解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第5章 §2.5.5 ★★ 各点で Legendre 変換すると π(x) と H ができる。{ϕ(x),π(y)}=δ(3)(x−y) が場の量子化の出発点
正準運動量の密度と Hamiltonian 密度
粒子では pi=∂q˙i∂L を定義し、速度について Legendre 変換して H=∑ipiq˙i−L を作った(第1部第8章)。場では一般化座標の番号 i が空間の点 x に変わったので、各点で同じことをする。
定義 2.5.4(場の正準運動量と Hamiltonian 密度)
π(t,x)=∂(∂tϕ)∂L,H=π∂tϕ−L,H[ϕ,π]=∫d3xH(2.5.22)
とし、H を ϕ、∇ϕ、π の関数として書いたものをHamiltonian 密度と呼ぶ。
π は、L を「番号 x の速度 ∂tϕ(x)」で汎関数微分したもの δ(∂tϕ(x))δL に等しい。∑ipiq˙i の和が積分に変わって ∫π∂tϕd3x になるので、H=∫π∂tϕd3x−L は粒子の式そのものである。
弦では π=ρ∂tϕ で、
H=2ρπ2+2Y(∂xϕ)2(2.5.23)
となる。運動エネルギーの密度と位置エネルギーの密度の和で、例題 2.5.1 のエネルギー密度 E と一致する。
場の Hamilton 方程式と Poisson 括弧
Hamilton 方程式は、偏微分を汎関数微分に置き換えて
∂tϕ(t,x)=δπ(x)δH,∂tπ(t,x)=−δϕ(x)δH(2.5.24)
になる。弦なら δπδH=π/ρ、δϕδH=−Y∂x2ϕ(例題 2.5.2 の計算)だから、∂tϕ=π/ρ と ∂tπ=Y∂x2ϕ で、2つを合わせると波動方程式 (2.5.15) に戻る。2つの汎関数 F[ϕ,π]、G[ϕ,π] の Poisson 括弧は
{F,G}=∫d3x(δϕ(x)δFδπ(x)δG−δπ(x)δFδϕ(x)δG)(2.5.25)
で定める(∑i が ∫d3x に変わっただけである)。F=ϕ(y)、G=π(z) と置き、式 (2.5.9) を使うと
{ϕ(y),π(z)}=∫d3xδ(3)(x−y)δ(3)(x−z)=δ(3)(y−z)(2.5.26)
を得る。粒子の {qi,pj}=δij の場の版で、場の量子化(第5部第2章)はこの括弧を交換子 [⋅,⋅]/(iℏ) に置き換えるところから始まる。
Schrödinger 場 (2.5.18) では πψ=∂(∂tψ)∂L=iℏψ∗ で、正準運動量が新しい量でなく ψ∗ そのものになる。L が時間微分について1次なので、Legendre 変換で速度を消す必要がなく、ψ と iℏψ∗ がはじめから正準変数の組になっている。H=πψ∂tψ−L=2mℏ2∣∇ψ∣2+V∣ψ∣2 は、量子力学のエネルギーの期待値の被積分関数である。
エネルギーの保存と流れ
L が t を陽に含まないとき、弦のエネルギー H=∫0ℓHdx の時間変化を計算する。波動方程式を使うと
∂tH+∂xS=0,S=−Y∂xϕ∂tϕ(2.5.27)
が成り立つ(左辺を展開すると ∂tϕ(ρ∂t2ϕ−Y∂x2ϕ) になる)。これを x で積分すると
dtdH=−[S]0ℓ=Y∂xϕ∂tϕx=ℓ−Y∂xϕ∂tϕx=0.(2.5.28)
固定端では ∂tϕ=0、自由端では ∂xϕ=0 だから、どちらの端でも右辺は 0 で、H は保存する。式 (2.5.27) は「エネルギー密度の増える速さ=流れ込むエネルギーの流れ」という局所的な保存則で、S はエネルギーの流れ(単位時間に点 x を右へ通過するエネルギー)である。電磁場ではこれが Poynting ベクトルになる。L の時間並進の不変性から H と S を一般に作る手続きが場の Noether の定理で、次の次の章(第2部第7章)でエネルギー運動量テンソルとしてまとめる。
例題 2.5.5 定在波のエネルギーの出入り ★★
オリジナル両端を固定した長さ ℓ の弦の基本モード ϕ=Asinkxcosωt(k=π/ℓ、ω=vk)について次に答えよ。
- (1) 運動エネルギー ∫0ℓ2ρπ2dx と位置エネルギー ∫0ℓ2Y(∂xϕ)2dx を求め、和 H が時間によらないことを示せ。
- (2) ρ=0.10kgm−1、Y=10N、ℓ=1.0m、A=1.0×10−3m のとき H を求めよ。
- (3) 弦の中点 x=ℓ/2 を通るエネルギーの流れ S を求め、左半分のエネルギーが時間によらないことを確かめよ。
解答
(1) π=ρ∂tϕ=−ρAωsinkxsinωt。∫0ℓsin2kxdx=∫0ℓcos2kxdx=ℓ/2 を使うと
∫0ℓ2ρπ2dx=4ρω2A2ℓsin2ωt,∫0ℓ2Y(∂xϕ)2dx=4Yk2A2ℓcos2ωt=4ρω2A2ℓcos2ωt.
和は H=41ρω2A2ℓ で、時間によらない。エネルギーは運動と位置の間を行き来する。
(2) v=10ms−1、ω=πv/ℓ=31.4s−1 で、H=41×0.10×(31.4)2×(1.0×10−3)2×1.0=2.47×10−5J。
(3) S=−Y∂xϕ∂tϕ=YA2kωcoskxsinkxcosωtsinωt。x=ℓ/2 では cos(π/2)=0 なので S=0 がすべての時刻で成り立つ。左半分 0≤x≤ℓ/2 には固定端からも中点からもエネルギーが流れ込まないので、式 (2.5.28) を左半分に当てはめれば、そのエネルギーは一定である。定在波は左右に進む2つの波の重ね合わせだが、全体としては腹と節の間でエネルギーが行き来するだけで、節を越えて流れない。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com