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この章で選ぶもの:Lagrangian 密度

2026年10月15日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第5章 場の Lagrangian 密度と場の Euler–Lagrange 方程式
目次
  1. 原子の列から弦へ(前の章の結果)
  2. Lagrangian 密度
  3. 相対論の記法
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第5章 §2.5.1 ★★★ 場の Lagrangian は空間積分 L=∫L d3xL=\int\mathcal L\,\mathrm{d}^3x で、中身 L\mathcal L は各点の値と1階微分だけで決まる

前の章(第2部第4章)では、ばねでつないだ原子の列の Lagrangian から出発し、格子間隔 aa を 00 に送る極限で、原子の変位 qn(t)q_n(t) の並びが連続な関数 ϕ(t,x)\phi(t,x) に置き換わり、運動方程式が波動方程式になることを見た。そのとき Lagrangian は原子についての和から xx についての積分 L=∫L dxL=\int\mathcal L\,\mathrm{d} x に変わり、積分の中身 L\mathcal L は各点の ϕ\phi の時間微分と空間微分だけで書けていた。この章では、この積分の中身を主役にする。

この章で選ぶものはLagrangian 密度 L(ϕ,∂tϕ,∇ϕ,t,x)\mathcal L(\phi,\partial_t\phi,\nabla\phi,t,\bm{x}) である。作用は L\mathcal L を時間と空間の両方について積分したもの

S[ϕ]=∫t1t2dt∫d3x  LS[\phi]=\int_{t_1}^{t_2}\mathrm{d} t\int\mathrm{d}^3x\;\mathcal L

になる。当てる道具は第1部の汎関数と変分(第1部第3章)と Euler–Lagrange 方程式の導き方(第1部第4章)で、変えるのは1か所だけである。粒子では時刻 tt の1変数で部分積分したが、場では時刻と空間の4変数で部分積分する。そのための道具が発散定理で、これを使うと場の Euler–Lagrange 方程式

∂μ∂L∂(∂μϕ)−∂L∂ϕ=0\partial_\mu\frac{\partial \mathcal L}{\partial (\partial_\mu\phi)}-\frac{\partial \mathcal L}{\partial \phi}=0

が出てくる。この1本の式から、弦の波動方程式・Klein–Gordon 方程式・Schrödinger 方程式が、L\mathcal L の選び方の違いとして出てくる。後半では、部分積分で出る境界の項から弦の端の条件(固定端・自由端・ばねつきの端)を導き、粒子の Legendre 変換を空間の各点で行って Hamiltonian 密度とエネルギーの流れを作る。電磁場の Lagrangian は次の章(第2部第6章)、場の Noether の定理とエネルギー運動量テンソルはその次の章(第2部第7章)で扱う。

原子の列から弦へ(前の章の結果)

前の章(第2部第4章)の出発点は、質量 mm の原子が間隔 aa で1列に並び、隣どうしがばね定数 KK のばねでつながった系だった。線密度 ρ=m/a\rho=m/a と1次元の弾性率 Y=KaY=Ka を固定して格子間隔 aa を 00 に送ると、列の Lagrangian は第4章の式 (2.4.14) の形になる。この章では変位を ϕ(t,x)\phi(t,x) と書いて

L=∫dx  [ρ2(∂tϕ)2−Y2(∂xϕ)2],ρ=ma,Y=Ka(2.5.1)L=\int\mathrm{d} x\;\Bigl[\frac\rho2(\partial_t\phi)^2-\frac Y2(\partial_x\phi)^2\Bigr],\qquad \rho=\frac ma,\quad Y=Ka\tag{2.5.1}

と書く。ρ\rho は単位長さあたりの質量(線密度)、YY は1次元の弾性率である。棒の縦振動なら YY は Young 率と断面積の積、張った弦の横振動なら張力に当たる(2.5.6節)。前の章では、この LL から波動方程式 ρ ∂t2ϕ=Y∂x2ϕ\rho\,\partial_t^2\phi=Y\partial_x^2\phi と波の速さ v=Y/ρv=\sqrt{Y/\rho} を出した。

Lagrangian 密度

式 (2.5.1) の被積分関数を取り出して L\mathcal L と書く。

定義 2.5.1(Lagrangian 密度)

空間の各点 x\bm{x} に実数の値 ϕ(t,x)\phi(t,\bm{x}) を持つ量を場と呼ぶ。場の Lagrangian が

L(t)=∫d3x  L(ϕ(t,x), ∂tϕ(t,x), ∇ϕ(t,x), t, x)(2.5.2)L(t)=\int\mathrm{d}^3x\;\mathcal L\bigl(\phi(t,\bm{x}),\,\partial_t\phi(t,\bm{x}),\,\nabla\phi(t,\bm{x}),\,t,\,\bm{x}\bigr)\tag{2.5.2}

の形に書けるとき、L\mathcal L をLagrangian 密度と呼ぶ。作用は

S[ϕ]=∫t1t2L dt=∫t1t2dt∫d3x  L(2.5.3)S[\phi]=\int_{t_1}^{t_2}L\,\mathrm{d} t=\int_{t_1}^{t_2}\mathrm{d} t\int\mathrm{d}^3x\;\mathcal L\tag{2.5.3}

である。L\mathcal L の次元は「エネルギー÷体積」(1次元の場ではエネルギー÷長さ)になる。

粒子の力学との対応はこうなる。粒子では一般化座標 qiq_i に番号 i=1,…,fi=1,\dots,f が付いていた。場では番号の代わりに空間の点 x\bm{x} が付き、ϕ(t,x)\phi(t,\bm{x}) は「番号 x\bm{x} の一般化座標の時刻 tt での値」である。自由度は連続無限個になり、和 ∑i\sum_i は積分 ∫d3x\int\mathrm{d}^3x に変わる。同じ記号 x\bm{x} が出てくるが、x\bm{x} は力学変数ではなく番号であり、時刻 tt と同じく「どこで値を読むか」を指定する引数である。

Lagrangian が密度の積分の形 (2.5.2) に書けることは、どの場でも成り立つわけではない。原子の列では、各原子が隣の原子とだけばねでつながっていたので、LL は「点 nn の付近の量」の和になっていた。隣どうしの差 qn+1−qnq_{n+1}-q_n は連続の極限で微分 ∂xϕ\partial_x\phi になる。こうして、近くどうしだけが相互作用する系(局所的な系)では、L\mathcal L が各点の ϕ\phi とその1階微分で書くことができる。遠く離れた点どうしが直接相互作用する系(たとえば重力や Coulomb 力で直接結ばれた粒子の集まり)は、このままでは密度の形にならない。そうした遠隔の相互作用も、間に場(電磁場)を立ててその場を局所的な L\mathcal L で書けば、密度の形に収まる。次の章で電磁場の L\mathcal L を書くのはこのためである。

この巻では L\mathcal L が ϕ\phi の2階以上の微分を含まない場合だけを扱う。粒子の L(q,q˙,t)L(q,\dot q,t) が加速度を含まなかったのと同じ制限で、物理で使う場の理論(波動・電磁場・Klein–Gordon・Dirac)はすべてこの範囲に入る。

相対論の記法

時刻と空間をまとめて xμ=(ct,x)x^\mu=(ct,\bm{x}) と書くと、∂μ=(1c∂t,∇)\partial_\mu=(\frac1c\partial_t,\nabla)、体積要素は d4x=c dt d3x\mathrm{d}^4x=c\,\mathrm{d} t\,\mathrm{d}^3x だから、作用は

S[ϕ]=1c∫L(ϕ,∂μϕ,x) d4x(2.5.4)S[\phi]=\frac1c\int\mathcal L\bigl(\phi,\partial_\mu\phi,x\bigr)\,\mathrm{d}^4x\tag{2.5.4}

と書ける(記法は 第2部第3章 と同じで、計量は ημν=diag(+1,−1,−1,−1)\eta_{\mu\nu}=\mathrm{diag}(+1,-1,-1,-1))。L\mathcal L が ∂μϕ\partial_\mu\phi を通してだけ微分を含むことを、引数を ∂μϕ\partial_\mu\phi とまとめて書いて表す。前の係数 1/c1/c は、L\mathcal L をエネルギー密度の次元に保つための約束である。弦のように相対論と関係しない場では、dt d3x\mathrm{d} t\,\mathrm{d}^3x(1次元なら dt dx\mathrm{d} t\,\mathrm{d} x)の形 (2.5.3) をそのまま使う。

図

図 2.5.1 原子の列の分散関係(点線)と、その連続体の極限である弦の分散関係(実線)。ka→0ka\to0 で2本は接し、ずれの割合は (ka)2/24(ka)^2/24 から始まる。ka=π/4ka=\pi/4 でも差は 2.6 % にとどまる

式 (2.5.1) は格子間隔を 00 に送った極限なので、格子の運動方程式と比べてどれだけずれるかは分散関係で測ることができる。第4章の式 (2.4.16) で、格子の分散関係 ω=2K/m sin⁡(ka/2)\omega=2\sqrt{K/m}\,\sin(ka/2) を kaka について展開して

ω=vk(1−(ka)224+O((ka)4)),v=aK/m=Y/ρ(2.5.5)\omega=vk\Bigl(1-\frac{(ka)^2}{24}+\mathcal{O}\bigl((ka)^4\bigr)\Bigr),\qquad v=a\sqrt{K/m}=\sqrt{Y/\rho}\tag{2.5.5}

を得ている(図 2.5.1)。連続体の L\mathcal L は、kaka の小さい(波長が格子間隔より十分長い)成分について、相対誤差 (ka)2/24(ka)^2/24 で格子を再現する。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの ka→0ka\to0(波長が格子間隔 aa より十分長い) | 証明 条件付き(波長の長い成分だけ。分散関係のずれ (ka)2/24(ka)^2/24 は式 (2.5.5)(第4章の式 (2.4.16))で評価できる。解そのものの収束の評価は要確認) | 行き先 近似の数理 第9章

例題 2.5.1 原子の列から作った弦の上を進む波 ★★

オリジナル質量 m=1.0×10−3 kgm=1.0\times10^{-3}\,\mathrm{kg} の原子が間隔 a=1.0×10−2 ma=1.0\times10^{-2}\,\mathrm m で並び、ばね定数 K=1.0×103 N m−1K=1.0\times10^{3}\,\mathrm{N\,m^{-1}} のばねでつながっている。

  1. (1) 連続体の線密度 ρ\rho、弾性率 YY、波の速さ vv を求めよ。
  2. (2) 進む波 ϕ=Acos⁡(kx−ωt)\phi=A\cos(kx-\omega t)(ω=vk\omega=vk)について、Lagrangian 密度 L=ρ2(∂tϕ)2−Y2(∂xϕ)2\mathcal L=\frac\rho2(\partial_t\phi)^2-\frac Y2(\partial_x\phi)^2 が各点で 00 になることを示せ。
  3. (3) 同じ波のエネルギー密度 E=ρ2(∂tϕ)2+Y2(∂xϕ)2\mathcal E=\frac\rho2(\partial_t\phi)^2+\frac Y2(\partial_x\phi)^2 を求めよ。A=1.0×10−3 mA=1.0\times10^{-3}\,\mathrm m、波長 0.50 m0.50\,\mathrm m のとき、時間平均の値はいくらか。
  4. (4) 定在波 ϕ=Asin⁡kxcos⁡ωt\phi=A\sin kx\cos\omega t では L\mathcal L は各点では 00 にならないが、1波長と1周期にわたる平均は 00 になることを示せ。
解答

(1) ρ=m/a=0.10 kg m−1\rho=m/a=0.10\,\mathrm{kg\,m^{-1}}、Y=Ka=10 NY=Ka=10\,\mathrm N、v=Y/ρ=10 m s−1v=\sqrt{Y/\rho}=10\,\mathrm{m\,s^{-1}}。

(2) ∂tϕ=Aωsin⁡(kx−ωt)\partial_t\phi=A\omega\sin(kx-\omega t)、∂xϕ=−Aksin⁡(kx−ωt)\partial_x\phi=-Ak\sin(kx-\omega t) だから

L=A22(ρω2−Yk2)sin⁡2(kx−ωt).\mathcal L=\frac{A^2}{2}\bigl(\rho\omega^2-Yk^2\bigr)\sin^2(kx-\omega t).

ω=vk\omega=vk なら ρω2=ρv2k2=Yk2\rho\omega^2=\rho v^2k^2=Yk^2 なので括弧が 00 になり、L=0\mathcal L=0 が各点・各時刻で成り立つ。進む波では、運動エネルギーの密度と位置エネルギーの密度が各点でつねに等しい。

(3) 同じ計算で E=A22(ρω2+Yk2)sin⁡2(kx−ωt)=ρω2A2sin⁡2(kx−ωt)\mathcal E=\frac{A^2}{2}(\rho\omega^2+Yk^2)\sin^2(kx-\omega t)=\rho\omega^2A^2\sin^2(kx-\omega t)。sin⁡2\sin^2 の時間平均は 1/21/2 だから、平均は 12ρω2A2\frac12\rho\omega^2A^2 である。k=2π/0.50=12.6 m−1k=2\pi/0.50=12.6\,\mathrm m^{-1}、ω=vk=126 s−1\omega=vk=126\,\mathrm s^{-1} を入れると

E‾=12×0.10×(126)2×(1.0×10−3)2=7.90×10−4 J m−1.\overline{\mathcal E}=\tfrac12\times0.10\times(126)^2\times(1.0\times10^{-3})^2=7.90\times10^{-4}\,\mathrm{J\,m^{-1}}.

(4) ∂tϕ=−Aωsin⁡kxsin⁡ωt\partial_t\phi=-A\omega\sin kx\sin\omega t、∂xϕ=Akcos⁡kxcos⁡ωt\partial_x\phi=Ak\cos kx\cos\omega t、Yk2=ρω2Yk^2=\rho\omega^2 を使うと

L=ρω2A22(sin⁡2kx sin⁡2ωt−cos⁡2kx cos⁡2ωt).\mathcal L=\frac{\rho\omega^2A^2}{2}\bigl(\sin^2kx\,\sin^2\omega t-\cos^2kx\,\cos^2\omega t\bigr).

これは節(sin⁡kx=0\sin kx=0)の上では −12ρω2A2cos⁡2ωt≠0-\frac12\rho\omega^2A^2\cos^2\omega t\neq0 である。1波長の平均で sin⁡2kx\sin^2kx と cos⁡2kx\cos^2kx はともに 1/21/2、1周期の平均で sin⁡2ωt\sin^2\omega t と cos⁡2ωt\cos^2\omega t もともに 1/21/2 なので、平均は ρω2A22(14−14)=0\frac{\rho\omega^2A^2}{2}\bigl(\frac14-\frac14\bigr)=0 になる。運動方程式を満たす波では、L\mathcal L の平均が 00 になる(運動と位置のエネルギーが平均として等分される)。

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