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出てくるもの(3):小振動と基準振動(CO2_2 分子)

2026年10月15日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第1章 L=T-V の例題
目次
  1. 一般化固有値問題
  2. CO の振動
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第1章 §2.1.5 ★★★ 質量行列と剛性行列を同時に対角化すると、多自由度の小振動は独立な振動子の和になる。CO2_2 の4つの振動を数える

一般化固有値問題

2.1.2節の式 (2.1.5) から出発する。行列の記号で η=(η1,…,ηf)T\eta=(\eta_1,\dots,\eta_f)^{\mathsf T} と書くと L2=12η˙TMη˙−12ηTKηL_2=\frac12\dot\eta^{\mathsf T}M\dot\eta-\frac12\eta^{\mathsf T}K\eta で、Euler–Lagrange 方程式は

Mη¨=−Kη(2.1.20)M\ddot\eta=-K\eta\tag{2.1.20}

である。ff 本の式は一般に互いに結合していて、そのままでは解くことができない。全体が1つの角振動数 ω\omega で振動する解 η=acos⁡(ωt+α)\eta=\bm{a}\cos(\omega t+\alpha)(a\bm{a} は定数の縦ベクトル)を探すと

(K−ω2M) a=0,det⁡(K−ω2M)=0(2.1.21)(K-\omega^2M)\,\bm{a}=0,\qquad \det(K-\omega^2M)=0\tag{2.1.21}

となる。これを一般化固有値問題と呼び、解 ω2\omega^2 を固有値、a\bm{a} を基準振動の形(モード)と呼ぶ。

定理 2.1.3(基準振動 ★★★)

MM が実対称で正定値、KK が実対称なら、式 (2.1.21) の固有値 ω12,…,ωf2\omega_1^2,\dots,\omega_f^2 はすべて実数で、akTMal=δkl\bm{a}_k^{\mathsf T}M\bm{a}_l=\delta_{kl} を満たす実の固有ベクトルの組 a1,…,af\bm{a}_1,\dots,\bm{a}_f を取ることができる。η=∑kakξk\eta=\sum_k\bm{a}_k\xi_k と書き直すと

L2=∑k=1f(12ξ˙k2−12ωk2ξk2)(2.1.22)L_2=\sum_{k=1}^f\Bigl(\frac12\dot\xi_k^2-\frac12\omega_k^2\xi_k^2\Bigr)\tag{2.1.22}

となり、各 ξk\xi_k(基準座標)は互いに独立な振動子になる。

証明

MM は正定値の対称行列なので、正定値の対称な平方根 M1/2M^{1/2} を持つ。a=M−1/2u\bm{a}=M^{-1/2}\bm{u} と置くと式 (2.1.21) はM−1/2KM−1/2u=ω2uM^{-1/2}KM^{-1/2}\bm{u}=\omega^2\bm{u} という普通の固有値問題になる。左辺の行列は実対称なので、固有値は実数で、正規直交な固有ベクトル uk\bm{u}_k を取ることができる。ak=M−1/2uk\bm{a}_k=M^{-1/2}\bm{u}_k とすると akTMal=ukTul=δkl\bm{a}_k^{\mathsf T}M\bm{a}_l=\bm{u}_k^{\mathsf T}\bm{u}_l=\delta_{kl}、akTKal=ωk2δkl\bm{a}_k^{\mathsf T}K\bm{a}_l=\omega_k^2\delta_{kl} である。η=∑kakξk\eta=\sum_k\bm{a}_k\xi_k を L2L_2 に入れると、この2つの関係から交差項がすべて消えて式 (2.1.22) になる。

KK が正定値なら ωk2>0\omega_k^2>0 で、どの基準座標も振動する。KK に固有値 00 の方向があると、その基準座標は ξ¨k=0\ddot\xi_k=0 で等速に動く。これを零モードと呼ぶ。自由に浮いている分子では、全体の並進と回転でポテンシャルが変わらないので、それらの方向が必ず零モードになる。NN 原子の分子なら、3N3N 個の自由度から並進3つと回転3つ(直線形の分子では軸のまわりの回転が意味を持たないので2つ)を引いた残りが振動の数である。

CO2_2 の振動

CO2_2 は O–C–O が一直線に並んだ分子で、N=3N=3 なので振動の数は 9−3−2=49-3-2=4 である。軸方向(縦)の変位を x1x_1(O)、x2x_2(C)、x3x_3(O)とし、2本の結合を同じばね定数 kk のばねで表すと

V∥=k2[(x2−x1)2+(x3−x2)2],M=(mO000mC000mO),K=k(1−10−12−10−11)V_\parallel=\frac k2\bigl[(x_2-x_1)^2+(x_3-x_2)^2\bigr],\qquad M=\begin{pmatrix}m_{\mathrm O}&0&0\\0&m_{\mathrm C}&0\\0&0&m_{\mathrm O}\end{pmatrix},\quad K=k\begin{pmatrix}1&-1&0\\-1&2&-1\\0&-1&1\end{pmatrix}

である。det⁡(K−ω2M)=0\det(K-\omega^2M)=0 を解くと3つの解

ω2=0,ω12=kmO,ω32=k(1mO+2mC)(2.1.23)\omega^2=0,\qquad \omega_1^2=\frac{k}{m_{\mathrm O}},\qquad \omega_3^2=k\Bigl(\frac1{m_{\mathrm O}}+\frac2{m_{\mathrm C}}\Bigr)\tag{2.1.23}

を得る。形は順に a∝(1,1,1)\bm{a}\propto(1,1,1)(全体の並進、零モード)、(1,0,−1)(1,0,-1)(C が止まり O が左右対称に伸び縮みする対称伸縮)、(1,−2mO/mC,1)(1,-2m_{\mathrm O}/m_{\mathrm C},1)(C と2つの O が逆向きに動く逆対称伸縮)である。3つは MM について直交していて(akTMal=0\bm{a}_k^{\mathsf T}M\bm{a}_l=0)、逆対称伸縮の C の振幅が −2mO/mC-2m_{\mathrm O}/m_{\mathrm C} になるのは、並進の零モードと直交する、つまり重心を動かさないためである。対称伸縮では C が動かないので、C の質量は ω1\omega_1 に入らない。

軸に垂直な(横の)変位 y1y_1, y2y_2, y3y_3 では、結合の長さは1次では変わらず、O–C–O の角が 180∘180^\circ からずれる。ずれの角は1次でβ=(y1+y3−2y2)/ℓCO\beta=(y_1+y_3-2y_2)/\ell_{\mathrm{CO}}(ℓCO\ell_{\mathrm{CO}} は結合の長さ)なので、曲げのポテンシャルを V⊥=κ2(y1+y3−2y2)2V_\perp=\frac\kappa2(y_1+y_3-2y_2)^2 と置く。KK の階数は 11 で、零でない固有値は1つだけ、

ω22=2κmO(1+2mOmC)(2.1.24)\omega_2^2=\frac{2\kappa}{m_{\mathrm O}}\Bigl(1+\frac{2m_{\mathrm O}}{m_{\mathrm C}}\Bigr)\tag{2.1.24}

で、残る2つの零モードは横の並進と、軸に垂直な軸のまわりの回転である。横の変位は軸に垂直な2つの向きにとれるので、曲げは同じ ω2\omega_2 の振動が2つ(縮退)ある。縦の2つと曲げの2つで、振動は合わせて4つになる。

観測される振動数は、波数で対称伸縮 1333 cm−11333\,\mathrm{cm^{-1}}、曲げ 667 cm−1667\,\mathrm{cm^{-1}}、逆対称伸縮 2349 cm−12349\,\mathrm{cm^{-1}} である(G. Herzberg (1945), Molecular Spectra and Molecular Structure II. Infrared and Raman Spectra of Polyatomic Molecules, Van Nostrand。NIST Computational Chemistry Comparison and Benchmark Database の CO2_2 の頁で引用されている値)。対称伸縮は曲げの2倍の振動(2×667≈13342\times667\approx1334)とほぼ同じ振動数なので、2つが混ざって2本の線に分かれて観測され、1333 cm−11333\,\mathrm{cm^{-1}} は分かれる前の値として求めたものである(E. Fermi (1931), Zeitschrift für Physik 71, 250。この混ざりを Fermi 共鳴と呼ぶ)。混ざりの原因はポテンシャルの3次の項で、2次で打ち切った L2L_2 には入っていない。3つの振動のうち赤外線を吸収するのは双極子モーメントが変わる曲げと逆対称伸縮で、対称伸縮は Raman 散乱で観測される(ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第3部第3章)。

図

図 2.1.3 CO2_2 の4つの振動のうち3種類の形。矢印は同じ時刻の変位の向き(逆対称伸縮の C の矢印は、O より 2mO/mC=2.672m_{\mathrm O}/m_{\mathrm C}=2.67 倍長い変位を、図の都合で上にずらして描いた)。曲げは紙面内と紙面に垂直な向きの2つが同じ振動数を持つ。どの形でも重心は動かない

例題 2.1.5 CO2_2 のばね定数を観測値から決める ★★★

オリジナルmO=15.995 um_{\mathrm O}=15.995\,\mathrm u, mC=12.000 um_{\mathrm C}=12.000\,\mathrm u(1 u=1.6605×10−27 kg1\,\mathrm u=1.6605\times10^{-27}\,\mathrm{kg})、波数 ν~\tilde\nu と角振動数の関係を ω=2πcν~\omega=2\pi c\tilde\nu とする。

  1. (1) 式 (2.1.23) の比 ω3/ω1\omega_3/\omega_1 を求め、観測値の比と比べよ。kk を逆対称伸縮の観測値 2349 cm−12349\,\mathrm{cm^{-1}} に合わせると、対称伸縮の波数はいくらと予言されるか。
  2. (2) 2本の結合の伸びを s1=x2−x1s_1=x_2-x_1, s2=x3−x2s_2=x_3-x_2 として、ポテンシャルに結合どうしの項 k′s1s2k's_1s_2 を足す。ω12\omega_1^2 と ω32\omega_3^2 を求め、2つの観測値から kk と k′k' を決めよ。
  3. (3) 曲げの観測値 667 cm−1667\,\mathrm{cm^{-1}} から κ\kappa を求め、kk と比べよ。
解答

(1) ω3/ω1=1+2mO/mC=1+2×1.3329=1.915\omega_3/\omega_1=\sqrt{1+2m_{\mathrm O}/m_{\mathrm C}}=\sqrt{1+2\times1.3329}=1.915。観測値の比は 2349/1333=1.7622349/1333=1.762 で、模型の比のほうが 9% 大きい。ω3=2πc×234900 m−1=4.425×1014 s−1\omega_3=2\pi c\times234900\,\mathrm{m^{-1}}=4.425\times10^{14}\,\mathrm{s^{-1}} に合わせると k=ω32/(1/mO+2/mC)=1418 N m−1k=\omega_3^2\big/(1/m_{\mathrm O}+2/m_{\mathrm C})=1418\,\mathrm{N\,m^{-1}} で、予言される対称伸縮は 2349/1.915=1227 cm−12349/1.915=1227\,\mathrm{cm^{-1}}、観測値 1333 cm−11333\,\mathrm{cm^{-1}} より 8% 低い。

(2) 対称伸縮では s1=s2s_1=s_2、逆対称伸縮では s1=−s2s_1=-s_2 になる(形 (1,0,−1)(1,0,-1) と (1,−2mO/mC,1)(1,-2m_{\mathrm O}/m_{\mathrm C},1) から読む)。k′s1s2k's_1s_2 は前者で正、後者で負なので、剛性が対称伸縮では増え、逆対称伸縮では減る。行列で解き直すと

ω12=k+k′mO,ω32=(k−k′)(1mO+2mC).\omega_1^2=\frac{k+k'}{m_{\mathrm O}},\qquad \omega_3^2=(k-k')\Bigl(\frac1{m_{\mathrm O}}+\frac2{m_{\mathrm C}}\Bigr).

k+k′=mOω12=1675 N m−1k+k'=m_{\mathrm O}\omega_1^2=1675\,\mathrm{N\,m^{-1}}、k−k′=1418 N m−1k-k'=1418\,\mathrm{N\,m^{-1}} から k=1547 N m−1k=1547\,\mathrm{N\,m^{-1}}, k′=128 N m−1k'=128\,\mathrm{N\,m^{-1}}(k′/k=0.083k'/k=0.083)。片方の結合が伸びるともう片方も伸びにくくなる、という結合どうしの小さな相互作用を入れると、2つの観測値を同時に再現することができる。

(3) 式 (2.1.24) から κ=mOω222(1+2mO/mC)=57.2 N m−1\kappa=\dfrac{m_{\mathrm O}\omega_2^2}{2(1+2m_{\mathrm O}/m_{\mathrm C})}=57.2\,\mathrm{N\,m^{-1}}。kk の約 1/271/27 で、結合を曲げるのは伸ばすよりずっと柔らかい。曲げの振動数が伸縮の半分ほどしかないのはこのためである(検算 scripts/verify_ch2-01.py)。

2次で打ち切る近似がどれだけ良いかは、振動の振幅と結合の長さの比で測ることができる。対称伸縮の量子力学的な零点振動の振幅の目安 ℏ/(2mOω1)=2.8 pm\sqrt{\hbar/(2m_{\mathrm O}\omega_1)}=2.8\,\mathrm{pm} は、結合の長さ 116.2 pm116.2\,\mathrm{pm}(G. Herzberg (1966), Electronic Spectra and Electronic Structure of Polyatomic Molecules, Van Nostrand。前掲の NIST のデータベースによる)の 2.4% である。3次の項の大きさはこの比の程度で、Fermi 共鳴のように振動数がほぼ一致する組み合わせがあるときだけ目に見える違いになる。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの 振幅と結合の長さの比 ∣η∣/ℓCO→0\lvert \eta\rvert /\ell_{\mathrm{CO}}\to0(CO2_2 の零点振動で 0.0240.024) | 証明 条件付き(並進・回転の零モードを除いた向きで KK が正定値。振動数がほぼ一致する組み合わせ(Fermi 共鳴)があると3次の項の補正が1次で現れる) | 行き先 近似の数理 第2章

この基準振動の作り方は、原子の数が増えてもそのまま使うことができる。原子を一列にばねでつないだ鎖では MM と KK が巨大な帯行列になり、基準振動は波になる。格子間隔を 00 に送った極限が弦の場で、それが第2部第4章の主題である。

ほかの巻では

木下の勉強ステータス

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