解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第4章 §2.4.3 ★★★ 平面波を入れると ω=2K/m∣sin(ka/2)∣。長い波長では音波 ω=vk、波数は 2π/a の幅の中だけで意味を持つ
分散関係
前の節の結論から、運動方程式 (2.4.3) の解を uj(t)=Aei(kja−ωt) の形で探す(実際の変位はこの実部)。代入すると
−mω2uj=K(eika+e−ika−2)uj=−4Ksin22kauj
で、j によらない条件
ω(k)=2mKsin2ka(2.4.7)
が出る。角振動数と波数の関係を分散関係と呼ぶ。式 (2.4.6) の N 個の k のそれぞれに ω(k) が1つ決まり、それが N 個の基準振動である。

図 2.4.2 原子の列の分散関係(点線)と、長い波長の極限で得る連続の弦の分散関係(実線)。ka/π=±1(破線)が Brillouin 域の境界で、その外の k は内側の k と同じ原子の運動を表す。∣ka∣≲0.5 では2本はほとんど重なり、境界に近づくと列の曲線は寝て、群速度が 0 になる
長い波長:音波
∣ka∣≪1 では sin(ka/2)≈ka/2 なので
ω≈v∣k∣,v=amK(2.4.8)
になる。ω が k に比例する波は、どの波長でも同じ速さ v で進む。これが固体の中の音波で、v が音速である。波長が格子定数よりずっと長い波にとって、原子の粒々は見えず、列は一様な弾性体として振る舞う。第5節ではこの見方を極限として正確に書く。
短い波長:Brillouin 域
式 (2.4.6) の k を 2π/a だけずらしても、原子のいる点 xj=ja での平面波の値 eikja は変わらない。原子のいない点での値は変わるが、原子の列の運動には原子のいる点の値しか現れない。したがって k は −π/a<k≤π/a の幅 2π/a の中だけを考えれば十分で、この範囲を(1次元の)Brillouin 域と呼ぶ。式 (2.4.6) の N 個の k をこの範囲に移すと、ちょうど N 個の基準振動が Brillouin 域に等間隔で並ぶ。自由度の数とモードの数は一致する。
波が運ぶエネルギーの速さは、位相の進む速さ ω/k(位相速度)ではなく、少しずつ違う k の波を重ねた波束の進む速さ
vg=dkdω=amKcos2ka(0<k<π/a)(2.4.9)
(群速度)である。境界 k=π/a では vg=0 になる。このとき uj∝(−1)j で、右へ進む波と左へ進む波が区別できず、定在波になっている。
例題 2.4.3 波長の短い波は長い波と見分けがつかない ★★
オリジナル
- (1) 波長 0.8a の波 uj=cos(kja) を考える。Brillouin 域の中の波数で、全部の原子で同じ変位を与えるものを求め、その波長を答えよ。
- (2) (1) の2つの波数で、式 (2.4.7) の角振動数が等しいことを確かめよ。
- (3) k=π/(2a) の波の群速度と位相速度を、音速 v=aK/m との比で求めよ。
解答
(1) 波長 0.8a の波数は k=2π/(0.8a)=2.5π/a で、Brillouin 域の外にある。2π/a を引くと k′=0.5π/a で、cos(k′ja)=cos(2.5πj−2πj)=cos(2.5πj) なので全部の原子で変位が一致する。波長は 2π/k′=4a である。原子の間に何回も振動する波を描いても、原子はその波の値を飛び飛びに拾うだけなので、ゆっくりした波長 4a の波と同じ運動になる。
(2) sin2 の周期は π なので、sin2(ka/2) は k→k+2π/a で変わらない。実際 sin2(1.25π)=sin2(0.25π)=0.5 で、どちらも ω=2K/m である。
(3) 式 (2.4.9) から vg/v=cos(π/4)=0.707。位相速度は
kvω=π/22sin(π/4)=π4sin4π=0.900.
群速度は位相速度より小さい。分散関係が上に凸に曲がっているので、傾き dkdω は原点を通る直線の傾き ω/k より小さい(検算 scripts/verify_ch2-04.py)。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com