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出てくるもの(1):アイコナール方程式は Hamilton–Jacobi 方程式

2026年10月15日11分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第10章 光線の解析力学
目次
  1. 光路長を終点の関数として見る
  2. 波の方程式からアイコナールへ
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第10章 §2.10.3 ★★★ 波面を決める光路長の関数 S(r)\mathcal S(\bm{r}) が満たす ∣∇S∣2=n2\lvert \nabla\mathcal S\rvert ^2=n^2 は光線の HH の Hamilton–Jacobi 方程式。波の方程式から λ0→0\lambda_0\to0 の極限で出る

光路長を終点の関数として見る

点光源(または1つの波面)を出て点 r\bm{r} に達する光線に沿った光路長を、終点 r\bm{r} の関数とみて S(r)\mathcal S(\bm{r}) と書く。第1部第13章で、真の経路に沿った作用を終点の関数とみなすと Hamilton–Jacobi 方程式の解になり、その終点微分が運動量になることを示した。いまの作用は光路長なので、同じ計算(端を動かした第1変分の端の項)から

∇S(r)=p=n(r)drds(2.10.11)\nabla\mathcal S(\bm{r})=\bm{p}=n(\bm{r})\frac{\mathrm{d} \bm{r}}{\mathrm{d} s}\tag{2.10.11}

を得る。光線の向きの単位ベクトル dr/ds\mathrm{d}\bm{r}/\mathrm{d} s は大きさ 11 なので

∣∇S(r)∣2=n(r)2(2.10.12)\lvert \nabla\mathcal S(\bm{r})\rvert ^2=n(\bm{r})^2\tag{2.10.12}

が成り立つ。これをアイコナール方程式、S\mathcal S をアイコナールと呼ぶ(作用 S[q]S[q]・主関数 S(q,t)S(q,t) と区別するため筆記体で書く)。S=一定\mathcal S=\text{一定} の面は、光源から同じ光路長(同じ到達時間)の点の集まりで、これが波面である。式 (2.10.11) から光線は波面に直交する。

定理 2.10.4(アイコナール方程式は光線の Hamilton–Jacobi 方程式 ★★★)

zz を時刻とみた光線の Hamiltonian (2.10.8) の Hamilton–Jacobi 方程式

H(x,y,∂S∂x,∂S∂y;z)+∂S∂z=0(2.10.13)H\Bigl(x,y,\frac{\partial \mathcal S}{\partial x},\frac{\partial \mathcal S}{\partial y};z\Bigr)+\frac{\partial \mathcal S}{\partial z}=0\tag{2.10.13}

は、∂S/∂z>0\partial\mathcal S/\partial z>0(光が zz の正の向きに進む)の枝でアイコナール方程式 (2.10.12) と同値である。

証明

式 (2.10.8) を入れると (2.10.13) は ∂zS=n2−(∂xS)2−(∂yS)2\partial_z\mathcal S=\sqrt{n^2-(\partial_x\mathcal S)^2-(\partial_y\mathcal S)^2} で、両辺を2乗して移項すると ∣∇S∣2=n2\lvert \nabla\mathcal S\rvert ^2=n^2。逆に ∣∇S∣2=n2\lvert \nabla\mathcal S\rvert ^2=n^2 と ∂zS>0\partial_z\mathcal S>0 から根号の正の枝が選ばれ、(2.10.13) に戻る。

光線の Hamiltonian は時刻 zz を陽に含みうるが、光路長には S(x,y,z)\mathcal S(x,y,z) という形で zz が座標として入るので、第1部の S(q,t)S(q,t) の tt が S\mathcal S の第3の座標 zz に当たる。屈折率が時間によらないので、第1部の「時間の分離 S=W(q)−EtS=W(q)-Et」は不要で、アイコナールは最初から時間に依らない形をしている。式 (2.10.12) は、第1部第13章の時間に依らない Hamilton–Jacobi 方程式 ∣∇W∣2=2m(E−V)\lvert \nabla W\rvert ^2=2m(E-V) の 2m(E−V)2m(E-V) を n2n^2 に置き換えた形で、表 2.10.1 の対応が成り立つ。

表 2.10.1 力学と光学の対応(Hamilton の類推)。粒子の側の Maupertuis の原理は、エネルギーを固定して W=∫p⋅drW=\int\bm{p}\cdot\mathrm{d}\bm{r} を停留させる形の最小作用の原理
粒子(エネルギー EE の定常な運動)光線(振動数を固定した光)
作用∫p⋅dr\int\bm{p}\cdot\mathrm{d}\bm{r}光路長 ∫n ds\int n\,\mathrm{d} s
運動量の大きさ∣p∣=2m(E−V)\lvert \bm{p}\rvert =\sqrt{2m(E-V)}∣p∣=n\lvert \bm{p}\rvert =n
Hamilton–Jacobi 方程式∣∇W∣2=2m(E−V)\lvert \nabla W\rvert ^2=2m(E-V)∣∇S∣2=n2\lvert \nabla\mathcal S\rvert ^2=n^2
変分原理Maupertuis δ∫∣p∣ ds=0\delta\int\lvert \bm{p}\rvert \,\mathrm{d} s=0Fermat δ∫n ds=0\delta\int n\,\mathrm{d} s=0
波の位相W/ℏW/\hbark0S=2πS/λ0k_0\mathcal S=2\pi\mathcal S/\lambda_0
古典・幾何光学の極限ℏ→0\hbar\to0λ0→0\lambda_0\to0

波の方程式からアイコナールへ

Fermat の原理の理由を、波の方程式から確かめる。光は、第2部第6章で作用から出した Maxwell 方程式に従う電磁波で、第2部第9章で求めた双極子の放射も、源から十分に離れると局所的には平面波の形をとる。屈折率 nn の媒質では、各成分が速さ c/nc/n の波の方程式に従う。振動数 ω\omega の単色の光の場の1成分を Re⁡[u(r)e−iωt]\operatorname{Re}[u(\bm{r})\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega t}] と書き、屈折率が波長に比べてゆっくり変わる媒質では、uu が Helmholtz 方程式

∇2u+k02n(r)2u=0,k0=ωc=2πλ0(2.10.14)\nabla^2u+k_0^2n(\bm{r})^2u=0,\qquad k_0=\frac{\omega}{c}=\frac{2\pi}{\lambda_0}\tag{2.10.14}

に従うとする(偏光の向きの変化は屈折率の勾配と同じ程度の小さな補正なので、ここでは1成分で書く)。u=a(r)eik0S(r)u=a(\bm{r})\mathrm{e}^{\mathrm{i} k_0\mathcal S(\bm{r})}(aa, S\mathcal S は実数)と置いて代入すると

∇2u=[−k02∣∇S∣2a+ik0(2∇a⋅∇S+a∇2S)+∇2a]eik0S\nabla^2u=\Bigl[-k_0^2\lvert \nabla\mathcal S\rvert ^2a+\mathrm{i} k_0\bigl(2\nabla a\cdot\nabla\mathcal S+a\nabla^2\mathcal S\bigr)+\nabla^2a\Bigr]\mathrm{e}^{\mathrm{i} k_0\mathcal S}

なので、式 (2.10.14) の実部と虚部は

∣∇S∣2=n2+1k02∇2aa,∇⋅(a2∇S)=0(2.10.15)\lvert \nabla\mathcal S\rvert ^2=n^2+\frac{1}{k_0^2}\frac{\nabla^2a}{a},\qquad \nabla\cdot\bigl(a^2\nabla\mathcal S\bigr)=0\tag{2.10.15}

になる(虚部に aa を掛けると 2a∇a⋅∇S+a2∇2S=∇⋅(a2∇S)2a\nabla a\cdot\nabla\mathcal S+a^2\nabla^2\mathcal S=\nabla\cdot(a^2\nabla\mathcal S))。ここまでは近似を含まない。第1式の右辺の第2項は、aa が変化する長さを ℓa\ell_a とすると (λ0/ℓa)2(\lambda_0/\ell_a)^2 の程度で、λ0→0\lambda_0\to0 で落とせばアイコナール方程式 (2.10.12) になる。第2式は、光の強さ a2a^2 が ∇S\nabla\mathcal S の向き(光線の向き)に流れて保存することを表す。これは 第1部第13章で Schrödinger 方程式に ψ=AeiS/ℏ\psi=A\mathrm{e}^{\mathrm{i} S/\hbar} を入れて得た量子 Hamilton–Jacobi 方程式と連続の式と、ℏ↔1/k0\hbar\leftrightarrow1/k_0 の置き換えで同じ形である。

光が点 r1\bm{r}_1 から r2\bm{r}_2 へ届く振幅は、途中のいろいろな経路を通る波の重ね合わせで、各経路の位相は k0ℓk_0\ell である。k0k_0 が大きいと、ℓ\ell が経路の変化とともに変わる所では位相が速く回って打ち消し合い、ℓ\ell が停留する経路の近くの寄与だけが残る(停留位相)。これが Fermat の原理の波の側からの理由で、第4部第8章の経路積分で作用が停留する経路だけが古典極限に残ることと同じ仕組みである(第4部第8章)。

光線どうしが交わって包絡線(火線、コースティック)をつくる所では、1点に2本以上の光線が届き、S\mathcal S が1価でなくなり、振幅 aa が発散する。そこでは ∇2a/a\nabla^2a/a の項を落とせず、幾何光学は使えない。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの λ0/ℓn→0\lambda_0/\ell_n\to0(真空中の波長が、屈折率や振幅が変化する長さ ℓn\ell_n に比べて小さい) | 証明 条件付き(火線から離れた所。火線の近くでは Maslov の補正が要る) | 行き先 近似の数理 第7章

例題 2.10.3 屈折率の2乗が高さに比例する媒質を Jacobi の定理で解く ★★

オリジナル例題 2.10.2 の媒質 n(y)2=ng2+Gyn(y)^2=n_{\mathrm g}^2+Gy で、xyxy 面内の光線を扱う。

  1. (1) S(x,y)=αx+F(y)\mathcal S(x,y)=\alpha x+F(y) と変数を分離してアイコナール方程式を解き、F(y)F(y) を求めよ。α\alpha は何の保存量か。
  2. (2) Jacobi の定理(第1部第13章)に従って ∂S/∂α=β\partial\mathcal S/\partial\alpha=\beta(定数)から光線の形を求め、例題 2.10.2 の放物線と一致することを確かめよ。
解答

(1) α2+F′(y)2=ng2+Gy\alpha^2+F'(y)^2=n_{\mathrm g}^2+Gy なので F′(y)=±ng2+Gy−α2F'(y)=\pm\sqrt{n_{\mathrm g}^2+Gy-\alpha^2} で、積分して

F(y)=±23G(ng2+Gy−α2)3/2.F(y)=\pm\frac{2}{3G}\bigl(n_{\mathrm g}^2+Gy-\alpha^2\bigr)^{3/2}.

α=∂S/∂x=px=ncos⁡θ\alpha=\partial\mathcal S/\partial x=p_x=n\cos\theta は、屈折率が xx によらないことに対応する保存量(xx の並進の Noether の保存量)である。

(2) β=∂S/∂α=x∓2αGng2+Gy−α2\beta=\partial\mathcal S/\partial\alpha=x\mp\frac{2\alpha}{G}\sqrt{n_{\mathrm g}^2+Gy-\alpha^2}。移項して2乗すると

(x−β)2=4α2G2(ng2+Gy−α2),y=α2−ng2G+G4α2(x−β)2.(x-\beta)^2=\frac{4\alpha^2}{G^2}\bigl(n_{\mathrm g}^2+Gy-\alpha^2\bigr),\qquad y=\frac{\alpha^2-n_{\mathrm g}^2}{G}+\frac{G}{4\alpha^2}(x-\beta)^2 .

x2x^2 の係数 G/(4α2)G/(4\alpha^2) は例題 2.10.2 の G/(4px2)G/(4p_x^2) と同じで、頂点の高さ (α2−ng2)/G(\alpha^2-n_{\mathrm g}^2)/G は n(y)=αn(y)=\alpha となる高さ(引き返す点)である。二重符号は頂点の手前(下りる枝)と先(上る枝)に対応し、2乗した式は両方をまとめて表す。微分方程式を1度も解かずに、積分と微分だけで光線が求まった。

ほかの巻では

木下の勉強ステータス

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