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この章で選ぶ LL:曲がった時空の固有時

2026年10月15日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第12章 測地線は固有時の作用の停留
目次
  1. 計量と固有時
  2. 選ぶ作用
  3. 静的な弱い場の計量
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第12章 §2.12.1 ★★★ 作用 −mc∫ds-mc\int\mathrm{d} s の ημν\eta_{\mu\nu} を gμν(x)g_{\mu\nu}(x) に替える。時計の進みが場所と速さで変わることは、この1行に入っている

第2部第3章では、自由粒子の作用を世界線に沿った固有時に −mc2-mc^2 を掛けたもの

S=−mc∫ds,ds2=ημν dxμdxνS=-mc\int\mathrm{d} s,\qquad \mathrm{d} s^2=\eta_{\mu\nu}\,\mathrm{d} x^\mu\mathrm{d} x^\nu

と選んだ(第2部第3章)。第2部第11章では、等価原理から、重力は時空の計量 gμν(x)g_{\mu\nu}(x) の場所による違いとして書くしかないことを見た(第2部第11章)。この章で選ぶものは、この2つを合わせた1行である。

S[x]=−mc∫gμν(x) dxμdλdxνdλ  dλ.S[x]=-mc\int\sqrt{g_{\mu\nu}(x)\,\frac{\mathrm{d} x^\mu}{\mathrm{d} \lambda}\frac{\mathrm{d} x^\nu}{\mathrm{d} \lambda}}\;\mathrm{d}\lambda .

重力の中の粒子は、力を受けて曲がるのではなく、この作用を停留させる世界線、つまり固有時を停留させる世界線を進む。この世界線を測地線と呼ぶ。

この作用に Euler–Lagrange 方程式を当てると、計量の1階微分の組み合わせとして Christoffel 記号 Γρμν\Gamma^\rho{}_{\mu\nu} が現れ、測地線方程式が出る。平方根の付いた LL は第2部第3章で見たとおり径数の取り替えで変わらず、HH が恒等的に 00 になる。径数を固有時に固定すると、平方根を外した L=12gμνx˙μx˙νL=\frac12g_{\mu\nu}\dot x^\mu\dot x^\nu に置き換えてよいことが分かり、光の世界線もこの形で扱える。計量を Newton のポテンシャル Φ\Phi で g00≈1+2Φ/c2g_{00}\approx1+2\Phi/c^2 と書くと、測地線方程式の先頭の項は x¨=−∇Φ\ddot{\bm{x}}=-\nabla\Phi で、LL を展開すると −mc2+12mv2−mΦ-mc^2+\frac12mv^2-m\Phi が出る。計量が座標の取り替えで変わらないとき(Killing ベクトルがあるとき)には、第1部第10章の Noether の定理からエネルギーと角運動量の保存が出る。最後に、回転する座標系の Christoffel 記号が遠心力と Coriolis 力になることを確かめ、学部の授業で習う式と対応させる。

この章を通して計量の符号は (+,−,−,−)(+,-,-,-)(Landau–Lifshitz と同じ。他の教科書との対応は第2部第11章の表)とし、上下に1回ずつ現れるギリシャ添字だけ和をとる。曲率(Riemann テンソル)はこの章には出てこない。測地線方程式は計量とその1階微分だけで書け、曲率は2階微分を含む量として第2部第14章で導入する。

計量と固有時

座標を xμ=(x0,x1,x2,x3)x^\mu=(x^0,x^1,x^2,x^3) と書く。近い2つの出来事の間の世界間隔を

ds2=gμν(x) dxμdxν(2.12.1)\mathrm{d} s^2=g_{\mu\nu}(x)\,\mathrm{d} x^\mu\mathrm{d} x^\nu\tag{2.12.1}

で定める。gμνg_{\mu\nu} は場所によってよい 4×44\times4 の対称行列で、各点で固有値の符号が (+,−,−,−)(+,-,-,-) になっているものとする。その行列式を g=det⁡gμν<0g=\det g_{\mu\nu}<0 と書き、逆行列を gμνg^{\mu\nu}(gμλgλν=δμνg^{\mu\lambda}g_{\lambda\nu}=\delta^\mu{}_\nu)と書く。添字の上げ下げは gg で行う(uμ=gμνuνu_\mu=g_{\mu\nu}u^\nu)。平坦な時空を慣性系の座標で書いたときが gμν=ημνg_{\mu\nu}=\eta_{\mu\nu} である。

ds2>0\mathrm{d} s^2>0 の向き(時間的な向き)に進む粒子について、固有時を

dτ=dsc=1cgμν dxμdxν(2.12.2)\mathrm{d}\tau=\frac{\mathrm{d} s}{c}=\frac1c\sqrt{g_{\mu\nu}\,\mathrm{d} x^\mu\mathrm{d} x^\nu}\tag{2.12.2}

で定める。第2部第3章と同じく、dτ\mathrm{d}\tau は粒子が持ち歩く時計の進みにあたる。η\eta を gg に替えても「世界線の長さを時計が測る」という意味は変わらず、変わるのは長さの測り方が場所によることだけである。4元速度は uμ=dxμdτu^\mu=\frac{\mathrm{d} x^\mu}{\mathrm{d} \tau} で、式 (2.12.2) を dτ2\mathrm{d}\tau^2 で割ると

gμνuμuν=c2(2.12.3)g_{\mu\nu}u^\mu u^\nu=c^2\tag{2.12.3}

を満たす。

選ぶ作用

定義 2.12.1(曲がった時空の自由粒子の作用)

質量 m>0m>0 の粒子の世界線を任意の径数 λ\lambda で xμ(λ)x^\mu(\lambda) と書き、x˙μ=dxμdλ\dot x^\mu=\frac{\mathrm{d} x^\mu}{\mathrm{d} \lambda} とする。作用を

S[x]=−mc∫λ1λ2gμν(x) x˙μx˙ν  dλ=−mc2∫dτ,L=−mcgμν(x) x˙μx˙ν(2.12.4)S[x]=-mc\int_{\lambda_1}^{\lambda_2}\sqrt{g_{\mu\nu}(x)\,\dot x^\mu\dot x^\nu}\;\mathrm{d}\lambda=-mc^2\int\mathrm{d}\tau,\qquad L=-mc\sqrt{g_{\mu\nu}(x)\,\dot x^\mu\dot x^\nu}\tag{2.12.4}

と選ぶ。両端の出来事 xμ(λ1)x^\mu(\lambda_1), xμ(λ2)x^\mu(\lambda_2) を固定して δS=0\delta S=0 となる世界線を時間的な測地線と呼ぶ。

この作用を選ぶ理由は2つある。1つ目は、gμν=ημνg_{\mu\nu}=\eta_{\mu\nu} のとき第2部第3章の作用に戻ることである。2つ目は、∫dτ\int\mathrm{d}\tau がどの座標で計算しても同じ値になることで、そのため停留の条件も座標によらない。座標を x→x′x\to x' と取り替えると gμνg_{\mu\nu} の成分は変わるが、ds2\mathrm{d} s^2 が同じ値になるように変わる(成分の変わり方は第2部第13章で扱う)。この章で「重力」と呼んできたものは、すべて gμν(x)g_{\mu\nu}(x) に入っている。LL には重力のポテンシャルを別に足す項が無い。

静的な弱い場の計量

具体的な計量として、この章では次のものを繰り返し使う。

ds2=(1+2Φ(x)c2)c2dt2−(1−2Φ(x)c2)dx2,x0=ct.(2.12.5)\mathrm{d} s^2=\Bigl(1+\frac{2\Phi(\bm{x})}{c^2}\Bigr)c^2\mathrm{d} t^2-\Bigl(1-\frac{2\Phi(\bm{x})}{c^2}\Bigr)\mathrm{d}\bm{x}^2,\qquad x^0=ct .\tag{2.12.5}

Φ\Phi は Newton のポテンシャルで、質量 MM の球の外では Φ=−GM/r<0\Phi=-GM/r<0 である。g00=1+2Φ/c2g_{00}=1+2\Phi/c^2 の部分は、第2部第11章の重力赤方偏移(高い所の時計が速く進む)を計量に書いたものになっている。gijg_{ij} の部分は等価原理だけでは決まらず、Einstein 方程式を弱い場で解いて得る(第2部第15章)。この章ではこの計量を与えられたものとして使い、∣Φ∣/c2\lvert \Phi\rvert /c^2 の1次までを残す。地表では GM/(Rc2)=7×10−10GM/(Rc^2)=7\times10^{-10} 程度で、太陽の表面でも 2×10−62\times10^{-6} 程度なので、1次で十分よい。

この計量の中を速度 v=dxdt\bm{v}=\frac{\mathrm{d} \bm{x}}{\mathrm{d} t} で動く時計の進みは、式 (2.12.2) に式 (2.12.5) を入れて

dτdt=1+2Φc2−(1−2Φc2)v2c2=1+Φc2−v22c2+O(c−4)(2.12.6)\frac{\mathrm{d} \tau}{\mathrm{d} t}=\sqrt{1+\frac{2\Phi}{c^2}-\Bigl(1-\frac{2\Phi}{c^2}\Bigr)\frac{v^2}{c^2}}=1+\frac{\Phi}{c^2}-\frac{v^2}{2c^2}+\mathcal{O}(c^{-4})\tag{2.12.6}

となる。第1項の補正 Φ/c2\Phi/c^2 は低い所ほど時計が遅れることを、第2項 −v2/(2c2)-v^2/(2c^2) は特殊相対論の時間の遅れを表す。2つの補正が同じ1行から出る。

円軌道を回る時計と地表の時計の比べ方(同じ速さになるのは r=3R/2r=3R/2)は、第2部第11章の式 (2.11.23) で扱った。ここでは自転する地球の表面に置いた時計どうしを比べる。

例題 2.12.1 ジオイドの上の時計はどこでも同じ速さで進む ★★

オリジナル地球は自転軸のまわりに角速度 Ω\Omega で回り、外の計量を式 (2.12.5) とする(Φ\Phi は自転しない慣性系で書いた重力のポテンシャルで、時刻によらないとする)。地表に置いた時計は、慣性系から見ると軸からの距離 ρ\rho の円を速さ v=Ωρv=\Omega\rho で回る。

  1. (1) 地表に置いた時計の dτdt\frac{\mathrm{d} \tau}{\mathrm{d} t} を 1/c21/c^2 の1次まで求め、遠心力のポテンシャルを含む W=Φ−12Ω2ρ2W=\Phi-\frac12\Omega^2\rho^2 だけで決まることを示せ。海面(ジオイド)は WW が一定の面なので、その上の時計はどこでも同じ速さで進むことを説明せよ。
  2. (2) 地球の扁平さを J2J_2 の項まで入れた重力のポテンシャル

Φ(r,β)=−GMr[1−J2(ar)23sin⁡2β−12]\Phi(r,\beta)=-\frac{GM}{r}\Bigl[1-J_2\Bigl(\frac ar\Bigr)^2\frac{3\sin^2\beta-1}{2}\Bigr]

(β\beta は緯度)を使い、赤道(r=ar=a)と極(r=br=b)で Φ\Phi と v2/2v^2/2 を求めよ。数値は GM=3.986004418×1014 m3 s−2GM=3.986004418\times10^{14}\,\mathrm{m^3\,s^{-2}}、a=6378137 ma=6378137\,\mathrm m、b=6356752.3 mb=6356752.3\,\mathrm m、J2=1.08263×10−3J_2=1.08263\times10^{-3}、Ω=7.292115×10−5 s−1\Omega=7.292115\times10^{-5}\,\mathrm{s^{-1}} とする1世界測地系 WGS84 の定数。National Imagery and Mapping Agency (2000), Department of Defense World Geodetic System 1984, Technical Report TR8350.2, 3rd ed.下の脚注へ。3. (3) 赤道と極の WW の差を、Φ\Phi の差・v2/2v^2/2 の差と比べよ。時計の進みの割合の差は1日あたり何 ns か。

解答

(1) 式 (2.12.6) に v=Ωρv=\Omega\rho を入れて

dτdt=1+1c2(Φ−12Ω2ρ2)+O(c−4)=1+Wc2+O(c−4).\frac{\mathrm{d} \tau}{\mathrm{d} t}=1+\frac{1}{c^2}\Bigl(\Phi-\frac12\Omega^2\rho^2\Bigr)+\mathcal{O}(c^{-4})=1+\frac{W}{c^2}+\mathcal{O}(c^{-4}).

重力による遅れ Φ/c2\Phi/c^2 と速さによる遅れ −v2/(2c2)-v^2/(2c^2) が、WW の1つにまとまった。WW は地球と一緒に回る座標で見た重力と遠心力のポテンシャルの和である(回る座標の計量の g00g_{00} が遠心力のポテンシャルを含むことは例題 2.12.7 で確かめる)。回る座標で静止した海水の表面は、重力と遠心力の合力に垂直な面、つまり WW が一定の面に落ち着く。したがって海面の上ではどこでも dτdt\frac{\mathrm{d} \tau}{\mathrm{d} t} が同じで、時計は同じ速さで進む。

(2) 赤道は β=0\beta=0、r=ar=a、ρ=a\rho=a なので

Φ赤道=−GMa(1+J22)=−6.252864×107 m2 s−2,\Phi_{\text{赤道}}=-\frac{GM}{a}\Bigl(1+\frac{J_2}{2}\Bigr)=-6.252864\times10^{7}\,\mathrm{m^2\,s^{-2}},

v=Ωa=465.1 m s−1,v22=1.0816×105 m2 s−2.v=\Omega a=465.1\,\mathrm{m\,s^{-1}},\quad \frac{v^2}{2}=1.0816\times10^5\,\mathrm{m^2\,s^{-2}}.

極は β=π/2\beta=\pi/2、r=br=b、ρ=0\rho=0 なので

Φ極=−GMb(1−J2a2b2)=−6.263670×107 m2 s−2,v=0.\Phi_{\text{極}}=-\frac{GM}{b}\Bigl(1-J_2\frac{a^2}{b^2}\Bigr)=-6.263670\times10^{7}\,\mathrm{m^2\,s^{-2}},\qquad v=0 .

(3) Φ赤道−Φ極=1.0807×105 m2 s−2\Phi_{\text{赤道}}-\Phi_{\text{極}}=1.0807\times10^5\,\mathrm{m^2\,s^{-2}} で、赤道の時計は重力のぶんだけ極の時計より 1.0807×105/c2=1.202×10−121.0807\times10^5/c^2=1.202\times10^{-12} の割合で速く進む。一方、赤道の時計は速さのぶん v2/(2c2)=1.203×10−12v^2/(2c^2)=1.203\times10^{-12} だけ遅れる。2つを合わせた

W赤道−W極=1.0807×105−1.0816×105=−94 m2 s−2W_{\text{赤道}}-W_{\text{極}}=1.0807\times10^5-1.0816\times10^5=-94\,\mathrm{m^2\,s^{-2}}

は、どちらの項に比べても 10−310^{-3} 倍の大きさである。残りの 9494 は、Φ\Phi を J2J_2 の1次で打ち切ったことによるずれ(J2 2GM/a≈73 m2 s−2J_2^{\,2}GM/a\approx73\,\mathrm{m^2\,s^{-2}} の大きさ)と同じ程度で、この精度で WW は一致している。時計の進みの割合の差は −94/c2=−1.05×10−15-94/c^2=-1.05\times10^{-15}、1日あたり 0.09 ns0.09\,\mathrm{ns} で、2つの項のそれぞれ(1日あたり約 104 ns104\,\mathrm{ns})よりずっと小さい。地球を半径の違う球とみなして J2J_2 を落とすと、Φ\Phi の差は GM/b−GM/a=2.10×105 m2 s−2GM/b-GM/a=2.10\times10^5\,\mathrm{m^2\,s^{-2}} になり v2/2v^2/2 と釣り合わない。地球が扁平になったのは自転の遠心力のためで、その形が重力の項と速さの項をちょうど釣り合わせている。

1 世界測地系 WGS84 の定数。National Imagery and Mapping Agency (2000), Department of Defense World Geodetic System 1984, Technical Report TR8350.2, 3rd ed.

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