tecktom.com

球対称の真空解を Rμν=0R_{\mu\nu}=0 から解く

2026年10月15日14分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第16章 Schwarzschild 解と太陽系の検証
目次
  1. この章で選ぶもの
  2. 球対称で静的な計量の形
  3. Christoffel 記号と Ricci テンソル
  4. 2回の積分
  5. 積分定数を Newton 極限で決める
  6. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第16章 §2.16.1 ★★★ 球対称の仮定で未知関数を2つに減らし、Ricci テンソルの3成分から Schwarzschild 計量を出す。積分定数は Newton 極限で決める

第2部第15章では、重力場そのものの作用として Einstein–Hilbert 作用を選び、物質の作用と合わせて変分すると Einstein 方程式Gμν−Λgμν=8πGc4TμνG_{\mu\nu}-\Lambda g_{\mu\nu}=\frac{8\pi G}{c^4}T_{\mu\nu} が出ることを示した。この章では、その方程式を初めて具体的に解く。選ぶ状況は「物質が無く(Tμν=0T_{\mu\nu}=0)、球対称で、宇宙項を無視できる」領域、つまり太陽の外側の空間である。このとき方程式は Rμν=0R_{\mu\nu}=0 という10本の偏微分方程式になるが、球対称を課すと未知関数は2つに減り、常微分方程式を2回積分するだけで Schwarzschild 計量

ds2=(1−rsr)c2dt2−dr21−rs/r−r2(dθ2+sin⁡2θ dφ2),rs=2GMc2\mathrm{d} s^2=\Bigl(1-\frac{r_{\mathrm s}}{r}\Bigr)c^2\mathrm{d} t^2-\frac{\mathrm{d} r^2}{1-r_{\mathrm s}/r}-r^2(\mathrm{d}\theta^2+\sin^2\theta\,\mathrm{d}\varphi^2),\qquad r_{\mathrm s}=\frac{2GM}{c^2}

が出る。積分定数 rsr_{\mathrm s} は Newton 極限との比較で決まる。さらに Birkhoff の定理により、球対称でありさえすれば、星が脈動していても外側の計量はこれ以外にない。

計量が決まれば、あとは第2部第12章の手順そのものである。粒子は Lagrangian L=12gμνx˙μx˙νL=\frac12g_{\mu\nu}\dot x^\mu\dot x^\nu を選んで動き、計量が tt と φ\varphi によらないことから、第1部第10章の Noether の定理でエネルギーと角運動量の2つの保存量が出る。これを使って t˙\dot t と φ˙\dot\varphi を消すと、動径方向の運動は第2部第1章の Kepler 問題とまったく同じ形の「1次元の運動+有効ポテンシャル」になり、違いは有効ポテンシャルに 1/r31/r^3 の項が1つ足されることだけである。この1項から、水星の近日点が 1 世紀に 43′′43'' 進むことが出る。光(質量 0)の場合には同じ項が光の進路を曲げ、太陽の縁をかすめる星の光は 1.75′′1.75'' 曲がる。光の曲がりは、第2部第10章の Fermat の原理を「屈折率 n=1+2GM/(c2r)n=1+2GM/(c^2r) の媒質」に当てても出る。同じ屈折率からは、光が太陽の近くを通ると到着が遅れる Shapiro 遅延と、遠くの天体の像が複数に分かれる重力レンズも出る。

観測値は原論文の値を引き、計算した数は scripts/verify_ch2-16.py で検算した。この章を通して計量の符号は (+,−,−,−)(+,-,-,-)、上下に1回ずつ現れるギリシャ添字について和をとり、x0=ctx^0=ct とする。

この章で選ぶもの

第2部第15章の Einstein 方程式で、物質の無い領域では Tμν=0T_{\mu\nu}=0 である。宇宙項は太陽系の大きさでは無視できる(Λ\Lambda を 0 とおく。宇宙論の値 Λ∼10−52 m−2\Lambda\sim10^{-52}\,\mathrm{m^{-2}} に太陽系の大きさ 1013 m10^{13}\,\mathrm m の2乗を掛けても 10−2610^{-26} の程度で、rs/r∼10−8r_{\mathrm s}/r\sim10^{-8} と比べて問題にならない)。このとき方程式は Gμν=Rμν−12gμνR=0G_{\mu\nu}=R_{\mu\nu}-\frac12g_{\mu\nu}R=0 となる。両辺に gμνg^{\mu\nu} を掛けて縮約すると、4次元では gμνgμν=4g^{\mu\nu}g_{\mu\nu}=4 なので R−2R=−R=0R-2R=-R=0、つまり R=0R=0 であり、それを戻すと

Rμν=0(2.16.1)R_{\mu\nu}=0\tag{2.16.1}

を得る。真空の Einstein 方程式は Ricci テンソルが 0 という条件と同じである。Riemann テンソルまで 0 である必要はない。Riemann テンソルの20個の独立成分のうち、Ricci テンソルが決めるのは10個だけで、残りの10個(Weyl テンソル)は真空でも 0 でなくてよい。真空中の潮汐力(第2部第14章)は、その残りの部分で表される。

球対称で静的な計量の形

空間が球対称であれば、計量は角度の部分を r2(dθ2+sin⁡2θ dφ2)r^2(\mathrm{d}\theta^2+\sin^2\theta\,\mathrm{d}\varphi^2) の形に書ける。ここで rr は「その球面の面積が 4πr24\pi r^2 になる」ように定めた動径座標で、中心からの距離ではない(中心からの距離は grrg_{rr} を積分して初めて決まる)。さらに計量が時間によらず、t→−tt\to-t で変わらない(静的)と仮定すると、残る自由度は g00g_{00} と grrg_{rr} の2つの関数だけになる。どちらも符号が決まっているので、指数関数で書いておくと計算が見やすい。

ds2=e2α(r)(dx0)2−e2β(r)dr2−r2(dθ2+sin⁡2θ dφ2).(2.16.2)\mathrm{d} s^2=\mathrm{e}^{2\alpha(r)}(\mathrm{d} x^0)^2-\mathrm{e}^{2\beta(r)}\mathrm{d} r^2-r^2(\mathrm{d}\theta^2+\sin^2\theta\,\mathrm{d}\varphi^2).\tag{2.16.2}

静的という仮定はあとで外す(Birkhoff の定理)。

Christoffel 記号と Ricci テンソル

記法の正本どおり Γρμν=12gρσ(∂μgσν+∂νgσμ−∂σgμν)\Gamma^\rho{}_{\mu\nu}=\frac12g^{\rho\sigma}(\partial_\mu g_{\sigma\nu}+\partial_\nu g_{\sigma\mu}-\partial_\sigma g_{\mu\nu}) を計算する。計量が対角なので、gρρ=1/gρρg^{\rho\rho}=1/g_{\rho\rho} を使えば1成分ずつ求まる。0 でないものは(下の2つの添字の入れ替えを除いて)次の9個である。′' は rr での微分を表す。

Γ00r=α′,Γr00=e2(α−β)α′,Γrrr=β′,Γrθθ=−re−2β,Γrφφ=−re−2βsin⁡2θ,Γθrθ=Γφrφ=1r,Γθφφ=−sin⁡θcos⁡θ,Γφθφ=cos⁡θsin⁡θ.(2.16.3)\begin{gathered} \Gamma^0{}_{0r}=\alpha',\qquad \Gamma^r{}_{00}=\mathrm{e}^{2(\alpha-\beta)}\alpha',\qquad \Gamma^r{}_{rr}=\beta',\\ \Gamma^r{}_{\theta\theta}=-r\mathrm{e}^{-2\beta},\qquad \Gamma^r{}_{\varphi\varphi}=-r\mathrm{e}^{-2\beta}\sin^2\theta,\qquad \Gamma^\theta{}_{r\theta}=\Gamma^\varphi{}_{r\varphi}=\frac1r,\\ \Gamma^\theta{}_{\varphi\varphi}=-\sin\theta\cos\theta,\qquad \Gamma^\varphi{}_{\theta\varphi}=\frac{\cos\theta}{\sin\theta}. \end{gathered}\tag{2.16.3}

たとえば Γrθθ=12grr(−∂rgθθ)=12(−e−2β)(2r)\Gamma^r{}_{\theta\theta}=\frac12g^{rr}(-\partial_rg_{\theta\theta})=\frac12(-\mathrm{e}^{-2\beta})(2r) である。これを記法の正本の Riemann テンソルの式に入れ、Rμν=RρμρνR_{\mu\nu}=R^\rho{}_{\mu\rho\nu} と縮約すると、0 でない成分は

R00=e2(α−β)(α′′+α′2−α′β′+2α′r),Rrr=−α′′−α′2+α′β′+2β′r,Rθθ=e−2β[r(β′−α′)−1]+1,Rφφ=sin⁡2θ Rθθ\begin{align*}R_{00}&=\mathrm{e}^{2(\alpha-\beta)}\Bigl(\alpha''+\alpha'^2-\alpha'\beta'+\frac{2\alpha'}{r}\Bigr),\tag{2.16.4}\\R_{rr}&=-\alpha''-\alpha'^2+\alpha'\beta'+\frac{2\beta'}{r},\tag{2.16.5}\\R_{\theta\theta}&=\mathrm{e}^{-2\beta}\bigl[r(\beta'-\alpha')-1\bigr]+1,\qquad R_{\varphi\varphi}=\sin^2\theta\,R_{\theta\theta}\tag{2.16.6}\end{align*}

の4つになる(sympy で検算した)。第2部第11章の対応表のとおり、Christoffel 記号と Ricci テンソルは計量の符号の流儀によらないので、(−,+,+,+)(-,+,+,+) の教科書と成分まで同じ式になる。

2回の積分

3つの式を 0 とおく。まず e2(β−α)R00+Rrr\mathrm{e}^{2(\beta-\alpha)}R_{00}+R_{rr} をとると、2階微分と α′2\alpha'^2・α′β′\alpha'\beta' の項が打ち消し合い、

e2(β−α)R00+Rrr=2r(α′+β′)=0\mathrm{e}^{2(\beta-\alpha)}R_{00}+R_{rr}=\frac2r(\alpha'+\beta')=0

が残る。よって α+β\alpha+\beta は定数である。無限遠で計量が平坦な ημν\eta_{\mu\nu} に近づく(α,β→0\alpha,\beta\to0)と要請すれば、その定数は 0 で、

α(r)=−β(r).(2.16.7)\alpha(r)=-\beta(r).\tag{2.16.7}

これを Rθθ=0R_{\theta\theta}=0 に入れると、β′−α′=2β′\beta'-\alpha'=2\beta' なので e−2β(2rβ′−1)+1=0\mathrm{e}^{-2\beta}(2r\beta'-1)+1=0 となる。整理すると

e−2β(1−2rβ′)=1⟺ddr(re−2β)=1\mathrm{e}^{-2\beta}(1-2r\beta')=1\quad\Longleftrightarrow\quad\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} r}\bigl(r\mathrm{e}^{-2\beta}\bigr)=1

であり、1回積分して re−2β=r−rsr\mathrm{e}^{-2\beta}=r-r_{\mathrm s}(rsr_{\mathrm s} は積分定数)、すなわち

e2α=e−2β=1−rsr(2.16.8)\mathrm{e}^{2\alpha}=\mathrm{e}^{-2\beta}=1-\frac{r_{\mathrm s}}{r}\tag{2.16.8}

を得る。この解が R00=Rrr=0R_{00}=R_{rr}=0 も満たすことは、代入すれば確かめられる(R00R_{00} と RrrR_{rr} は上の組み合わせと RθθR_{\theta\theta} の微分から従う。検算では3成分とも 0 になることを sympy で確かめた)。

積分定数を Newton 極限で決める

rsr_{\mathrm s} を決めるのは、遠くで Newton の重力に戻るという要請である。記法の正本の弱い場の式によれば、ゆっくり動く粒子の運動がNewton のポテンシャル Φ\Phi の中の運動 x¨=−∇Φ\ddot{\bm{x}}=-\nabla\Phi になるのは g00≈1+2Φ/c2g_{00}\approx1+2\Phi/c^2 のときである(第2部第12章)。質量 MM の球の外では Φ=−GM/r\Phi=-GM/r なので、g00=1−rs/rg_{00}=1-r_{\mathrm s}/r と比べて

rs=2GMc2(2.16.9)r_{\mathrm s}=\frac{2GM}{c^2}\tag{2.16.9}

と決まる。まとめると次の定理になる。

定理 2.16.1(Schwarzschild 計量 ★★★)

球対称で静的な真空の Einstein 方程式 Rμν=0R_{\mu\nu}=0 の解で、無限遠で平坦になり、遠方で質量 MM の Newton ポテンシャルに一致するものは

ds2=(1−rsr)c2dt2−dr21−rs/r−r2(dθ2+sin⁡2θ dφ2),rs=2GMc2(2.16.10)\mathrm{d} s^2=\Bigl(1-\frac{r_{\mathrm s}}{r}\Bigr)c^2\mathrm{d} t^2-\frac{\mathrm{d} r^2}{1-r_{\mathrm s}/r}-r^2(\mathrm{d}\theta^2+\sin^2\theta\,\mathrm{d}\varphi^2),\qquad r_{\mathrm s}=\frac{2GM}{c^2}\tag{2.16.10}

に限る。rsr_{\mathrm s} を Schwarzschild 半径と呼ぶ。この計量は K. Schwarzschild が 1916 年に出した1K. Schwarzschild (1916), Sitzungsberichte der Königlich Preußischen Akademie der Wissenschaften, 189–196.下の脚注へ。

r=rsr=r_{\mathrm s} で grrg_{rr} が発散するが、太陽の rsr_{\mathrm s} は約 3 km3\,\mathrm{km} で太陽の半径 7×105 km7\times10^5\,\mathrm{km} よりずっと内側にあり、そこは物質の中なので (2.16.10) を使うことはできない。この発散が座標の選び方によるもので、時空そのものの特異点ではないことは第2部第17章で扱う。

Birkhoff の定理:静的という仮定は要らない

(2.16.2) で α\alpha と β\beta を (x0,r)(x^0,r) の関数に広げて同じ計算をすると、R0r=2r∂0βR_{0r}=\frac2r\partial_0\beta という成分が新しく出る。真空では R0r=0R_{0r}=0 なので β\beta は時間によらず、残りの式から α=−β+f(x0)\alpha=-\beta+f(x^0) となる。ff は時間座標を dx~0=efdx0\mathrm{d}\tilde x^0=\mathrm{e}^{f}\mathrm{d} x^0 と取り直せば消せるので、結局 (2.16.10) に戻る。つまり、球対称な真空の解は必ず静的で、Schwarzschild 計量に限る。これを Birkhoff の定理と呼ぶ(G. D. Birkhoff (1923), Relativity and Modern Physics, Harvard University Press)。星が球対称のまま膨らんだり縮んだりしても外側の計量は変わらないので、球対称な脈動は重力波を出さない。これは電磁気で球対称に脈動する電荷が電磁波を出さないことと同じ形の結論で、重力波が四重極から始まる理由の1つである(第2部第18章)。

例題 2.16.1 太陽系の重力はどれだけ弱いか ★★

オリジナルGM⊙=1.32712440018×1020 m3 s−2GM_\odot=1.32712440018\times10^{20}\,\mathrm{m^3\,s^{-2}}、GM⊕=3.986004418×1014 m3 s−2GM_\oplus=3.986004418\times10^{14}\,\mathrm{m^3\,s^{-2}}、c=299792458 m s−1c=299792458\,\mathrm{m\,s^{-1}}、太陽の半径 R⊙=6.957×108 mR_\odot=6.957\times10^8\,\mathrm m、1 天文単位 1 au=1.495978707×1011 m1\,\mathrm{au}=1.495978707\times10^{11}\,\mathrm m、地球の半径 R⊕=6.371×106 mR_\oplus=6.371\times10^6\,\mathrm m とする。

  1. (1) 太陽と地球の Schwarzschild 半径を求めよ。
  2. (2) g00g_{00} が 1 からずれる大きさ rs/rr_{\mathrm s}/r を、太陽の表面・地球の軌道・地球の表面(地球の重力だけ)で求めよ。
解答

(1) rs=2GM/c2r_{\mathrm s}=2GM/c^2 に数を入れる。太陽は rs,⊙=2×1.32712×1020/(2.99792×108)2=2.95×103 mr_{\mathrm s,\odot}=2\times1.32712\times10^{20}/(2.99792\times10^8)^2=2.95\times10^3\,\mathrm m、つまり約 2.95 km2.95\,\mathrm{km}。地球は rs,⊕=8.87×10−3 mr_{\mathrm s,\oplus}=8.87\times10^{-3}\,\mathrm m、つまり約 8.9 mm8.9\,\mathrm{mm} である。

(2) 太陽の表面では rs,⊙/R⊙=2953/6.957×108=4.25×10−6r_{\mathrm s,\odot}/R_\odot=2953/6.957\times10^8=4.25\times10^{-6}、地球の軌道では 2953/1.496×1011=1.97×10−82953/1.496\times10^{11}=1.97\times10^{-8}、地球の表面では 8.87×10−3/6.371×106=1.39×10−98.87\times10^{-3}/6.371\times10^6=1.39\times10^{-9} である。

どれも 1 よりはるかに小さい。太陽系で一般相対論の効果を見るには、rs/rr_{\mathrm s}/r の1次の量(10−610^{-6} から 10−810^{-8})を測る必要がある。この章で出す観測量はすべて rs/rr_{\mathrm s}/r の1次で、1回あたりの小さな効果を何周も積み重ねる(近日点移動)か、角度や時間を非常に精密に測る(光の曲がり・Shapiro 遅延)ことで観測される。

1 K. Schwarzschild (1916), Sitzungsberichte der Königlich Preußischen Akademie der Wissenschaften, 189–196.

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

← AI生成教科書『虎の巻』の記事一覧へ