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取り出すモードと物質のモデル:時計遷移と局部発振器

2026年10月15日11分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第28章 原子時計
目次
  1. 時計の3つの部品
  2. Q 値:周波数と線の幅の比
  3. 光の周波数を数える
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

光学と量子エレクトロニクス 第28章 §28.1 ★★★ 時計の良さは遷移の周波数と観測できる線の幅の比(Q 値)で決まる。光の遷移はマイクロ波より5桁周波数が高く、その周波数は光周波数コムでマイクロ波の数に直して数える

第24章(第24章)では、寿命の長い遷移の線の幅が、光と原子が相互作用する時間で決まることを見た。2つの π/2\pi/2 パルスの間に自由な時間 tft_{\mathrm f} を置く Ramsey の方法では、縞の幅は 1/(2tf)1/(2t_{\mathrm f}) で、パルスの強さによらなかった。この章では、この細い縞の中心にレーザー(またはマイクロ波)の周波数を合わせ続ける装置、すなわち原子時計を組み立てる。

この章で取り出すモードは、時計遷移を駆動する1つのモード(局部発振器と呼ぶ発振器の出す、周波数を調整できる光またはマイクロ波)と、原子を空間に止めておくための定在波の光のモード(光格子)である。物質のモデルは、寿命が十分長い時計遷移 ∣g⟩↔∣e⟩| g \rangle \leftrightarrow| e \rangle を持つ2準位原子で、その重心が格子の中で振動する。結合は第18章(第18章)の双極子相互作用(マイクロ波の場合は磁気双極子の相互作用)で、時計遷移の駆動には第19章(第19章)のパルスの面積の考え方をそのまま使う。格子の光は時計遷移と共鳴しないので、原子には第25章(第25章)の双極子力のポテンシャルとしてだけ働く。

28.1節では、時計の性能を決める量(遷移の周波数と縞の幅の比)を定義し、マイクロ波の Cs 時計から光の時計へ移る理由と、光の周波数を光周波数コムで数える手順を述べる。28.2節では、Ramsey の縞の傾きから周波数のずれを読む方法と、原子の数が有限なことによる雑音(量子射影雑音)を出し、時計の安定度を Allan 分散で表す。28.3節では、原子の運動による周波数のずれを光格子で抑え、格子の光が遷移の周波数を動かす問題を、基底状態と励起状態の分極率が等しくなる魔法波長で解く。28.4節では、静止した時計の進みが重力ポテンシャルで変わる式から、高さ 1 cm1\,\mathrm{cm} の差が周波数の 1.09×10−181.09\times10^{-18} のずれになることを出す。28.5節で置いた近似と、重力赤方偏移を確かめた実験を述べ、28.6節で学部で習う遷移確率・Doppler 効果・光子のエネルギーの議論・平均の標準誤差と並べる。

この章では、離調を記法の正本どおり Δ=ωL−ω0\Delta=\omega_{\mathrm L}-\omega_0(局部発振器の角周波数から時計遷移の角周波数を引いた差)と書く。周波数の相対的なずれ y=(νL−ν0)/ν0y=(\nu_{\mathrm L}-\nu_0)/\nu_0 を時計の性能の比較に使い、yy の揺らぎの大きさで時計の安定度を表す。温度が出てくるので、時間の長さには TT を使わず、自由な時間を tft_{\mathrm f}、1回の測定の繰り返しの周期を tct_{\mathrm c}、平均する時間を τ\tau と書く。

時計の3つの部品

時計は、決まった周期で振動するものと、その振動の回数を数えるものからできている。原子時計では、振動するものは局部発振器(水晶発振器・マイクロ波の発振器・レーザー)で、その周波数 νL\nu_{\mathrm L} を原子の遷移の周波数 ν0\nu_0 に合わせ続ける。原子は振動の回数を数えるのでなく、νL\nu_{\mathrm L} が ν0\nu_0 からどちら向きにどれだけずれたかを知らせる。したがって時計の部品は3つで、(i) 局部発振器、(ii) ずれを読む原子の分光、(iii) 発振器の振動の回数を数えて時刻を出す計数器である。

原子の遷移を基準にする理由は、同じ種類の原子はどれも同じ遷移の周波数を持ち、その値が自然の定数(電子の質量・電荷・微細構造定数など)だけで決まるからである。振り子や水晶の振動数は、作り方と温度で変わる。1967 年の第13回国際度量衡総会は、133Cs{}^{133}\mathrm{Cs} の基底状態の超微細構造の2つの準位の間の遷移の周波数をちょうど 9 192 631 770 Hz9\,192\,631\,770\,\mathrm{Hz} と定め、これで秒を定義した。

Q 値:周波数と線の幅の比

局部発振器の周波数を合わせるには、原子の線の中心を探す。線の半値全幅を δν\delta\nu とすると、中心を決める精度は、雑音が同じなら δν\delta\nu に比例する。相対的な精度では、δν\delta\nu を周波数 ν0\nu_0 で割った量が問題になる。この逆数

Q=ν0δν(28.1)Q=\frac{\nu_0}{\delta\nu}\tag{28.1}

を線の Q 値と呼ぶ。第5章(第5章)の共振器の Q 値と同じ定義である。

第24章の結果から、Ramsey の方法での中央の縞の半値全幅は δν=1/(2tf)\delta\nu=1/(2t_{\mathrm f}) で、

Q=2ν0tf(28.2)Q=2\nu_0t_{\mathrm f}\tag{28.2}

になる。Q 値を上げる方法は2つあり、自由な時間 tft_{\mathrm f} を延ばすことと、遷移の周波数 ν0\nu_0 を上げることである。

マイクロ波の Cs 時計の歴史は、tft_{\mathrm f} を延ばす歴史だった。熱い原子のビームを2つの共振器に通す装置では、tft_{\mathrm f} は共振器の間の距離を原子の速さで割った時間である。レーザー冷却(第26章)で冷やした原子を上へ打ち上げ、同じ共振器を上りと下りに2回通す装置(原子の噴水)では、tft_{\mathrm f} は打ち上げた原子が戻ってくるまでの時間になる。光の時計は、もう1つの方法、ν0\nu_0 を上げることを使う。ストロンチウム 87Sr{}^{87}\mathrm{Sr} の 5s2 1S0→5s5p 3P05s^2\,{}^1S_0\to5s5p\,{}^3P_0 の遷移は波長 698.4 nm698.4\,\mathrm{nm}、周波数 ν0=4.292×1014 Hz\nu_0=4.292\times10^{14}\,\mathrm{Hz} で、Cs の 4.67×1044.67\times10^{4} 倍である。励起状態 3P0{}^3P_0 は全角運動量が 00 で、1S0{}^1S_0 との間の1光子の電気双極子遷移はスピンの向きと全角運動量の両方の選択則で禁じられている。核スピンとの超微細相互作用でわずかに許されるだけなので、自然幅は mHz\mathrm{mHz} の程度で、tft_{\mathrm f} を秒の程度にしても線の幅は自然幅で決まらない。

例題 28.1 ビーム・噴水・光格子の Q 値 ★★

オリジナル3種類の時計の Q 値を比べる。

  1. (1) Cs のビーム時計で、2つの相互作用の領域の間隔が L=1.00 mL=1.00\,\mathrm m、原子の速さが v=200 m s−1v=200\,\mathrm{m\,s^{-1}} のとき、tft_{\mathrm f}、縞の半値全幅、Q 値を求めよ。
  2. (2) Cs の噴水時計で、原子が共振器から高さ H=0.50 mH=0.50\,\mathrm m だけ上がって戻るとき、tft_{\mathrm f}、半値全幅、Q 値を求めよ(g=9.807 m s−2g=9.807\,\mathrm{m\,s^{-2}})。
  3. (3) Sr の光の時計で tf=0.50 st_{\mathrm f}=0.50\,\mathrm s のとき、Q 値を求めよ。
  4. (4) (1) の原子の速さによる時間の遅れ(2次の Doppler 効果)−v2/(2c2)-v^2/(2c^2) を求め、噴水の原子(1 cm s−11\,\mathrm{cm\,s^{-1}} の程度)と比べよ。
解答

(1) tf=L/v=5.0 mst_{\mathrm f}=L/v=5.0\,\mathrm{ms}。半値全幅は 1/(2tf)=100 Hz1/(2t_{\mathrm f})=100\,\mathrm{Hz} で、Q=9.19×109/100=9.19×107Q=9.19\times10^{9}/100=9.19\times10^{7} である。

(2) 高さ HH まで上がって戻る時間は、上りと下りの時間の和で tf=22H/g=22×0.50/9.807 s=0.639 st_{\mathrm f}=2\sqrt{2H/g}=2\sqrt{2\times0.50/9.807}\,\mathrm s=0.639\,\mathrm s である。半値全幅は 1/(2tf)=0.783 Hz1/(2t_{\mathrm f})=0.783\,\mathrm{Hz}、Q=2ν0tf=1.17×1010Q=2\nu_0t_{\mathrm f}=1.17\times10^{10} になる。ビームより2桁大きい。

(3) Q=2×4.292×1014×0.50=4.29×1014Q=2\times4.292\times10^{14}\times0.50=4.29\times10^{14} で、噴水の Cs よりさらに4桁大きい。同じ tft_{\mathrm f} なら、Q 値の比は周波数の比 4.67×1044.67\times10^4 そのものである。

(4) v2/(2c2)=(200)2/(2×(2.998×108)2)=2.23×10−13v^2/(2c^2)=(200)^2/(2\times(2.998\times10^{8})^2)=2.23\times10^{-13} で、原子の時計はこの割合だけ遅れて進む。速さの分布があるので、この補正は分布の平均で見積もる必要があり、ビーム時計の精度を制限する。噴水の原子では (0.01)2/(2c2)=5.6×10−22(0.01)^2/(2c^2)=5.6\times10^{-22} で、問題にならない。冷えた原子を使う利点は tft_{\mathrm f} が長いことだけでなく、運動による周波数のずれが小さいことにもある。

光の周波数を数える

光の時計には、マイクロ波の時計にない問題が1つある。4×1014 Hz4\times10^{14}\,\mathrm{Hz} の振動を直接数える電子回路は無い。この問題は、第23章(第23章)の光周波数コムで解ける。モード同期レーザーのスペクトルは等間隔の櫛

νn=nνrep+νceo(28.3)\nu_n=n\nu_{\mathrm{rep}}+\nu_{\mathrm{ceo}}\tag{28.3}

で、繰り返しの周波数 νrep\nu_{\mathrm{rep}} とオフセットの周波数 νceo\nu_{\mathrm{ceo}} はどちらもマイクロ波の範囲にあり、電子回路で数えられる。時計のレーザーの光を櫛の歯の1本 νn\nu_n と重ねると、差の周波数 νb\nu_{\mathrm b}(うなり)が出る。νb\nu_{\mathrm b} も数えられるので、時計のレーザーの周波数は

νL=nνrep+νceo±νb(28.4)\nu_{\mathrm L}=n\nu_{\mathrm{rep}}+\nu_{\mathrm{ceo}}\pm\nu_{\mathrm b}\tag{28.4}

で決まる。符号は νrep\nu_{\mathrm{rep}} や νceo\nu_{\mathrm{ceo}} を少し変えたとき νb\nu_{\mathrm b} がどちらへ動くかで判定する。残る未知数は整数 nn で、これは精度の低い波長計で νL\nu_{\mathrm L} を νrep/2\nu_{\mathrm{rep}}/2 より良い精度で測っておけば1つに決まる。

コムは逆向きにも使える。νb\nu_{\mathrm b} と νceo\nu_{\mathrm{ceo}} を一定に保つように νrep\nu_{\mathrm{rep}} を制御すると、νrep=(νL−νceo∓νb)/n\nu_{\mathrm{rep}}=(\nu_{\mathrm L}-\nu_{\mathrm{ceo}}\mp\nu_{\mathrm b})/n は光の時計の安定度をそのまま受け継いだマイクロ波になる。νceo\nu_{\mathrm{ceo}} と νb\nu_{\mathrm b} は νL\nu_{\mathrm L} の 10−710^{-7} の程度なので、それらの揺らぎは νL\nu_{\mathrm L} に対して 10−710^{-7} 倍に縮んで入るだけである。こうして光の時計をマイクロ波の計数器と、ほかの光の時計とにつなぐことができる。

例題 28.2 コムで光の周波数を読む ★★

オリジナルνrep=250 MHz\nu_{\mathrm{rep}}=250\,\mathrm{MHz}、νceo=+20.0 MHz\nu_{\mathrm{ceo}}=+20.0\,\mathrm{MHz} のコムで、Sr の時計のレーザーとのうなり νb=37.5 MHz\nu_{\mathrm b}=37.5\,\mathrm{MHz} を測った。符号を確かめたところ、レーザーは近くの歯より上にあった。波長計の読みは 429.22804 THz429.22804\,\mathrm{THz} だった。

  1. (1) 歯の番号 nn を決め、レーザーの周波数を求めよ。
  2. (2) nn を正しく決めるために、波長計にはどれだけの精度が要るか。
解答

(1) 式 (28.4) を nn について解くと n=(νL−νceo−νb)/νrepn=(\nu_{\mathrm L}-\nu_{\mathrm{ceo}}-\nu_{\mathrm b})/\nu_{\mathrm{rep}} で、波長計の値を入れると(429.22804×1012−57.5×106)/(250×106)=1 716 911.93(429.22804\times10^{12}-57.5\times10^{6})/(250\times10^{6})=1\,716\,911.93 になる。最も近い整数を取って n=1 716 912n=1\,716\,912 である。このとき nνrep=429.228000 THzn\nu_{\mathrm{rep}}=429.228000\,\mathrm{THz} で、

νL=429.228000 THz+20.0 MHz+37.5 MHz=429.2280575 THz\nu_{\mathrm L}=429.228000\,\mathrm{THz}+20.0\,\mathrm{MHz}+37.5\,\mathrm{MHz}=429.2280575\,\mathrm{THz}

になる。波長計の値との差は 17.5 MHz17.5\,\mathrm{MHz} で、νrep/2\nu_{\mathrm{rep}}/2 より小さいので nn の選び方は正しい。

(2) 隣の歯との区別がつくには、波長計の誤差が歯の間隔の半分 νrep/2=125 MHz\nu_{\mathrm{rep}}/2=125\,\mathrm{MHz} より小さければよい。相対的には 2.9×10−72.9\times10^{-7} で、市販の波長計で足りる。nn が決まった後の νL\nu_{\mathrm L} の精度は、νrep\nu_{\mathrm{rep}} を数える精度(を nn 倍したもの)と νceo\nu_{\mathrm{ceo}}・νb\nu_{\mathrm b} を数える精度で決まり、波長計の精度とは関係しない。

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