解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第9章 §2.9.4 ★★★ 静磁場の停留値は +Um。電流は速度、インダクタンスは質量で、平行電流が引き合う符号がここで決まる
Ampère の法則と停留値
静磁場の Lagrangian Lm[A]=∫[−2μ01(∇×A)2+J⋅A]d3x を A→A+δA でずらすと、ベクトルの恒等式 (∇×A)⋅(∇×δA)=∇⋅(δA×(∇×A))+δA⋅(∇×∇×A) と部分積分から
δLm=∫d3x[−μ01∇×∇×A+J]⋅δA
を得る。停留の条件は ∇×B=μ0J で、静的な場での Ampère の法則である。Coulomb ゲージ ∇⋅A=0 を選べば∇×∇×A=−∇2A なので、A(r)=4πμ0∫∣r−r′∣J(r′)d3x′ が解になる。停留値は、Ampère の法則に A を掛けて部分積分した μ01∫B2=∫J⋅A を使って
Lm∗=−Um+2Um=+Um,Um=21∫d3xJ⋅A=2μ01∫d3xB2(2.9.9)
になる。場だけの部分は −Um で入っていたが、結合の項 +2Um を足すと停留値は +Um になる。2.9.3節の Le∗=−Ue と合わせると、静的な源の Lagrangian は
Leff=Um−Ue(2.9.10)
で、静電エネルギーは位置エネルギーの側、磁場のエネルギーは運動エネルギーの側に入る。磁場のエネルギーは電流の2次式で、電流は電荷の速度なので、この符号は「速度の2次式は L=T−V の T に入る」という第1部第5章の形と合っている。
インダクタンスと回路の Lagrangian
細い導線でできた回路が N 本あり、i 番目の回路を流れる電流を Ii とする。Jd3x→Iidℓi と置き換えると
Um=21i,k∑MikIiIk,Mik=4πμ0∮i∮k∣ri−rk∣dℓi⋅dℓk(2.9.11)
を得る。Mik は相互インダクタンス(i=k では自己インダクタンス)の係数で、この積分の形を Neumann の公式という。この章では、Lagrangian の L と区別するため、インダクタンスを M の字で書く。
コンデンサに溜まる電荷 qi を一般化座標に選ぶと、電流は Ii=q˙i で、静電エネルギーは容量の逆行列 (C−1)ik を使ってUe=21∑(C−1)ikqiqk と書ける。電荷の変化がゆっくりで、各瞬間の場が静的な場で近似できるなら、式 (2.9.10) から
L(q,q˙)=21i,k∑Mikq˙iq˙k−21i,k∑(C−1)ikqiqk(2.9.12)
を得る。Mik が質量行列、C−1 がばね定数の行列の役をする。回路が1つなら L=21Mq˙2−q2/(2C) で、Euler–Lagrange 方程式 Mq¨+q/C=0 は LC 回路の方程式、角振動数は ω0=1/MC である。
力の符号
回路の形を表す座標(2本の導線の間隔など)を X とすると、Mik は X に依る。X についての Euler–Lagrange 方程式で、導線に働く一般化力は ∂L/∂X を電流(速度)q˙ を固定して取ったもので、
FX=∂X∂Lq˙=+21i,k∑∂X∂MikIiIk=+∂X∂UmI(2.9.13)
となる。静電場の力 −∂Ue/∂X∣q と符号が逆である。電流を一定に保つと、力は磁場のエネルギーを増やす向きに働く。同じ向きの平行電流では、近づくほど M12 が増えるので、2本は引き合う。
例題 2.9.4 平行な直線電流の力を L の微分で出す ★★
オリジナル真空中に平行な2本の長い直線導線が間隔 s で置かれ、同じ向きに電流 I1,I2 が流れている。導線2がつくるベクトルポテンシャルは、導線から距離 s の所で Az=−2πμ0I2lnΛ0s(Λ0 は定数)である。
- (1) この Az から磁場の大きさ B を求めよ。
- (2) 単位長さあたりの相互作用の Lagrangian I1Az を s で微分して、導線1に働く単位長さあたりの力を求め、向きを答えよ。
- (3) I1=I2=1A, s=1m での力の大きさを求めよ。
解答
(1) 円柱座標で B=∇×(Azez) の周方向の成分は −∂Az/∂s=μ0I2/(2πs) で、直線電流のよく知られた磁場である。
(2) 単位長さあたり Lint=I1Az(s)=−2πμ0I1I2lnΛ0s で、式 (2.9.13) のとおり電流を固定して微分すると
Fs=∂s∂Lint=−2πsμ0I1I2
である。負なので s を減らす向き、つまり2本は引き合う。Λ0 は微分で消え、結果に残らない。
(3) μ0=4π×10−7NA−2 として ∣Fs∣=2×10−7Nm−1 である。2019年の SI 改定より前は、この値で1アンペアを定義していた。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com