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出てくるもの(1):中心力と Runge–Lenz ベクトル

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第1章 L=T-V の例題
目次
  1. 平面運動と有効ポテンシャル
  2. Runge–Lenz ベクトル
  3. 閉じない軌道
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第1章 §2.1.3 ★★★ 回転対称性から平面運動と有効ポテンシャルが出る。Kepler 問題だけはもう1つのベクトルの保存量があり、軌道が閉じる

平面運動と有効ポテンシャル

2体の相対運動 L=mr2r˙ 2−V(r)L=\frac{m_{\mathrm r}}2\dot{\bm{r}}^{\,2}-V(r) は、原点のまわりのどの軸の回転でも変わらないので、角運動量 L=r×p\bm{L}=\bm{r}\times\bm{p}(p=mrr˙\bm{p}=m_{\mathrm r}\dot{\bm{r}})の3成分がすべて保存する。r\bm{r} はいつも一定の L\bm{L} に垂直なので、運動は L\bm{L} に垂直な平面の中に限られる。その平面に極座標 (r,φ)(r,\varphi) をとると

L=mr2(r˙2+r2φ˙2)−V(r),pφ=mrr2φ˙=∣L∣≕ℓφL=\frac{m_{\mathrm r}}2\bigl(\dot r^2+r^2\dot\varphi^2\bigr)-V(r),\qquad p_\varphi=m_{\mathrm r}r^2\dot\varphi=\lvert \bm{L}\rvert \eqqcolon\ell_\varphi

で、φ\varphi が循環座標になる(手順1)。ここで角運動量の大きさを ℓφ\ell_\varphi と書いた(長さの ℓ\ell とは別の記号として、この節と次の例題だけで使う)。HH の中で pφ=ℓφp_\varphi=\ell_\varphi を固定すると(手順3)

H=pr22mr+Ueff(r),Ueff(r)=ℓφ22mrr2+V(r)(2.1.9)H=\frac{p_r^2}{2m_{\mathrm r}}+U_{\mathrm{eff}}(r),\qquad U_{\mathrm{eff}}(r)=\frac{\ell_\varphi^2}{2m_{\mathrm r}r^2}+V(r)\tag{2.1.9}

になる。有効ポテンシャル UeffU_{\mathrm{eff}} の図と、円軌道からわずかにずれたときの動径振動の角振動数は第1部第8章で調べた。そこで、Kepler 問題 V=−α/rV=-\alpha/r(α>0\alpha>0)では動径振動と公転の角振動数が等しく(ωr=ωφ\omega_r=\omega_\varphi)、円に近い軌道が閉じることを示した。第1部第13章では Hamilton–Jacobi 方程式から軌道が円錐曲線になることを導いた。円に近くない軌道も含めて Kepler 軌道が閉じる理由は、次に述べる保存量によって示すことができる。

Runge–Lenz ベクトル

Kepler 問題には、角運動量とエネルギーのほかに、次のベクトルの保存量がある。

命題 2.1.2(Runge–Lenz ベクトルの保存 ★★★)

V=−α/rV=-\alpha/r のとき、

ARL=p×L−mrα rr(2.1.10)\bm{A}_{\mathrm{RL}}=\bm{p}\times\bm{L}-m_{\mathrm r}\alpha\,\frac{\bm{r}}{r}\tag{2.1.10}

は運動の間ずっと一定である。さらに、離心率を ee として ∣ARL∣2=mr2α2+2mrE ℓφ2=(mrαe)2\lvert \bm{A}_{\mathrm{RL}}\rvert ^2=m_{\mathrm r}^2\alpha^2+2m_{\mathrm r}E\,\ell_\varphi^2=(m_{\mathrm r}\alpha e)^2 が成り立ち、ARL\bm{A}_{\mathrm{RL}} は原点から近点(最も近づく点)へ向く。

証明

運動方程式は p˙=−αr/r3\dot{\bm{p}}=-\alpha\bm{r}/r^3 で、L\bm{L} は一定である。第1項の時間微分は

ddt(p×L)=−αr3r×(r×mrr˙)=−mrαr3[(r⋅r˙)r−r2r˙].\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} t}(\bm{p}\times\bm{L})=-\frac{\alpha}{r^3}\bm{r}\times(\bm{r}\times m_{\mathrm r}\dot{\bm{r}})=-\frac{m_{\mathrm r}\alpha}{r^3}\bigl[(\bm{r}\cdot\dot{\bm{r}})\bm{r}-r^2\dot{\bm{r}}\bigr].

第2項は ddtrr=r˙r−(r⋅r˙)rr3\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} t}\frac{\bm{r}}{r}=\frac{\dot{\bm{r}}}{r}-\frac{(\bm{r}\cdot\dot{\bm{r}})\bm{r}}{r^3} なので、mrαm_{\mathrm r}\alpha を掛けたものが第1項の微分と等しく、差は 00 になる。

大きさは、p⊥L\bm{p}\perp\bm{L} から ∣p×L∣2=p2ℓφ2\lvert \bm{p}\times\bm{L}\rvert ^2=p^2\ell_\varphi^2、r⋅(p×L)=L⋅(r×p)=ℓφ2\bm{r}\cdot(\bm{p}\times\bm{L})=\bm{L}\cdot(\bm{r}\times\bm{p})=\ell_\varphi^2 を使って

∣ARL∣2=p2ℓφ2−2mrαrℓφ2+mr2α2=mr2α2+2mrℓφ2(p22mr−αr).\lvert \bm{A}_{\mathrm{RL}}\rvert ^2=p^2\ell_\varphi^2-\frac{2m_{\mathrm r}\alpha}{r}\ell_\varphi^2+m_{\mathrm r}^2\alpha^2=m_{\mathrm r}^2\alpha^2+2m_{\mathrm r}\ell_\varphi^2\Bigl(\frac{p^2}{2m_{\mathrm r}}-\frac\alpha r\Bigr).

括弧の中がエネルギー EE である。向きについては、ARL\bm{A}_{\mathrm{RL}} と r\bm{r} のなす角を φ\varphi とすると

ARL⋅r=ℓφ2−mrαr⟹r=ℓφ2/(mrα)1+ecos⁡φ,e=∣ARL∣mrα(2.1.11)\bm{A}_{\mathrm{RL}}\cdot\bm{r}=\ell_\varphi^2-m_{\mathrm r}\alpha r\quad\Longrightarrow\quad r=\frac{\ell_\varphi^2/(m_{\mathrm r}\alpha)}{1+e\cos\varphi},\qquad e=\frac{\lvert \bm{A}_{\mathrm{RL}}\rvert }{m_{\mathrm r}\alpha}\tag{2.1.11}

で、rr が最小になるのは φ=0\varphi=0、つまり r\bm{r} が ARL\bm{A}_{\mathrm{RL}} の向きを向いたときである。

式 (2.1.11) は、微分方程式を1度も積分せずに、保存量の内積だけで軌道の形(円錐曲線)を出している。近点の向きを指すベクトルが一定なので、近点は空間に固定され、軌道は1周ごとに同じ所に戻る。E<0E<0 なら e<1e<1 で楕円になり、軌道は閉じる。

ARL\bm{A}_{\mathrm{RL}} は p\bm{p} について2次の式で、第1部第10章の注意の箱で予告した「点変換では見えない保存量」の1つである。角運動量 L\bm{L} が空間の回転の生成子であるのに対し、ARL\bm{A}_{\mathrm{RL}} を生成子として相空間を動かすと、座標と運動量が混ざる変換になり、同じエネルギーで離心率の違う軌道どうしを移り合う。この変換と回転を合わせると、束縛状態(E<0E<0)では4次元の回転の対称性になる。量子力学ではこの対称性のために水素原子の準位が角運動量の量子数 ll によらず縮退する(第4部第5章)。

閉じない軌道

VV が −α/r-\alpha/r から少しでもずれると、ARL\bm{A}_{\mathrm{RL}} はもう保存せず、近点は1周ごとに回る。ずれが δ/r2\delta/r^2 の形なら厳密に計算することができる。V=−α/r+δ/r2V=-\alpha/r+\delta/r^2 とすると、有効ポテンシャルは

Ueff=ℓφ2+2mrδ2mrr2−αr=ν2ℓφ22mrr2−αr,ν=1+2mrδℓφ2U_{\mathrm{eff}}=\frac{\ell_\varphi^2+2m_{\mathrm r}\delta}{2m_{\mathrm r}r^2}-\frac\alpha r=\frac{\nu^2\ell_\varphi^2}{2m_{\mathrm r}r^2}-\frac\alpha r,\qquad \nu=\sqrt{1+\frac{2m_{\mathrm r}\delta}{\ell_\varphi^2}}

で、角運動量が νℓφ\nu\ell_\varphi の Kepler 問題と同じ形になる。したがって r(t)r(t) は角運動量 νℓφ\nu\ell_\varphi の Kepler 軌道と同じ時間変化をする。一方で角度の進み方は φ˙=ℓφ/(mrr2)\dot\varphi=\ell_\varphi/(m_{\mathrm r}r^2) で、角運動量 νℓφ\nu\ell_\varphi の Kepler 軌道の 1/ν1/\nu 倍である。Kepler 軌道は近点から次の近点まで角度 2π2\pi 進むので、この軌道では 2π/ν2\pi/\nu 進み、1周ごとに近点が

Δφperi=2π(1ν−1)(2.1.12)\Delta\varphi_{\mathrm{peri}}=2\pi\Bigl(\frac1\nu-1\Bigr)\tag{2.1.12}

だけ回る(δ<0\delta<0 なら ν<1\nu<1 で、公転の向きに進む)。軌道の式は r=ν2ℓφ2/(mrα)1+e′cos⁡νφr=\dfrac{\nu^2\ell_\varphi^2/(m_{\mathrm r}\alpha)}{1+e'\cos\nu\varphi} になる。

どの束縛軌道も閉じる中心力は、V∝−1/rV\propto-1/r と V∝r2V\propto r^2(等方的な調和振動子)の2つしかない。これを Bertrand の定理と呼ぶ(J. Bertrand (1873), Comptes Rendus de l'Académie des Sciences 77, 849)。調和振動子では軌道は原点を中心とする楕円で、近点から次の近点までの角度が π\pi になる(動径の振動が公転の2倍の速さ)。一般相対論の補正は Newton の重力に 1/r31/r^3 に比例する項を足す形になり、水星の近日点を1世紀に 43′′43'' 進める(第2部第16章)。

例題 2.1.3 Runge–Lenz ベクトルで軌道を読む ★★★

オリジナルmr=α=1m_{\mathrm r}=\alpha=1 とする単位で、V=−1/rV=-1/r の中を粒子が動く。時刻 00 に r=(1,0,0)\bm{r}=(1,0,0)、r˙=(0,1.2,0)\dot{\bm{r}}=(0,1.2,0) だった。

  1. (1) EE, L\bm{L}, ARL\bm{A}_{\mathrm{RL}} を求め、離心率と近点・遠点の距離を答えよ。
  2. (2) VV に δ/r2\delta/r^2(δ=−0.05\delta=-0.05)を足すと、近点は1周ごとにどれだけ回るか。また遠点の距離はいくらか。
解答

(1) E=12⋅1.22−1=−0.28E=\frac12\cdot1.2^2-1=-0.28。L=r×p=(0,0,1.2)\bm{L}=\bm{r}\times\bm{p}=(0,0,1.2) で ℓφ=1.2\ell_\varphi=1.2。p×L=(pyLz−pzLy, … )=(1.44,0,0)\bm{p}\times\bm{L}=(p_yL_z-p_zL_y,\ \dots)=(1.44,0,0) なので ARL=(1.44,0,0)−(1,0,0)=(0.44,0,0)\bm{A}_{\mathrm{RL}}=(1.44,0,0)-(1,0,0)=(0.44,0,0) で、e=0.44e=0.44。命題の式で確かめると ∣ARL∣2=1+2(−0.28)(1.44)=0.1936=0.442\lvert \bm{A}_{\mathrm{RL}}\rvert ^2=1+2(-0.28)(1.44)=0.1936=0.44^2 で一致する。ARL\bm{A}_{\mathrm{RL}} は +x+x 向きで、出発点 (1,0,0)(1,0,0) がちょうど近点である。式 (2.1.11) から近点の距離は 1.441.44=1\frac{1.44}{1.44}=1、遠点の距離は 1.440.56=2.571\frac{1.44}{0.56}=2.571。

(2) ν=1+2(−0.05)/1.44=0.93056=0.9647\nu=\sqrt{1+2(-0.05)/1.44}=\sqrt{0.93056}=0.9647 で、式 (2.1.12) から1周の近点の進みは 2π(1/0.9647−1)=0.230 rad=13.2∘2\pi(1/0.9647-1)=0.230\,\mathrm{rad}=13.2^\circ。軌道の式で出発点が近点(φ=0\varphi=0 で r=1r=1)になるのは 1+e′=ν2ℓφ2=1.341+e'=\nu^2\ell_\varphi^2=1.34、つまり e′=0.34e'=0.34 のときで、遠点は 1.34/0.66=2.0301.34/0.66=2.030 である。引力の補正(δ<0\delta<0)は遠心力の障壁を弱めるので、遠点は Kepler 軌道の 2.5712.571 より内側に来る。運動方程式を数値積分すると、最初に近点に戻る向きは 0.230 rad0.230\,\mathrm{rad}、最大距離は 2.0302.030 で、どちらも一致する(scripts/verify_ch2-01.py)。

図

図 2.1.2 例題 2.1.3 の軌道。実線は V=−1/rV=-1/r の楕円(e=0.44e=0.44)で、近点は +x+x 軸に固定され、Runge–Lenz ベクトルは (0.44,0)(0.44,0) のまま動かない。点線は δ/r2\delta/r^2 を足した軌道の3周分(式 (2.1.11) の補正版を描いた)で、近点が1周ごとに 13.2∘13.2^\circ ずつ回る。青い矢印は各周の近点の向き(長さ 0.440.44 にそろえた)

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