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この章で選ぶ作用:固有時の計量に重力を入れる

2026年10月15日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第11章 等価原理と重力赤方偏移
目次
  1. 慣性質量と重力質量
  2. 選ぶ作用
  3. 弱い場で Newton に戻ること
  4. 計量の流儀:ほかの教科書との対応
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第11章 §2.11.1 ★★★ 慣性質量と重力質量が等しいので、重力は mm に依らない計量 gμνg_{\mu\nu} に入れる。弱い場では g00=1+2Φ/c2g_{00}=1+2\Phi/c^2 で Newton の −mΦ-m\Phi に戻る

第2部第3章では、自由粒子の作用を世界線の固有時に −mc2-mc^2 を掛けたもの S=−mc∫dsS=-mc\int\mathrm{d} s と選んだ。そこでは世界間隔をds2=ημνdxμdxν\mathrm{d} s^2=\eta_{\mu\nu}\mathrm{d} x^\mu\mathrm{d} x^\nu と平坦な計量で測った。この章では、重力の中の粒子の作用を

S=−mc∫gμν(x) dxμdxνS=-mc\int\sqrt{g_{\mu\nu}(x)\,\mathrm{d} x^\mu\mathrm{d} x^\nu}

と選ぶ。違いは、定数の行列 ημν\eta_{\mu\nu} を場所によって変わる行列 gμν(x)g_{\mu\nu}(x) に替えたことだけである。この1行を選ぶ理由は、重力の中ではどんな物体も同じように落ちる、という実験事実にある。Newton 力学の Lagrangian L=12mv2−mΦL=\frac12mv^2-m\Phi では、慣性を表す mm と重力を受ける強さを表す mm がたまたま同じ字で、運動方程式から mm が消える。消える量で軌道を区別できないなら、重力は物体の性質でなく時空の性質として書くのが自然である。gμνg_{\mu\nu} の中に重力を入れれば、mm は作用全体に掛かる係数になり、軌道に入らないことが最初から保証される。

この作用に第1部の道具を当てると、次のものが順に出てくる。座標の取り替えと「Lagrangian は全微分だけの違いを許す」という性質から、落下するエレベーターの中では一様な重力が消えること(等価原理)と、潮汐力だけは消せないことが出る。第2部第3章の双曲運動を観測者の族に広げると、一様に加速する観測者の座標(Rindler 座標)で計量が g00=(1+aξ/c2)2g_{00}=(1+a\xi/c^2)^2 になり、平坦な時空の中にも「重力」が座標の取り方として現れる。時刻をずらす変換に対する Noether の保存量からは、高い所の時計が速く進むこと(重力赤方偏移)が出る。最後に、この効果を GPS の衛星の時計と、1 cm の高さの違いを読み取る光格子時計の数値で確かめる。

この章では計量の弱い場の形 g00≈1+2Φ/c2g_{00}\approx1+2\Phi/c^2 を、等価原理から決まる部分だけ使う。空間の成分 gijg_{ij} の補正は Einstein 方程式から決まり、第2部第15・16章で扱う。測地線方程式と Christoffel 記号は第2部第12章で、この章の作用から Euler–Lagrange 方程式として出す。計量は ημν=diag(+1,−1,−1,−1)\eta_{\mu\nu}=\mathrm{diag}(+1,-1,-1,-1)(この本の流儀)とし、上下に1回ずつ現れるギリシャ添字だけ和をとる。この章では Newton のポテンシャルを Φ\Phi(Φ<0\Phi<0)、地表の重力加速度を gg、ロケットの固有加速度を aa と書く。gg は添字の付いた計量 gμνg_{\mu\nu} とは添字の有無で区別する。

慣性質量と重力質量

Newton 力学で重力の中の粒子の Lagrangian を書くと、

L=12miv2−mgΦ(x)(2.11.1)L=\frac12m_{\mathrm i}v^2-m_{\mathrm g}\Phi(\bm{x})\tag{2.11.1}

となる。mim_{\mathrm i} は運動エネルギーに付く質量(慣性質量)、mgm_{\mathrm g} は重力のポテンシャルエネルギーに付く質量(重力質量)で、定義の上では別の量である。電磁気で L=12mv2−qϕL=\frac12mv^2-q\phi と書くとき、mm と qq が別の量であるのと同じ立場である。Euler–Lagrange 方程式は

x¨=−mgmi∇Φ(2.11.2)\ddot{\bm{x}}=-\frac{m_{\mathrm g}}{m_{\mathrm i}}\nabla\Phi\tag{2.11.2}

で、加速度は比 mg/mim_{\mathrm g}/m_{\mathrm i} によって物体ごとに違ってよいはずである。電場の中の粒子の加速度が q/mq/m で物体ごとに違うのと同じである。

ところが実験では、この比は物質によらない。2種類の物体の加速度の差を平均で割った量を η\eta と書くと、人工衛星の中で自由落下する白金合金とチタン合金の試験体を比べた実験は ∣η∣\lvert \eta\rvert が 10−1410^{-14} より小さいことを示した1P. Touboul et al. (2022), Phys. Rev. Lett. 129, 121102(MICROSCOPE 衛星の最終結果。η=[−1.5±2.3(統計)±1.5(系統)]×10−15\eta=[-1.5\pm2.3(\text{統計})\pm1.5(\text{系統})]\times10^{-15})。下の脚注へ。比が物体によらないなら単位の取り方で mg=mi≡mm_{\mathrm g}=m_{\mathrm i}\equiv m とおけて、式 (2.11.2) から mm が消える。軌道は初めの位置と速度だけで決まり、どんな物体でも同じになる。これを自由落下の普遍性と呼ぶ。

選ぶ作用

軌道が物体によらないなら、重力は物体の側の量(電荷のような結合定数)を通してでなく、粒子が動く舞台の側に書くのが自然である。第2部第3章の作用の中で、舞台を表しているのは世界間隔を測る計量 ημν\eta_{\mu\nu} だけなので、そこに重力を入れる。

定義 2.11.1(重力の中の粒子の作用)

質量 m>0m>0 の粒子の作用を、場所に依存する計量 gμν(x)g_{\mu\nu}(x)(対称、符号は (+,−,−,−)(+,-,-,-))を使って

S[x]=−mc∫ds,ds2=gμν(x) dxμdxν(2.11.3)S[x]=-mc\int\mathrm{d} s,\qquad \mathrm{d} s^2=g_{\mu\nu}(x)\,\mathrm{d} x^\mu\mathrm{d} x^\nu\tag{2.11.3}

と選ぶ。時刻 tt を径数にとると x0=ctx^0=ct で、Lagrangian は

L=−mcgμν(x) x˙μx˙ν,x˙μ=dxμdt=(c,v)(2.11.4)L=-mc\sqrt{g_{\mu\nu}(x)\,\dot x^\mu\dot x^\nu},\qquad \dot x^\mu=\frac{\mathrm{d} x^\mu}{\mathrm{d} t}=(c,\bm{v})\tag{2.11.4}

となる。重力は gμνg_{\mu\nu} だけに入り、粒子の性質 mm は作用全体に掛かる係数である。

mm が作用全体の係数なので、Euler–Lagrange 方程式の両辺を mm で割ることができ、軌道は mm によらない。自由落下の普遍性は、この作用を選んだ時点で式の形として保証される。電磁場との結合 −q∫Aμdxμ-q\int A_\mu\mathrm{d} x^\mu(第2部第3章)は mm と別の係数 qq を持つので、q/mq/m の違う粒子は違う軌道を描く。この違いが、重力だけを計量に入れる理由である。

弱い場で Newton に戻ること

時間によらない弱い重力の中で、計量を

g00=1+2Φ(x)c2,g0i=0,gij=−δij(2.11.5)g_{00}=1+\frac{2\Phi(\bm{x})}{c^2},\qquad g_{0i}=0,\qquad g_{ij}=-\delta_{ij}\tag{2.11.5}

とおいてみる(∣Φ∣/c2≪1\lvert \Phi\rvert /c^2\ll1)。gijg_{ij} にも Φ/c2\Phi/c^2 の大きさの補正が付くが、遅い粒子の運動には g00g_{00} の補正だけが現れることをすぐ下で確かめる。式 (2.11.4) に入れると L=−mc(1+2Φ/c2)c2−v2=−mc21+(2Φ−v2)/c2L=-mc\sqrt{(1+2\Phi/c^2)c^2-v^2}=-mc^2\sqrt{1+(2\Phi-v^2)/c^2} で、1+x=1+x/2−x2/8+⋯\sqrt{1+x}=1+x/2-x^2/8+\cdots を使って展開すると

L=−mc2+12mv2−mΦ+m(2Φ−v2)28c2+O(c−4)(2.11.6)L=-mc^2+\frac12mv^2-m\Phi+\frac{m(2\Phi-v^2)^2}{8c^2}+\mathcal{O}(c^{-4})\tag{2.11.6}

を得る。定数 −mc2-mc^2 は運動に関係しないので、c→∞c\to\infty で Newton の Lagrangian (2.11.1)(mg=mi=mm_{\mathrm g}=m_{\mathrm i}=m)に戻る。逆に言えば、Newton 力学に戻るという要請が g00g_{00} の 1/c21/c^2 の係数を 2Φ2\Phi に決めた。gijg_{ij} を −(1+2Ψ/c2)δij-(1+2\Psi/c^2)\delta_{ij} と補正しても、LL には −mc2⋅(−Ψv2/c4)-mc^2\cdot(-\Psi v^2/c^4)、つまり mv2Ψ/c2mv^2\Psi/c^2 の大きさの項しか加わらず、これは式 (2.11.6) の最後の項と同じく 1/c21/c^2 だけ小さい。したがって、Newton 極限で決まるのは g00g_{00} だけである。Ψ\Psi は光の曲がりのように v∼cv\sim c の運動で現れ、Einstein 方程式から Ψ=−Φ\Psi=-\Phi と決まる(第2部第16章)。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの ∣Φ∣/c2→0\lvert \Phi\rvert /c^2\to0 かつ v/c→0v/c\to0(重力のポテンシャルと速さが光速の2乗・光速に比べて小さい) | 証明 証明済み(有限の時間区間で ∇Φ\nabla\Phi が Lipschitz 連続なとき、運動方程式の解のパラメータへの連続依存。gijg_{ij} の補正は Einstein 方程式から第2部第16章で決める) | 行き先 近似の数理 第2章

例題 2.11.1 地球の公転で 1/c21/c^2 の項はどれだけ小さいか ★★

オリジナル太陽のまわりを半径 rr の円軌道で回る地球を考える。Φ=−GM⊙/r\Phi=-GM_\odot/r、v2=GM⊙/rv^2=GM_\odot/r である。

  1. (1) 式 (2.11.6) の最後の項と運動エネルギー 12mv2\frac12mv^2 の比を GM⊙/(rc2)GM_\odot/(rc^2) で表せ。
  2. (2) GM⊙=1.327×1020 m3 s−2GM_\odot=1.327\times10^{20}\,\mathrm{m^3\,s^{-2}}、r=1.496×1011 mr=1.496\times10^{11}\,\mathrm m として数値を求めよ。
解答

(1) 2Φ−v2=−2GM⊙/r−GM⊙/r=−3GM⊙/r2\Phi-v^2=-2GM_\odot/r-GM_\odot/r=-3GM_\odot/r なので、最後の項は m⋅9(GM⊙/r)2/(8c2)m\cdot9(GM_\odot/r)^2/(8c^2) である。12mv2=12mGM⊙/r\frac12mv^2=\frac12mGM_\odot/r で割ると

9(GM⊙/r)2/(8c2)GM⊙/(2r)=94 GM⊙rc2.\frac{9(GM_\odot/r)^2/(8c^2)}{GM_\odot/(2r)}=\frac94\,\frac{GM_\odot}{rc^2}.

(2) GM⊙/(rc2)=1.327×1020/(1.496×1011×8.988×1016)=9.87×10−9GM_\odot/(rc^2)=1.327\times10^{20}/(1.496\times10^{11}\times8.988\times10^{16})=9.87\times10^{-9} で、比は 2.22×10−82.22\times10^{-8} である。地球の公転では Newton 力学からのずれは 10−810^{-8} の大きさで、軌道の形を何周にもわたって積み重ねたときに初めて見える。水星の近日点の移動(第2部第16章)は、この大きさの効果が1世紀にわたって積み重なったものである。

計量の流儀:ほかの教科書との対応

一般相対論の教科書は計量の符号の流儀が2つに分かれる。この本は特殊相対論の章と同じ (+,−,−,−)(+,-,-,-) で、Landau–Lifshitz 第2巻と同じである。Carroll・Wald・Misner–Thorne–Wheeler(MTW)は (−,+,+,+)(-,+,+,+) を使う。曲率の定義はこの本と MTW で同じ式を使うので、Christoffel 記号・Riemann テンソル・Ricci テンソルは成分まで一致し、符号が変わるのはスカラー曲率 RR と、それを含む Einstein–Hilbert 作用の前の係数である。これらの量はまだ定義していないが(第2部第13〜15章)、ほかの教科書と読み比べるときの目印として、表 2.11.1 を先に置く。

表 2.11.1 計量の符号の流儀による違い。「同じ」は成分の値まで一致することを表す
量この本・Landau–Lifshitz (+,−,−,−)(+,-,-,-)Carroll・Wald・MTW (−,+,+,+)(-,+,+,+)
平坦な計量diag(+1,−1,−1,−1)\mathrm{diag}(+1,-1,-1,-1)diag(−1,+1,+1,+1)\mathrm{diag}(-1,+1,+1,+1)(成分は全部 −1-1 倍)
uμuμu_\mu u^\mu+c2+c^2−c2-c^2
粒子の Lagrangian−mcgμνx˙μx˙ν-mc\sqrt{g_{\mu\nu}\dot x^\mu\dot x^\nu}−mc−gμνx˙μx˙ν-mc\sqrt{-g_{\mu\nu}\dot x^\mu\dot x^\nu}
Γρμν\Gamma^\rho{}_{\mu\nu}同じ同じ
RρσμνR^\rho{}_{\sigma\mu\nu}・RμνR_{\mu\nu}同じ同じ(Wald は添字の並びが違うが値は同じ流儀)
スカラー曲率 RR符号が逆符号が逆(正定値の球面ではどちらも +2/a2+2/a^2)
GμνG_{\mu\nu}・Einstein 方程式Gμν=+8πGTμν/c4G_{\mu\nu}=+8\pi GT_{\mu\nu}/c^4同じ
宇宙項Gμν−ΛgμνG_{\mu\nu}-\Lambda g_{\mu\nu}、作用は R+2ΛR+2\LambdaGμν+ΛgμνG_{\mu\nu}+\Lambda g_{\mu\nu}、作用は R−2ΛR-2\Lambda
Einstein–Hilbert 作用の前−c3/(16πG)-c^3/(16\pi G)+c3/(16πG)+c^3/(16\pi G)
TμνT_{\mu\nu} の定義+(2c/−g) δSm/δgμν+(2c/\sqrt{-g})\,\delta S_{\mathrm m}/\delta g^{\mu\nu}−(2/−g) δSm/δgμν-(2/\sqrt{-g})\,\delta S_{\mathrm m}/\delta g^{\mu\nu}

粒子の Lagrangian の行は、この章ですぐ使う。(−,+,+,+)(-,+,+,+) の流儀では時間的な世界線で gμνx˙μx˙ν<0g_{\mu\nu}\dot x^\mu\dot x^\nu<0 なので、根号の中に負号を付けて正にする。どちらの流儀でも作用は「−mc2×-mc^2\times固有時」で同じ値をとり、物理の結果は変わらない。弱い場の式 (2.11.5) は (−,+,+,+)(-,+,+,+) では g00=−(1+2Φ/c2)g_{00}=-(1+2\Phi/c^2) と書かれる。Weinberg の教科書は Riemann テンソル全体の符号がこの本と逆なので、式を写すときは注意する。

1 P. Touboul et al. (2022), Phys. Rev. Lett. 129, 121102(MICROSCOPE 衛星の最終結果。η=[−1.5±2.3(統計)±1.5(系統)]×10−15\eta=[-1.5\pm2.3(\text{統計})\pm1.5(\text{系統})]\times10^{-15})。

木下の勉強ステータス

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