解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第5章 §2.5.2 ★★★ 第1部の変分を4変数に広げる。部分積分の代わりに発散定理を使い、端の項は境界の面積分になる
場の変分
第1部第3章の変分は、経路 q(t) を1つの実数 ϵ でずらした族 q+ϵη を作り、ϵ で普通に微分する操作だった。場でも同じことをする。時空の領域 R(たとえば t1≤t≤t2 と空間の領域の積)で定義された場 ϕ(t,x) に対して、滑らかな関数 η(t,x) を選び、
ϕϵ(t,x)=ϕ(t,x)+ϵη(t,x),δϕ:=ϵη,δS:=ϵdϵdS[ϕϵ]ϵ=0(2.5.6)
と定める。δ は t と x を止めて ϵ で微分する操作なので、t や x についての偏微分と順番を入れ替えてよい。
δ(∂tϕ)=∂t(δϕ),δ(∂iϕ)=∂i(δϕ)(i=x,y,z).(2.5.7)
これは粒子の δq˙=dtdδq を4つの変数それぞれについて書いたものである。
場の汎関数微分
ある時刻の場の配置 ϕ(x) を入れて数を返す汎関数 F[ϕ](たとえばある時刻の位置エネルギー ∫2Y(∂xϕ)2dx)の汎関数微分は、第1部第3章の定義の t を x に置き換えて
δF=∫d3xδϕ(x)δFδϕ(x)(2.5.8)
で定める。特に F[ϕ]=ϕ(y)(1点の値)を入れると
δϕ(x)δϕ(y)=δ(3)(x−y)(2.5.9)
になる。これは第1部第3章の δq(t′)/δq(t)=δ(t−t′) の場の版で、多変数の ∂xj/∂xi=δij の添字 i を空間の点 x に置き換えたものである。2.5.5節で場の Poisson 括弧を作るとき、この形を使う。時空の汎関数 S[ϕ] についても同様に δS=∫dtd3xδϕ(t,x)δSδϕ(t,x) で δS/δϕ(t,x) を定める。
発散定理による部分積分
粒子のときは ∫∂q˙∂Ldtdδqdt を部分積分して δq の微分を外し、両端の項 [∂q˙∂Lδq]t1t2 を出した。場では微分が ∂t と ∂x,∂y,∂z の4つあるので、1変数の部分積分の代わりに発散定理を使う。(t,x,y,z) を4つの独立な座標とみなし、領域 R の境界 ∂R の外向きの単位法線を (Nt,Nx,Ny,Nz) とすると、4つの成分を持つ量 (Vt,Vx,Vy,Vz) について
∫R(∂tVt+i∑∂iVi)dtd3x=∮∂R(VtNt+i∑ViNi)dΣ(2.5.10)
が成り立つ(dΣ は境界の3次元の面積要素)。ここでは (t,x,y,z) を普通の4次元の直交座標として使っているだけで、計量は使っていない。Va=fg と置くと、各成分について
∫Rf∂agdtd3x=∮∂RfgNadΣ−∫Rg∂afdtd3x(a=t,x,y,z)(2.5.11)
が得られる。1変数のときの両端の項は、境界の面積分になった。

図 2.5.2 1次元の場の時空の領域 R=[t1,t2]×[0,ℓ]。始めと終わりの時刻の辺では、粒子のときと同じく場の配置を固定する(δϕ=0)。空間の端の辺で δϕ を 0 にするか自由にするかは、端の物理で決まる(2.5.4節)
例題 2.5.2 勾配の2乗の汎関数微分と端の項 ★★
オリジナル区間 [0,1] 上の関数 ϕ(x) の汎関数 F[ϕ]=∫0121ϕ′(x)2dx を考える(ある時刻の弦の位置エネルギーを Y=1 で書いたもの)。
- (1) ϕ+ϵη を入れて δF を計算し、端で η(0)=η(1)=0 なら δF/δϕ(x)=−ϕ′′(x) となることを示せ。
- (2) ϕ=x2、η=sinπx のとき、dϵdF[ϕ+ϵη]ϵ=0 を直接計算し、∫01(−ϕ′′)ηdx と一致することを確かめよ。
- (3) ϕ=x2、η=cosπx(端で 0 にならない向き)のとき、同じ微分が ∫01(−ϕ′′)ηdx と一致しないことを示し、差が端の項で説明できることを確かめよ。
解答
(1) F[ϕ+ϵη]=∫0121(ϕ′+ϵη′)2dx を ϵ で微分して ϵ=0 と置くと ∫01ϕ′η′dx。部分積分すると
ϵδF=[ϕ′η]01−∫01ϕ′′ηdx.
η(0)=η(1)=0 なら第1項が消え、δF=∫01(−ϕ′′)ϵηdx となるので、定義 (2.5.8) から δF/δϕ(x)=−ϕ′′(x)。3次元の ∫21(∇ϕ)2d3x でも、式 (2.5.11) を3方向に使って同じように −∇2ϕ が出る。
(2) ϕ′=2x、η′=πcosπx だから ∫012xπcosπxdx=2π(−π22)=−π4(∫01xcosπxdx=[πxsinπx]01−∫01πsinπxdx=−π22)。一方 −ϕ′′=−2 で ∫01(−2)sinπxdx=−π4。両者は一致する。
(3) η′=−πsinπx だから ∫012x(−πsinπx)dx=−2π⋅π1=−2(∫01xsinπxdx=π1)。一方 ∫01(−2)cosπxdx=0 である。差は端の項 [ϕ′η]01=2⋅1⋅cosπ−0=−2 で、−2=0+(−2) と合う。端で 0 にならない向きにずらすと、汎関数の変化は「内部の汎関数微分」だけでは決まらず、端での ϕ′ の値にもよる。2.5.4節では、この端の項から弦の端の条件が決まる。
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