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平均場スケーリングと問いの立て方

2026年10月9日6分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第6章 平均場極限:多体から一体へ
目次
  1. なぜ相互作用を 1/N 倍するのか
  2. 問いの形
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

近似の数理 第6章 §6.1 ★★★ 「何を小さいパラメータとみなすか」を決めないと、近似が厳密になる極限そのものが定義できない

第5章では、Hartree–Fock 近似を「多体の波動関数を探す空間を Slater 行列式の集合へ狭めた変分問題」として扱った。この見方(A 型=射影)で数学が保証するものは、Hartree–Fock のエネルギーが真の基底エネルギーの上界であることに限られる。上界がどれほど真値に近いのかは、変分の枠組みからは出てこない。

同じ「平均場近似」には、もう一つの顔がある。粒子数 NN を大きくし、それに合わせて一対の相互作用を 1/N1/N 倍に弱めると、多体の解そのものが一体方程式(Vlasov 方程式、Hartree 方程式、Thomas–Fermi 方程式)の解に近づく。この見方では、平均場近似は「ある極限で厳密になる有効方程式」であり、第1章の分類では B 型(極限)に属する。B 型の近似について数学が言えることは、極限がどの意味で存在するか、どれだけの速さで近づくか、どこで破綻するか、の三つである。この章では、古典系でこれを完全に証明し(Dobrushin の定理)、量子系では有界な相互作用の場合に証明を書き切り(Pickl の方法)、原子については結果を正確に述べる(Lieb–Simon の定理と Scott・Schwinger 補正)。

なぜ相互作用を 1/N 倍するのか

dd 次元空間の NN 個の同種粒子を考える。古典力学なら運動方程式、量子力学ならハミルトニアン

HN=∑j=1Nhj+λN∑1≤i<j≤NW(xi−xj)(6.1)H_N=\sum_{j=1}^N h_j+\lambda_N\sum_{1\le i<j\le N}W(x_i-x_j)\tag{6.1}

が出発点になる。hjh_j は jj 番目の粒子に働く一体の作用素(運動エネルギーと外場)、WW は二体の相互作用、λN\lambda_N は結合の強さである。各項の大きさを数えると、一体の部分は NN 個の項の和なので O(N)\mathcal{O}(N)、相互作用の部分は粒子の対の数 N(N−1)/2N(N-1)/2 に比例するのでO(λNN2)\mathcal{O}(\lambda_N N^2) になる。λN\lambda_N を NN によらない定数にしておくと、N→∞N\to\infty で相互作用が運動エネルギーを圧倒し、エネルギーは粒子1個あたりで見ても発散する(系はつぶれるか飛び散る)。逆に λN\lambda_N を 1/N1/N より速く小さくすると、相互作用は極限で消えて自由粒子しか残らない。両者が同じ O(N)\mathcal{O}(N) で釣り合うのは

λN=1N(または 1N−1)\lambda_N=\frac1N\quad\text{(または }\tfrac1{N-1}\text{)}

のときだけである。これを平均場スケーリングと呼ぶ。このとき粒子 ii に働く力は

−1N∑j≠i∇W(xi−xj)-\frac1N\sum_{j\ne i}\nabla W(x_i-x_j)

となり、小さな力 NN 個の平均の形をとる。平均は大数の法則によって揺らぎが消えるので、N→∞N\to\infty では「他の粒子全体がつくる滑らかな平均の力」で置き換えてよいはずだ、というのが平均場近似の直観である。

平均場スケーリングの物理的な意味

1/N1/N 倍は人為的な操作に見えるが、物理の系には同じ構造が自然に現れる。重い原子では原子核の電荷 ZZ と電子数 N=ZN=Z が一緒に大きくなり、長さを Z−1/3Z^{-1/3} 倍に縮めると電子間反発の係数が 1/Z1/Z になる(第6.7節)。銀河の星の運動やプラズマでも、粒子1個の寄与は全体のつくる場に比べて小さい。「多数の弱い相互作用の平均」が成り立つ状況を数学の言葉で言い表したものが平均場スケーリングである。

問いの形

平均場スケーリングの下で、次の問いを立てる。

NN 体の解(古典なら NN 個の粒子の軌道、量子なら NN 体の波動関数)は、N→∞N\to\infty で一体方程式の解の「積」に近づくか。近づくなら、それはどういう意味で、どれだけの速さか。

「近づく」の意味をきちんと決めることがこの章の中心的な仕事になる。NN 体の波動関数 ψN\psi_N と積 φ⊗N\varphi^{\otimes N} の L2L^2 距離は、後で見るとおり一般には N→∞N\to\infty で小さくならない(例題 6.6 の調和結合ボソンで確かめる)。近づく対象は、少数の粒子だけを見たときの統計(周辺分布・縮約密度行列)や、1粒子あたりのエネルギーである。物理の直観「平均場近似は良い」は、この意味において数学的に正しい。

例題 6.1 平均場スケーリングの次元解析 ★★

オリジナル[標準的な題材を自作] 1次元の NN 粒子系 HN=∑j(−12∂xj2+12xj2)+λ∑i<jW(xi−xj)H_N=\sum_j\bigl(-\tfrac12\partial_{x_j}^2+\tfrac12x_j^2\bigr)+\lambda\sum_{i<j}W(x_i-x_j) を考える。WW は有界とする。

  1. 積状態 φ⊗N\varphi^{\otimes N}(φ\varphi は規格化された1粒子の波動関数)でのエネルギー期待値を、NN と λ\lambda を使って書け。
  2. λ\lambda を NN によらない定数とすると、1粒子あたりのエネルギーが N→∞N\to\infty で発散することを示せ(∬W∣φ∣2∣φ∣2≠0\iint W|\varphi|^2|\varphi|^2\ne0 とする)。
  3. λ=1/(N−1)\lambda=1/(N-1) とすると、1粒子あたりのエネルギーが NN によらない汎関数になることを示し、その汎関数を書け。
解答

(1) 一体の項は各粒子について同じ値 ⟨φ, hφ⟩\langle \varphi,\,h\varphi\rangle を与えるので合計 N⟨φ, hφ⟩N\langle \varphi,\,h\varphi\rangle。相互作用の項は対 (i,j)(i,j) ごとに ∬W(x−y)∣φ(x)∣2∣φ(y)∣2 dx dy=:DW(φ)\iint W(x-y)|\varphi(x)|^2|\varphi(y)|^2\,\mathrm{d} x\,\mathrm{d} y=:D_W(\varphi) を与え、対は N(N−1)/2N(N-1)/2 個あるので

⟨φ⊗N, HNφ⊗N⟩=N⟨φ, hφ⟩+λN(N−1)2DW(φ).\langle \varphi^{\otimes N},\,H_N\varphi^{\otimes N}\rangle =N\langle \varphi,\,h\varphi\rangle +\lambda\frac{N(N-1)}2D_W(\varphi).

(2) 1粒子あたりでは ⟨φ, hφ⟩+λN−12DW(φ)\langle \varphi,\,h\varphi\rangle +\lambda\frac{N-1}2D_W(\varphi) となり、第2項は NN に比例して ±∞\pm\infty へ発散する。DW>0D_W>0(反発的)なら φ\varphi を広げて DWD_W を小さくしようとし、DW<0D_W<0(引力的)なら最小値が −∞-\infty に向かって系がつぶれる。いずれにせよ N→∞N\to\infty の極限は意味を持たない。

(3) λ=1/(N−1)\lambda=1/(N-1) なら 1粒子あたり ⟨φ, hφ⟩+12DW(φ)\langle \varphi,\,h\varphi\rangle +\frac12D_W(\varphi) となり、NN が消える。これがHartree 汎関数

EH[φ]=⟨φ, hφ⟩+12∬W(x−y)∣φ(x)∣2∣φ(y)∣2 dx dy\mathcal{E}_{\mathrm H}[\varphi]=\langle \varphi,\,h\varphi\rangle +\frac12\iint W(x-y)|\varphi(x)|^2|\varphi(y)|^2\,\mathrm{d} x\,\mathrm{d} y

である。λ=1/N\lambda=1/N としても差は O(1/N)\mathcal{O}(1/N) で、極限は同じになる。

木下の勉強ステータス

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