解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第5章 §2.5.4 ★★ 式 (2.5.14) の面積分の項から、固定端・自由端・ばねつきの端の条件が出る。全発散を足しても方程式は変わらない
空間の端
定理 2.5.2 では、境界の全体で η=0 としていた。時刻 t1,t2 の辺については、粒子のときと同じく始めと終わりの配置を固定する約束なので、これでよい。空間の端については事情が違う。弦の端が壁に結んであれば端の変位は 0 に決まっているが、端が自由に動けるなら、作用の停留は端を動かす変分についても要求しなければならない。
1次元の弦 0≤x≤ℓ で、端 x=ℓ の変位が自由な場合を考える。式 (2.5.14) の面積分のうち、x=ℓ の辺(Nx=+1)の寄与は
ϵ∫t1t2∂(∂xϕ)∂Lx=ℓη(t,ℓ)dt=−ϵ∫t1t2Y∂xϕ(t,ℓ)η(t,ℓ)dt
である。まず端で 0 になる η だけを使えば、内部で波動方程式が出る。次に、波動方程式が成り立つことを使うと δS の体積の項は消え、残るのはこの端の項だけになる。η(t,ℓ) は自由に選べるので、変分法の基本補題をもう一度使って
∂(∂xϕ)∂Lx=ℓ=−Y∂xϕ(t,ℓ)=0(自由端)(2.5.20)
を得る。作用の停留から、運動方程式と一緒に端の条件も出てきた。端の条件は外から付け足すものではなく、作用の停留の一部である。一方、端 x=0 を固定する場合(ϕ(t,0)=0)は、許される変分が η(t,0)=0 に限られるので、端の項は初めから 0 で、条件は ϕ(t,0)=0 そのものになる。
端に別の物体がつながっていれば、その物体の Lagrangian を足す。たとえば端 x=ℓ がばね定数 Ke のばねで釣り合いの位置につながれているなら、作用に −∫2Keϕ(t,ℓ)2dt を足す。この項の変分 −ϵ∫Keϕ(t,ℓ)η(t,ℓ)dt を端の項に加えると
Y∂xϕ(t,ℓ)+Keϕ(t,ℓ)=0(ばねつきの端)(2.5.21)
となる。Ke→0 で自由端 (2.5.20)、Ke→∞ で固定端 ϕ(t,ℓ)=0 に戻る。
全発散を足しても方程式は変わらない
粒子の Lagrangian に時間の全微分 dtdΛ(q,t) を足しても Euler–Lagrange 方程式は変わらなかった(第1部第4章)。場では次の形になる。
命題 2.5.3(全発散の不定性)
4つの関数 Λμ(ϕ,x) を選び、L′=L+∂μΛμ とする(∂μ は ϕ を通した依存も含めて微分する)。L′ と L の場の Euler–Lagrange 方程式は同じである。
証明
発散定理 (2.5.10) から、作用の差は境界の上の Λμ の値だけで決まる面積分になる。境界で η=0 の変分では境界の ϕ が動かないので、作用の差は変わらず、δS′=δS である。定理 2.5.2 により、方程式は同じになる。
Λμ が ϕ の微分を含む場合も、∂μΛμ の Euler–Lagrange の式は恒等的に 0 になることが知られている(Λt=ϕ2∂xϕ などで直接計算して確かめられる)。Schrödinger 場の L (2.5.18) は実数でないが、2iℏ∂t(ψ∗ψ) を引くと2iℏ(ψ∗∂tψ−ψ∂tψ∗)−2mℏ2∣∇ψ∣2−V∣ψ∣2 という実数の L になり、命題 2.5.3 により方程式は変わらない。ただし、全発散を足すと端の項 ∂(∂μϕ)∂L の形が変わるので、自由端の条件の読み方は L の選び方と一緒に決める必要がある。

図 2.5.3 x=0 を固定した弦の基本モード sinkx。x=ℓ が自由端なら傾きが 0(実線)、固定端なら変位が 0(点線)、ばね Keℓ/Y=1 でつないだ端ならその中間(破線)になる。どの形も式 (2.5.14) の端の項から決まる
例題 2.5.4 端の条件で決まる固有振動 ★★
オリジナル長さ ℓ の弦(線密度 ρ、弾性率 Y、v=Y/ρ)の端 x=0 を固定する。
- (1) 端 x=ℓ が自由端のとき、ϕ=sinkxcosωt の形の解(固有振動)の k と振動数 f=ω/(2π) を求めよ。
- (2) 端 x=ℓ をばね Ke でつないだとき、k が満たす式を書け。Keℓ/Y=1 のとき最も低い kℓ を求め、基本振動数が固定-固定の場合の何倍になるかを答えよ。
解答
(1) sinkx は x=0 で 0 なので固定端の条件を満たす。波動方程式から ω=vk。自由端の条件 (2.5.20) は Ykcoskℓcosωt=0 がすべての t で成り立つこと、すなわち coskℓ=0 だから kn=2ℓ(2n−1)π(n=1,2,…)、fn=4ℓ(2n−1)v。管楽器の閉管と同じ奇数倍の列になる。
(2) 条件 (2.5.21) に入れると Ykcoskℓ+Kesinkℓ=0、z=kℓ と置いて
tanz=−KeℓYz.
Keℓ/Y=1 なら tanz=−z で、π/2<z<π に最小の正の根があり、数値で解くと z=2.0288 である。固定-固定の基本モードは z=π なので、振動数の比は 2.0288/π=0.646 倍になる。Ke→0 で z→π/2(自由端)、Ke→∞ で z→π(固定端)に近づくことも同じ式から読み取ることができる。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com