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水星の近日点移動

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第16章 Schwarzschild 解と太陽系の検証
目次
  1. Newton の楕円とその上の摂動
  2. 永年項は近日点の回転を表す
  3. 観測との比較
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第16章 §2.16.3 ★★★ 軌道の式の 3GMu2/c23GMu^2/c^2 を摂動として扱い、1周あたり 6πGM/[c2a(1−e2)]6\pi GM/[c^2a(1-e^2)] の近日点の進みを出す。水星で 1 世紀に 43′′43''

Newton の楕円とその上の摂動

3GMu2/c23GMu^2/c^2 の項が無ければ、(2.16.16) の解は

u0(φ)=1+ecos⁡φp,p≔ℓ2GM=a(1−e2)(2.16.18)u_0(\varphi)=\frac{1+e\cos\varphi}{p},\qquad p\coloneqq\frac{\ell^2}{GM}=a(1-e^2)\tag{2.16.18}

である(ee は離心率、aa は長半径、pp は半直弦。近日点を φ=0\varphi=0 にとった)。これは閉じた楕円で、近日点は φ=0,2π,4π,…\varphi=0,2\pi,4\pi,\dots に来る。太陽系の惑星では (2.16.16) の右辺の2項の比が (3GMu2/c2)/(GM/ℓ2)≈3GM/(c2p)(3GMu^2/c^2)/(GM/\ell^2)\approx3GM/(c^2p) で、水星でも 8×10−88\times10^{-8} しかない。そこで小さいパラメータを

ϵ≔GMc2p(2.16.19)\epsilon\coloneqq\frac{GM}{c^2p}\tag{2.16.19}

とおき、u=u0+u1+O(ϵ2)u=u_0+u_1+\mathcal{O}(\epsilon^2) と展開する。u1u_1 は ϵ\epsilon の1次で、右辺の摂動項に u0u_0 を入れた

d2u1dφ2+u1=3GMc2u02=3ϵp(1+2ecos⁡φ+e2cos⁡2φ)\frac{\mathrm{d}^2u_1}{\mathrm{d}\varphi^2}+u_1=\frac{3GM}{c^2}u_0^2=\frac{3\epsilon}{p}\Bigl(1+2e\cos\varphi+e^2\cos^2\varphi\Bigr)

を満たす。右辺の3つの項はそれぞれ特解を持つ。定数 11 の特解は定数、cos⁡2φ=12(1+cos⁡2φ)\cos^2\varphi=\frac12(1+\cos2\varphi) の特解は定数と cos⁡2φ\cos2\varphi で、どちらも周期 2π2\pi の関数である。ところが中央の 2ecos⁡φ2e\cos\varphi は左辺の演算子の固有振動 cos⁡φ\cos\varphi と同じ振動数を持つので、強制振動の共鳴と同じく振幅が φ\varphi に比例して増え、特解は

3ϵp⋅e φsin⁡φ\frac{3\epsilon}{p}\cdot e\,\varphi\sin\varphi

となる(左辺に入れると (φsin⁡φ)′′+φsin⁡φ=2cos⁡φ(\varphi\sin\varphi)''+\varphi\sin\varphi=2\cos\varphi なので確かめられる)。このように振幅が際限なく増える項を永年項と呼ぶ。

永年項は近日点の回転を表す

u0u_0 と永年項を合わせると、1次までで

u≈1p[1+ecos⁡φ+3ϵe φsin⁡φ]+(周期 2π の小さな項)u\approx\frac1p\Bigl[1+e\cos\varphi+3\epsilon e\,\varphi\sin\varphi\Bigr]+(\text{周期 }2\pi\text{ の小さな項})

である。cos⁡(φ−φ0)≈cos⁡φ+φ0sin⁡φ\cos(\varphi-\varphi_0)\approx\cos\varphi+\varphi_0\sin\varphi(φ0\varphi_0 が小さいとき)と比べると、3ϵφ3\epsilon\varphi が小さいうちは

u≈1p[1+ecos⁡((1−3ϵ)φ)](2.16.20)u\approx\frac1p\Bigl[1+e\cos\bigl((1-3\epsilon)\varphi\bigr)\Bigr]\tag{2.16.20}

と同じである。つまり軌道は「少しずつ回転する楕円」で、近日点(uu が最大になる所)は (1−3ϵ)φ=2π(1-3\epsilon)\varphi=2\pi、すなわちφ=2π/(1−3ϵ)≈2π(1+3ϵ)\varphi=2\pi/(1-3\epsilon)\approx2\pi(1+3\epsilon) で再び来る。1周ごとに近日点は公転と同じ向きに

Δφ=6πϵ=6πGMc2a(1−e2)(2.16.21)\Delta\varphi=6\pi\epsilon=\frac{6\pi GM}{c^2a(1-e^2)}\tag{2.16.21}

だけ進む。素朴な展開 u0+u1u_0+u_1 そのものは φ∼1/ϵ\varphi\sim1/\epsilon で破綻する(永年項が主要項と同じ大きさになる)が、(2.16.20) のように振動数をずらして書き直した形は何周後でも正しい。この書き直しは Poincaré–Lindstedt の方法の最も簡単な例で、数学としては 近似の数理 第7章の永年項の議論に当たる。

実際、ϵ\epsilon を大きくとって (2.16.16) を数値で積分すると、軌道は花びらのような形を描く(図 2.16.2)。ϵ=10−3\epsilon=10^{-3} で数値積分した近日点の間隔と 2π+6πϵ2\pi+6\pi\epsilon との差は 6πϵ6\pi\epsilon の 0.8%0.8\% で、ϵ\epsilon を半分にすると差は約4分の1になる。差が ϵ2\epsilon^2 の大きさであり、(2.16.21) が1次まで正しいことがこれで確かめられる(検算)。

図

図 2.16.2 近日点 20 GM/c220\,GM/c^2・遠日点 60 GM/c260\,GM/c^2 の軌道(半直弦 p=30 GM/c2p=30\,GM/c^2、離心率 e=0.5e=0.5。ϵ≈1/30\epsilon\approx1/30 で、効果を見せるため水星の 10610^6 倍に誇張した)。実線は Newton の楕円 (2.16.18)、点線は近日点と遠日点が同じになるように ℓ\ell を選んで (2.16.16) を数値で積分した約2周半分。近日点は1周ごとに公転の向きへ 43∘43^\circ 回り、軌道は閉じない(1次の式 6πϵ6\pi\epsilon は 36∘36^\circ で、差は ϵ\epsilon が大きいための高次の項)。

観測との比較

水星の近日点が Newton の重力で説明できない分だけ進んでいることは、U. Le Verrier が 1859 年に見つけた1U. J. J. Le Verrier (1859), Comptes Rendus de l'Académie des Sciences 49, 379–383。当時の値は 1 世紀に約 38′′38''。下の脚注へ。観測される近日点の進み(1 世紀に約 5600′′5600'')の大部分は、地球の歳差(座標系の回転)と金星・木星などほかの惑星の引力で説明でき、残りが一般相対論の効果である。G. M. Clemence は観測値からほかの惑星の寄与を引いた残りを 1 世紀に 42.56′′±0.94′′42.56''\pm0.94'' とした2G. M. Clemence (1947), Reviews of Modern Physics 19, 361–364.下の脚注へ。(2.16.21) の値は次の例題のとおり 42.98′′42.98'' で、誤差の範囲で一致する。A. Einstein は 1915 年に、場の方程式を完成させるのと同時にこの値を出した3A. Einstein (1915), Sitzungsberichte der Königlich Preußischen Akademie der Wissenschaften, 831–839.下の脚注へ。

例題 2.16.3 内惑星の近日点移動 ★★★

オリジナルGM⊙=1.32712440018×1020 m3 s−2GM_\odot=1.32712440018\times10^{20}\,\mathrm{m^3\,s^{-2}}、1 au=1.495978707×1011 m1\,\mathrm{au}=1.495978707\times10^{11}\,\mathrm m とする。水星は a=0.387098 aua=0.387098\,\mathrm{au}、e=0.205630e=0.205630、公転周期 87.969187.9691 日、金星は a=0.723332 aua=0.723332\,\mathrm{au}、e=0.006772e=0.006772、224.701224.701 日、地球は a=1.00000261 aua=1.00000261\,\mathrm{au}、e=0.0167086e=0.0167086、365.256363365.256363 日である。1 世紀を 3652536525 日とする。

  1. (1) 水星の (2.16.19) の ϵ\epsilon と、1周あたりの近日点の進み(秒角)を求めよ。
  2. (2) 3つの惑星について、1 世紀あたりの近日点の進みを求めよ。
解答

(1) p=a(1−e2)=0.387098×1.495979×1011×(1−0.2056302)=5.546×1010 mp=a(1-e^2)=0.387098\times1.495979\times10^{11}\times(1-0.205630^2)=5.546\times10^{10}\,\mathrm m。GM⊙/c2=1476.6 mGM_\odot/c^2=1476.6\,\mathrm m なので ϵ=1476.6/5.546×1010=2.66×10−8\epsilon=1476.6/5.546\times10^{10}=2.66\times10^{-8}。1周あたり Δφ=6πϵ=5.02×10−7 rad\Delta\varphi=6\pi\epsilon=5.02\times10^{-7}\,\mathrm{rad}、秒角に直すと(1 rad=206265′′1\,\mathrm{rad}=206265'')0.1035′′0.1035'' である。

(2) 1 世紀の公転の回数は水星で 36525/87.9691=415.236525/87.9691=415.2 回なので、0.1035′′×415.2=42.98′′0.1035''\times415.2=42.98''。同じ計算で金星は1周 0.0531′′0.0531''・162.5162.5 回で 8.62′′8.62''、地球は1周 0.0384′′0.0384''・100.0100.0 回で 3.84′′3.84'' である。

水星の値が最も大きいのは、Δφ∝1/[a(1−e2)]\Delta\varphi\propto1/[a(1-e^2)] が太陽に近いほど大きく、そのうえ公転周期が短く(Kepler の第3法則で ∝a3/2\propto a^{3/2})1 世紀の周回数が多いからで、1 世紀あたりの値は a−5/2a^{-5/2} に比例して減る。金星と地球の値も、観測で確かめられている(ただし離心率が小さいので近日点の位置を決める誤差が大きい)。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの ϵ=GM/(c2p)→0\epsilon=GM/(c^2p)\to0(水星で 2.7×10−82.7\times10^{-8}) | 証明 条件付き(太陽を球対称・静的とし、惑星を試験粒子として Schwarzschild 計量の測地線を追う。太陽の扁平とほかの惑星の引力は Newton の摂動として別に差し引く) | 行き先 近似の数理 第7章

1 U. J. J. Le Verrier (1859), Comptes Rendus de l'Académie des Sciences 49, 379–383。当時の値は 1 世紀に約 38′′38''。

2 G. M. Clemence (1947), Reviews of Modern Physics 19, 361–364.

3 A. Einstein (1915), Sitzungsberichte der Königlich Preußischen Akademie der Wissenschaften, 831–839.

木下の勉強ステータス

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