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出てくるもの(2):剛体と重力の中のこま

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第1章 L=T-V の例題
目次
  1. Euler 角と角速度
  2. 重力の中の対称こま
  3. 定常歳差
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第1章 §2.1.4 ★★ 対称なこまでは Euler 角の2つが循環座標になり、残る傾きの角の有効ポテンシャルから歳差運動が出る

Euler 角と角速度

1点を固定した剛体の向きは3つの角で決まる。この本では Euler 角 (φ,θ,ψ)(\varphi,\theta,\psi) を、空間に固定した zz 軸のまわりに φ\varphi、次に回された xx 軸のまわりに θ\theta、最後に剛体の対称軸(剛体に固定した第3軸)のまわりに ψ\psi だけ回す順で定める(zz–xx–zz の順)。θ\theta は空間の zz 軸と剛体の第3軸のなす角、φ\varphi は第3軸が zz 軸のまわりに回った角(歳差の角)、ψ\psi は剛体が自分の軸のまわりに回った角(自転の角)である。回転行列 R=Rz(φ)Rx(θ)Rz(ψ)R=R_z(\varphi)R_x(\theta)R_z(\psi) から剛体に固定した軸の方向の角速度の成分を計算すると(RTR˙R^{\mathsf T}\dot R の反対称成分を読む)

ω1=φ˙sin⁡θsin⁡ψ+θ˙cos⁡ψ,ω2=φ˙sin⁡θcos⁡ψ−θ˙sin⁡ψ,ω3=φ˙cos⁡θ+ψ˙(2.1.13)\omega_1=\dot\varphi\sin\theta\sin\psi+\dot\theta\cos\psi,\quad \omega_2=\dot\varphi\sin\theta\cos\psi-\dot\theta\sin\psi,\quad \omega_3=\dot\varphi\cos\theta+\dot\psi\tag{2.1.13}

となる。第3軸のまわりに軸対称な剛体(対称こま、I1=I2I_1=I_2)では、回転の運動エネルギーに入るのは ω12+ω22=θ˙2+φ˙2sin⁡2θ\omega_1^2+\omega_2^2=\dot\theta^2+\dot\varphi^2\sin^2\theta と ω3\omega_3 だけで、ψ\psi が消える。

重力の中の対称こま

固定点 O から重心までの距離を ℓ\ell、O のまわりの主慣性モーメントを I1=I2I_1=I_2, I3I_3 とし、重力の中に置く。重心の高さは ℓcos⁡θ\ell\cos\theta なので

L=I12(θ˙2+φ˙2sin⁡2θ)+I32(ψ˙+φ˙cos⁡θ)2−Mgℓcos⁡θ(2.1.14)L=\frac{I_1}{2}\bigl(\dot\theta^2+\dot\varphi^2\sin^2\theta\bigr)+\frac{I_3}{2}\bigl(\dot\psi+\dot\varphi\cos\theta\bigr)^2-Mg\ell\cos\theta\tag{2.1.14}

である。LL は φ\varphi と ψ\psi を含まないので、2つが循環座標で(手順1)

pψ=I3(ψ˙+φ˙cos⁡θ)=I3ω3,pφ=I1φ˙sin⁡2θ+pψcos⁡θ(2.1.15)p_\psi=I_3\bigl(\dot\psi+\dot\varphi\cos\theta\bigr)=I_3\omega_3,\qquad p_\varphi=I_1\dot\varphi\sin^2\theta+p_\psi\cos\theta\tag{2.1.15}

が保存する。pψp_\psi は対称軸のまわりの角運動量、pφp_\varphi は空間の zz 軸のまわりの角運動量で、どちらも対応する回転対称性(こまの軸対称性と、重力の向きのまわりの回転)の Noether の保存量である。LL は時刻を含まず、TT は速度の2次の同次式なので E=T+VE=T+V も保存する(手順2)。

φ˙=(pφ−pψcos⁡θ)/(I1sin⁡2θ)\dot\varphi=(p_\varphi-p_\psi\cos\theta)/(I_1\sin^2\theta) と ω3=pψ/I3\omega_3=p_\psi/I_3 を EE に入れると、θ\theta だけの式

E−pψ22I3=I12θ˙2+Ueff(θ),Ueff(θ)=(pφ−pψcos⁡θ)22I1sin⁡2θ+Mgℓcos⁡θ(2.1.16)E-\frac{p_\psi^2}{2I_3}=\frac{I_1}{2}\dot\theta^2+U_{\mathrm{eff}}(\theta),\qquad U_{\mathrm{eff}}(\theta)=\frac{(p_\varphi-p_\psi\cos\theta)^2}{2I_1\sin^2\theta}+Mg\ell\cos\theta\tag{2.1.16}

になる(手順3。EE は HH と同じ量で、保存量を運動量のまま固定している)。θ\theta は UeffU_{\mathrm{eff}} の谷の中を往復し、その往復を章動と呼ぶ。

定常歳差

θ\theta が一定の値 θ0\theta_0 のまま、対称軸が一定の角速度 φ˙=Ω\dot\varphi=\Omega で zz 軸のまわりを回る運動を定常歳差と呼ぶ。θ\theta の Euler–Lagrange 方程式 I1θ¨=∂L/∂θI_1\ddot\theta=\partial L/\partial\theta に θ¨=0\ddot\theta=0, θ˙=0\dot\theta=0, φ˙=Ω\dot\varphi=\Omega, ω3\omega_3 一定を入れ、sin⁡θ0≠0\sin\theta_0\neq0 で割ると

I1cos⁡θ0 Ω2−I3ω3 Ω+Mgℓ=0(2.1.17)I_1\cos\theta_0\,\Omega^2-I_3\omega_3\,\Omega+Mg\ell=0\tag{2.1.17}

を得る。Ω\Omega についての2次方程式で、実数の解があるのは判別式が正、つまり I3ω3>2I1Mgℓcos⁡θ0I_3\omega_3>2\sqrt{I_1Mg\ell\cos\theta_0} のとき(θ0<π/2\theta_0<\pi/2)に限る。自転が遅いこまは、どの角速度で歳差運動させても重力のトルクを支えられずに倒れる。2つの解は

Ω±=I3ω32I1cos⁡θ0(1±1−ϵ),ϵ=4I1Mgℓcos⁡θ0(I3ω3)2(2.1.18)\Omega_\pm=\frac{I_3\omega_3}{2I_1\cos\theta_0}\Bigl(1\pm\sqrt{1-\epsilon}\Bigr),\qquad \epsilon=\frac{4I_1Mg\ell\cos\theta_0}{(I_3\omega_3)^2}\tag{2.1.18}

で、自転が速い(ϵ≪1\epsilon\ll1)とき遅い方は

Ω−=MgℓI3ω3(1+ϵ4+O(ϵ2))(2.1.19)\Omega_-=\frac{Mg\ell}{I_3\omega_3}\Bigl(1+\frac\epsilon4+\mathcal{O}(\epsilon^2)\Bigr)\tag{2.1.19}

となる。主要項 Ω−≈Mgℓ/(I3ω3)\Omega_-\approx Mg\ell/(I_3\omega_3) は、「重力のトルク Mgℓsin⁡θ0Mg\ell\sin\theta_0 が、大きさ I3ω3I_3\omega_3 の角運動量の水平成分 I3ω3sin⁡θ0I_3\omega_3\sin\theta_0 を回す」という初等的な説明の式と同じである。その説明は角運動量を対称軸の向きの I3ω3I_3\omega_3 だけで近似しており、歳差運動そのものが持つ角運動量 I1ΩI_1\Omega を落としている。式 (2.1.19) の補正 ϵ/4\epsilon/4 はその落としたぶんにあたる。

例題 2.1.4 こまの歳差の角速度 ★★

オリジナル質量 M=0.1 kgM=0.1\,\mathrm{kg}、固定点から重心まで ℓ=0.03 m\ell=0.03\,\mathrm m、I3=2.0×10−5 kg m2I_3=2.0\times10^{-5}\,\mathrm{kg\,m^2}、固定点のまわりの I1=1.2×10−4 kg m2I_1=1.2\times10^{-4}\,\mathrm{kg\,m^2} のこまを、鉛直から θ0=30∘\theta_0=30^\circ 傾けて毎秒 5050 回転(ω3=314.2 s−1\omega_3=314.2\,\mathrm{s^{-1}})させる。g=9.81 m s−2g=9.81\,\mathrm{m\,s^{-2}} とする。

  1. (1) 定常歳差の2つの角速度を式 (2.1.18) から求め、近似式 Mgℓ/(I3ω3)Mg\ell/(I_3\omega_3) と比べよ。ϵ\epsilon の値と、式 (2.1.19) の補正まで入れた値も求めよ。
  2. (2) この傾きで定常歳差ができる最小の自転の速さを求めよ。
  3. (3) 近似式の Ω\Omega を初めの φ˙\dot\varphi に選び θ˙=0\dot\theta=0 で放すと、どんな運動になるか。
解答

(1) Mgℓ=0.02943 N mMg\ell=0.02943\,\mathrm{N\,m}、I3ω3=6.283×10−3 kg m2 s−1I_3\omega_3=6.283\times10^{-3}\,\mathrm{kg\,m^2\,s^{-1}}、I1cos⁡θ0=1.039×10−4 kg m2I_1\cos\theta_0=1.039\times10^{-4}\,\mathrm{kg\,m^2}。ϵ=4×1.2×10−4×0.02943×0.866(6.283×10−3)2=0.310\epsilon=\dfrac{4\times1.2\times10^{-4}\times0.02943\times0.866}{(6.283\times10^{-3})^2}=0.310 で、

Ω−=6.283×10−32×1.039×10−4(1−0.690)=5.12 s−1,Ω+=55.3 s−1.\Omega_-=\frac{6.283\times10^{-3}}{2\times1.039\times10^{-4}}\bigl(1-\sqrt{0.690}\bigr)=5.12\,\mathrm{s^{-1}},\qquad \Omega_+=55.3\,\mathrm{s^{-1}}.

近似式は 0.02943/6.283×10−3=4.68 s−10.02943/6.283\times10^{-3}=4.68\,\mathrm{s^{-1}} で、遅い方の厳密値より 8% 小さい。補正まで入れると 4.68×(1+0.310/4)=5.05 s−14.68\times(1+0.310/4)=5.05\,\mathrm{s^{-1}} で、差は 1% まで縮む。速い方の Ω+\Omega_+ は近似式では出てこない解で、ϵ→0\epsilon\to0 で I3ω3/(I1cos⁡θ0)I_3\omega_3/(I_1\cos\theta_0) に近づき、歳差運動の角運動量 I1ΩI_1\Omega がトルクと釣り合う側の解である。

(2) 判別式が 00 になる ω3=2I1Mgℓcos⁡θ0I3=21.2×10−4×0.02943×0.8662.0×10−5=175 s−1\omega_3=\dfrac{2\sqrt{I_1Mg\ell\cos\theta_0}}{I_3}=\dfrac{2\sqrt{1.2\times10^{-4}\times0.02943\times0.866}}{2.0\times10^{-5}}=175\,\mathrm{s^{-1}}、毎秒 27.827.8 回転である。

(3) φ˙\dot\varphi が定常歳差の値 5.12 s−15.12\,\mathrm{s^{-1}} からずれているので、θ0\theta_0 は UeffU_{\mathrm{eff}} の極小からずれた点になり、θ\theta は谷の中で往復する(章動)。運動方程式を数値積分すると、θ\theta は 30∘30^\circ を端として 0.57∘0.57^\circ ほどの幅で振れる(scripts/verify_ch2-01.py)。初めの φ˙\dot\varphi を厳密な Ω−\Omega_- に選べば、θ\theta は 10−6 rad10^{-6}\,\mathrm{rad} も動かない。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの ϵ=4I1Mgℓcos⁡θ0/(I3ω3)2→0\epsilon=4I_1Mg\ell\cos\theta_0/(I_3\omega_3)^2\to0(自転が速い) | 証明 証明済み(厳密な根 (2.1.18) を ϵ\epsilon で Taylor 展開した級数で、∣ϵ∣<1\lvert \epsilon\rvert <1 で収束する正則摂動) | 行き先 近似の数理 第7章

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