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当てる道具:保存量で自由度を減らし、平衡点のまわりで2次まで展開する

2026年10月15日11分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第1章 L=T-V の例題
目次
  1. 4つの手順
  2. 平衡点のまわりの は振動子の和
  3. 外から叩かれる振動子
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第1章 §2.1.2 ★★★ 4つの系で共通に使う手順をまとめる。行き着く先は「平衡点のまわりの LL は振動子の和」という結果

4つの手順

どの系でも、LL を書いた後に当てる道具は同じで、次の順に使う。

手順1(循環座標と保存量):LL がある一般化座標 qkq_k を含まなければ、共役な運動量 pk=∂L/∂q˙kp_k=\partial L/\partial\dot q_k が保存する。これは qkq_k をずらす変換についての Noether の定理(第1部第10章)の最も簡単な場合である。2体の重心 R\bm{R}、中心力の方位角、対称なこまの2つの Euler 角がこれにあたる。

手順2(エネルギー):LL が時刻を陽に含まなければ H=∑ipiq˙i−LH=\sum_ip_i\dot q_i-L が保存する。TT が速度の2次の同次式で VV が速度によらないとき、H=T+VH=T+V である(第1部第8章)。

手順3(1自由度に落とす):手順1の保存量を、HH の中で運動量のまま固定すると、残った座標だけの Hamiltonian になる。自由度1まで減れば、H=12meffq˙2+Ueff(q)H=\frac12m_{\mathrm{eff}}\dot q^2+U_{\mathrm{eff}}(q) の形から、有効ポテンシャル UeffU_{\mathrm{eff}} の等高線を読むだけで運動の種類が分かる。

手順4(平衡点のまわりの2次の展開):UeffU_{\mathrm{eff}} や VV の極小(平衡点)のまわりでずれの2次まで残すと、LL は振動子の LL の和になる。下で示す。

保存量は LL でなく HH の中で固定する

手順3で、保存する pkp_k を LL の q˙k\dot q_k に代入して座標を消すと、間違った方程式になる。平面の中心力 L=m2(r˙2+r2φ˙2)−V(r)L=\frac m2(\dot r^2+r^2\dot\varphi^2)-V(r) でφ˙=pφ/(mr2)\dot\varphi=p_\varphi/(mr^2) を LL に代入すると m2r˙2+pφ22mr2−V(r)\frac m2\dot r^2+\frac{p_\varphi^2}{2mr^2}-V(r) になり、これの Euler–Lagrange 方程式はmr¨=−pφ2mr3−V′(r)m\ddot r=-\frac{p_\varphi^2}{mr^3}-V'(r) で、遠心力の項の符号が逆になる。正しくは mr¨=+pφ2mr3−V′(r)m\ddot r=+\frac{p_\varphi^2}{mr^3}-V'(r) である。代入した後の関数で rr を偏微分すると、φ˙\dot\varphi を止めて微分すべきところを pφp_\varphi を止めて微分したことになり、φ˙\dot\varphi が rr によるぶんの項の符号が入れ替わる。HH の中で pφp_\varphi を固定すれば、H=pr22m+pφ22mr2+V(r)H=\frac{p_r^2}{2m}+\frac{p_\varphi^2}{2mr^2}+V(r) の pφp_\varphi は初めから rr と独立な正準変数なので、この問題は起きない(LL の側で同じことをするには L−pφφ˙L-p_\varphi\dot\varphi を使う。これを Routh 関数と呼ぶ)。

平衡点のまわりの LL は振動子の和

自由度 ff の系で、L=12∑i,jMij(q)q˙iq˙j−V(q)L=\frac12\sum_{i,j}M_{ij}(q)\dot q_i\dot q_j-V(q) と書けているとする。Mij(q)M_{ij}(q) は質量行列で、対称かつ正定値である(第1部第2章)。点 q(0)q^{(0)} で ∂V/∂qi=0\partial V/\partial q_i=0 がすべての ii で成り立つとき、q(0)q^{(0)} を平衡点と呼ぶ。平衡点からのずれ ηi=qi−qi(0)\eta_i=q_i-q^{(0)}_i が小さいとして、LL を η\eta と η˙\dot\eta の2次まで展開する。

命題 2.1.1(平衡点のまわりの2次の Lagrangian ★★★)

η\eta と η˙\dot\eta について2次まで残すと(定数項を除いて)

L2=12∑i,jMij η˙iη˙j−12∑i,jKij ηiηj,Mij≔Mij(q(0)),Kij≔∂2V∂qi∂qj∣q(0)(2.1.5)L_2=\frac12\sum_{i,j}M_{ij}\,\dot\eta_i\dot\eta_j-\frac12\sum_{i,j}K_{ij}\,\eta_i\eta_j,\qquad M_{ij}\coloneqq M_{ij}(q^{(0)}),\quad K_{ij}\coloneqq\frac{\partial^2V}{\partial q_i\partial q_j}\Big|_{q^{(0)}}\tag{2.1.5}

となる。KijK_{ij} を剛性行列と呼ぶ。

証明

運動エネルギーは η˙\dot\eta についてすでに2次なので、係数 Mij(q)M_{ij}(q) は q=q(0)q=q^{(0)} での値だけ残せばよい(Mij(q)M_{ij}(q) を η\eta で展開した1次の項は全体で3次になる)。VV は Taylor 展開で V(q(0))+∑i∂iV ηi+12∑i,jKijηiηj+O(η3)V(q^{(0)})+\sum_i\partial_iV\,\eta_i+\frac12\sum_{i,j}K_{ij}\eta_i\eta_j+\mathcal{O}(\eta^3) となり、平衡点では1次の項が消える。定数 V(q(0))V(q^{(0)}) は運動方程式に入らない。

速度に掛かる係数が平衡点の値で止まる点は、展開を手で進めるときに取り違えやすい。たとえば振り子の L=mℓ22θ˙2+mgℓcos⁡θL=\frac{m\ell^2}{2}\dot\theta^2+mg\ell\cos\theta ではM=mℓ2M=m\ell^2 がもともと定数なので違いが見えないが、球面振り子のように MijM_{ij} が座標による系では、η˙\dot\eta の前の sin⁡2θ\sin^2\theta を平衡点の値で置き換える(章末の総合問題)。

1自由度なら式 (2.1.5) は L2=M2η˙2−K2η2L_2=\frac M2\dot\eta^2-\frac K2\eta^2 で、K>0K>0 のとき Euler–Lagrange 方程式は Mη¨=−KηM\ddot\eta=-K\eta、一般解は η=Acos⁡(ω0t+α)\eta=A\cos(\omega_0t+\alpha), ω0=K/M\omega_0=\sqrt{K/M} である。K<0K<0 なら解は指数関数的に増え、平衡点は不安定になる。多自由度で MM と KK を同時に対角化し、L2L_2 を独立な振動子の和に分けるのが2.1.5節の基準振動である。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの 振幅 ∣η∣→0\lvert \eta\rvert \to0(VV を2次で打ち切る) | 証明 条件付き(KijK_{ij} が正定値=極小が非退化。軌道が平衡点の近くに留まることは HH の保存を Lyapunov 関数として言える) | 行き先 近似の数理 第2章

外から叩かれる振動子

手順2は「LL が時刻を陽に含まない」ことを前提にしている。前提が外れる最も簡単な例が、外から時刻の関数の力 F(t)F(t) を受ける振動子

L=m2x˙2−m2ω02x2+F(t) x(2.1.6)L=\frac m2\dot x^2-\frac m2\omega_0^2x^2+F(t)\,x\tag{2.1.6}

である。Euler–Lagrange 方程式は mx¨=−mω02x+F(t)m\ddot x=-m\omega_0^2x+F(t) で、H=m2x˙2+m2ω02x2−F(t)xH=\frac m2\dot x^2+\frac m2\omega_0^2x^2-F(t)x はdHdt=−∂L∂t=−F˙(t) x\frac{\mathrm{d} H}{\mathrm{d} t}=-\frac{\partial L}{\partial t}=-\dot F(t)\,x だけ変わる(第1部第10章の dHdt=−∂L∂t\frac{\mathrm{d} H}{\mathrm{d} t}=-\frac{\partial L}{\partial t})。力が働き終わった後(F=0F=0)の HH は振動子のエネルギー E=m2x˙2+m2ω02x2E=\frac m2\dot x^2+\frac m2\omega_0^2x^2 と一致し、dEdt=Fx˙\frac{\mathrm{d} E}{\mathrm{d} t}=F\dot x は力の仕事率である。

この方程式は、複素数 z≔x˙−iω0xz\coloneqq\dot x-\mathrm{i}\omega_0x を使うと1階の式 z˙=−iω0z+F(t)/m\dot z=-\mathrm{i}\omega_0z+F(t)/m になり、t→−∞t\to-\infty で静止していた振動子について

z(t)=e−iω0tm∫−∞tF(t′) eiω0t′ dt′(2.1.7)z(t)=\frac{\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega_0t}}{m}\int_{-\infty}^{t}F(t')\,\mathrm{e}^{\mathrm{i}\omega_0t'}\,\mathrm{d} t'\tag{2.1.7}

と解ける(右辺を微分すると確かめられる)。∣z∣2=x˙2+ω02x2=2E/m\lvert z\rvert ^2=\dot x^2+\omega_0^2x^2=2E/m なので、力が働き終わった後のエネルギーは

ΔE=12m∣∫−∞∞F(t) eiω0t dt∣2(2.1.8)\Delta E=\frac{1}{2m}\Bigl|\int_{-\infty}^{\infty}F(t)\,\mathrm{e}^{\mathrm{i}\omega_0t}\,\mathrm{d} t\Bigr|^2\tag{2.1.8}

である。受け取るエネルギーは、力の時間変化のうち振動子の固有の角振動数 ω0\omega_0 の成分(Fourier 成分)の大きさだけで決まる。この式は振幅の大小によらず厳密で、近似を使っていない。

例題 2.1.2 ガウス型の力で叩いた振動子 ★★★

オリジナル静止している振動子(m=1 kgm=1\,\mathrm{kg}, ω0=2 s−1\omega_0=2\,\mathrm{s^{-1}})に、F(t)=F0 e−t2/τ2F(t)=F_0\,\mathrm{e}^{-t^2/\tau^2}(F0=1 NF_0=1\,\mathrm N)の力を加える。

  1. (1) 式 (2.1.8) を使って、振動子が受け取るエネルギー ΔE\Delta E を τ\tau の関数として求めよ。
  2. (2) τ=0.1 s\tau=0.1\,\mathrm s, 1 s1\,\mathrm s, 3 s3\,\mathrm s の場合の ΔE\Delta E を求めよ。ΔE\Delta E を最大にする τ\tau とそのときの値も求めよ。
  3. (3) τ→0\tau\to0 と τ→∞\tau\to\infty の2つの極限で結果が何を表すかを述べよ。
解答

(1) Gauss 積分 ∫−∞∞e−t2/τ2eiω0t dt=τπ e−ω02τ2/4\int_{-\infty}^{\infty}\mathrm{e}^{-t^2/\tau^2}\mathrm{e}^{\mathrm{i}\omega_0t}\,\mathrm{d} t=\tau\sqrt\pi\,\mathrm{e}^{-\omega_0^2\tau^2/4}(指数を平方完成する)から

ΔE=F022m πτ2 e−ω02τ2/2.\Delta E=\frac{F_0^2}{2m}\,\pi\tau^2\,\mathrm{e}^{-\omega_0^2\tau^2/2}.

(2) F02π2m=1.571 N2 kg−1\frac{F_0^2\pi}{2m}=1.571\,\mathrm{N^2\,kg^{-1}} を掛けて、τ=0.1 s\tau=0.1\,\mathrm s で ΔE=1.571×0.01×e−0.02=0.0154 J\Delta E=1.571\times0.01\times\mathrm{e}^{-0.02}=0.0154\,\mathrm J、τ=1 s\tau=1\,\mathrm s で 1.571×e−2=0.213 J1.571\times\mathrm{e}^{-2}=0.213\,\mathrm J、τ=3 s\tau=3\,\mathrm s で 1.571×9×e−18=2.15×10−7 J1.571\times9\times\mathrm{e}^{-18}=2.15\times10^{-7}\,\mathrm J。τ2e−ω02τ2/2\tau^2\mathrm{e}^{-\omega_0^2\tau^2/2} を τ\tau で微分して 00 とおくと τ=2/ω0=0.707 s\tau=\sqrt2/\omega_0=0.707\,\mathrm s で、そのとき ΔE=πF02mω02 e=π4e=0.289 J\Delta E=\frac{\pi F_0^2}{m\omega_0^2\,\mathrm{e}}=\frac{\pi}{4\mathrm{e}}=0.289\,\mathrm J である。

(3) τ→0\tau\to0 では指数が 11 に近づき、ΔE→12m(∫F dt)2\Delta E\to\frac{1}{2m}\bigl(\int F\,\mathrm{d} t\bigr)^2 となる。∫F dt=F0τπ\int F\,\mathrm{d} t=F_0\tau\sqrt\pi は力積なので、これは「力積 II を一瞬で与えると速度 I/mI/m を得る」という撃力の結果である(τ=0.1 s\tau=0.1\,\mathrm s では撃力の値 0.0157 J0.0157\,\mathrm J との差は 2% 程度)。τ→∞\tau\to\infty では指数 e−ω02τ2/2\mathrm{e}^{-\omega_0^2\tau^2/2} のために ΔE\Delta E はどんな τ\tau の冪よりも速く 00 に近づく。振動の周期 2π/ω02\pi/\omega_0 よりずっと長い時間をかけて力を加えて外すと、途中で平衡点がずれても振動子はそれに付いて行き、終わったときには何も残らない。ゆっくりした変化で振動の状態が保たれるというこの性質は、第1部第14章の断熱不変量の最も簡単な例である。

図 2.1.1 に、例題 2.1.2 (1) の ΔE\Delta E を撃力の値 πF02τ2/(2m)\pi F_0^2\tau^2/(2m) で割ったものを ω0τ\omega_0\tau の関数として描き、運動方程式を数値積分して得た値を重ねた。

図

図 2.1.1 ガウス型の力で叩いた振動子が受け取るエネルギー。縦軸は撃力(τ→0\tau\to0)の値で割った比。ω0τ≪1\omega_0\tau\ll1 では撃力として働き、ω0τ≫1\omega_0\tau\gg1 ではエネルギーがほとんど残らない。点は m=1 kgm=1\,\mathrm{kg}, ω0=2 s−1\omega_0=2\,\mathrm{s^{-1}} で数値積分した値(scripts/verify_ch2-01.py)

木下の勉強ステータス

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