解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第11章 §2.11.6 ★★ 慣性力・光子の「質量」の議論・エレベーターの Doppler の議論は、Rindler 計量の g00 の比を 1/c2 の1次で展開したものにあたる
慣性力
学部の力学では、加速度 A で並進する座標系の運動方程式を
mx¨′=F−mA
と書き、−mA を慣性力(見かけの力)と呼ぶ。慣性力が質量に比例するので、一様な重力 mg と区別できない、というのが等価原理の授業での説明である。この章ではこれを、座標の取り替え (2.11.8) で Lagrangian が全微分の項だけ変わること(式 (2.11.9))として書いた。授業の形は運動方程式に力を1つ足す操作、この章の形は作用の被積分関数を書き換える操作で、後者は「何が消えて何が残るか」(全微分は消え、潮汐力の2階微分は残る)を式の上で区別できる。
光子の「重さ」と Doppler の議論
重力赤方偏移は、授業や教養書では次の2つの議論で説明されることが多い。
1つ目は、エネルギー hν の光子に質量 hν/c2 を持たせ、高さ h だけ上る間に位置エネルギー (hν/c2)gh を失う、という議論で、ν′=ν(1−gh/c2) を得る。この章の式 (2.11.21) の g00Eloc= 一定を 1/c2 の1次で展開したもの Eloc(1+Φ/c2)= 一定と同じ式である。ただし光子を「質量 hν/c2 の Newton の粒子」として扱う議論は、同じ考え方で太陽をかすめる光の曲がりを計算すると 0.875′′ になり、一般相対論の値 1.75′′ の半分しか出ない(第2部第16章)。不足するのは、Newton 極限では見えない gij の補正 Ψ の分で、式 (2.11.6) の後で述べたとおり、光のように速い粒子で初めて現れる。
2つ目は、加速度 a のロケットの床から天井(高さ h)へ光を送る議論である。光が天井に届くまでの時間はほぼ h/c で、その間に天井は速さ ah/c を得て光源から遠ざかるので、Doppler 効果で ν′=ν(1−ah/c2) となる。この議論は特殊相対論だけで閉じていて、この章の Rindler 計量の結果の1次の部分を取り出したものである(例題 2.11.7)。
表 2.11.2 授業で習った形とこの章の形| 量 | 授業で習った形 | この章の形 |
| 重力の中の運動 | mx¨=−m∇Φ | S=−mc∫gμνdxμdxν、g00=1+2Φ/c2 |
| 慣性力 | −mA を力として足す | 座標の取り替えで L が全微分だけ変わる |
| 等価原理 | 慣性力と重力は区別できない | 局所慣性系で gμν=ημν、1階微分は 0 |
| 運動の時計の遅れ | dτ=dt1−v2/c2 | dτ=dtg00−v2/c2 |
| 重力赤方偏移 | ν′=ν(1−gh/c2) | νB/νA=g00(A)/g00(B) |
| 位置エネルギー | mgh | E=g00Eloc の 1/c2 の1次 |
例題 2.11.7 Doppler の議論と Rindler 計量の厳密な比 ★★
オリジナル固有加速度 a のロケットの後端(ξ=0)から前端(ξ=h)へ光を送る。
- (1) Rindler 計量 (2.11.14) と式 (2.11.19) から、前端で受ける振動数の比 νB/νA を厳密に求めよ。
- (2) (1) を ah/c2 で展開し、Doppler の議論の答え 1−ah/c2 との差の主要項を求めよ。
- (3) (1) の比を、前端と後端の固有加速度の比で書き直せ。
解答
(1) g00(ξ)=(1+aξ/c2)2 なので
νAνB=g00(h)g00(0)=1+ah/c21.
平坦な時空の中の話なので、これは近似を含まない。
(2) 1/(1+ϵ)=1−ϵ+ϵ2−⋯(ϵ=ah/c2)なので、差の主要項は +(ah/c2)2 である。Doppler の議論は「天井が得る速さは ah/c」「到着まで h/c」と1次の量だけを使っているので、2次の項は再現できない。地表付近の h=10m なら ϵ≈10−15 で、2次の差は 10−30 の大きさにすぎない。
(3) 式 (2.11.15) から前端の固有加速度は a(h)=a/(1+ah/c2) なので、νB/νA=a(h)/a(0)。受ける振動数の比は、両端の固有加速度の比に等しい。加速度が小さい前端ほど時計が速く進む。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com