解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部 第10章 §3.10.4 ★★★ 凸でない f(m) の Legendre 変換は凸包になり、共通接線が2相の共存を表す。m6 の Landau 関数では温度を変えても秩序変数が跳ぶ
外場で駆動した跳び
T<Tc で外場 h を正から負へゆっくり動かす。式 (3.10.12) の最小点は、h>0 では +m0 の近く、h<0 では −m0 の近くにあり、h=0 を通るとき +m0 から −m0 へ跳ぶ。F(h) は h=0 で折れ目を持ち、その傾き −∂(F/N)/∂h=m が 2m0 だけ跳ぶ。秩序変数(自由エネルギーの1階微分)が不連続に変わるので、これは1次相転移である。
m の側から見ると、−m0<m<m0 の区間で f(m) は凸でない(m=0 のまわりで f′′<0)。Legendre 変換を2回すると、この区間は高さ f(±m0) の水平な直線(共通接線)に置き換わる(3.10.2節)。直線の上の点 m=λm0+(1−λ)(−m0) は、試料の割合 λ が +m0 の相、1−λ が −m0 の相にある2相共存の状態に当たる。2つの相の境目(磁壁)の損は試料の表面の大きさに比例し、体積に比例する f に比べて N→∞ で無視できるので、共存状態の自由エネルギーは2相の自由エネルギーの重み付き平均、すなわち直線になる。
準安定状態とスピノーダル
h を正から負へ動かしたとき、h が負になっても系はしばらく +m0 の近くの極小に留まりうる。この極小は全体の最小ではないが、そこから出るには f の山を越える必要があり、山の高さは N に比例するので、大きな系ではほとんど越えられない。これを準安定状態と呼び、磁石のヒステリシスはこれで説明される。極小が消えるのは f′(m)=h と f′′(m)=0 が同時に成り立つ所で、Landau 関数では am+bm3=h, a+3bm2=0 から
msp2=3b∣a∣,∣hsp∣=332b∣a∣3/2(3.10.21)
を得る。この hsp をスピノーダルの外場と呼ぶ。∣h∣<∣hsp∣ の範囲では極小が2つあり、平衡は深い方、準安定は浅い方である。
温度で駆動した1次相転移
外場が 0 でも、温度を変えただけで秩序変数が跳ぶ転移がある。Landau 関数の4次の係数が負の場合で、そのときは安定のために6次の項を足し
f(m)−f0=2am2+4bm4+6cm6,a=a0(T−T0),b<0,c>0(3.10.22)
を選ぶ。u=m2 と置くと、m=0 の極値は f′(m)/m=a+bu+cu2=0 で決まる。m=0 の相と m=0 の相が共存するのは、m=0 の極小の値が m=0 の値 0 に等しいときで、f−f0=0 と f′=0 を連立させると
u∗=m∗2=−4c3b,a1=a0(T1−T0)=16c3b2(3.10.23)
となる(f/u の式の2倍から f′/m の式を引けば −bu/2−2cu2/3=0 が出る)。転移温度 T1 は T0 より高く、そこで m は 0 から m∗ へ跳ぶ。T1 でエントロピー −∂f/∂T も跳び、その差 Δs=a0u∗/2 に T1 を掛けた潜熱 L=T1a0u∗/2 が出入りする。
この場合も準安定状態がある。m=0 の極小は a+bu+cu2=0 が正の実数解を持つ間、すなわち a≤b2/(4c) の間だけ存在する(過熱の限界)。m=0 の極小は a≥0 の間存在する(過冷却の限界 T0)。T0<T<T0+b2/(4ca0) の範囲で2つの極小が共存し、温度を上げるときと下げるときで転移の起きる温度が違いうる。
外場が無くても f に m3 の項が許される系(m→−m の対称性が無い系。液晶の配向や、3状態の Potts 模型)では、同じ理由で転移は必ず1次になる。2次相転移が起きるのは、対称性が奇数次の項を禁じ、しかも4次の係数が正の場合に限られる。
例題 3.10.4 6次の Landau 関数の1次相転移 ★★
オリジナル式 (3.10.22) で a0=1, b=−1, c=1, T0=1(単位は任意にそろえたもの)とする。
- (1) 転移温度 T1 と、そこでの秩序変数の跳び m∗ を求めよ。
- (2) 潜熱 L を求めよ。
- (3) 準安定状態が存在する温度の範囲を求めよ。
- (4) T=T1 で f(m)−f0 の極小が m=0 と m=±m∗ で同じ高さになることを確かめよ。
解答
(1) 式 (3.10.23) から a1=3/16 なので T1=T0+3/16=1.1875、u∗=3/4 から m∗=3/2=0.866。
(2) L=T1a0u∗/2=1.1875×0.75/2=0.445。
(3) m=0 の極小は T≥T0=1、m=0 の極小は a≤b2/(4c)=1/4、すなわち T≤1.25 で存在する。2つが同時に存在するのは 1≤T≤1.25 で、T1=1.1875 はこの範囲の中にある。
(4) T=T1 で f−f0=323m2−41m4+61m6=6m2(m2−43)2 と因数分解でき、m=0 と m2=3/4 でともに 0、それ以外では正である。
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