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この章で選ぶ作用:光路長と Fermat の原理

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第10章 光線の解析力学
目次
  1. 光路長
  2. 時刻の代わりに光が進む向きをとる
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第10章 §2.10.1 ★★★ 光路長 ℓ=∫n ds\ell=\int n\,\mathrm{d} s を作用に選び、光が進む向き zz を時刻の代わりにとった Lagrangian L=n1+x′2+y′2L=n\sqrt{1+x'^2+y'^2} を書く

この章で選ぶものは、粒子の Lagrangian ではなく光線の光路長

ℓ[r]=∫n(r) ds\ell[\bm{r}]=\int n(\bm{r})\,\mathrm{d} s

である。n(r)n(\bm{r}) は場所ごとの屈折率、ds\mathrm{d} s は光線に沿った長さの要素で、光が進む速さは c/nc/n なので、ℓ/c\ell/c は光が経路を通り抜けるのにかかる時間に等しい。Fermat の原理は「光線は、端点を固定したとき ℓ\ell を停留させる経路を通る」と述べる。これは第1部の最小作用の原理と同じ形の変分原理なので、第1部の道具をこの ℓ\ell に順に当てることができる。

2.10.1節で光路長を作用として書き、光が進む向き zz を時刻の代わりにとった Lagrangian L=n1+x′2+y′2L=n\sqrt{1+x'^2+y'^2} を選ぶ。2.10.2節では Euler–Lagrange 方程式から光線の方程式を、Legendre 変換から光線の Hamiltonian H=−n2−px2−py2H=-\sqrt{n^2-p_x^2-p_y^2} を出し、Noether の定理から Snell の法則を「並進対称性の保存量」として読む。2.10.3節から2.10.5節が「出てくるもの」で、波面を決めるアイコナール方程式 ∣∇S∣2=n2\lvert \nabla\mathcal S\rvert ^2=n^2 がこの HH の Hamilton–Jacobi 方程式であること、光軸の近くを進む光線(近軸光線)では HH が2次式になり、レンズや自由な伝搬を表す ABCD 行列が行列式 11 の線形正準変換になること、光の明るさの尺度であるエタンデュが光学系を通しても増えないことが Liouville の定理であることを順に示す。2.10.6節では、学部の光学で習う Snell の法則・レンズの公式・Lagrange–Helmholtz の不変量を、この章の式と並べる。

Hamilton が最初に特性関数の方法を作ったのは光学の論文(W. R. Hamilton (1828), Transactions of the Royal Irish Academy 15, 69–174「Theory of Systems of Rays」)で、同じ方法を力学へ移したのが6年後の論文(W. R. Hamilton (1834), Philosophical Transactions of the Royal Society 124, 247–308「On a General Method in Dynamics」)である。第1部で力学として学んだ Hamilton–Jacobi 方程式(第1部第13章)は、歴史の順では光線の理論として先に作られた。

光路長

屈折率 n(r)n(\bm{r}) の媒質の中で光が進む速さは c/n(r)c/n(\bm{r}) である(nn は媒質ごとに決まる 11 以上の数とし、この章では光の振動数を1つに固定するので nn は振動数によらないとみなす)。点 r1\bm{r}_1 から点 r2\bm{r}_2 へ向かう曲線 r(s)\bm{r}(s)(ss は曲線に沿った長さ)を光が通り抜ける時間は

∫dsc/n(r)=1c∫r1r2n(r) ds=ℓ[r]c(2.10.1)\int\frac{\mathrm{d} s}{c/n(\bm{r})}=\frac1c\int_{\bm{r}_1}^{\bm{r}_2}n(\bm{r})\,\mathrm{d} s=\frac{\ell[\bm{r}]}{c}\tag{2.10.1}

である。ℓ[r]\ell[\bm{r}] を光路長と呼ぶ。曲線を入れて数を返すので汎関数で、角括弧で書く(第1部第3章)。

定義 2.10.1(Fermat の原理)

屈折率 n(r)n(\bm{r}) の媒質の中で、2点 r1\bm{r}_1, r2\bm{r}_2 を結ぶ光線は、端点を固定した曲線の変分に対して光路長を停留させる:

δℓ[r]=δ∫r1r2n(r) ds=0.(2.10.2)\delta\ell[\bm{r}]=\delta\int_{\bm{r}_1}^{\bm{r}_2}n(\bm{r})\,\mathrm{d} s=0 .\tag{2.10.2}

Fermat の原理は、ここでは光線の性質を定める出発点として置く。なぜ光が光路長を停留させる経路を通るのかは、2.10.3節で波の方程式から導く。そこでは、光の位相が光路長に 2π/λ02\pi/\lambda_0(λ0\lambda_0 は真空中の波長)を掛けたもので、位相が停留する経路の近くの波だけが打ち消し合わずに残ることが理由になる。「停留」であって「最小」とは限らないことは、この節の例題 2.10.1 で確かめる。

時刻の代わりに光が進む向きをとる

光路長 (2.10.2) を作用とみなすには、曲線を何かの径数で書く必要がある。曲線を任意の径数 λ\lambda で r(λ)\bm{r}(\lambda) と書くと

ℓ[r]=∫n(r) ∣drdλ∣ dλ(2.10.3)\ell[\bm{r}]=\int n(\bm{r})\,\lvert \frac{\mathrm{d} \bm{r}}{\mathrm{d} \lambda}\rvert \,\mathrm{d}\lambda\tag{2.10.3}

で、被積分関数は dr/dλ\mathrm{d}\bm{r}/\mathrm{d}\lambda について1次の同次式である。径数を λ→f(λ)\lambda\to f(\lambda) と取り替えても ℓ\ell の値は変わらない。これは 第2部第3章の相対論的粒子の作用 −mc∫ds-mc\int\mathrm{d} s と同じ性質で、そこで見たとおり、この形のままでは Legendre 変換がうまく働かず、Hamiltonian は恒等的に 00 になる。

そこで、光が全体としてある向きに進む場合を考え、その向きを zz 軸にとって zz を径数(時刻の代わり)に選ぶ。光線を x(z)x(z), y(z)y(z) と書き、zz についての微分をプライムで表す(x′=dx/dzx'=\mathrm{d} x/\mathrm{d} z)。ds=1+x′2+y′2 dz\mathrm{d} s=\sqrt{1+x'^2+y'^2}\,\mathrm{d} z なので

ℓ[x,y]=∫z1z2L dz,L(x,y,x′,y′;z)=n(x,y,z)1+x′2+y′2(2.10.4)\ell[x,y]=\int_{z_1}^{z_2}L\,\mathrm{d} z,\qquad L(x,y,x',y';z)=n(x,y,z)\sqrt{1+x'^2+y'^2}\tag{2.10.4}

となる。これがこの章で選ぶ Lagrangian である。一般化座標は光線の横の位置 (x,y)(x,y) の2つ、「時刻」は zz で、自由度は 22 である。zz を時刻にとる以上、光線が途中で zz の向きに引き返す場合(鏡で反射して戻る光)はこの書き方に入らない。反射を含めるときは鏡の前後で zz 軸を取り直す。

図

図 2.10.1 2つの焦点 F1=(−3,0)F_1=(-3,0), F2=(3,0)F_2=(3,0) を結ぶ、鏡の上の点 (0,4)(0,4) で反射する光線。鏡が平面なら反射点での光路長は最小、楕円 x2/25+y2/16=1x^2/25+y^2/16=1 なら鏡の上のどの点で反射しても等しく、楕円より強く曲がった鏡なら最大になる(例題 2.10.1)。楕円は厳密な曲線なので点線で描いた

例題 2.10.1 停留であって最小とは限らない ★★

オリジナル空気中(n=1n=1)に2点 F1=(−c,0)F_1=(-c,0), F2=(c,0)F_2=(c,0) があり、F1F_1 を出た光が鏡で1回反射して F2F_2 に着く。鏡は点 (0,b)(0,b) を通り、その近くで y=b−κ2x2y=b-\frac{\kappa}{2}x^2(κ\kappa は鏡の曲率)と書けるとする。鏡の上の点 (x,y(x))(x,y(x)) で反射する経路の光路長を ℓ(x)\ell(x) とする。

  1. (1) ℓ′(0)=0\ell'(0)=0 を示せ。つまり (0,b)(0,b) で反射する経路は、どの κ\kappa でも Fermat の原理を満たす。
  2. (2) a=b2+c2a=\sqrt{b^2+c^2} と置いて ℓ′′(0)=2b(b−κa2)a3\ell''(0)=\dfrac{2b(b-\kappa a^2)}{a^3} を示せ。
  3. (3) c=3c=3, b=4b=4 のとき、κ=0\kappa=0(平面鏡)、κ=0.16\kappa=0.16、κ=0.3\kappa=0.3 について ℓ′′(0)\ell''(0) を求め、(0,b)(0,b) で反射する経路の光路長が近くの経路と比べて最小か最大かを答えよ。ℓ′′(0)=0\ell''(0)=0 になる κ\kappa では x4x^4 の項まで展開して判定せよ。κ=0.16\kappa=0.16 が楕円 x2/a2+y2/b2=1x^2/a^2+y^2/b^2=1 の (0,b)(0,b) での曲率 b/a2b/a^2 に等しいことも確かめよ。
解答

(1) ℓ(x)=(x+c)2+y2+(x−c)2+y2\ell(x)=\sqrt{(x+c)^2+y^2}+\sqrt{(x-c)^2+y^2} は、y(x)y(x) が偶関数なので x→−xx\to-x で2つの根号が入れ替わるだけで値が変わらない。偶関数の導関数は奇関数なので ℓ′(0)=0\ell'(0)=0。

(2) y2=b2−bκx2+O(x4)y^2=b^2-b\kappa x^2+\mathcal{O}(x^4) なので、根号の中は (x±c)2+y2=a2±2cx+(1−bκ)x2+O(x4)(x\pm c)^2+y^2=a^2\pm2cx+(1-b\kappa)x^2+\mathcal{O}(x^4)。a2+u=a+u2a−u28a3+O(u3)\sqrt{a^2+u}=a+\frac{u}{2a}-\frac{u^2}{8a^3}+\mathcal{O}(u^3) に入れて2つを足すと、xx の1次は打ち消し合い、2次は

ℓ(x)=2a+[1−bκa−c2a3]x2+O(x4)=2a+b2−bκa2a3x2+O(x4)\ell(x)=2a+\Bigl[\frac{1-b\kappa}{a}-\frac{c^2}{a^3}\Bigr]x^2+\mathcal{O}(x^4) =2a+\frac{b^2-b\kappa a^2}{a^3}x^2+\mathcal{O}(x^4)

(a2−c2=b2a^2-c^2=b^2 を使った)。したがって ℓ′′(0)=2b(b−κa2)/a3\ell''(0)=2b(b-\kappa a^2)/a^3。

(3) a=5a=5 なので ℓ′′(0)=8(4−25κ)/125\ell''(0)=8(4-25\kappa)/125。κ=0\kappa=0 で 0.256>00.256>0(最小)、κ=0.3\kappa=0.3 で −0.224<0-0.224<0(最大)である。κ=0.16\kappa=0.16 では ℓ′′(0)=0\ell''(0)=0 で、2次の項では判定できない。x4x^4 まで展開すると ℓ(x)=10+43125x4+O(x6)\ell(x)=10+\frac{4}{3125}x^4+\mathcal{O}(x^6) で、わずかに最小になる。楕円の (0,b)(0,b) での曲率は b/a2=4/25=0.16b/a^2=4/25=0.16 で、ちょうど境目に当たる。楕円そのものの鏡なら ℓ\ell は鏡の上のどこでも 2a=102a=10 で一定である。曲率の等しい放物線の鏡は x4x^4 の程度で楕円の外側にあり、楕円の外側の点では2つの焦点までの距離の和が 2a2a より大きいので、x4x^4 の項が正になる。反射の法則(入射角と反射角が等しい)はどの κ\kappa でも同じく成り立つが、それは ℓ′(0)=0\ell'(0)=0 だけから出る。Fermat の原理が要求するのは1階の条件だけで、2階の符号は鏡の形で変わる。

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