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この章で選ぶ LL:ばねでつないだ原子の列

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第4章 ばねでつないだ原子の列から場へ
目次
  1. 列の
  2. ばね定数はポテンシャルの2階微分
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第4章 §2.4.1 ★★★ 原子の列の LL を書き、ばね定数 KK が原子間ポテンシャルの2階微分であることと、そこで調和近似を使ったことを確かめる

この部のここまでの章で扱ったのは、粒子が1個から数個の系だった。電磁場や重力場のような「場」は、空間の各点に1つずつ自由度を持つので、自由度が無限にある。自由度が無限にある系に Lagrangian をどう書けばよいかは、いきなり考えると分かりにくい。この章では、すでに書き方を知っている有限個の自由度の系から出発し、自由度を増やしていく極限として場の LL を作る。

選ぶのは、質量 mm の原子を NN 個、ばね定数 KK のばねで一直線につないだ列である。この列の LL は

L=∑j12mu˙j2−∑j12K(uj+1−uj)2L=\sum_{j}\frac12m\dot u_j^2-\sum_j\frac12K(u_{j+1}-u_j)^2

の1行で書ける(uju_j は jj 番目の原子のつり合いの位置からのずれ)。これは結晶の格子振動のいちばん簡単な模型で、固体物理でフォノンと呼ぶものの古典版でもある。当てる道具は、第2部第1章の小振動の方法(LL を2次形式にして基準座標に分ける)と、第1部第10章の Noether の定理である。列には「原子の番号を1つずらしても同じ」という対称性があり、この対称性によって基準座標の形が平面波に決まる。

出てくるものは3つある。1つめは、角振動数 ω\omega と波数 kk の関係(分散関係)ω=2K/m ∣sin⁡(ka/2)∣\omega=2\sqrt{K/m}\,\lvert \sin(ka/2)\rvert である。2つめは、LL が NN 個の独立な調和振動子の和に分かれること、つまり基準座標である。3つめは、格子間隔 aa を 00 に送ったとき、列の LL が連続な弦の L=∫(12ρ ∂tu2−12Y ∂xu2)dxL=\int\bigl(\frac12\rho\,\partial_tu^2-\frac12Y\,\partial_xu^2\bigr)\mathrm{d} x になることである。最後の式の被積分関数がLagrangian 密度で、これが 第2部第5章以降で場を扱うときの出発点になる。連続の極限で何を捨てたか(短い波長のモードと、分散関係の曲がり)も式で確かめ、場の理論の「紫外の切断」への伏線として残す。

列の LL

直線上に質量 mm の原子が NN 個並び、つり合いのとき jj 番目の原子は xj=jax_j=ja にあるとする(aa は格子定数、j=0,1,…,N−1j=0,1,\dots,N-1)。原子は列の向きにだけ動き、時刻 tt の位置を ja+uj(t)ja+u_j(t) と書く。一般化座標は NN 個のずれ u0,…,uN−1u_0,\dots,u_{N-1} である。両端の扱いは、この節から第4節までは周期境界条件 uj+N=uju_{j+N}=u_j にする。列を輪につないだと考えてよい。輪にすると端が無くなり、どの原子も同じ立場になるので、対称性が見やすくなる。壁や自由端のある列は第5節と総合問題で扱う。

隣り合う原子は、ばね定数 KK のばねでつながっているとする。jj 番目と j+1j+1 番目の間のばねの伸びは (ja+a+uj+1)−(ja+uj)−a=uj+1−uj(ja+a+u_{j+1})-(ja+u_j)-a=u_{j+1}-u_j なので、

定義 2.4.1(原子の列の Lagrangian)

L=∑j=0N−112mu˙j2−∑j=0N−112K(uj+1−uj)2,uN≡u0(2.4.1)L=\sum_{j=0}^{N-1}\frac12m\dot u_j^2-\sum_{j=0}^{N-1}\frac12K(u_{j+1}-u_j)^2,\qquad u_N\equiv u_0\tag{2.4.1}

を原子の列の Lagrangian とする。

図

図 2.4.1 ばねでつないだ原子の列。破線がつり合いの位置 jaja、黒丸が時刻 tt の原子で、ずれ uju_j が一般化座標になる。ばねの伸びは隣どうしのずれの差 uj+1−uju_{j+1}-u_j だけで決まる

運動エネルギーは原子ごとの和、位置エネルギーはばねごとの和である。位置エネルギーが「ずれの差」だけで書けていることが、この章の全部の結果の元になる。列全体を同じだけずらす uj→uj+ϵu_j\to u_j+\epsilon では、どのばねの伸びも変わらない。

ばね定数はポテンシャルの2階微分

実際の結晶の原子の間にばねがあるわけではない。原子の間には距離 rr だけによる相互作用のポテンシャル ϕ(r)\phi(r) があり、つり合いの間隔 aa は ϕ′(a)=0\phi'(a)=0 で決まる。隣どうしの距離は a+(uj+1−uj)a+(u_{j+1}-u_j) なので、ϕ\phi を aa のまわりで Taylor 展開すると

ϕ(a+δ)=ϕ(a)+12ϕ′′(a) δ2+16ϕ′′′(a) δ3+O(δ4),δ=uj+1−uj(2.4.2)\phi(a+\delta)=\phi(a)+\frac12\phi''(a)\,\delta^2+\frac16\phi'''(a)\,\delta^3+\mathcal{O}(\delta^4),\qquad \delta=u_{j+1}-u_j\tag{2.4.2}

になる。1次の項は ϕ′(a)=0\phi'(a)=0 で消える。定数 ϕ(a)\phi(a) は運動方程式を変えないので落とし、3次以上の項を捨てると、K=ϕ′′(a)K=\phi''(a) のばねと同じ式 (2.4.1) になる。3次以上を捨てる近似を調和近似と呼ぶ。ここではポテンシャルを ϕ\phi と書き、運動エネルギーとの差を取る前の全体の位置エネルギー VV と区別した。

調和近似が使えるかどうかは、ずれの差 δ\delta が aa に比べて十分小さいかで決まる。3次の項と2次の項の比は ϕ′′′(a)δ/(3ϕ′′(a))\phi'''(a)\delta/(3\phi''(a)) で、例題 2.4.1 で見るように、典型的な原子間ポテンシャルではこの比が δ/a\delta/a の数倍になる。

原子を質点とみなすこと

この LL は、原子を「位置だけを持つ質点」とし、原子どうしの相互作用を位置だけの関数 ϕ(r)\phi(r) で書いている。実際の原子は原子核と電子からなり、ϕ(r)\phi(r) は電子の状態を原子核の位置ごとに解いて得るエネルギーである。原子核が電子よりずっと重く遅いので、電子は原子核の位置に即座に追随するとみなす(Born–Oppenheimer 近似)。この近似の構造は 近似の数理 第7章で、そもそも原子が周期的に並ぶことの理由(結晶化問題)は、数学としては未解決の問題で、その状況は 近似の数理 第13章で述べる。

例題 2.4.1 Lennard-Jones 型のポテンシャルからばね定数を出す ★★

オリジナル原子間のポテンシャルを ϕ(r)=V0[(rm/r)12−2(rm/r)6]\phi(r)=V_0\bigl[(r_{\mathrm m}/r)^{12}-2(r_{\mathrm m}/r)^6\bigr](V0>0V_0>0)とする。

  1. (1) つり合いの間隔が a=rma=r_{\mathrm m} であることを示し、ばね定数 K=ϕ′′(rm)K=\phi''(r_{\mathrm m}) を求めよ。
  2. (2) ϕ′′′(rm)\phi'''(r_{\mathrm m}) を求め、式 (2.4.2) の3次の項と2次の項の比を δ/rm\delta/r_{\mathrm m} で表せ。
  3. (3) 比が 0.10.1 になるずれ δ\delta は格子定数の何% か。
解答

(1) s=rm/rs=r_{\mathrm m}/r とおくと ϕ=V0(s12−2s6)\phi=V_0(s^{12}-2s^6)、dsdr=−s/r\frac{\mathrm{d} s}{\mathrm{d} r}=-s/r なのでϕ′(r)=−12V0r(s12−s6)\phi'(r)=-\dfrac{12V_0}{r}(s^{12}-s^6)。r=rmr=r_{\mathrm m}(s=1s=1)で 00 になるので、つり合いの間隔は a=rma=r_{\mathrm m} である。もう1回微分すると、r−nr^{-n} の2階微分が n(n+1)r−n−2n(n+1)r^{-n-2} であることから

ϕ′′(rm)=V0rm2(12⋅13−2⋅6⋅7)=72V0rm2=K.\phi''(r_{\mathrm m})=\frac{V_0}{r_{\mathrm m}^2}\bigl(12\cdot13-2\cdot6\cdot7\bigr)=\frac{72V_0}{r_{\mathrm m}^2}=K .

(2) r−nr^{-n} の3階微分は −n(n+1)(n+2)r−n−3-n(n+1)(n+2)r^{-n-3} なので

ϕ′′′(rm)=V0rm3(−12⋅13⋅14+2⋅6⋅7⋅8)=V0rm3(−2184+672)=−1512V0rm3.\phi'''(r_{\mathrm m})=\frac{V_0}{r_{\mathrm m}^3}\bigl(-12\cdot13\cdot14+2\cdot6\cdot7\cdot8\bigr)=\frac{V_0}{r_{\mathrm m}^3}(-2184+672)=-\frac{1512V_0}{r_{\mathrm m}^3}.

3次の項と2次の項の比の大きさは

∣ϕ′′′∣ ∣δ∣/6ϕ′′/2=15123⋅72 ∣δ∣rm=7 ∣δ∣rm.\frac{\lvert \phi'''\rvert \,\lvert \delta\rvert /6}{\phi''/2}=\frac{1512}{3\cdot72}\,\frac{\lvert \delta\rvert }{r_{\mathrm m}}=7\,\frac{\lvert \delta\rvert }{r_{\mathrm m}} .

(3) 7∣δ∣/rm=0.17\lvert \delta\rvert /r_{\mathrm m}=0.1 から ∣δ∣/rm=1/70≈0.014\lvert \delta\rvert /r_{\mathrm m}=1/70\approx0.014、つまり格子定数の約 1.4%1.4\% である。比の係数が 11 でなく 77 になるのは、このポテンシャルが近づく側(r<rmr<r_{\mathrm m})で急に立ち上がり、つり合いのまわりで強く非対称だからである。調和近似の「ずれが小さい」は、δ/a≪1\delta/a\ll1 よりも一桁厳しい δ/a≪1/7\delta/a\ll1/7 を意味する(検算 scripts/verify_ch2-04.py)。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの ずれと格子定数の比 δ/a→0\delta/a\to0(調和近似) | 証明 条件付き(振幅を 00 に送る極限で、有限の時間区間に限る。長い時間で非調和項がモードの間にエネルギーを移すかどうかは別の問題) | 行き先 近似の数理 第2章

木下の勉強ステータス

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