解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第5章 §2.5.3 ★★★ 作用の停留は各点ごとの偏微分方程式になる。L を選べば波動・Klein–Gordon・Schrödinger の方程式が出る
定理と証明
定理 2.5.2(場の Euler–Lagrange 方程式 ★★★)
作用 (2.5.3) が、境界 ∂R で 0 になるすべての向き η について停留する(δS=0)ための必要十分条件は、R の内部の各点で
∂t(∂(∂tϕ)∂L)+i=x,y,z∑∂i(∂(∂iϕ)∂L)−∂ϕ∂L=0(2.5.12)
が成り立つことである。相対論の記法 (2.5.4) では
∂μ∂(∂μϕ)∂L−∂ϕ∂L=0(2.5.13)
と書ける(μ について和を取る)。左辺の符号を変えたものが汎関数微分 δS/δϕ(t,x) である。
証明
L の引数 ϕ・∂tϕ・∂iϕ を独立な変数とみなして ϵ で微分し、式 (2.5.7) を使うと
δS=ϵ∫R[∂ϕ∂Lη+∂(∂tϕ)∂L∂tη+i∑∂(∂iϕ)∂L∂iη]dtd3x.
第2項と第3項に式 (2.5.11) を使って η の微分を外すと
δS=ϵ∫R[∂ϕ∂L−∂t∂(∂tϕ)∂L−i∑∂i∂(∂iϕ)∂L]ηdtd3x+ϵ∮∂R[∂(∂tϕ)∂LNt+i∑∂(∂iϕ)∂LNi]ηdΣ.(2.5.14)
境界で η=0 なら第2項は消える。残る第1項がすべての η について 0 になることは、変分法の基本補題(第1部第3章)を4変数の関数に使えば、角括弧が内部の各点で 0 であることと同値である。これが式 (2.5.12) である。
共変形へは次のように書き直す。x0=ct なので ∂0ϕ=c1∂tϕ で、L を ∂0ϕ の関数とみると∂(∂0ϕ)∂L=c∂(∂tϕ)∂L。よって ∂0∂(∂0ϕ)∂L=c1∂t(c∂(∂tϕ)∂L)=∂t∂(∂tϕ)∂L となり、μ=1,2,3 の項は空間の和そのものだから、式 (2.5.12) と (2.5.13) は同じ式である。
式 (2.5.12) の ∂t と ∂i は、∂(∂tϕ)∂L などに解 ϕ(t,x) を代入して得られる t,x の関数を、もう一度 t や x で偏微分する操作である。粒子の Euler–Lagrange 方程式の dtd∂q˙∂L が「経路に沿った全微分」だったのと同じで、ϕ を通して入る依存も全部微分する。このため、粒子の Euler–Lagrange 方程式が時間の2階常微分方程式だったのに対して、場の方程式は時間と空間の2階偏微分方程式になる。
場が複数あるとき(ϕ1,…,ϕN)は、それぞれを独立にずらせるので、各 ϕa について1本ずつ式 (2.5.12) が立つ。複素数の値をとる場 ψ は、実部と虚部の2つの実数の場とみなしてもよいが、ψ と ψ∗ を独立な2つの場とみなして別々にずらしても同じ方程式が出る(実部と虚部を独立にずらすことと、ψ と ψ∗ を独立にずらすことは、線形の変数変換で互いに移り合う)。
弦・Klein–Gordon・Schrödinger
弦
式 (2.5.1) の L=2ρ(∂tϕ)2−2Y(∂xϕ)2 では、∂(∂tϕ)∂L=ρ∂tϕ、∂(∂xϕ)∂L=−Y∂xϕ、∂ϕ∂L=0 だから、
ρ∂t2ϕ−Y∂x2ϕ=0.(2.5.15)
前の章で格子の運動方程式の極限として出した波動方程式が、連続体の L から直接出た。
Klein–Gordon 場
計量 ημν で添字を上げると ∂μϕ∂μϕ=c21(∂tϕ)2−(∇ϕ)2 である。これに ϕ2 の項を足した
L=21(∂μϕ∂μϕ−κ2ϕ2),κ=ℏmc(2.5.16)
を選ぶ(全体に掛かる定数は方程式を変えないので省いた)。∂(∂μϕ)∂L=∂μϕ、∂ϕ∂L=−κ2ϕ なので、式 (2.5.13) から
∂μ∂μϕ+κ2ϕ=c21∂t2ϕ−∇2ϕ+κ2ϕ=0.(2.5.17)
これが Klein–Gordon 方程式である。∂μϕ∂μϕ も ϕ2 も Lorentz 変換で値が変わらないので、L は Lorentz 変換で不変なスカラーになり、出てくる方程式もどの慣性系で書いても同じ形になる。相対論的な場の方程式を探すとき、方程式を直接探すより、不変なスカラーの L を探す方が簡単である。これが場の理論を作用で書く理由の1つで、次の章の電磁場もこの考え方で L を選ぶ。
Schrödinger 場
複素数の場 ψ(t,x) について
L=iℏψ∗∂tψ−2mℏ2∇ψ∗⋅∇ψ−V(x)ψ∗ψ(2.5.18)
を選び、ψ と ψ∗ を独立な場とみなす。ψ∗ をずらすと、∂(∂tψ∗)∂L=0、∂(∇ψ∗)∂L=−2mℏ2∇ψ、∂ψ∗∂L=iℏ∂tψ−Vψ だから、式 (2.5.12) は
−2mℏ2∇2ψ−(iℏ∂tψ−Vψ)=0⟺iℏ∂tψ=−2mℏ2∇2ψ+Vψ(2.5.19)
になり、Schrödinger 方程式が出る。ψ をずらすとその複素共役の式が出る。ここでの ψ は量子化する前の古典的な場として扱っている。この L は時間微分について1次で、粒子の L が速度について2次だったのとは形が違う。その帰結は2.5.5節で見る。
例題 2.5.3 Klein–Gordon 場の分散関係 ★★
オリジナル
- (1) 平面波 ϕ=ei(kx−ωt) を Klein–Gordon 方程式 (2.5.17) に入れ、ω と k の関係を求めよ。
- (2) 位相速度 vp=ω/k と群速度 vg=dkdω の積が c2 になることを示し、群速度が c を超えないことを確かめよ。
- (3) ℏω をエネルギー、ℏk を運動量と読むと、(1) は何の関係になるか。電子の質量で 1/κ と、k→0 での ω を数値で求めよ。
解答
(1) ∂t2ϕ=−ω2ϕ、∂x2ϕ=−k2ϕ だから (−c2ω2+k2+κ2)ϕ=0、すなわち ω2=c2(k2+κ2)。
(2) ω=ck2+κ2 を微分して vg=k2+κ2ck。vpvg=kck2+κ2⋅k2+κ2ck=c2。κ>0 なら k2+κ2>k なので vg<c で、k→∞ で c に近づく。逆に vp>c だが、位相速度は情報を運ばないので相対論と矛盾しない。
(3) ℏω=E、ℏk=p と読み、ℏκ=mc を使うと E2=c2p2+m2c4。相対論的な粒子のエネルギーと運動量の関係(第2部第3章)である。電子では 1/κ=ℏ/(mec)=3.86×10−13m(換算 Compton 波長)、k→0 の角周波数は ω=mec2/ℏ=7.76×1020s−1 で、これより低い角周波数の波は伝わらない。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com