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当てる道具:数え上げの鞍点と Legendre 変換

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第10章 相転移と Landau 理論
目次
  1. Curie–Weiss 模型
  2. ごとに数える
  3. は の Legendre 変換
  4. Landau の展開を出す
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部 第10章 §3.10.2 ★★★ Curie–Weiss 模型で ZZ を mm ごとに数え上げると f(m)f(m) が近似なしに出て、N→∞N\to\infty で FF は ff の Legendre 変換になる

Curie–Weiss 模型

f(m)f(m) を仮定でなく計算で得るために、NN 個のスピン σi=±1\sigma_i=\pm1 が全部どうしで同じ強さ J/NJ/N で相互作用する模型

H=−J2N(∑i=1Nσi)2−h∑i=1Nσi=−N(J2m2+hm),m=1N∑i=1Nσi(3.10.6)H=-\frac{J}{2N}\Bigl(\sum_{i=1}^N\sigma_i\Bigr)^2-h\sum_{i=1}^N\sigma_i=-N\Bigl(\frac{J}{2}m^2+hm\Bigr),\qquad m=\frac{1}{N}\sum_{i=1}^N\sigma_i\tag{3.10.6}

を選ぶ(Curie–Weiss 模型)。相互作用を 1/N1/N 倍するのは、エネルギーが NN に比例するようにするためで、この点は平均場極限(近似の数理 第6章)と同じスケーリングである。HH が mm だけで書けるのがこの模型の特徴で、そのため ZZ を mm ごとにまとめて書ける。

mm ごとに数える

上向きのスピンが kk 個のとき m=(2k−N)/Nm=(2k-N)/N で、そういう配置は二項係数 (Nk)\binom{N}{k} 通りある。したがって

Z=∑k=0N(Nk)exp⁡[βN(J2mk2+hmk)],mk=2k−NN(3.10.7)Z=\sum_{k=0}^{N}\binom{N}{k}\exp\Bigl[\beta N\Bigl(\frac{J}{2}m_k^2+hm_k\Bigr)\Bigr],\qquad m_k=\frac{2k-N}{N}\tag{3.10.7}

である。二項係数の大きさは、Stirling の公式を使わずに次の評価で押さえられる。k=N(1+m)/2k=N(1+m)/2 と書き、

s(m)=−1+m2ln⁡1+m2−1−m2ln⁡1−m2(3.10.8)s(m)=-\frac{1+m}{2}\ln\frac{1+m}{2}-\frac{1-m}{2}\ln\frac{1-m}{2}\tag{3.10.8}

と置くと(ss は1スピンあたりの混合のエントロピーを kBk_{\mathrm B} で割ったもの)、

1N+1eNs(mk)≤(Nk)≤eNs(mk)(3.10.9)\frac{1}{N+1}\mathrm{e}^{Ns(m_k)}\le\binom{N}{k}\le\mathrm{e}^{Ns(m_k)}\tag{3.10.9}

が成り立つ。右の不等式は、二項定理 1=∑j(Nj)pj(1−p)N−j1=\sum_j\binom{N}{j}p^j(1-p)^{N-j} の j=kj=k の項だけを残して p=k/Np=k/N と置けば出る。左の不等式は、同じ p=k/Np=k/N の二項分布の項のうち j=kj=k の項が最大であることと、項が N+1N+1 個しかないことから出る。

これを式 (3.10.7) に入れ、

f(m)=−J2m2−kBT s(m)(3.10.10)f(m)=-\frac{J}{2}m^2- k_{\mathrm B} T\,s(m)\tag{3.10.10}

と定義すると、各項は e−βN[f(mk)−hmk]\mathrm{e}^{-\beta N[f(m_k)-hm_k]} と (N+1)−1(N+1)^{-1} 倍以内で一致する。f(m)f(m) は「磁化を mm に拘束したときの1スピンあたりの自由エネルギー」で、エネルギー −Jm2/2-Jm^2/2 からエントロピー kBs(m)k_{\mathrm B} s(m) の TT 倍を引いた形をしている。項の数は N+1N+1 個なので、和は最大の項と (N+1)(N+1) 倍以内で一致し、

min⁡k[f(mk)−hmk]−kBTln⁡(N+1)N≤FN≤min⁡k[f(mk)−hmk]+kBTln⁡(N+1)N(3.10.11)\min_{k}\bigl[f(m_k)-hm_k\bigr]- k_{\mathrm B} T\frac{\ln(N+1)}{N}\le\frac{F}{N}\le\min_k\bigl[f(m_k)-hm_k\bigr]+ k_{\mathrm B} T\frac{\ln(N+1)}{N}\tag{3.10.11}

が厳密に成り立つ(F=−kBTln⁡ZF=- k_{\mathrm B} T\ln Z)。N→∞N\to\infty で mkm_k の刻み 2/N2/N は 00 になり、誤差の項も 00 に近づくので

lim⁡N→∞FN=min⁡−1≤m≤1[f(m)−hm](3.10.12)\lim_{N\to\infty}\frac{F}{N}=\min_{-1\le m\le1}\bigl[f(m)-hm\bigr]\tag{3.10.12}

を得る。指数の肩に NN が掛かった和が最大の項で決まるというこの議論は、Laplace の方法(鞍点法)の離散版である。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの 1/N→01/N\to0(スピンの数が大きい) | 証明 証明済み(式 (3.10.11) の評価。誤差は kBTln⁡(N+1)/Nk_{\mathrm B} T\ln(N+1)/N 以下) | 行き先 近似の数理 第6章

FF は ff の Legendre 変換

式 (3.10.12) の右辺は、第1部第7章の Legendre 変換(第1部第7章)f∗(h)=sup⁡m[hm−f(m)]f^*(h)=\sup_m[hm-f(m)] を使えば

F(h)N=−f∗(h)(3.10.13)\frac{F(h)}{N}=-f^*(h)\tag{3.10.13}

と書ける。mm と hh が共役な変数の組で、拘束つきの自由エネルギー f(m)f(m) から外場を固定した自由エネルギー F(h)F(h) への移り変わりは、力学の L(q,q˙)→H(q,p)L(q,\dot q)\to H(q,p)、熱力学の U(S)→F(T)U(S)\to F(T)(第3部第4章)と同じ操作である。最小点では f′(m)=hf'(m)=h が成り立つ。式 (3.10.10) から s′(m)=−artanh⁡ms'(m)=-\operatorname{artanh}m なので

−Jm+kBTartanh⁡m=h⟺m=tanh⁡(β(Jm+h))(3.10.14)-Jm+ k_{\mathrm B} T\operatorname{artanh}m=h\quad\Longleftrightarrow\quad m=\tanh\bigl(\beta(Jm+h)\bigr)\tag{3.10.14}

となる。これは、各スピンが「外場 hh と、ほかのスピンの平均が作る場 JmJm の和」を感じる独立なスピンとして振る舞う、という自己無撞着方程式である。相互作用の届く距離が短い格子の模型に平均場近似(第3部第7章)を当てても同じ形の方程式が出るが、Curie–Weiss 模型ではこれが N→∞N\to\infty で厳密になる。第7章の式 (3.7.11)・(3.7.19) では同じ結果を Gibbs–Bogoliubov の不等式と数値で確かめた。ここでは二項係数の上下界(式 (3.10.11))で厳密に示した。

Legendre 変換の性質から2つのことがすぐに分かる。第一に、f∗f^* は ff が凸かどうかにかかわらず凸なので、F(h)F(h) は hh について必ず上に凸である。第二に、ff が凸でなければ、f∗f^* を変換し直しても ff には戻らず、その凸包 f∗∗f^{**} になる(第1部第7章 の Fenchel–Moreau)。熱平衡で観測できるのは F(h)F(h) だけなので、実験から再構成できる「mm の関数としての自由エネルギー」は凸包 f∗∗f^{**} であり、凹んだ部分は直線(共通接線)に置き換わる。この直線が1次相転移の共存に当たることは3.10.4節で示す。

独立なスピン1個も同じ構造を持つ。J=0J=0 では式 (3.10.12) の右辺は −kBTmax⁡m[βhm+s(m)]- k_{\mathrm B} T\max_m[\beta hm+s(m)] で、これは厳密な −kBTln⁡(2cosh⁡βh)- k_{\mathrm B} T\ln(2\cosh\beta h) に等しい。すなわち ln⁡(2cosh⁡y)\ln(2\cosh y) と s(m)s(m) は Legendre 変換の対で、最大点は m=tanh⁡ym=\tanh y である。

Landau の展開を出す

式 (3.10.10) を m=0m=0 のまわりで展開すると、−s(m)=−ln⁡2+m22+m412+m630+⋯-s(m)=-\ln2+\frac{m^2}{2}+\frac{m^4}{12}+\frac{m^6}{30}+\cdots から

f(m)=−kBTln⁡2+12(kBT−J)m2+kBT12m4+O(m6)(3.10.15)f(m)=- k_{\mathrm B} T\ln2+\frac12( k_{\mathrm B} T-J)m^2+\frac{ k_{\mathrm B} T}{12}m^4+\mathcal{O}(m^6)\tag{3.10.15}

となる。これは Landau の形 (3.10.2) そのもので、係数は

Tc=JkB,a0=kB,b=kBT3≈kBTc3(3.10.16)T_{\mathrm c}=\frac{J}{ k_{\mathrm B}},\qquad a_0= k_{\mathrm B},\qquad b=\frac{ k_{\mathrm B} T}{3}\approx\frac{ k_{\mathrm B} T_{\mathrm c}}{3}\tag{3.10.16}

である。2次の係数 kBT−Jk_{\mathrm B} T-J の符号は、エネルギーの得(−Jm2/2-Jm^2/2)とエントロピーの損(kBTm2/2k_{\mathrm B} Tm^2/2)のどちらが勝つかで決まる。Landau が仮定した3つの性質(解析性・偶関数・係数の符号)は、この模型では計算の結果として確かめられた。

例題 3.10.2 有限の NN の分配関数と鞍点 ★★

オリジナルCurie–Weiss 模型で h=0h=0, T=0.8 TcT=0.8\,T_{\mathrm c} とする。

  1. (1) 自己無撞着方程式 (3.10.14) の正の解 m∗m^* を数値で求めよ。
  2. (2) N→∞N\to\infty の (ln⁡Z)/N(\ln Z)/N の値を求めよ。
  3. (3) 式 (3.10.7) の和を N=10,100,1000N=10,100,1000 で数値計算すると (ln⁡Z)/N=0.8395, 0.7414, 0.7302(\ln Z)/N=0.8395,\ 0.7414,\ 0.7302 になる。これが式 (3.10.11) の評価と矛盾しないことを確かめ、NN を10倍するとずれがおよそ何倍になるかを述べよ。
解答

(1) βJ=Tc/T=1.25\beta J=T_{\mathrm c}/T=1.25 なので m=tanh⁡(1.25m)m=\tanh(1.25m) を解く。反復か二分法で m∗=0.710m^*=0.710。

(2) 式 (3.10.12) から (ln⁡Z)/N=−βmin⁡m[f(m)]=max⁡m[βJm2/2+s(m)](\ln Z)/N=-\beta\min_m[f(m)]=\max_m[\beta Jm^2/2+s(m)]。最大点は m∗m^* で、βJm∗2/2=1.25×0.71042/2=0.3154\beta Jm^{*2}/2=1.25\times0.7104^2/2=0.3154、s(m∗)=0.4136s(m^*)=0.4136 なので (ln⁡Z)/N=0.7290(\ln Z)/N=0.7290。

(3) ずれは N=10,100,1000N=10,100,1000 で 0.1105, 0.0124, 0.00120.1105,\ 0.0124,\ 0.0012 で、いずれも正で、評価の幅 ln⁡(N+1)/N=0.240, 0.046, 0.0069\ln(N+1)/N=0.240,\ 0.046,\ 0.0069 より小さい。ずれは NN を10倍するとほぼ 1/101/10 になり、1/N1/N に比例して減る(最大点のまわりの Gauss 積分の幅が出す O(ln⁡N/N)\mathcal{O}(\ln N/N) の項は、2つの (Nk)\binom{N}{k} の補正と打ち消し合う。ここでは数値で確かめるだけにする)。m∗m^* と −m∗-m^* の2つの最大点があることも、ln⁡2/N\ln2/N の大きさの正のずれとして入っている。

ほかの巻では

木下の勉強ステータス

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