解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第4章 §2.4.2 ★★★ 運動方程式は隣だけを結ぶ連立方程式になる。番号をずらしても L が変わらないので、基準振動は平面波に決まる
運動方程式
式 (2.4.1) の L で uj が現れるのは、運動エネルギーの 21mu˙j2 と、ばね (j−1,j) と (j,j+1) の2本の項である。
∂u˙j∂L=mu˙j,∂uj∂L=−K(uj−uj−1)+K(uj+1−uj)
なので、Euler–Lagrange 方程式は
mu¨j=K(uj+1+uj−1−2uj)(j=0,…,N−1)(2.4.3)
になる。右辺は「右のばねが右へ引く力 K(uj+1−uj)」と「左のばねが左へ引く力 −K(uj−uj−1)」の和で、Newton の運動方程式をそのまま書いたものと同じである。N 本の2階の常微分方程式が、隣どうしだけを通じてつながっている。
小振動の方法
第2部第1章で示したとおり、L が速度の2次形式と座標の2次形式の差
L=21mj∑u˙j2−21j,j′∑Φjj′ujuj′(2.4.4)
で書けるとき、運動は対称行列 Φ(力の定数行列)の固有ベクトルの向きに分かれ、各向きは固有値 mω2 の単振動になる。原子の列では、式 (2.4.1) の位置エネルギーを展開すると
Φjj=2K,Φj,j±1=−K,ほかは 0(添字は N を法として数える)(2.4.5)
である。N 行 N 列の行列の固有値問題を解けばよいが、N が大きいと手で解くことはできない。ところが、この行列には対称性があり、それを使うと固有ベクトルが計算せずに分かる。
番号をずらしても同じ
原子の番号を1つずらす操作 uj→uj+1 を考える。周期境界条件のもとでは、これは N 個のずれの並べ替えにすぎず、式 (2.4.1) の運動エネルギーの和もばねの和も、足す順番が変わるだけで値は変わらない。行列で書くと、ずらしの行列 (R)jj′=δj′,j+1 は力の定数行列と交換し、RΦ=ΦR が成り立つ。交換する2つの行列は、共通の固有ベクトルを持つように選べる。R は N 回かけると恒等行列に戻るので、固有値は 1 の N 乗根 eika で、
k=Na2πl(l=0,1,…,N−1)(2.4.6)
である。固有値 eika の固有ベクトルは「番号を1つ進めると eika 倍になる」ベクトル、つまり平面波 uj∝eikja である。したがって力の定数行列の固有ベクトルも平面波で、残る仕事は固有値(ω2)を求めることだけになる。
ずらし方の違う2つの並進
この列には並進が2種類ある。1つめは、全部の原子を同じだけ動かす uj→uj+ϵ で、ばねの伸びを変えないので L は変わらない。これは連続的な変換なので、第1部第10章の Noether の定理が当てはまり、全運動量 ∑jmu˙j が保存する。2つめは、原子の番号を1つずらす uj→uj+1 で、ずらす量は格子定数 a の整数倍に限られる。こちらは連続的でないので保存量は出ないが、基準振動に「波数 k」という名札を付ける。k と k+2π/a は同じ eika を与えるので、名札は 2π/a の幅の中だけで意味を持つ。
例題 2.4.2 4個の原子の輪を対角化する ★★
オリジナル原子が N=4 個の輪(周期境界条件)を考える。
- (1) 力の定数行列 Φ を K を単位にして書き、固有値を求めよ。
- (2) 平面波 uj=eiπlj/2(l=0,1,2,3)がそれぞれ Φ の固有ベクトルであることを確かめ、基準振動の角振動数を求めよ。
- (3) l=0 と l=2 のモードで、原子がどう動くかを言葉で述べよ。
解答
(1) 式 (2.4.5) から
Φ=K2−10−1−12−100−12−1−10−12.
行の和がどれも 0 なので (1,1,1,1) は固有値 0 の固有ベクトルである。トレースは 8K、残りは (2) の計算から 2K,2K,4K で、固有値は 0,2K,2K,4K になる。
(2) Φ を uj=eiπlj/2 に掛けると、j 成分は
K(2eiπlj/2−eiπl(j+1)/2−eiπl(j−1)/2)=K(2−eiπl/2−e−iπl/2)eiπlj/2=4Ksin24πleiπlj/2
で、確かに固有ベクトルであり、固有値は 4Ksin2(πl/4)=0,2K,4K,2K(l=0,1,2,3)。これが (1) の残りの固有値である。角振動数は mω2=4Ksin2(πl/4) から ω=0, 2K/m, 2K/m, 2K/m。l=1 と l=3 は逆向きに進む波で、角振動数が等しい(縮退している)。
(3) l=0 は uj=1 で、全部の原子が同じだけずれる。ばねは伸びないので復元力が無く、ω=0 になる。これは振動でなく列全体の一様な並進である。l=2 は uj=(−1)j で、隣どうしが逆向きに動き、どのばねも最大に伸び縮みする。角振動数は最大の 2K/m になる(検算 scripts/verify_ch2-04.py)。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com