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出てくるもの(2):近軸光線と ABCD 行列はシンプレクティック

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第10章 光線の解析力学
目次
  1. 近軸の Hamiltonian
  2. 基本の3つの行列
  3. 行列式が であること
  4. 屈折率が放物型の媒質
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第10章 §2.10.4 ★★★ 光軸の近くでは光線の HH が2次式になり、伝搬・屈折・レンズが行列式 11 の 2×22\times2 行列(線形正準変換)で書ける。屈折率が放物型の媒質は調和振動子

近軸の Hamiltonian

光学系が zz 軸(光軸)のまわりに回転対称で、光線が光軸の近くを光軸に近い向きに進むとき、xx と pxp_x を小さいとして HH を展開する。この節では xzxz 面内の光線だけを扱い、p=pxp=p_x と書く。式 (2.10.8) は

H=−n2−p2=−n+p22n+O(p4)(2.10.16)H=-\sqrt{n^2-p^2}=-n+\frac{p^2}{2n}+\mathcal{O}(p^4)\tag{2.10.16}

で、さらに屈折率を n(x,z)=n0(z)−12n2(z)x2+O(x4)n(x,z)=n_0(z)-\frac12n_2(z)x^2+\mathcal{O}(x^4) と展開すると(回転対称なので xx の1次の項は無い)、2次までで

H≈−n0+p22n0+n22x2(2.10.17)H\approx-n_0+\frac{p^2}{2n_0}+\frac{n_2}{2}x^2\tag{2.10.17}

となる。定数 −n0-n_0 は光線の形に影響しない(位相 k0Sk_0\mathcal S には全体として入る)。p=nsin⁡θ≈nθp=n\sin\theta\approx n\theta(θ\theta は光線が光軸となす角)なので、pp は「屈折率を掛けた角」である。HH が (x,p)(x,p) の2次式なので Hamilton 方程式は線形で、z1z_1 から z2z_2 までの流れは 2×22\times2 行列で書ける:

(x2p2)=(ABmathbbCD)(x1p1).(2.10.18)\begin{pmatrix}x_2\\p_2\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}A&B\\mathbb{C}&D\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x_1\\p_1\end{pmatrix}.\tag{2.10.18}

これが ABCD 行列(光線行列)である。

基本の3つの行列

一様な媒質の中を距離 dd 進む。 n2=0n_2=0 なので x′=p/nx'=p/n, p′=0p'=0 で

T(d)=(1d/n01).(2.10.19)T(d)=\begin{pmatrix}1&d/n\\0&1\end{pmatrix}.\tag{2.10.19}

自由粒子の流れ(質量 nn)と同じ形である。

平らな境界面で屈折する。 境界面に沿った並進対称性から p=nsin⁡θp=n\sin\theta が連続(式 (2.10.10))で、位置も連続なので、行列は単位行列である。角 θ\theta そのものは n1θ1=n2θ2n_1\theta_1=n_2\theta_2 で変わるが、(x,p)(x,p) は変わらない。

曲率半径 RR の球面で屈折する。 球面の中心が光の進む側にあるとき R>0R>0 とする。高さ xx の点で球面の法線は光軸に対して x/Rx/R だけ傾いているので、法線から測った入射角は θ1+x/R\theta_1+x/R、屈折角は θ2+x/R\theta_2+x/R である。Snell の法則の近軸形 n1(θ1+x/R)=n2(θ2+x/R)n_1(\theta_1+x/R)=n_2(\theta_2+x/R) から p2=p1−(n2−n1)x/Rp_2=p_1-(n_2-n_1)x/R で、

(10−(n2−n1)/R1).(2.10.20)\begin{pmatrix}1&0\\-(n_2-n_1)/R&1\end{pmatrix}.\tag{2.10.20}

厚さの無視できるレンズ(薄いレンズ)は、曲率半径 R1R_1, R2R_2 の2つの球面を続けて通るので、行列の積は

Λ(f)=(10−1/f1),1f=(n−1)(1R1−1R2)(2.10.21)\Lambda(f)=\begin{pmatrix}1&0\\-1/f&1\end{pmatrix},\qquad\frac1f=(n-1)\Bigl(\frac{1}{R_1}-\frac{1}{R_2}\Bigr)\tag{2.10.21}

となる(両側を空気 n=1n=1 とした。Λ\Lambda はこの章だけの記号で、ゲージ関数とは関係しない)。レンズは位置を変えずに運動量だけを位置に比例して変える。力学でいえば、短い時間だけ働く撃力 −x/f-x/f である。

行列式が 11 であること

定理 2.10.5(ABCD 行列はシンプレクティック ★★★)

変数を (x,p)=(x,nsin⁡θ)(x,p)=(x,n\sin\theta) にとった近軸光学系の ABCD 行列は、どのような系でも AD−BC=1AD-BC=1 を満たす。

証明

zz の流れは時刻に依存してよい Hamiltonian の流れなので正準変換であり(第1部第12章)、1自由度の正準変換の Jacobi 行列の行列式は Poisson 括弧 {x2,p2}=1\{x_2,p_2\}=1 に等しい。線形の流れでは Jacobi 行列が ABCD 行列そのものなので AD−BC=1AD-BC=1。境界面での跳びは、行列 (2.10.20) を見ればそのまま行列式 11 である。行列の積の行列式は行列式の積なので、系全体でも 11 になる。

光軸のまわりに回転対称でない系や、xx と yy が混ざる系では、(x,y,px,py)(x,y,p_x,p_y) の 4×44\times4 行列 MM が MTJM=JM^{\mathsf T}\mathsf JM=\mathsf J を満たす(第1部第12章のシンプレクティック条件)。2×22\times2 では、この条件は行列式が 11 であることと同値である。

例題 2.10.4 結像の条件と倍率 ★★

オリジナル空気中に焦点距離 ff の薄いレンズを置く。レンズの前 aa の物体面からレンズの後ろ bb の面までの ABCD 行列を M=T(b)Λ(f)T(a)M=T(b)\Lambda(f)T(a) とする。

  1. (1) MM を計算し、AD−BC=1AD-BC=1 を確かめよ。
  2. (2) 物体面の1点を出たすべての光線(p1p_1 によらず)が後ろの面の1点に集まる条件は B=0B=0 である。これが 1a+1b=1f\frac1a+\frac1b=\frac1f になることを示せ。
  3. (3) f=10 cmf=10\,\mathrm{cm}, a=15 cma=15\,\mathrm{cm} のとき bb, AA, DD を求め、像の倍率 AA と、像の点で光線の角が何倍になるかを表す DD の関係を述べよ。
解答

(1) 掛け算して

M=(1−b/fa+b−ab/f−1/f1−a/f),AD−BC=(1−bf)(1−af)+1f(a+b−abf)=1.M=\begin{pmatrix}1-b/f&a+b-ab/f\\-1/f&1-a/f\end{pmatrix},\qquad AD-BC=\Bigl(1-\frac bf\Bigr)\Bigl(1-\frac af\Bigr)+\frac1f\Bigl(a+b-\frac{ab}{f}\Bigr)=1 .

(2) x2=Ax1+Bp1x_2=Ax_1+Bp_1 が p1p_1 によらないのは B=0B=0 のときで、a+b=ab/fa+b=ab/f を abab で割ると 1a+1b=1f\frac1a+\frac1b=\frac1f。

(3) b=1/(1/10−1/15)=30 cmb=1/(1/10-1/15)=30\,\mathrm{cm}、A=1−30/10=−2A=1-30/10=-2(倒立で2倍の像)、D=1−15/10=−1/2D=1-15/10=-1/2。B=0B=0 のとき AD=1AD=1 なので D=1/AD=1/A で、像が2倍に広がると光線の角の広がりは半分に縮む。どの結像系でも D=1/AD=1/A になるのは、行列式が 11 であることの帰結である。

屈折率が放物型の媒質

屈折率が n(x)2=n02(1−α2x2)n(x)^2=n_0^2(1-\alpha^2x^2)(α>0\alpha>0)の媒質(屈折率分布型、GRIN と呼ぶ)では、n≈n0(1−α2x2/2)n\approx n_0(1-\alpha^2x^2/2) で、式 (2.10.17) は

H≈−n0+p22n0+n0α22x2(2.10.22)H\approx-n_0+\frac{p^2}{2n_0}+\frac{n_0\alpha^2}{2}x^2\tag{2.10.22}

になる。質量 n0n_0、角振動数 α\alpha の調和振動子で、光線は x=xmax⁡sin⁡(αz)x=x_{\max}\sin(\alpha z) のように光軸のまわりを振動し、周期 2π/α2\pi/\alpha ごとに元の位置と向きに戻る。

近軸の展開をせずに式 (2.10.6) で厳密に解くこともできる。d2x/dσ2=−n02α2x\mathrm{d}^2x/\mathrm{d}\sigma^2=-n_0^2\alpha^2x、dz/dσ=pz\mathrm{d} z/\mathrm{d}\sigma=p_z(一定)なので、光軸を通る光線はx=xmax⁡sin⁡(n0ασ)x=x_{\max}\sin(n_0\alpha\sigma), z=pzσz=p_z\sigma で、引き返す点 x=xmax⁡x=x_{\max} では p=0p=0 なので pz=n(xmax⁡)=n01−α2xmax⁡2p_z=n(x_{\max})=n_0\sqrt{1-\alpha^2x_{\max}^2} である。したがって

x(z)=xmax⁡sin⁡(αz1−α2xmax⁡2),周期 2πα1−α2xmax⁡2(2.10.23)x(z)=x_{\max}\sin\Bigl(\frac{\alpha z}{\sqrt{1-\alpha^2x_{\max}^2}}\Bigr),\qquad\text{周期}\ \frac{2\pi}{\alpha}\sqrt{1-\alpha^2x_{\max}^2}\tag{2.10.23}

で、振幅の大きい光線ほど周期が短い。近軸の周期 2π/α2\pi/\alpha は αxmax⁡→0\alpha x_{\max}\to0 の極限である(図 2.10.2)。周期が振幅によることは、光軸から離れた光線が1点に集まらないこと(収差)の1つの姿である。

図

図 2.10.2 屈折率 n2=n02(1−α2x2)n^2=n_0^2(1-\alpha^2x^2) の媒質の中で光軸を出る光線。振幅 αxmax⁡=0.5\alpha x_{\max}=0.5(太線)と 0.150.15(細線)。実線は近軸の調和振動子 x=xmax⁡sin⁡αzx=x_{\max}\sin\alpha z、点線は厳密な解 (2.10.23)。振幅が小さいと2本はほとんど重なり、振幅が大きいと厳密な光線のほうが早く軸に戻る

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの 光線の傾き ∣p∣/n→0\lvert p\rvert /n\to0 と光軸からの距離 x/ℓn→0x/\ell_n\to0(ℓn\ell_n は屈折率が変化する長さ) | 証明 条件付き(屈折率が滑らかで、有限の伝搬距離の範囲。誤差は傾きの3次で、解のパラメータへの連続依存で押さえられる) | 行き先 近似の数理 第2章

ほかの巻では

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