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当てる道具:座標の取り替えと、全微分だけ違う Lagrangian

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第11章 等価原理と重力赤方偏移
目次
  1. 落下するエレベーター
  2. 消せない部分:潮汐力
  3. 重力を計量の曲がりとして書くしかない理由
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第11章 §2.11.2 ★★★ 一様な重力は自由落下する座標へ取り替えると Lagrangian の全微分の項に吸収されて消える。消せないのは2階微分の潮汐力だけで、これが「重力は計量の曲がり」と書くしかない理由になる

落下するエレベーター

地表付近の一様な重力の中で、鉛直方向に動く粒子の Lagrangian は Newton 力学では

L=12mz˙2−mgz(2.11.7)L=\frac12m\dot z^2-mgz\tag{2.11.7}

である(zz は上向き)。自由落下するエレベーターに固定した座標 z′z' を

z=z′−12gt2(2.11.8)z=z'-\frac12gt^2\tag{2.11.8}

で入れる。エレベーターの床 z′=0z'=0 は z=−12gt2z=-\frac12gt^2 で、静止から自由落下する。これは時刻に依存する点変換で、第1部第2章で見たとおり、Lagrangian に新しい座標を代入するだけで新しい座標の Lagrangian が得られる(第1部第2章)。z˙=z˙′−gt\dot z=\dot z'-gt を代入すると

L=12m(z˙′−gt)2−mg(z′−12gt2)=12mz˙′2−mgt z˙′−mgz′+mg2t2.L=\frac12m(\dot z'-gt)^2-mg\Bigl(z'-\frac12gt^2\Bigr) =\frac12m\dot z'^2-mgt\,\dot z'-mgz'+mg^2t^2 .

第2項と第3項は −mgddt(tz′)-mg\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} t}(tz') にまとまり、第4項は ddt(13mg2t3)\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} t}\bigl(\frac13mg^2t^3\bigr) である。したがって

L=12mz˙′2+ddt(−mgtz′+13mg2t3)(2.11.9)L=\frac12m\dot z'^2+\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} t}\Bigl(-mgtz'+\frac13mg^2t^3\Bigr)\tag{2.11.9}

となる。第1部第5章で示したように、Lagrangian に時刻と座標の関数の全微分を足しても Euler–Lagrange 方程式は変わらない(第1部第5章)。したがってエレベーターの中の粒子は自由粒子 L=12mz˙′2L=\frac12m\dot z'^2 と同じ運動をし、一様な重力は座標の取り替えで完全に消える。この計算が成り立ったのは、ポテンシャルエネルギーの係数 mm と運動エネルギーの係数 mm が同じだったからである。両者が違えば 12mi(z˙′−gt)2\frac12m_{\mathrm i}(\dot z'-gt)^2 の交差項 −migtz˙′-m_{\mathrm i}gt\dot z' と −mggz′-m_{\mathrm g}gz' が1つの全微分にまとまらない。

逆向きにたどると、重力の無い所で一様に加速する箱(ロケット)の中の観測者は、一様な重力の中で静止している観測者と区別できない。Einstein はこの観察を原理として仮定した。

定義 2.11.2(等価原理)

弱い等価原理:重力の中の粒子の軌道は、初めの位置と速度だけで決まり、粒子の質量や組成によらない。
Einstein の等価原理:時空の各点のまわりの十分小さな領域では、自由落下する座標系をとると、そこでの物理法則(力学に限らず電磁気・原子の振る舞いを含む)は重力の無い特殊相対論の法則と同じ形になる。この座標系を局所慣性系と呼ぶ。

Einstein の等価原理は、作用 (2.11.3) の言葉では「各点で gμν=ημνg_{\mu\nu}=\eta_{\mu\nu} かつ gμνg_{\mu\nu} の1階微分が 00 になる座標をとれる」と言い換えられる。この主張が任意の gμνg_{\mu\nu} で成り立つこと(1点で Christoffel 記号を 0 にする座標)は、数学の章(第2部第13章の式 (2.13.20))で示す。

消せない部分:潮汐力

一様でない重力ではどうか。点 X(t)\bm{X}(t) で自由落下するエレベーターの中で、そこから ξ\bm{\xi} だけ離れた粒子を考える。粒子の位置 x=X+ξ\bm{x}=\bm{X}+\bm{\xi} の運動方程式 x¨=−∇Φ(x)\ddot{\bm{x}}=-\nabla\Phi(\bm{x}) からエレベーターの運動 X¨=−∇Φ(X)\ddot{\bm{X}}=-\nabla\Phi(\bm{X}) を引き、Φ\Phi を X\bm{X} のまわりで展開すると

ξ¨i=−∑j∂2Φ∂xi∂xj∣Xξj+O(∣ξ∣2)(2.11.10)\ddot\xi_i=-\sum_j\frac{\partial^2\Phi}{\partial x_i\partial x_j}\bigg|_{\bm{X}}\xi_j+\mathcal{O}(\lvert \bm{\xi}\rvert ^2)\tag{2.11.10}

を得る。1階微分(一様な部分)は引き算で消えたが、2階微分の項は残る。この項は ξ\bm{\xi} に比例するので、エレベーターの中のどの粒子にも同じ加速度を与えるわけでなく、どの座標の取り替えでも同時には消せない。これを潮汐力と呼ぶ。地球の外で Φ=−GM/r\Phi=-GM/r のとき、鉛直方向と水平方向の係数は

ξ¨鉛直=+2GMR3ξ鉛直,ξ¨水平=−GMR3ξ水平(2.11.11)\ddot\xi_{\text{鉛直}}=+\frac{2GM}{R^3}\xi_{\text{鉛直}},\qquad \ddot\xi_{\text{水平}}=-\frac{GM}{R^3}\xi_{\text{水平}}\tag{2.11.11}

である。鉛直には引き離され、水平には押し縮められる。2つの水平方向と1つの鉛直方向の係数の和は 2−1−1=02-1-1=0 で、これは真空中で ∇2Φ=0\nabla^2\Phi=0 であることの言い換えである。この「跡が 00」という性質が、一般相対論の真空の方程式 Rμν=0R_{\mu\nu}=0 の Newton 版にあたる(第2部第14・16章)。

重力を計量の曲がりとして書くしかない理由

ここまでの2つの事実を並べると、重力を時空の幾何として書く理由がはっきりする。第一に、自由落下の軌道は物体によらず、初めの点と速度だけで決まる。これは「ある点からある向きに引いたまっすぐな線は1本に決まる」という幾何の直線の性質と同じ構造をしている。電磁気力はこの性質を持たない(q/mq/m で軌道が分かれる)ので、幾何に吸収できない。第二に、一様な重力は座標の取り替えで消えるが、潮汐力は消えない。これは地球の表面の地図と同じ構造である。球面の小さな領域は平らな地図でいくらでも正確に描けるが、球面全体を1枚の平らな地図に歪みなく描くことはできず、その歪みは距離の2次で現れる。重力の1階微分が座標で消え、2階微分が残ることは、計量 gμνg_{\mu\nu} の1階微分は座標で 00 にできるが2階微分の組み合わせ(曲率)は消せない、という幾何の事実と一対一に対応する。

したがって、重力そのものは「座標で消せない部分」、つまり時空の曲率に宿り、局所的な重力加速度は座標の取り方の問題になる。この章の残りでは、曲率が 00 の平坦な時空の中でも、加速する座標をとれば g00g_{00} が場所によって変わり、時計の進みが高さで変わることを見る。曲率そのものは第2部第14章で定義する。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの ∣ξ∣/R→0\lvert \bm{\xi}\rvert /R\to0(エレベーターの大きさが重力の変化する長さに比べて小さい) | 証明 条件付き(Φ\Phi が2回連続微分可能なとき、Taylor の定理で式 (2.11.10) の剰余は O(∣ξ∣2)\mathcal{O}(\lvert \bm{\xi}\rvert ^2)。有限の時間区間での軌道のずれは解のパラメータへの連続依存で評価する) | 行き先 近似の数理 第2章

例題 2.11.2 エレベーターの中で潮汐力が見えるまで ★★

オリジナル高さ h=2.0 mh=2.0\,\mathrm m のエレベーターが地表付近で自由落下している(g=9.807 m s−2g=9.807\,\mathrm{m\,s^{-2}}、地球の半径 R=6.371×106 mR=6.371\times10^6\,\mathrm m、GM/R2=gGM/R^2=g とする)。床と天井に2つの小さな球を、エレベーターに対して静止させて同時に放す。

  1. (1) 2つの球の間の相対加速度の大きさを求めよ。
  2. (2) 2つの球の間隔が 1 mm1\,\mathrm{mm} だけ広がるまでの時間を求めよ。
  3. (3) (2) の時間のあいだにエレベーターは何 m 落ちるか(地面に着く前に潮汐力を見るにはどれだけの高さから落とす必要があるか)。
解答

(1) 式 (2.11.11) の鉛直の式で ξ=h\xi=h とおくと、相対加速度は 2GMh/R3=2gh/R=2×9.807×2.0/(6.371×106)=6.16×10−6 m s−22GMh/R^3=2gh/R=2\times9.807\times2.0/(6.371\times10^6)=6.16\times10^{-6}\,\mathrm{m\,s^{-2}} である。

(2) 式 (2.11.11) の解は ξ(t)=hcosh⁡(kt)\xi(t)=h\cosh(kt)、k=2g/R=1.75×10−3 s−1k=\sqrt{2g/R}=1.75\times10^{-3}\,\mathrm{s^{-1}} で、kt≪1kt\ll1 なら間隔の広がりは h(cosh⁡kt−1)≈12(2gh/R)t2h(\cosh kt-1)\approx\frac12(2gh/R)t^2 である。12×6.16×10−6×t2=1.0×10−3\frac12\times6.16\times10^{-6}\times t^2=1.0\times10^{-3} から t=18.0 st=18.0\,\mathrm s。このとき kt=0.032kt=0.032 で、展開は正しい。

(3) 12gt2=12×9.807×18.02≈1.6×103 m\frac12gt^2=\frac12\times9.807\times18.0^2\approx1.6\times10^3\,\mathrm m である。潮汐力は確かに存在するが、日常の大きさの箱の中では、1.6 km 落ちる間の差が 1 mm にすぎない。等価原理が「十分小さな領域」と断る理由はこの小ささにある。

木下の勉強ステータス

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