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この章で選ぶ H^\hat H:回転で変わらない Hamiltonian

2026年10月15日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第5章 角運動量と Noether(回転対称性)
目次
  1. 波動関数を回す
  2. 回転で変わらない
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部 第5章 §4.5.1 ★★★ 波動関数を回す演算子を作り、その生成子が L^=r^×p^\hat{\bm{L}}=\hat{\bm{r}}\times\hat{\bm{p}} であることを確かめる。「回転で変わらない H^\hat H」をこの演算子で定義する

古典力学では、Lagrangian が回転で変わらなければ角運動量が保存する(第1部第10章)。そのとき角運動量は回転の生成子で、角運動量で相空間を動かすと回転が再現される(第1部第9章・第1部第11章)。この章では同じ組み立てを量子力学で行う。選ぶものは回転で変わらない Hamiltonian H^\hat H で、当てる道具は Noether の定理の量子版、つまり「生成子 G^\hat G が H^\hat H と可換なら G^\hat G は保存し、逆も成り立つ」という命題である。

量子力学に移ると、古典力学には無かったものが2つ出てくる。1つ目は固有値の離散性である。角運動量の3成分の交換関係[L^x, L^y]=iℏL^z\left[\hat L_x,\,\hat L_y\right]=\mathrm{i}\hbar\hat L_z は、第1部第11章の Poisson 括弧 {Lx,Ly}=Lz\{L_x,L_y\}=L_z を写しただけのものだが、この関係だけからL^2\hat L^2 の固有値が l(l+1)ℏ2l(l+1)\hbar^2 に、L^z\hat L_z の固有値が mℏm\hbar(m=−l,…,lm=-l,\dots,l)に決まり、さらに半整数の値(スピン)も許されることが分かる。2つ目はエネルギー準位の縮退である。H^\hat H と可換な演算子の組は、同じエネルギーの状態どうしを移り合うので、対称性が大きいほど縮退が大きい。中心力では 2l+12l+1 重、水素原子では Runge–Lenz ベクトルという隠れた保存量のために n2n^2 重になる。

章の後半では、回転の一部しか残らない場合として磁場中のスピンを扱う。スピンの期待値は古典の角運動量と同じ歳差運動の方程式に従い、回転する磁場で共鳴させると向きを反転できる。これが磁気共鳴(NMR・ESR・MRI)の原理である。最後に、角運動量を微分演算子と球面調和関数で導入する授業の書き方と、この章の書き方を並べる。

この章では、粒子の質量を MM と書き、mm は L^z\hat L_z や J^z\hat J_z の固有値の番号(磁気量子数)に取っておく。空間の向きを表す極座標は (r,θ,φ)(r,\theta,\varphi) で、φ\varphi が方位角である。

波動関数を回す

空間の回転 RR(3×33\times3 の直交行列で行列式 11)を1つ決める。1粒子の波動関数 ψ(r)\psi(\bm{r}) を RR で回した波動関数を

(U^(R)ψ)(r)≔ψ(R−1r)(4.5.1)\bigl(\hat U(R)\psi\bigr)(\bm{r})\coloneqq\psi(R^{-1}\bm{r})\tag{4.5.1}

で定める。右辺で R−1R^{-1} を使う理由は、波動関数の山の位置を考えると分かる。元の ψ\psi が点 r0\bm{r}_0 で最大なら、ψ(R−1r)\psi(R^{-1}\bm{r}) は R−1r=r0R^{-1}\bm{r}=\bm{r}_0、つまり r=Rr0\bm{r}=R\bm{r}_0 で最大になる。山が RR で回った先に移るので、これが「波動関数を RR で回す」ことになる。同じ理由で、位置の期待値は ∫r ∣ψ(R−1r)∣2d3r=R⟨r⟩\int\bm{r}\,\lvert \psi(R^{-1}\bm{r})\rvert ^2\mathrm{d}^3r=R\langle \bm{r} \rangle と回る(積分の変数を r′=R−1r\bm{r}'=R^{-1}\bm{r} に替え、回転で体積が変わらないことを使う)。U^(R)\hat U(R) は確率の合計を変えないのでユニタリ演算子である。

zz 軸のまわりに小さい角 ϵ\epsilon だけ反時計回りに回す場合を計算する。R−1R^{-1} は逆回りの回転なので、ϵ2\epsilon^2 の項を落としてR−1(x,y,z)=(x+ϵy, y−ϵx, z)R^{-1}(x,y,z)=(x+\epsilon y,\ y-\epsilon x,\ z) である。Taylor 展開すると

ψ(x+ϵy, y−ϵx, z)=ψ−ϵ(x∂ψ∂y−y∂ψ∂x)+O(ϵ2)=(1−iϵℏL^z)ψ+O(ϵ2),L^z≔−iℏ(x∂∂y−y∂∂x)=x^p^y−y^p^x(4.5.2)\begin{gathered} \psi(x+\epsilon y,\,y-\epsilon x,\,z)=\psi-\epsilon\Bigl(x\frac{\partial \psi}{\partial y}-y\frac{\partial \psi}{\partial x}\Bigr)+\mathcal{O}(\epsilon^2) =\Bigl(1-\frac{\mathrm{i}\epsilon}{\hbar}\hat L_z\Bigr)\psi+\mathcal{O}(\epsilon^2), \\ \hat L_z\coloneqq-\mathrm{i}\hbar\Bigl(x\frac{\partial }{\partial y}-y\frac{\partial }{\partial x}\Bigr)=\hat x\hat p_y-\hat y\hat p_x \end{gathered}\tag{4.5.2}

となる。最後の等号は運動量の位置表示 p^j=−iℏ ∂/∂xj\hat p_j=-\mathrm{i}\hbar\,\partial/\partial x_j を使った。第1部第9章では、量子力学の無限小変換を U^(ϵ)=1−iϵG^/ℏ\hat U(\epsilon)=1-\mathrm{i}\epsilon\hat G/\hbar と書き、G^\hat G を変換の生成子と呼んだ。式 (4.5.2) は、zz 軸のまわりの回転の生成子が L^z=x^p^y−y^p^x\hat L_z=\hat x\hat p_y-\hat y\hat p_x であることを示している。古典の回転の生成子 Lz=xpy−ypxL_z=xp_y-yp_x(第1部第9章)の x,pyx,p_y を演算子に替えた形で、x^\hat x と p^y\hat p_y は可換なので積の順序の問題は起きない。

軸を単位ベクトル n\bm{n} に替えても計算は同じで、無限小の回転は 1−iϵ n⋅L^/ℏ1-\mathrm{i}\epsilon\,\bm{n}\cdot\hat{\bm{L}}/\hbar、生成子は

L^=r^×p^,L^x=y^p^z−z^p^y,L^y=z^p^x−x^p^z,L^z=x^p^y−y^p^x(4.5.3)\hat{\bm{L}}=\hat{\bm{r}}\times\hat{\bm{p}},\qquad \hat L_x=\hat y\hat p_z-\hat z\hat p_y,\quad \hat L_y=\hat z\hat p_x-\hat x\hat p_z,\quad \hat L_z=\hat x\hat p_y-\hat y\hat p_x\tag{4.5.3}

である。有限の角 α\alpha の回転は、無限小の回転を NN 回重ねて N→∞N\to\infty とした

U^(α,n)=lim⁡N→∞(1−iαNℏn⋅L^)N=exp⁡(−iαℏ n⋅L^)(4.5.4)\hat U(\alpha,\bm{n})=\lim_{N\to\infty}\Bigl(1-\frac{\mathrm{i}\alpha}{N\hbar}\bm{n}\cdot\hat{\bm{L}}\Bigr)^N=\exp\Bigl(-\frac{\mathrm{i}\alpha}{\hbar}\,\bm{n}\cdot\hat{\bm{L}}\Bigr)\tag{4.5.4}

になる(第1部第9章の指数関数の作り方と同じ)。極座標では x∂y−y∂x=∂φx\partial_y-y\partial_x=\partial_\varphi なので L^z=−iℏ ∂φ\hat L_z=-\mathrm{i}\hbar\,\partial_\varphi で、exp⁡(−iαL^z/ℏ)=exp⁡(−α ∂φ)\exp(-\mathrm{i}\alpha\hat L_z/\hbar)=\exp(-\alpha\,\partial_\varphi) は φ\varphi についての Taylor 展開そのものになり、exp⁡(−iαL^z/ℏ)ψ(r,θ,φ)=ψ(r,θ,φ−α)\exp(-\mathrm{i}\alpha\hat L_z/\hbar)\psi(r,\theta,\varphi)=\psi(r,\theta,\varphi-\alpha) となる。式 (4.5.1) の定義と一致している。

演算子も回る。状態を U^\hat U で回したとき、演算子 A^\hat A の期待値は ⟨ψ∣U^†A^U^∣ψ⟩\langle \psi | \hat U^\dagger\hat A\hat U | \psi \rangle に変わるので、「回した後の A^\hat A」は U^†A^U^\hat U^\dagger\hat A\hat U である。無限小では第1部第9章の式どおり

U^†A^U^=A^+ϵiℏ[A^, G^]+O(ϵ2)(4.5.5)\hat U^\dagger\hat A\hat U=\hat A+\frac{\epsilon}{\mathrm{i}\hbar}\left[\hat A,\,\hat G\right]+\mathcal{O}(\epsilon^2)\tag{4.5.5}

で、G^=L^z\hat G=\hat L_z、A^=x^\hat A=\hat x とすると [x^, L^z]=−y^[x^, p^x]=−iℏy^\left[\hat x,\,\hat L_z\right]=-\hat y\left[\hat x,\,\hat p_x\right]=-\mathrm{i}\hbar\hat y から δx^=−ϵy^\delta\hat x=-\epsilon\hat y となる。古典の回転 δx=−ϵy\delta x=-\epsilon y, δy=+ϵx\delta y=+\epsilon x(記法の正本の向き)がそのまま再現される。

回転で変わらない H^\hat H

定義 4.5.1(回転で変わらない Hamiltonian)

Hamiltonian H^\hat H が回転 RR で変わらないとは、U^(R)†H^U^(R)=H^\hat U(R)^\dagger\hat H\hat U(R)=\hat H が成り立つことをいう。すべての回転でこれが成り立つとき、H^\hat H は回転対称であるという。ある軸 n\bm{n} のまわりの回転だけで成り立つときは、軸対称であるという。

この章で選ぶ H^\hat H は、回転対称なものの代表として中心力の Hamiltonian

H^=p^ 22M+V(∣r^∣)(4.5.6)\hat H=\frac{\hat{\bm{p}}^{\,2}}{2M}+V(\lvert \hat{\bm{r}}\rvert )\tag{4.5.6}

と、回転の一部しか残らないものの代表として、軸対称な調和振動子(総合問題)と一様な磁場の中のスピン(4.5.5節)である。式 (4.5.6) が回転対称であることは、次のように分かる。U^†r^U^=Rr^\hat U^\dagger\hat{\bm{r}}\hat U=R\hat{\bm{r}} で、運動量も同じくU^†p^U^=Rp^\hat U^\dagger\hat{\bm{p}}\hat U=R\hat{\bm{p}} と回る(式 (4.5.5) で A^=p^x\hat A=\hat p_x とすれば δp^x=−ϵp^y\delta\hat p_x=-\epsilon\hat p_y)。直交行列は長さを変えないので ∣Rp^∣2=p^ 2\lvert R\hat{\bm{p}}\rvert ^2=\hat{\bm{p}}^{\,2}, ∣Rr^∣=∣r^∣\lvert R\hat{\bm{r}}\rvert =\lvert \hat{\bm{r}}\rvert で、H^\hat H は変わらない。多粒子でも、運動エネルギーと、粒子間の距離 ∣r^a−r^b∣\lvert \hat{\bm{r}}_a-\hat{\bm{r}}_b\rvert だけによるポテンシャルの和なら回転対称である。逆に、ポテンシャルが x2x^2 と y2y^2 で係数の違う異方的な振動子や、一様な電場の中の電子は回転対称でない。一様な電場 E∥ez\bm{E}\parallel\bm{e}_z の中ではzz 軸のまわりの回転だけが残り、軸対称になる。どの回転が残るかで、次節の定理により保存する量が決まる。

例題 4.5.1 x2−y2x^2-y^2 を回す ★★

オリジナルψ(r)=(x2−y2) e−r2/(2b2)\psi(\bm{r})=(x^2-y^2)\,\mathrm{e}^{-r^2/(2b^2)} を zz 軸のまわりに角 α\alpha だけ回す。e−r2/(2b2)\mathrm{e}^{-r^2/(2b^2)} は回転で変わらないので、多項式の部分 x2−y2x^2-y^2 だけを考えればよい。

  1. (1) 定義 (4.5.1) から、回した後の多項式を α\alpha の関数として求めよ。
  2. (2) L^z(x2−y2)\hat L_z(x^2-y^2) を計算し、exp⁡(−iαL^z/ℏ)\exp(-\mathrm{i}\alpha\hat L_z/\hbar) を α\alpha の1次まで展開した結果が (1) の1次の項と一致することを確かめよ。
  3. (3) x2−y2x^2-y^2 を L^z\hat L_z の固有関数の和に分け、(1) の結果を固有値から説明せよ。α=π/2\alpha=\pi/2 と α=π\alpha=\pi では何が起きるか。
解答

(1) R−1(x,y)=(xcos⁡α+ysin⁡α, −xsin⁡α+ycos⁡α)R^{-1}(x,y)=(x\cos\alpha+y\sin\alpha,\ -x\sin\alpha+y\cos\alpha) を代入すると

(xcos⁡α+ysin⁡α)2−(−xsin⁡α+ycos⁡α)2=(x2−y2)(cos⁡2α−sin⁡2α)+4xysin⁡αcos⁡α=(x2−y2)cos⁡2α+2xysin⁡2α.\begin{aligned}(x\cos\alpha+y\sin\alpha)^2-(-x\sin\alpha+y\cos\alpha)^2&=(x^2-y^2)(\cos^2\alpha-\sin^2\alpha)+4xy\sin\alpha\cos\alpha\\ &=(x^2-y^2)\cos2\alpha+2xy\sin2\alpha .\end{aligned}

(2) L^z(x2−y2)=−iℏ(x⋅(−2y)−y⋅2x)=4iℏ xy\hat L_z(x^2-y^2)=-\mathrm{i}\hbar\bigl(x\cdot(-2y)-y\cdot2x\bigr)=4\mathrm{i}\hbar\,xy である。1次までの展開は

(1−iαℏL^z)(x2−y2)=x2−y2−iαℏ⋅4iℏ xy=x2−y2+4α xy\Bigl(1-\frac{\mathrm{i}\alpha}{\hbar}\hat L_z\Bigr)(x^2-y^2)=x^2-y^2-\frac{\mathrm{i}\alpha}{\hbar}\cdot4\mathrm{i}\hbar\,xy=x^2-y^2+4\alpha\,xy

で、(1) を展開した (x2−y2)(1−2α2+⋯ )+2xy(2α+⋯ )(x^2-y^2)(1-2\alpha^2+\cdots)+2xy(2\alpha+\cdots) の1次の項 4αxy4\alpha xy と一致する。高い次数まで比べても一致する(scripts/verify_ch4-05.py で α13\alpha^{13} まで確かめた)。

(3) x+iy=rsin⁡θ eiφx+\mathrm{i} y=r\sin\theta\,\mathrm{e}^{\mathrm{i}\varphi} なので、L^z=−iℏ∂φ\hat L_z=-\mathrm{i}\hbar\partial_\varphi を当てると L^z(x±iy)2=±2ℏ(x±iy)2\hat L_z(x\pm\mathrm{i} y)^2=\pm2\hbar(x\pm\mathrm{i} y)^2 である。x2−y2=12[(x+iy)2+(x−iy)2]x^2-y^2=\frac12\bigl[(x+\mathrm{i} y)^2+(x-\mathrm{i} y)^2\bigr] と分けると、固有値 ±2ℏ\pm2\hbar の成分には exp⁡(−iαL^z/ℏ)\exp(-\mathrm{i}\alpha\hat L_z/\hbar) が e∓2iα\mathrm{e}^{\mp2\mathrm{i}\alpha} を掛けるだけなので

exp⁡(−iαℏL^z)(x2−y2)=12[(x+iy)2e−2iα+(x−iy)2e2iα]=Re⁡[(x+iy)2e−2iα]\exp\Bigl(-\frac{\mathrm{i}\alpha}{\hbar}\hat L_z\Bigr)(x^2-y^2)=\frac12\bigl[(x+\mathrm{i} y)^2\mathrm{e}^{-2\mathrm{i}\alpha}+(x-\mathrm{i} y)^2\mathrm{e}^{2\mathrm{i}\alpha}\bigr]=\operatorname{Re}\bigl[(x+\mathrm{i} y)^2\mathrm{e}^{-2\mathrm{i}\alpha}\bigr]

となり、実部を計算すると (1) に戻る。α=π/2\alpha=\pi/2 では e∓iπ=−1\mathrm{e}^{\mp\mathrm{i}\pi}=-1 が両方の成分に掛かるので、関数全体の符号が反転する(x2−y2→y2−x2x^2-y^2\to y^2-x^2)。α=π\alpha=\pi では e∓2iπ=1\mathrm{e}^{\mp2\mathrm{i}\pi}=1 で元に戻る。m=±2m=\pm2 の成分だけでできた関数は、半回転で元に戻る。回転に対する振る舞いが L^z\hat L_z の固有値で決まることが、この例の要点である。

木下の勉強ステータス

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