相を選んだパルスの組み合わせで、どんな1量子ビットのゲートも作れる」という主張になる。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの Ω/ω0→0\Omega/\omega_0\to0 かつ ∣Δ∣/ω0→0\lvert \Delta\rvert /\omega_0\to0(駆動が弱く、離調が小さい。反回転の項を時間平均で捨てる) | 証明 条件付き(時間 1/Ω1/\Omega の桁の範囲で誤差 O(Ω/ω0)\mathcal{O}(\Omega/\omega_0)。周期的な係数の常微分方程式に対する平均化の定理による。長い時間では2次の Ω2/(4ω0)\Omega^2/(4\omega_0) のずれ〔Bloch–Siegert〕が位相として積もる) | 行き先 光学と量子エレクトロニクス 第18章・近似の数理 第7章

2量子ビットのゲートは、2つの量子ビットの間の相互作用を時間を決めて働かせて作る。たとえば H^=14ℏJ Z⊗Z\hat H=\tfrac14\hbar J\,Z\otimes Z を時間 tt だけ働かせ、Jt=πJt=\pi に選ぶと、1量子ビットの zz 軸のまわりの回転と組み合わせて CZ になる。2量子ビットの相互作用をどう作るかが、装置の方式ごとにいちばん違う所である。

物理実装の地図

量子計算機を作るための条件は DiVincenzo によってまとめられている1D. P. DiVincenzo (2000), Fortschritte der Physik 48, 771–783。下の脚注へ。2つの準位として性質がよく分かった量子ビットを数を増やして並べられること、決まった状態(たとえば ∣0⋯0⟩| 0\cdots0 \rangle)に初期化できること、ゲートの時間に比べてコヒーレンスの時間(第3部第1章 の T1T_1・T2T_2)が十分長いこと、万能なゲート集合を作れること、量子ビットを1個ずつ測れることの5つである。主な方式を、量子ビットに何を使い、2量子ビットの相互作用をどう作るかで並べる。

超伝導回路では、Josephson 接合を含む非線形な LC 回路の最低の2準位を量子ビットにする。代表的な設計の transmon は、電荷の雑音に強くなるように作られている2J. Koch, T. M. Yu, J. Gambetta, A. A. Houck, D. I. Schuster, J. Majer, A. Blais, M. H. Devoret, S. M. Girvin and R. J. Schoelkopf (2007), Physical Review A 76, 042319。下の脚注へ。1量子ビットのゲートはマイクロ波のパルスで、2量子ビットのゲートは回路どうしの容量結合や、結合の強さを変えられる素子で作る。イオントラップでは、電場で捕らえたイオンの2つの内部準位を量子ビットにし、イオンの列が共有する振動のモードを仲立ちにして2量子ビットのゲートを作る3J. I. Cirac and P. Zoller (1995), Physical Review Letters 74, 4091–4094。下の脚注へ。中性原子では、光ピンセットで並べた原子の内部準位を量子ビットにし、Rydberg 状態に励起した原子が近くの原子の励起を妨げる効果(Rydberg 遮断)で2量子ビットのゲートを作る4D. Jaksch, J. I. Cirac, P. Zoller, S. L. Rolston, R. Côté and M. D. Lukin (2000), Physical Review Letters 85, 2208–2211。下の脚注へ。光ピンセットと Rydberg 遮断は光の巻(光学と量子エレクトロニクス 第27章)で扱う。光子では、偏光や通る経路を量子ビットにする。光子どうしはほとんど相互作用しないので、2量子ビットのゲートは補助の光子と測定を使って確率的に作る5E. Knill, R. Laflamme and G. J. Milburn (2001), Nature 409, 46–52。下の脚注へ。測定がゲートを作るこの性質は、5節の測定型とよく合う。半導体のスピンでは、量子ドットに閉じ込めた電子のスピンを量子ビットにし、隣り合うドットの電子の交換相互作用で2量子ビットのゲートを作る6D. Loss and D. P. DiVincenzo (1998), Physical Review A 57, 120–126。下の脚注へ。

どの方式でも、ゲートは式 (6.1.15) の形の時間発展で、誤りはパルスの角のずれ(ユニタリの誤り)と環境との結合(第3部第1章のチャネル)の2種類に分かれる。前者は補題 6.1.8 で足し算に積み上がり、後者は誤り訂正(第3部第9章・第6部第5章)で抑える。

行列の並べ方の流儀

授業や教科書の回路は、量子ビットを上から q1,q2,…q_1,q_2,\dots と並べ、状態を ∣q1q2⋯ ⟩| q_1q_2\cdots \rangle と左から書き、テンソル積の左の因子を行列の大きい桁に取ることが多い。この章もその流儀で、CNOT(制御 q1q_1、標的 q2q_2)は式 (6.1.4) から ∣00⟩,∣01⟩,∣10⟩,∣11⟩| 00 \rangle ,| 01 \rangle ,| 10 \rangle ,| 11 \rangle の順の行列で (1000010000010010)\begin{pmatrix}1&0&0&0\\0&1&0&0\\0&0&0&1\\0&0&1&0\end{pmatrix} になる。一方、プログラムで回路を書く道具の中には、量子ビット 00 を2進数のいちばん小さい桁(右端)に置く流儀を採るものがある。同じ回路でも行列が変わるので、数値を照合するときは流儀を先に確かめる。

例題 6.1.7 CNOT の行列を2つの流儀で書く ★

オリジナル量子ビットを q0,q1q_0,q_1 とし、制御 q0q_0、標的 q1q_1 の CNOT を考える。

  1. 状態を ∣q0q1⟩| q_0q_1 \rangle と書き、q0q_0 を大きい桁に取る流儀で行列を書け。
  2. 状態を ∣q1q0⟩| q_1q_0 \rangle と書き、q0q_0 を小さい桁(右端)に取る流儀で、基底 ∣00⟩,∣01⟩,∣10⟩,∣11⟩| 00 \rangle ,| 01 \rangle ,| 10 \rangle ,| 11 \rangle(=∣q1q0⟩=| q_1q_0 \rangle)の順の行列を書け。
  3. 2つの行列が SWAP で移り合うことを確かめよ。
解答

(1) 本文の行列 (1000010000010010)\begin{pmatrix}1&0&0&0\\0&1&0&0\\0&0&0&1\\0&0&1&0\end{pmatrix} である(∣10⟩↔∣11⟩| 10 \rangle \leftrightarrow| 11 \rangle を入れ替える)。

(2) q0=1q_0=1 のとき q1q_1 を反転するので、∣q1q0⟩| q_1q_0 \rangle で ∣01⟩↔∣11⟩| 01 \rangle \leftrightarrow| 11 \rangle を入れ替え、∣00⟩| 00 \rangle と ∣10⟩| 10 \rangle は動かさない。基底の番号でいえば2番目と4番目の入れ替えで、行列は (1000000100100100)\begin{pmatrix}1&0&0&0\\0&0&0&1\\0&0&1&0\\0&1&0&0\end{pmatrix} である。

(3) 2つの流儀は、テンソル積の因子の並びを入れ替えただけなので、(2) の行列は (1) の行列を SWAP で挟んだもの SWAP⋅CNOT⋅SWAP\mathrm{SWAP}\cdot\mathrm{CNOT}\cdot\mathrm{SWAP} に等しい。SWAP は ∣01⟩↔∣10⟩| 01 \rangle \leftrightarrow| 10 \rangle の入れ替えで、(1) の「3番目と4番目の入れ替え」が (2) の「2番目と4番目の入れ替え」に移ることから確かめられる。

ほかの巻では

1 D. P. DiVincenzo (2000), Fortschritte der Physik 48, 771–783。

2 J. Koch, T. M. Yu, J. Gambetta, A. A. Houck, D. I. Schuster, J. Majer, A. Blais, M. H. Devoret, S. M. Girvin and R. J. Schoelkopf (2007), Physical Review A 76, 042319。

3 J. I. Cirac and P. Zoller (1995), Physical Review Letters 74, 4091–4094。

4 D. Jaksch, J. I. Cirac, P. Zoller, S. L. Rolston, R. Côté and M. D. Lukin (2000), Physical Review Letters 85, 2208–2211。

5 E. Knill, R. Laflamme and G. J. Milburn (2001), Nature 409, 46–52。

6 D. Loss and D. P. DiVincenzo (1998), Physical Review A 57, 120–126。

木下の勉強ステータス

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