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当てる道具:Killing ベクトルの Noether と有効ポテンシャル

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第16章 Schwarzschild 解と太陽系の検証
目次
  1. 測地線の Lagrangian
  2. 2つの保存量
  3. 有効ポテンシャル
  4. 軌道の方程式
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第16章 §2.16.2 ★★★ 計量が tt と φ\varphi によらないことから Noether で2つの保存量を出し、動径の運動を Kepler 問題と同じ「1次元+有効ポテンシャル」に落とす

測地線の Lagrangian

第2部第12章で、粒子の世界線は固有時の作用 −mc∫ds-mc\int\mathrm{d} s の停留で決まり、径数をアフィン径数に取れば Lagrangian をL=12gμνx˙μx˙νL=\frac12g_{\mu\nu}\dot x^\mu\dot x^\nu に置き換えてよいことを示した。質量のある粒子では径数を固有時 τ\tau に取り、

gμνx˙μx˙ν=c2( ˙=d/dτ)(2.16.11)g_{\mu\nu}\dot x^\mu\dot x^\nu=c^2\qquad(\dot{\ }=\mathrm{d}/\mathrm{d}\tau)\tag{2.16.11}

が運動の途中ずっと成り立つ(LL は時刻によらないので LL 自身が保存し、その値を初めに c2/2c^2/2 に合わせておく)。光では固有時が 0 なので任意のアフィン径数 λ\lambda を使い、右辺が 0 になる。Schwarzschild 計量 (2.16.10) に対しては

L=12[(1−rsr)c2t˙2−r˙21−rs/r−r2θ˙2−r2sin⁡2θ φ˙2](2.16.12)L=\frac12\Bigl[\Bigl(1-\frac{r_{\mathrm s}}{r}\Bigr)c^2\dot t^2-\frac{\dot r^2}{1-r_{\mathrm s}/r}-r^2\dot\theta^2-r^2\sin^2\theta\,\dot\varphi^2\Bigr]\tag{2.16.12}

である。θ\theta の Euler–Lagrange 方程式は θ=π/2\theta=\pi/2、θ˙=0\dot\theta=0 を解に持つので、初めに赤道面を運動面に選べば、粒子はずっと赤道面にとどまる。これは Newton の中心力で角運動量の向きが保存して運動が平面に限られるのと同じ事情である。この章では θ=π/2\theta=\pi/2 とおく。

2つの保存量

LL は tt にも φ\varphi にも陽によらない。tt と φ\varphi は循環座標であり、第1部第10章の Noether の定理(循環座標の共役運動量は保存する)から

E~≔∂L∂t˙=(1−rsr)c2t˙,ℓ≔−∂L∂φ˙=r2φ˙(2.16.13)\tilde E\coloneqq\frac{\partial L}{\partial \dot t}=\Bigl(1-\frac{r_{\mathrm s}}{r}\Bigr)c^2\dot t,\qquad \ell\coloneqq-\frac{\partial L}{\partial \dot\varphi}=r^2\dot\varphi\tag{2.16.13}

の2つが保存する。幾何の言葉では、計量が tt の並進と φ\varphi の回転で変わらないこと、つまり ∂t\partial_t と ∂φ\partial_\varphi が Killing ベクトルであることに対応する(第2部第12章)。E~\tilde E は粒子の全エネルギー(静止エネルギーを含む)を質量で割ったもの、ℓ\ell は角運動量を質量で割ったものである。実際、遠方で粒子がゆっくり動くとき t˙≈1+v2/(2c2)\dot t\approx1+v^2/(2c^2) なので E~≈c2+12v2−GM/r\tilde E\approx c^2+\frac12v^2-GM/r となり、mE~m\tilde E は静止エネルギー・運動エネルギー・位置エネルギーの和になる。ℓ\ell に付けた負号は、計量の空間部分が負であるために生じる符号を打ち消すためのものである。

有効ポテンシャル

(2.16.13) から t˙=E~/[c2(1−rs/r)]\dot t=\tilde E/[c^2(1-r_{\mathrm s}/r)]、φ˙=ℓ/r2\dot\varphi=\ell/r^2 として (2.16.11) に入れ、両辺に (1−rs/r)(1-r_{\mathrm s}/r) を掛けると

E~2c2−r˙2−(1−rsr)(c2+ℓ2r2)=0\frac{\tilde E^2}{c^2}-\dot r^2-\Bigl(1-\frac{r_{\mathrm s}}{r}\Bigr)\Bigl(c^2+\frac{\ell^2}{r^2}\Bigr)=0

となる。rsc2/2=GMr_{\mathrm s}c^2/2=GM を使って展開し、2で割って並べ替えると

12r˙2+Veff(r)=E~2−c42c2,Veff(r)=−GMr+ℓ22r2−GMℓ2c2r3(2.16.14)\frac12\dot r^2+V_{\mathrm{eff}}(r)=\frac{\tilde E^2-c^4}{2c^2},\qquad V_{\mathrm{eff}}(r)=-\frac{GM}{r}+\frac{\ell^2}{2r^2}-\frac{GM\ell^2}{c^2r^3}\tag{2.16.14}

を得る。右辺は定数で、遠方でゆっくり動く粒子では E~≈c2+ϵN\tilde E\approx c^2+\epsilon_{\mathrm N} と書くと (E~2−c4)/(2c2)≈ϵN(\tilde E^2-c^4)/(2c^2)\approx\epsilon_{\mathrm N}、つまり Newton の力学的エネルギー(質量あたり)に一致する。

(2.16.14) は、第2部第1章で Kepler 問題を「動径の1次元運動+有効ポテンシャル」に落とした式と同じ形である。最初の2項は Newton の重力ポテンシャルと遠心力のポテンシャルそのもので、違いは第3項 −GMℓ2/(c2r3)-GM\ell^2/(c^2r^3) だけである。この項は rr が小さいほど速く大きくなる引力の項で、rr が十分小さい所では 1/r21/r^2 の遠心力の項より大きくなり、有効ポテンシャルの山の内側が下がる(図 2.16.1)。Newton の重力では角運動量を持つ粒子は中心に落ちられないが、一般相対論では十分近づけば落ちる。円軌道が安定でなくなる半径 6GM/c26GM/c^2 と光の円軌道 3GM/c23GM/c^2 は第2部第17章で扱う。

光の場合は (2.16.11) の右辺が 0 なので c2c^2 の項が消え、

12r˙2+ℓ22r2(1−rsr)=E~22c2( ˙=d/dλ)(2.16.15)\frac12\dot r^2+\frac{\ell^2}{2r^2}\Bigl(1-\frac{r_{\mathrm s}}{r}\Bigr)=\frac{\tilde E^2}{2c^2}\qquad(\dot{\ }=\mathrm{d}/\mathrm{d}\lambda)\tag{2.16.15}

となる。

図

図 2.16.1 質量あたりの角運動量 ℓ=4.2 GM/c\ell=4.2\,GM/c のときの有効ポテンシャル。実線は Newton の −GM/r+ℓ2/(2r2)-GM/r+\ell^2/(2r^2)、点線は (2.16.14) の VeffV_{\mathrm{eff}}。遠くでは2つは重なり、近くでは −GMℓ2/(c2r3)-GM\ell^2/(c^2r^3) の項が遠心力の項を上回り、山の内側で VeffV_{\mathrm{eff}} が下がる。太陽系の惑星は r∼108 GM/c2r\sim10^8\,GM/c^2 にいるので、図の右の端よりはるか遠くにあり、その運動に現れるのは2つの曲線のわずかなずれだけである。

軌道の方程式

軌道の形を知るには、時間でなく角度 φ\varphi の関数として rr を求めればよい。Newton の場合と同じく u≔1/ru\coloneqq1/r とおくと、r˙=−1u2dudφφ˙=−ℓdudφ\dot r=-\frac{1}{u^2}\frac{\mathrm{d} u}{\mathrm{d} \varphi}\dot\varphi=-\ell\frac{\mathrm{d} u}{\mathrm{d} \varphi} である。(2.16.14) に入れ、φ\varphi でもう1回微分して dudφ\frac{\mathrm{d} u}{\mathrm{d} \varphi} で割ると

d2udφ2+u=GMℓ2+3GMc2u2(2.16.16)\frac{\mathrm{d}^2u}{\mathrm{d}\varphi^2}+u=\frac{GM}{\ell^2}+\frac{3GM}{c^2}u^2\tag{2.16.16}

を得る。光では (2.16.15) から同じ手順で

d2udφ2+u=3GMc2u2(2.16.17)\frac{\mathrm{d}^2u}{\mathrm{d}\varphi^2}+u=\frac{3GM}{c^2}u^2\tag{2.16.17}

となる。Newton の Kepler 問題では (2.16.16) の最後の項が無く(Binet の式)、解は円錐曲線 u=(1+ecos⁡φ)/pu=(1+e\cos\varphi)/p になる。光の式には GM/ℓ2GM/\ell^2 の項が無い(ℓ→∞\ell\to\infty の極限に当たる)が、3GMu2/c23GMu^2/c^2 の項はある。この1つの項から、近日点移動(2.16.3 節)と光の曲がり(2.16.4 節)の両方が出る。

例題 2.16.2 円軌道と Kepler の第3法則 ★★

オリジナルSchwarzschild 計量の赤道面で、半径 rr の円軌道を回る粒子を考える。

  1. (1) 円軌道の条件 Veff′(r)=0V_{\mathrm{eff}}'(r)=0 から、ℓ2\ell^2 を rr で表せ。
  2. (2) 遠方の時計で測った角速度 Ω≔dφdt\Omega\coloneqq\frac{\mathrm{d} \varphi}{\mathrm{d} t} が Ω2=GM/r3\Omega^2=GM/r^3 を厳密に満たすことを示せ。
  3. (3) (1) の ℓ2\ell^2 が正であるために rr が満たすべき条件を書け。
解答

(1) Veff′(r)=GMr2−ℓ2r3+3GMℓ2c2r4=0V_{\mathrm{eff}}'(r)=\frac{GM}{r^2}-\frac{\ell^2}{r^3}+\frac{3GM\ell^2}{c^2r^4}=0 に r3r^3 を掛けて ℓ2\ell^2 について解くと

ℓ2=GMr1−3GM/(c2r).\ell^2=\frac{GMr}{1-3GM/(c^2r)}.

(2) 円軌道では r˙=0\dot r=0 なので (2.16.14) の左辺は Veff(r)V_{\mathrm{eff}}(r) で、E~2=c2(1−rs/r)(c2+ℓ2/r2)\tilde E^2=c^2(1-r_{\mathrm s}/r)(c^2+\ell^2/r^2) である。(1) を入れると c2+ℓ2/r2=c2(1−2GM/(c2r))/(1−3GM/(c2r))c^2+\ell^2/r^2=c^2(1-2GM/(c^2r))/(1-3GM/(c^2r)) となり、E~2=c4(1−2GM/(c2r))2/(1−3GM/(c2r))\tilde E^2=c^4(1-2GM/(c^2r))^2/(1-3GM/(c^2r)) を得る。一方 Ω=φ˙/t˙=(ℓ/r2)⋅c2(1−rs/r)/E~\Omega=\dot\varphi/\dot t=(\ell/r^2)\cdot c^2(1-r_{\mathrm s}/r)/\tilde E なので

Ω2=ℓ2r4c4(1−2GM/(c2r))2E~2=ℓ2r4(1−3GMc2r)=GMr3.\Omega^2=\frac{\ell^2}{r^4}\frac{c^4(1-2GM/(c^2r))^2}{\tilde E^2}=\frac{\ell^2}{r^4}\Bigl(1-\frac{3GM}{c^2r}\Bigr)=\frac{GM}{r^3}.

座標時 tt(無限遠の時計)で測れば、Kepler の第3法則は補正なしで成り立つ。

(3) 分母が正であることが必要で、r>3GM/c2=32rsr>3GM/c^2=\frac32r_{\mathrm s}。この半径より内側には、質量のある粒子の円軌道は存在しない。ちょうど r=3GM/c2r=3GM/c^2 は ℓ→∞\ell\to\infty の極限、つまり光の円軌道であり、第2部第17章で光子球として扱う。

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