解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第12章 §2.12.2 ★★★ Euler–Lagrange 方程式を4つの xμ(λ) に当てる。径数の取り替えの自由度と、第1部第2章の「質量行列が配置の空間の計量になる」をここで使う
4つの座標を一般化座標として扱う
作用 (2.12.4) は、径数 λ を「時刻」、4つの xμ を一般化座標とみなした力学の作用と同じ形をしている。L は λ をあらわに含まず、xμ と x˙μ の関数である。端点を固定した変分から、第1部第4章の Euler–Lagrange 方程式
dλd∂x˙μ∂L−∂xμ∂L=0(μ=0,1,2,3)(2.12.7)
が出る(第1部第4章)。導き方は qi(t) のときと同じで、添字の位置が上下にあることは計算に関係しない。
径数の取り替えと H=0
第2部第3章で ημν のときに確かめたことは、gμν(x) でもそのまま成り立つ。L は x˙μ の1次の同次関数なので、同次関数についての Euler の定理から
Hλ=x˙μ∂x˙μ∂L−L=0(2.12.8)
が恒等的に成り立ち、Hessian ∂2L/∂x˙μ∂x˙ν は x˙ν を固有値 0 の固有ベクトルに持つ(第2部第3章)。これは、径数を λ→λ′(λ)(単調増加)と取り替えても作用の値が変わらないことの表れで、同じ世界線を表す解が径数の数だけある。そのため式 (2.12.7) の4本は独立でなく、どれか1本は残り3本から出る。
この自由度は、方程式を書いたあとで径数を1つに決めれば取り除ける。変分をとる前に λ=τ と決めてしまうと、比べる世界線ごとに ∫dτ の範囲が変わり、端点を固定した変分にならない。そこで、変分をとって Euler–Lagrange 方程式を書いてから λ=τ と置くという順序を守る。2.12.3節の計算はこの順序で行う。
第1部第2章の計量:自由な運動は配置の空間の測地線
計量と測地線は、一般相対論より前に第1部第2章で出ていた。時間によらない拘束のもとで、運動エネルギーは質量行列 Mij(q) を使って T=21∑i,jMij(q)q˙iq˙j と書け、2Tdt2=∑i,jMijdqidqj は配置の空間の長さの2乗とみなせた(第1部第2章)。ポテンシャルの無い拘束運動では L=T=21∑Mijq˙iq˙j で、これは 2.12.3節で出てくる L2=21gμνx˙μx˙ν と同じ形をしている。したがって、拘束されて自由に動く粒子の軌道は、質量行列を計量とする配置の空間の測地線で、時刻 t はその測地線の上で一定の速さで進む径数になる。一般相対論の測地線は、計量の符号が (+,−,−,−) であること、時刻 t も座標の1つであることを除けば、同じ計算である。
この見方に立つと、拘束された自由粒子が直線を進まないのは「拘束力」のためとも「配置の空間が曲がっている」ためとも言える。一般相対論は後者の言い方を時空に当てはめたものである。
例題 2.12.2 球面に拘束された粒子の測地線 ★★
オリジナル質量 m の粒子が半径 a の滑らかな球面に拘束され、外力を受けずに動く。位置を極角 θ・方位角 φ で表す。
- (1) Lagrangian L=21ma2(θ˙2+sin2θφ˙2) の Euler–Lagrange 方程式を書き、θ¨+Γθφφφ˙2=0、φ¨+2Γφθφθ˙φ˙=0 の形にして Γ を読み取れ。
- (2) 赤道 θ=π/2 を一定の φ˙ で回る運動は解か。緯線 θ=π/4 を一定の φ˙=0 で回る運動は解か。
- (3) 赤道上の点 φ=0 から赤道と角 i をなす向きに北へ出発した解が、cotθ=tanisinφ という曲線に乗ることを、θ˙ と φ˙ の関係から確かめよ。最も北の点の θ はいくつか。
解答
(1) ∂θ˙∂L=ma2θ˙、∂θ∂L=ma2sinθcosθφ˙2、∂φ˙∂L=ma2sin2θφ˙、∂φ∂L=0 なので、ma2 で割って
θ¨−sinθcosθφ˙2=0,dtd(sin2θφ˙)=0 ⟺ φ¨+2cotθθ˙φ˙=0.
よって Γθφφ=−sinθcosθ、Γφθφ=Γφφθ=cotθ で、ほかは 0 である(2Γφθφθ˙φ˙ は Γφθφθ˙φ˙+Γφφθφ˙θ˙ をまとめたもの)。
(2) 赤道では sinθcosθ=0 なので θ=π/2, θ˙=0, φ˙ 一定は2本とも満たす。解である。緯線 θ=π/4 では θ¨=sinθcosθφ˙2=21φ˙2=0 となり、θ を一定に保てない。緯線は測地線でない。緯線を回り続けるには、球面の接線方向(南向き)の力で引き続ける必要がある。
(3) 第2式から sin2θφ˙=ℓ(一定)、エネルギー保存から θ˙2+sin2θφ˙2=w2(一定)。出発点では θ˙=−wsini、φ˙=wcosi なので ℓ=wcosi。曲線 cotθ=tanisinφ を t で微分すると −θ˙/sin2θ=tanicosφφ˙ で、これが2つの保存則と矛盾しないことを確かめる。θ˙=−tanicosφsin2θφ˙=−ℓtanicosφ を θ˙2+ℓ2/sin2θ=w2 に入れ、1/sin2θ=1+cot2θ=1+tan2isin2φ を使うと
ℓ2tan2icos2φ+ℓ2(1+tan2isin2φ)=ℓ2(1+tan2i)=cos2iℓ2=w2
となり、ℓ=wcosi と一致する。出発点 φ=0 で θ=π/2 も満たすので、解はこの曲線に乗る。最も北の点は φ=π/2 で cotθ=tani、つまり θ=π/2−i である。この曲線は球の中心を通る平面と球面の交わり(大円)で、そのことは 2.12.5節の例題で保存量から示す。

図 2.12.1 球面の上の曲線を座標 (φ,θ) の平面に描いたもの(例題 2.12.2、i=45∘。縦軸は北を上にするため θ を下向きに増やした)。大円 cotθ=tanisinφ は座標の平面では曲がって見え、緯線は水平な直線に見えるが、測地線は大円のほうである。座標の平面で直線に見えるかどうかは、測地線かどうかと関係しない。3本とも近似を含まない厳密な曲線である
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