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出てくるもの3:GPS と光格子時計

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第11章 等価原理と重力赤方偏移
目次
  1. 動いている時計と高い所の時計
  2. 光格子時計と相対論的測地
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第11章 §2.11.5 ★★ 軌道上の時計の進みは 1+Φ/c2−v2/(2c2)1+\Phi/c^2-v^2/(2c^2)。GPS では1日に重力で +45.7 μ+45.7\,\mus、速さで −7.2 μ-7.2\,\mus、差し引き +38.5 μ+38.5\,\mus。光格子時計は 1 cm の高さの違い(1.1×10−181.1\times10^{-18})を読む

動いている時計と高い所の時計

前の節では静止した時計を比べた。動いている時計も合わせると、作用 (2.11.3) の被積分関数そのものが時計の進みを与える。弱い場の計量で、速度 v\bm{v} で動く時計の固有時は

dτdt=g00−v2c2≈1+Φc2−v22c2(2.11.22)\frac{\mathrm{d} \tau}{\mathrm{d} t}=\sqrt{g_{00}-\frac{v^2}{c^2}}\approx1+\frac{\Phi}{c^2}-\frac{v^2}{2c^2}\tag{2.11.22}

である。右辺の第2項が高さ(重力のポテンシャル)による進み、第3項が第2部第3章の速さによる遅れである。式 (2.11.6) と見比べると、−mc2 dτ/dt-mc^2\,\mathrm{d}\tau/\mathrm{d} t が Lagrangian そのもので、「作用は −mc2×-mc^2\times固有時」という関係が、そのまま時計の進みの式になっていることが分かる。

地球を中心とする慣性系(地球と一緒に自転しない系)の座標時刻 tt を共通の目盛りにとり、半径 rr の円軌道を回る衛星の時計と地上の時計を比べる。衛星では Φ=−GM/r\Phi=-GM/r、v2=GM/rv^2=GM/r なので、地上の時計(Φ=−GM/R\Phi=-GM/R、自転の速さは小さいので後で別に見積もる)に対する衛星の時計の進みの割合は

Δτ衛星−Δτ地上Δt≈GMc2(1R−1r)−GM2rc2(2.11.23)\frac{\Delta\tau_{\text{衛星}}-\Delta\tau_{\text{地上}}}{\Delta t}\approx\frac{GM}{c^2}\Bigl(\frac1R-\frac1r\Bigr)-\frac{GM}{2rc^2}\tag{2.11.23}

である。第1項(重力)は衛星を進め、第2項(速さ)は遅らせる。両者が釣り合うのは 1/R=3/(2r)1/R=3/(2r)、つまり r=3R/2r=3R/2 のときで(図 2.11.3)、それより高い軌道では衛星の時計が進む。

図

図 2.11.3 円軌道の時計の、地上の時計に対する進みの割合(式 (2.11.23)。地上の自転は無視)。細い線が重力の項と速さの項、太い線が正味。どれも 1/c21/c^2 の1次の式(近似)なので実線で描いた。r=3R/2r=3R/2 で釣り合い、GPS の軌道(r=4.17Rr=4.17R、黒い点)では 4.46×10−104.46\times10^{-10} 進む

例題 2.11.5 GPS の衛星の時計 ★★★

オリジナルGPS の衛星は半径 r=2.656×107 mr=2.656\times10^7\,\mathrm m の円軌道を回る。GM=3.986×1014 m3 s−2GM=3.986\times10^{14}\,\mathrm{m^3\,s^{-2}}(地球)、地球の半径 R=6.371×106 mR=6.371\times10^6\,\mathrm m とする。

  1. (1) 衛星の周回の速さと周期を求めよ。
  2. (2) 式 (2.11.23) の重力の項と速さの項を、それぞれ1日(86400 s86400\,\mathrm s)あたりの時間のずれに直せ。正味は何 μ\mus か。
  3. (3) GPS の受信機は、衛星からの信号の到着時刻の差を光の速さで距離に直して位置を決める。補正しなければ、1日でどれだけの距離の誤差がたまるか。
解答

(1) v=GM/r=3.986×1014/2.656×107=3.87×103 m s−1v=\sqrt{GM/r}=\sqrt{3.986\times10^{14}/2.656\times10^7}=3.87\times10^3\,\mathrm{m\,s^{-1}}、周期は 2πr3/GM=4.31×104 s=11.972\pi\sqrt{r^3/GM}=4.31\times10^4\,\mathrm s=11.97 時間(ほぼ半日)。

(2) 重力の項は GM(1/R−1/r)/c2=3.986×1014×(1.570×10−7−3.765×10−8)/(8.988×1016)=5.29×10−10GM(1/R-1/r)/c^2=3.986\times10^{14}\times(1.570\times10^{-7}-3.765\times10^{-8})/(8.988\times10^{16})=5.29\times10^{-10} で、1日に 45.7 μs45.7\,\mu\mathrm s 進む。速さの項は GM/(2rc2)=v2/(2c2)=8.35×10−11GM/(2rc^2)=v^2/(2c^2)=8.35\times10^{-11} で、1日に 7.21 μs7.21\,\mu\mathrm s 遅れる。正味は +38.5 μs+38.5\,\mu\mathrm s で、衛星の時計が進む。

(3) 38.5×10−6 s×c=1.15×104 m38.5\times10^{-6}\,\mathrm s\times c=1.15\times10^4\,\mathrm m、つまり1日に約 11.5 km の誤差がたまる。

地上の時計の自転の速さ(赤道で ω⊕R=465 m s−1\omega_\oplus R=465\,\mathrm{m\,s^{-1}})による遅れは1日に約 0.10 μs0.10\,\mu\mathrm s で、上の値に比べて小さい。実際の GPS では、自転と地球の扁平さを含めた地表(ジオイド)のポテンシャルを使い、衛星の時計の基準の振動数を打ち上げ前に 10.23 MHz10.23\,\mathrm{MHz} から 4.4647×10−104.4647\times10^{-10} だけ低い 10.22999999543 MHz10.22999999543\,\mathrm{MHz} に合わせておく1N. Ashby (2003), Living Rev. Relativ. 6, 1。この値は −3GM/(2rc2)−Φ0/c2-3GM/(2rc^2)-\Phi_0/c^2 で、Φ0/c2=−6.96927×10−10\Phi_0/c^2=-6.96927\times10^{-10} は自転を含めたジオイドのポテンシャル。下の脚注へ。(2) の正味 4.46×10−104.46\times10^{-10} とよく合う。軌道のわずかな楕円による周期的なずれは、受信機の側で補正する。

光格子時計と相対論的測地

地表付近で高さが hh だけ違う2つの時計の進みの差は gh/c2gh/c^2 である。h=1 cmh=1\,\mathrm{cm} では

ghc2=9.807×0.01(2.998×108)2=1.09×10−18(2.11.24)\frac{gh}{c^2}=\frac{9.807\times0.01}{(2.998\times10^8)^2}=1.09\times10^{-18}\tag{2.11.24}

になる。光の振動数で動く時計(光格子時計など)は不確かさ 10−1810^{-18} の大きさに達しているので、2台の時計の進みを比べるだけで、両者の高さの違い(正確には重力のポテンシャルの違い)を cm の精度で読み取れる。これを相対論的測地と呼ぶ。式 (2.11.20) を「時計の進みの差から Φ\Phi の差を測る」向きに読んだものである。光格子時計そのものの仕組み(魔法波長の光格子に原子を閉じ込める)は、光学と量子エレクトロニクス 第28章で扱う(光学と量子エレクトロニクス 第28章)。

実験の例を2つ挙げる。Chou らは2台の Al+^+ イオンの光時計の一方を 33 cm33\,\mathrm{cm} 持ち上げ、進みの差を検出した2C. W. Chou, D. B. Hume, T. Rosenband and D. J. Wineland (2010), Science 329, 1630。下の脚注へ。Takamoto らは持ち運べる2台の光格子時計を東京スカイツリーの地上と高さ約 450 m450\,\mathrm m の展望台に置き、重力赤方偏移の予言からのずれが (1.4±9.1)×10−5(1.4\pm9.1)\times10^{-5} の範囲に収まることを示した3M. Takamoto et al. (2020), Nature Photonics 14, 411。下の脚注へ。

例題 2.11.6 塔の上の時計と、時計で高さを測る精度 ★★

オリジナルg=9.807 m s−2g=9.807\,\mathrm{m\,s^{-2}} とする。

  1. (1) 高さが 450 m450\,\mathrm m 違う2つの時計の進みの差の割合と、1日あたりの時間の差を求めよ。
  2. (2) 高さが 33 cm33\,\mathrm{cm} 違うときの進みの差の割合を求めよ。
  3. (3) 2台の時計の進みの差の割合を 1.0×10−181.0\times10^{-18} の精度で測れるとき、高さの違いをどれだけの精度で決められるか。
解答

(1) gh/c2=9.807×450/(8.988×1016)=4.91×10−14gh/c^2=9.807\times450/(8.988\times10^{16})=4.91\times10^{-14}。1日では 4.91×10−14×86400 s=4.24×10−9 s4.91\times10^{-14}\times86400\,\mathrm s=4.24\times10^{-9}\,\mathrm s、つまり上の時計が 4.24 ns 進む。

(2) 9.807×0.33/(8.988×1016)=3.60×10−179.807\times0.33/(8.988\times10^{16})=3.60\times10^{-17}。

(3) δh=c2×1.0×10−18/g=9.2×10−3 m\delta h=c^2\times1.0\times10^{-18}/g=9.2\times10^{-3}\,\mathrm m、約 0.92 cm0.92\,\mathrm{cm} である。水準測量で地点どうしの高さを比べるには、測量の線を何十 km もつなぐ必要があるが、時計を比べる方法では、2地点を光ファイバーでつなげば離れた場所の高さの違いを直接読める。

1 N. Ashby (2003), Living Rev. Relativ. 6, 1。この値は −3GM/(2rc2)−Φ0/c2-3GM/(2rc^2)-\Phi_0/c^2 で、Φ0/c2=−6.96927×10−10\Phi_0/c^2=-6.96927\times10^{-10} は自転を含めたジオイドのポテンシャル。

2 C. W. Chou, D. B. Hume, T. Rosenband and D. J. Wineland (2010), Science 329, 1630。

3 M. Takamoto et al. (2020), Nature Photonics 14, 411。

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