接線の傾きと切片で関数を書き直す
AI 生成・木下が未勉強
解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第7章 §1.7.1 ★★★ 凸関数は接線の集まりで決まり、接線1本は傾きと切片で決まる。傾きをただ代入すると情報が落ちる
Lagrangian から Hamiltonian を作る式 と、内部エネルギー から Helmholtz の自由エネルギー を作る式 は、どちらも「ある変数を、その変数についての傾きに取り替える」操作で、同じ数学の手続きである。この手続きを Legendre 変換と呼ぶ。学部の授業ではこの2つの式が別々の分野で天下り的に与えられることが多く、「なぜ に を代入するだけではいけないのか」「なぜ引き算の項 や が要るのか」が分からないまま残りやすい。
この章で作る道具は Legendre 変換1つである。先に図を見せる。下に凸な関数のグラフは、各点での接線の集まりで決まり、接線1本は「傾き」と「縦軸との交点(切片)」の2つの数で決まる。したがって、関数を「傾きを入れると切片を返す関数」として書き直しても、もとの関数の情報は1つも落ちない。これが Legendre 変換で、傾きを横軸の値の代わりに使う関数の書き直しである。1.7.1節でこの絵と「傾きをただ代入すると情報が落ちる」ことを示し、1.7.2節で最大値を使う定義と、導関数が逆関数どうしになる性質を出す。1.7.3節では2回変換すると元に戻ること、凸でない関数では戻らないことを確かめる。そのあと、1.7.4節で の速度 を運動量 に、1.7.5節で のエントロピー を温度 に取り替え、両方を同じ図に載せる。1.7.6節で授業での書き方と並べる。
Hamilton 方程式と相空間の見方は次の章(第1部第8章)で、熱力学ポテンシャル全体の組み立ては第3部第4章 で扱う。この章では変換そのものの意味を固めることに専念する。
関数を傾きで呼び直したい理由
解析力学では、運動を速度 で書く代わりに運動量 で書きたくなる。熱力学では、エントロピー は直接測れないが、温度 は温度計で測って一定に保てるので、 の代わりに を変数にしたくなる。どちらも、ある関数 について、変数 をその点での傾き に取り替えたい、という同じ要求である。この節では1変数の関数 で考え、・ や のような取り替えない変数は1.7.4節で足す。
傾きを変数にするために、まず最も素朴なやり方を試す。 を について解いて とし、それを に代入した
を「傾きで書いた 」とする方法である。これはうまくいかない。たとえば では なので になる。ところが、横に だけずらした では なので、やはり になる。異なる関数 と から同じ が得られるので、 から を取り戻すことはできない。
情報が落ちる理由は一般的に述べることができる。 が分かっているとき、 は微分方程式 を満たす。この方程式は を含まないので、解 を横にずらした もまた解になる。つまり は「グラフの形」は覚えているが「グラフが横のどこにあるか」を覚えておらず、その分の情報が失われている。
接線の切片を記録する
失われた位置の情報を残すには、傾き の接線がどこを通るかも記録すればよい。点 でのグラフの接線は
で、縦軸()との交点、つまり切片は である(図 1.7.1 の左)。傾き を与えるとこの接線が1本決まり、切片が1つの数として決まる。そこで、切片に負号を付けた
を傾き の関数とみなす。これが Legendre 変換の最初の形で、 は「傾き の接線の切片の 倍」である。負号を付けておく理由は、1.7.2節で がまた下に凸になり、同じ操作をもう一度当てられる形にそろうためである。
先の2つの関数で確かめる。 では なので である。 では なので となり、 が残る。切片を記録したので、横のずれが の の項として残った。
図 1.7.1 Legendre 変換の2つの見方(、、、)。左:傾き の接線を引くと、縦軸との切片が になる。右:原点を通る直線 と の縦の差 は、接点 で最大になり、その最大値が である。左右とも は実線、直線は破線で描いた(どちらも近似を含まない)
接線の集まりからグラフを描き直す
切片を記録すると情報が落ちないことは、図でも確かめることができる。傾き を少しずつ変えながら、 という直線を次々に引くと、直線の群れが包む線(包絡線)としてもとのグラフ が浮かび上がる(図 1.7.2)。下に凸な関数のグラフは、どの接線よりも上にあり、それぞれの接線にちょうど1点で触れるからである。傾きと切片の組 がすべて分かれば、直線をすべて引けて、グラフがその上の端として決まる。1.7.3節でこの描き直しを式にし、 にもう一度同じ変換を当てると に戻ることを示す。
例題 1.7.1 代入では区別できない2つの関数を Legendre 変換で区別する ★★★
オリジナル と、 を定数とする ( も定数)を考える。
- (1) 傾き を代入しただけの を求め、 が残らないことを示せ。
- (2) 式 (1.7.2) で を求めよ。
- (3) が分かっているとして、そこから と を読み取る手順を書け。
解答
(1) なので 。代入すると で、 は消える。 から分かるのは (グラフの底の高さ)だけで、グラフが横のどこにあるかは分からない。
(2) を式 (1.7.2) に入れて
(3) を で微分すると なので、 での値 から を読み取ることができる。また なので 。傾き の接線はグラフの底を通る水平線で、その接点が 、切片が だから、これは図の上でも当然の結果である。 の導関数が接点の位置を返すことは、次の節で一般に示す。
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