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選ぶもの:Schwarzschild 時空の固有時の作用

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第17章 ブラックホールの幾何
目次
  1. この章で選ぶ
  2. まっすぐ落ちる粒子
  3. 固有の長さは有限
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第17章 §2.17.1 ★★★ 固有時の作用から出る2つの保存量だけで、落下する粒子が r=rsr=r_{\mathrm s} に有限の固有時で着くのに、座標時間 tt は無限大になることが分かる

第2部第16章では、球対称の真空解として Schwarzschild 計量を求め、太陽系の検証に使った。そこでは rr が Schwarzschild 半径 rs=2GM/c2r_{\mathrm s}=2GM/c^2 よりずっと大きい場所だけを扱った。この章では、同じ計量の r≲3rsr\lesssim3r_{\mathrm s} の領域を調べる。計量の成分 g00=1−rs/rg_{00}=1-r_{\mathrm s}/r は r=rsr=r_{\mathrm s} で 00 になり、grr=−1/(1−rs/r)g_{rr}=-1/(1-r_{\mathrm s}/r) は発散する。この発散が時空そのものの異常なのか、座標の取り方が悪いだけなのかを決めることが、この章の最初の仕事である。

この章で選ぶものは、第2部第12章と同じ粒子の作用(固有時)を、Schwarzschild 計量の中で書いたものである。当てる道具は2つある。1つは座標を取り替えても値の変わらない量(曲率のスカラー)で、第2部第14章の曲率から作る。もう1つは、光の世界線そのものを座標の目盛りに使って座標を作り直す方法である。出てくるものは3つある。①Eddington–Finkelstein 座標で r=rsr=r_{\mathrm s} を越えると、光円錐が内側へ傾き、外へ出る世界線が無くなること(事象の地平面)。回転するブラックホール(Kerr 解)では、地平面の外に「その場に止まっていられない」領域(エルゴ領域)が加わる。②Kruskal 座標で時空全体を1枚の図に描き、Penrose 図で無限遠まで有限の図に収めること。③第2部第16章の有効ポテンシャルから、光子球 r=3GM/c2r=3GM/c^2・最内安定円軌道 r=6GM/c2r=6GM/c^2・ブラックホールの影の大きさが出ること。影の大きさは Event Horizon Telescope の M87 の観測と比べる。最後に、Newton 力学の「脱出速度が cc になる半径」や中心力の有効ポテンシャル、第2部第11章の Rindler 座標と、この章の形を並べる。

単位は SI、計量は (+,−,−,−)(+,-,-,-)、x0=ctx^0=ct で、上下に1回ずつ現れるギリシャ添字は和を取る(記法の正本どおり)。

ds2=(1−rsr)c2dt2−dr21−rs/r−r2(dθ2+sin⁡2θ dφ2),rs=2GMc2\mathrm{d} s^2=\Bigl(1-\frac{r_{\mathrm s}}{r}\Bigr)c^2\mathrm{d} t^2-\frac{\mathrm{d} r^2}{1-r_{\mathrm s}/r}-r^2(\mathrm{d}\theta^2+\sin^2\theta\,\mathrm{d}\varphi^2),\qquad r_{\mathrm s}=\frac{2GM}{c^2}

を Schwarzschild 計量と呼ぶ。太陽質量 M⊙M_\odot では GM⊙=1.32712440018×1020 m3 s−2GM_\odot=1.32712440018\times10^{20}\,\mathrm{m^3\,s^{-2}} から rs=2.95 kmr_{\mathrm s}=2.95\,\mathrm{km} である。

この章で選ぶ LL

質量 mm の粒子の作用は固有時 −mc∫ds-mc\int\mathrm{d} s である(第2部第12章)。径数を固有時 τ\tau に選ぶと、第2部第12章で示したとおり、根号の付いた Lagrangian を

L=12gμνx˙μx˙ν=12[(1−rsr)c2t˙2−r˙21−rs/r−r2(θ˙2+sin⁡2θ φ˙2)], ˙=ddτ(2.17.1)L=\frac12g_{\mu\nu}\dot x^\mu\dot x^\nu =\frac12\Bigl[\Bigl(1-\frac{r_{\mathrm s}}{r}\Bigr)c^2\dot t^2-\frac{\dot r^2}{1-r_{\mathrm s}/r}-r^2(\dot\theta^2+\sin^2\theta\,\dot\varphi^2)\Bigr],\qquad \dot{\ }=\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} \tau}\tag{2.17.1}

に置き換えてよい(質量 mm は運動方程式に入らないので落とした)。この LL の Euler–Lagrange 方程式が測地線方程式で、固有時で径数づけたことは

gμνx˙μx˙ν=c2(2.17.2)g_{\mu\nu}\dot x^\mu\dot x^\nu=c^2\tag{2.17.2}

という条件として別に課す。光の場合は右辺を 00 にし、τ\tau をアフィン径数 σ\sigma に読み替える。

LL は tt と φ\varphi を含まない。第1部第10章の Noether の定理(いまの場合は循環座標の運動量が保存するという最も単純な形)から、第2部第16章と同じ2つの保存量

E~=(1−rsr)c2t˙,ℓ=r2φ˙(θ=π/2)(2.17.3)\tilde E=\Bigl(1-\frac{r_{\mathrm s}}{r}\Bigr)c^2\dot t,\qquad \ell=r^2\dot\varphi\quad(\theta=\pi/2)\tag{2.17.3}

が出る。E~\tilde E は質量あたりのエネルギー(静止エネルギーを含む)、ℓ\ell は質量あたりの角運動量である。運動は赤道面 θ=π/2\theta=\pi/2 に限ってよい。(2.17.3) を (2.17.2) に入れて t˙\dot t と φ˙\dot\varphi を消すと、動径方向の式

r˙2c2=E~2c4−(1−rsr)(1+ℓ2c2r2)(2.17.4)\frac{\dot r^2}{c^2}=\frac{\tilde E^2}{c^4}-\Bigl(1-\frac{r_{\mathrm s}}{r}\Bigr)\Bigl(1+\frac{\ell^2}{c^2r^2}\Bigr)\tag{2.17.4}

が得られる。これは 第2部第16章の有効ポテンシャルの式を、c2c^2 で割って無次元にしたものである。

まっすぐ落ちる粒子

遠方で静止していた粒子を放す。遠方で t˙=1\dot t=1、r→∞r\to\infty なので E~=c2\tilde E=c^2、まっすぐ落ちるので ℓ=0\ell=0 である。(2.17.4) は

drdτ=−crsr(2.17.5)\frac{\mathrm{d} r}{\mathrm{d} \tau}=-c\sqrt{\frac{r_{\mathrm s}}{r}}\tag{2.17.5}

になる。右辺は r=rsr=r_{\mathrm s} で −c-c という有限の値をとり、何も起きない。積分すると、r0r_0 から rr まで落ちる固有時は

τ=23crs(r03/2−r3/2)(2.17.6)\tau=\frac{2}{3c\sqrt{r_{\mathrm s}}}\bigl(r_0^{3/2}-r^{3/2}\bigr)\tag{2.17.6}

で、r=rsr=r_{\mathrm s} を通り過ぎて r=0r=0 まで有限の値である。落ちていく粒子に付いた時計は、r=rsr=r_{\mathrm s} で特別なことを何も記録しない。

一方、座標時間 tt で測ると事情が違う。(2.17.3) から t˙=1/(1−rs/r)\dot t=1/(1-r_{\mathrm s}/r) なので

dtdr=t˙r˙=−1crrs 11−rs/r(2.17.7)\frac{\mathrm{d} t}{\mathrm{d} r}=\frac{\dot t}{\dot r}=-\frac{1}{c}\sqrt{\frac{r}{r_{\mathrm s}}}\,\frac{1}{1-r_{\mathrm s}/r}\tag{2.17.7}

である。r→rsr\to r_{\mathrm s} で dtdr≈−(rs/c)/(r−rs)\frac{\mathrm{d} t}{\mathrm{d} r}\approx-(r_{\mathrm s}/c)/(r-r_{\mathrm s}) となり、積分すると t≈−(rs/c)ln⁡(r−rs)+定数t\approx-(r_{\mathrm s}/c)\ln(r-r_{\mathrm s})+\text{定数} が r→rsr\to r_{\mathrm s} で発散する。tt は遠方に静止した時計の時刻なので、遠方から見ると粒子は rsr_{\mathrm s} に近づき続けて、決してそこに着かない。固有時は有限で座標時間は無限大、という食い違いは、tt という座標が r=rsr=r_{\mathrm s} を含む領域に目盛りを振れていないことを示している。

光でも同じことが起きる。動径方向の光は ds2=0\mathrm{d} s^2=0 から

drdt=±c(1−rsr)(2.17.8)\frac{\mathrm{d} r}{\mathrm{d} t}=\pm c\Bigl(1-\frac{r_{\mathrm s}}{r}\Bigr)\tag{2.17.8}

で進む。座標で測った光の速さは r→rsr\to r_{\mathrm s} で 00 になる。

固有の長さは有限

tt 一定の面の上で動径方向に測る固有の長さは dl=dr/1−rs/r\mathrm{d} l=\mathrm{d} r/\sqrt{1-r_{\mathrm s}/r} である。被積分関数は r=rsr=r_{\mathrm s} で発散するが、発散は (r−rs)−1/2(r-r_{\mathrm s})^{-1/2} の速さなので積分は有限になる。r=rsr=r_{\mathrm s} は「無限に遠い所」ではなく、有限の距離にある面である。

例題 2.17.1 地平面までの固有の距離 ★★

オリジナルSchwarzschild 計量で、tt 一定・θ,φ\theta,\varphi 一定の線に沿って r=rsr=r_{\mathrm s} から r=2rsr=2r_{\mathrm s} までの固有の長さを求めよ。座標の差 rsr_{\mathrm s} と比べて何倍か。

解答

固有の長さは l=∫rs2rsdr1−rs/rl=\int_{r_{\mathrm s}}^{2r_{\mathrm s}}\frac{\mathrm{d} r}{\sqrt{1-r_{\mathrm s}/r}} である。r=rsxr=r_{\mathrm s}x とおくと l=rs∫12xx−1 dxl=r_{\mathrm s}\int_1^2\sqrt{\frac{x}{x-1}}\,\mathrm{d} x。さらに x=cosh⁡2ux=\cosh^2u とおくと x−1=sinh⁡2ux-1=\sinh^2u、dx=2cosh⁡usinh⁡u du\mathrm{d} x=2\cosh u\sinh u\,\mathrm{d} u なので

∫xx−1 dx=∫cosh⁡usinh⁡u 2cosh⁡usinh⁡u du=∫2cosh⁡2u du=u+sinh⁡ucosh⁡u.\int\sqrt{\frac{x}{x-1}}\,\mathrm{d} x=\int\frac{\cosh u}{\sinh u}\,2\cosh u\sinh u\,\mathrm{d} u=\int2\cosh^2u\,\mathrm{d} u=u+\sinh u\cosh u .

x=1x=1 で u=0u=0、x=2x=2 で cosh⁡u=2\cosh u=\sqrt2、sinh⁡u=1\sinh u=1、u=arsinh⁡1=ln⁡(1+2)u=\operatorname{arsinh}1=\ln(1+\sqrt2) なので

l=rs(2+ln⁡(1+2))=rs(1.4142+0.8814)=2.30 rs.l=r_{\mathrm s}\bigl(\sqrt2+\ln(1+\sqrt2)\bigr)=r_{\mathrm s}(1.4142+0.8814)=2.30\,r_{\mathrm s}.

座標の差 rsr_{\mathrm s} の 2.302.30 倍である。rr は「中心からの距離」ではなく、「半径 rr の球面の面積が 4πr24\pi r^2」となるように決めた目盛りなので、動径方向の距離は rr の差より長くなる。それでも有限であり、r=rsr=r_{\mathrm s} の面は無限に遠い所にあるわけではない。

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