解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第12章 §2.12.3 ★★★ Euler–Lagrange 方程式から測地線方程式と Christoffel 記号が出る。固有時を径数にすると平方根を外した L=21gx˙x˙ に置き換えられる
Euler–Lagrange 方程式を計算する
w=gαβ(x)x˙αx˙β とおくと L=−mcw で、
∂x˙μ∂L=−wmcgμνx˙ν,∂xμ∂L=−2wmc∂μgαβx˙αx˙β
である(∂μ=∂/∂xμ)。Euler–Lagrange 方程式 (2.12.7) を −mc で割ると
dλd(wgμνx˙ν)−2w1∂μgαβx˙αx˙β=0.(2.12.9)
ここで 2.12.2節の順序どおり、方程式を書いたあとで λ=τ と置く。式 (2.12.3) から w=c は定数になり、x˙μ=uμ として
dτd(gμνuν)−21∂μgαβuαuβ=0.
第1項は gμν が世界線に沿って変わる分を含み、dτdgμν=∂αgμνuα なので
gμνdτduν+∂αgμβuαuβ−21∂μgαβuαuβ=0.
∂αgμβuαuβ は α と β を入れ替えても同じなので 21(∂αgμβ+∂βgμα)uαuβ と書け、まとめると
gμνdτduν+Γμαβuαuβ=0,Γμαβ=21(∂αgμβ+∂βgμα−∂μgαβ)(2.12.10)
となる。両辺に gρμ を掛ける。
定理 2.12.2(測地線方程式 ★★★)
作用 (2.12.4) の停留点を固有時 τ で表した世界線は
dτ2d2xρ+Γρμνdτdxμdτdxν=0,Γρμν=21gρσ(∂μgσν+∂νgσμ−∂σgμν)(2.12.11)
を満たす。Γρμν を Christoffel 記号と呼ぶ。下の2つの添字について対称(Γρμν=Γρνμ)である。
測地線方程式の第2項は、Newton の運動方程式で「力 /m」があった場所にある。ただし Γ は質量 m を含まないので、どの粒子も同じ世界線を進む。これは第2部第11章の等価原理(重力による加速度は質量によらない)を式にしたものである。m は作用 (2.12.4) の全体に掛かる定数にすぎず、停留の条件から消える。
径数を固有時に選ばなかったとき
式 (2.12.9) を λ=τ と置かずに計算すると、s(λ)=w=cdλdτ として
x¨ρ+Γρμνx˙μx˙ν=ss˙x˙ρ(2.12.12)
になる(ドットは λ 微分)。右辺は世界線に沿った向き x˙ρ への加速度で、径数の進み方の不揃いを表しているだけである。同じ世界線を径数だけ取り替えた解なので、世界線の形は変わらない。右辺が 0 になるのは s˙=0、つまり λ=aτ+b(a,b は定数)のときに限る。このように測地線方程式を右辺 0 の形にする径数をアフィン径数と呼ぶ。
平方根を外した L2=21gμνx˙μx˙ν
アフィン径数だけを使うなら、平方根の付いた L の代わりに
L2=21gμν(x)x˙μx˙ν(2.12.13)
を使ってよい。L2 の Euler–Lagrange 方程式は、∂x˙μ∂L2=gμνx˙ν と ∂xμ∂L2=21∂μgαβx˙αx˙β から、上と同じ計算で
gμν(x¨ν+Γναβx˙αx˙β)=0
となり、径数を固有時に選んだ式 (2.12.11) がそのまま出る。
右辺に s˙/s の項が出ないのは、L2 が径数の取り替えで変わらないという性質を持たないからである。L2 は λ をあらわに含まないので、第1部第10章の Noether の定理(時刻の並進)から H2=x˙μ∂x˙μ∂L2−L2 が保存し、L2 は x˙ の2次の同次関数なので H2=L2 である(第1部第10章)。つまり L2 の解では w=2L2 が自動的に一定で、径数は自動的にアフィン径数になる。逆に、L の解のうちアフィン径数で書いたものは L2 の方程式を満たす。2つの L は同じ世界線を与え、違うのは径数の選び方の自由度だけである。
L2 には L に無い利点が2つある。1つ目は、Hessian が gμν そのもので逆行列を持つことである。第1部第7章の Legendre 変換がそのまま使え、pμ=gμνx˙ν から
H2=21gμν(x)pμpν(2.12.14)
を得る(第1部第7章)。λ=τ のとき H2=c2/2 で、これは第2部第3章の質量殻の拘束 pμpμ=m2c2 を m2 で割ったものにあたる。平方根の付いた L では H が恒等的に 0 で拘束が別に残ったが、L2 ではその拘束が保存する H2 の値になっている。2つ目は、m=0 の粒子(光)を扱えることである。光の世界線は ds=0 なので L は使えないが、L2 では w=0 の解として
x¨ρ+Γρμνx˙μx˙ν=0,gμνx˙μx˙ν=0(2.12.15)
を満たす世界線(光的な測地線)を考えることができる。光の場合は固有時が無いので、径数はアフィン径数としか言えない。
平坦な時空でも Γ は 0 でない
Γρμν は計量の1階微分で書けているので、平坦な時空でも曲がった座標を使えば 0 でない。次の例題がその例である。重力の無い時空で Γ=0 になり、重力のある時空でも1点では Γ=0 にできる(自由落下する系を選ぶ。第2部第11章)ので、Γ そのものは「重力があるかどうか」を判定する量ではない。判定する量は計量の2階微分を含む曲率で、第2部第14章で扱う。Γ がある座標系で 0 で別の座標系で 0 でないことは、Γ が座標変換でテンソルのように変換しないことを意味し、そのことは第2部第13章で式で確かめる。
例題 2.12.3 平坦な時空の極座標の Christoffel 記号 ★★
オリジナル平坦な時空を極座標で ds2=c2dt2−dr2−r2dφ2 と書く(z 方向の運動は考えない)。
- (1) 0 でない Christoffel 記号をすべて求めよ。
- (2) 時刻 t を径数にして測地線方程式を書け(遅い粒子では t は固有時に比例する)。
- (3) 直線 x=b, y=V(t−t0) を極座標で書いたものが (2) を満たすことを確かめよ。
解答
(1) 0 でない計量の微分は ∂rgφφ=−2r だけである。grr=−1、gφφ=−1/r2 なので
Γrφφ=21grr(−∂rgφφ)=−r,Γφrφ=Γφφr=21gφφ∂rgφφ=r1
で、ほかはすべて 0 である。
(2) 計量は t によらず g00=1 なので Γ0μν=0 で、dτdt は一定になる。t を径数にしてよく、
r¨−rφ˙2=0,φ¨+r2r˙φ˙=0.
第1式の −rφ˙2 は、極座標で習う加速度の動径成分 r¨−rφ˙2 の第2項である。第2式に r2 を掛けると dtd(r2φ˙)=0 で、面積速度の保存になる。
(3) r=b2+V2(t−t0)2、tanφ=V(t−t0)/b である。φ˙=bV/r2 なので r2φ˙=bV は一定で第2式を満たす。r˙=V2(t−t0)/r、r¨=V2/r−V4(t−t0)2/r3=V2b2/r3 で、rφ˙2=b2V2/r3 と等しいので第1式も満たす。重力の無い時空の測地線は直線であり、極座標で Γ=0 になったのは座標が曲がっているためである。
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