解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第11章 §2.11.3 ★★★ 双曲運動の観測者の族で座標を張ると平坦な時空の計量が g00=(1+aξ/c2)2 になる。重力の無い所に、座標の取り方として一様な重力が現れる
双曲運動を観測者の族へ広げる
第2部第3章では、一様な力を受けて静止から動き出す粒子が双曲線の世界線を描くことを示した(第2部第3章)。自分の瞬間の静止系で測った加速度(固有加速度)が一定値 a の観測者の世界線は、固有時 τ を径数にとって
ct=ac2sinhcaτ,x+ac2=ac2coshcaτ(2.11.12)
と書ける。(x+c2/a)2−c2t2=(c2/a)2 で、t=0 に x=0 で静止している。4元速度は uμ=c(cosh(aτ/c),sinh(aτ/c)) で uμuμ=c2、4元加速度の長さは a である。
ロケットの中の観測者が使う座標を作るには、ロケットの各部分に1人ずつ観測者を置き、その族で座標を張る。位置 ξ の観測者の世界線を、同じ中心 x=−c2/a を持つ双曲線のうち半径 c2/a+ξ のものとし、
ct=(ac2+ξ)sinhcaT,x+ac2=(ac2+ξ)coshcaT(2.11.13)
とおく(y,z はそのまま)。(T,ξ) をRindler 座標と呼ぶ。T は ξ=0 の観測者の固有時に一致するように選んだ。
X=c2/a+ξ、θ=aT/c とおくと d(ct)=sinhθdX+Xcoshθdθ、dx=coshθdX+Xsinhθdθ で、c2dt2−dx2=X2dθ2−dX2 となる。dθ=adT/c、dX=dξ を入れると
ds2=(1+c2aξ)2c2dT2−dξ2−dy2−dz2(2.11.14)
を得る。これが一様に加速する観測者の見る計量である。計量の成分は T によらず、g00=(1+aξ/c2)2 だけが場所 ξ に依存する。aξ≪c2 で展開すると g00≈1+2aξ/c2 で、式 (2.11.5) の Φ=aξ、つまり上向きの距離 ξ に比例する一様な重力のポテンシャルと一致する。重力の無い平坦な時空を座標で書き直しただけで、一様な重力の計量が現れた。これが等価原理の計量の言葉での表現である。
各部分の固有加速度と地平面
ξ が一定の観測者は、固有時 dτ=(1+aξ/c2)dT を刻み、半径 X=c2/a+ξ の双曲線を描く。式 (2.11.12) の c2/a を X に替えて読むと、その固有加速度は
a(ξ)=Xc2=1+aξ/c2a(2.11.15)
である。前の方(ξ>0)の観測者ほど加速度が小さい。観測者どうしの距離 ξ1−ξ2 は、どの時刻 T でも、各観測者の瞬間の静止系で測って変わらない(式 (2.11.14) の dT=0 の切り口で dξ が距離そのもの)。長さを保ったまま加速するロケットは、前と後ろで違う加速度を持たなければならない。これは第2部第3章の双曲運動を族に広げたときに初めて出てくる、Newton 力学に無い性質である。
ξ→−c2/a で g00→0 になる。この面は図 2.11.1 の光円錐 ct=±(x+c2/a) に当たり、そこより向こう(ct>x+c2/a の領域)から出た光はロケットのどの観測者にも届かない。この面をRindler の地平面と呼ぶ。地平面のある観測者には量子論の真空が有限の温度の熱浴に見える(Unruh 効果)ことを、第5部第12章で示す。

図 2.11.1 Rindler 座標。実線の双曲線が ξ 一定の観測者(内側ほど ξ が小さく加速度が大きい)、原点から出る直線が T 一定の面。破線の光円錐が地平面 ξ=−c2/a。点線は時刻 T=0 に ξ0 で放した物体で、慣性系では静止しているが、ロケットの観測者には加速して落ちていくように見える(例題 2.11.3)
Rindler 座標の中の粒子と Noether の保存量
ロケットの中で ξ 方向に動く粒子の Lagrangian は、作用 (2.11.3) を T を径数として書けば
L=−mcN(ξ)2c2−ξ˙2,N(ξ)=1+c2aξ,ξ˙=dTdξ(2.11.16)
である。L は T を含まないので、第1部第8章のエネルギー関数(時刻をずらす変換の Noether の保存量。第1部第10章)
E=ξ˙∂ξ˙∂L−L=N(ξ)2−ξ˙2/c2mc2N(ξ)2(2.11.17)
が保存する。ξ に静止している粒子では E=mc2N(ξ) で、高い所ほど大きい。aξ≪c2 では E≈mc2+maξ となり、静止エネルギーに一様な重力の位置エネルギー maξ を足したものになる。この E を次の節の重力赤方偏移で使う。
例題 2.11.3 ロケットの中で放した物体 ★★★
オリジナル固有加速度 a のロケットの中で、時刻 T=0 に位置 ξ0 で物体を静かに放す。
- (1) 式 (2.11.17) の E の値と、ξ における ξ˙2 を求めよ。
- (2) 慣性系で見ると、放した物体は x=ξ0 に静止したままである。このことから ξ(T) を求め、(1) の ξ˙2 を満たすことを確かめよ。
- (3) T→∞ で ξ(T) はどこに近づくか。
解答
(1) T=0 で ξ˙=0 なので E=mc2N0、N0=1+aξ0/c2。式 (2.11.17) を ξ˙2 について解くと N2−ξ˙2/c2=N4/N02 から
ξ˙2=c2N(ξ)2(1−N02N(ξ)2).
ξ<ξ0(N<N0)でのみ正で、物体は下へ落ちる。
(2) 物体は力を受けないので慣性系では静止し、x=ξ0 のままである(T=0 では x=ξ)。式 (2.11.13) の第2式に x=ξ0 を入れると (c2/a+ξ)cosh(aT/c)=c2/a+ξ0 で、
ξ(T)=cosh(aT/c)c2/a+ξ0−ac2,N(ξ(T))=cosh(aT/c)N0.
微分すると ξ˙=−cN0sinh(aT/c)/cosh2(aT/c)。一方 c2N2(1−N2/N02)=c2N02cosh−2(1−cosh−2)=c2N02sinh2/cosh4 で、ξ˙2 と一致する。
(3) cosh(aT/c)→∞ なので ξ→−c2/a、つまり地平面に近づく。ロケットの観測者には、物体は地平面に向かって落ち続けるが、有限の時刻 T では地平面に届かないように見える。慣性系ではただ静止しているだけの物体が、座標の取り方によってこう見える。これは第2部第17章で Schwarzschild 半径が「座標の特異点にすぎない」ことを示すときと同じ構造である。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com