解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第15章 §1.15.6 ★★ 回路理論の Kirchhoff の式と、この章の L・H を並べる。「LC 回路を量子化すると電荷と磁束が不確定性を持つ」の書き方と対応させる
解析力学を使わない回路理論の授業では、抵抗 R・コイル Lind・コンデンサ C を直列にした回路に電圧源 Vs(t) をつないだときの式を、Kirchhoff の電圧則から
Lindq¨+Rq˙+Cq=Vs(t)(1.15.33)
と書き、交流ならインピーダンス Z=R−iωLind+i/(ωC)(時間依存を e−iωt とする流儀)で解く。この章の言葉では、各項は次のように対応する。
| 回路 | 力学 | この章の L・H での位置 |
| 電荷 q | 座標 | 一般化座標 |
| 電流 I=q˙ | 速度 | q˙ |
| インダクタンス Lind | 質量 | 21Lindq˙2 の係数 |
| 1/C | ばね定数 | q2/(2C) の係数 |
| 電圧源 Vs(t) | 外力 | L に +Vs(t)q |
| 鎖交磁束 Φ=LindI | 運動量 | 正準運動量、{q,Φ}=1 |
| 抵抗 R | 摩擦 | L には入らない(1.15.5節) |
| 相互インダクタンス M | 質量行列の非対角成分 | Mq˙1q˙2 |
回路の教科書でエネルギー保存として書く dtd(21LindI2+2Cq2)=−RI2+VsI は、H の時間変化に摩擦と外力の仕事率を足したものである。抵抗は Rayleigh の散逸関数 F=21Rq˙2 を使って E[L]+∂F/∂q˙=0 と書く流儀もあるが、これは作用の停留ではなく、1.15.5節の判定どおり時刻を含まない H には入らない。電荷を座標にとる「閉路電流法」と節点の磁束を座標にとる「節点電圧法」の2つの解き方は、1.15.3節の2つの座標の選び方そのもので、正準変換で移り合う。
量子物理工学の授業では、LC 回路を「電荷 q^ と磁束 Φ^ を正準共役な演算子とし、[Φ^,q^]=−iℏ(または符号を逆に定義して iℏ)を課す」と書き、H^=Φ^2/(2Lind)+q^2/(2C)=ℏω0(a^†a^+21) から、電荷と磁束が不確定性関係 ΔqΔΦ≥ℏ/2 を持つ、と述べることが多い。この章の手順に当てはめると、どちらを座標と呼ぶか(したがって交換子の符号)は回路の向きの約束と正準変換 (q,Φ)↦(Φ,−q) の選択で、物理は変わらない。Kirchhoff の式を Euler–Lagrange 方程式として出す L を選んだ時点で交換子が決まり、その L は「コイルとコンデンサのエネルギーの和が H である」という物理の情報で(全微分と向きの約束を除いて)1つに決まる。
例題 1.15.11 超伝導共振器の零点の揺らぎ ★★
オリジナル共振周波数 ω0/2π=5GHz、特性インピーダンス Z=Lind/C=50Ω の LC 共振器を考える。
- (1) Lind と C を求めよ。
- (2) 基底状態での電荷と磁束の揺らぎ Δq=ℏ/(2Z), ΔΦ=ℏZ/2 を、電気素量 e と磁束量子 Φ0 を単位にして求めよ。積が ℏ/2 になることも確かめよ。
- (3) ℏω0/kB を求め、温度 20mK での熱的な占有数 nB を求めよ。
解答
(1) ω0=2π×5×109=3.142×1010s−1。Lind=Z/ω0=1.59nH、C=1/(Zω0)=0.637pF。
(2) 基底状態は調和振動子の基底状態で、Δq2=ℏ/(2mω) に質量 m=Lind を入れると Δq2=ℏ/(2Lindω0)=ℏ/(2Z)。Δq=1.055×10−34/100=1.03×10−18C=6.41e。同じく ΔΦ2=ℏLindω0/2=ℏZ/2 から ΔΦ=5.13×10−17Wb=0.0248Φ0。積は ℏ/(2Z)ℏZ/2=ℏ/2 で、Z によらない。電圧の揺らぎは Δq/C=1.61μV。
(3) ℏω0/kB=0.240K。20mK では ℏω0/(kBT)=12.0 で nB=1/(e12.0−1)=6.2×10−6。希釈冷凍機の温度で共振器はほぼ基底状態にあり、揺らぎは (2) の零点の値で決まる。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com