この章のまとめ
AI 生成・木下が未勉強
近似の数理 第5章 §5.11 ★★★ Hartree–Fock を A 型(曲がった集合への制限)として見たときに保証されること
Hartree–Fock の変分構造
- Slater 行列式の集合は線型空間でも凸集合でもない(1体縮約密度行列が射影であることと同値)。第4章の線型理論(Céa、interlacing、収束)は使えないが、変分原理による上界は任意の部分集合で成り立つ。
- Slater 行列式のエネルギーは1体縮約密度行列 の汎関数 (直接項 − 交換項)で書ける。交換項は自己相互作用を正確に打ち消し、交換孔を表す。
- 交換積分は直接積分を超えない()。この符号から、占有を移す方向で が凹になり、射影の集合上の最小と凸集合 上の最小が一致する(Lieb の変分原理)。同じ不等式から、最小解では占有軌道が Fock 演算子の下から 個で、縮退が無い(aufbau)。
- Euler–Lagrange 方程式は非線型固有値問題 で、軌道エネルギーは Lagrange 乗数である。SCF はその不動点反復で、振動しうる。凸集合への緩和により、エネルギーが単調に下がる減衰反復(ODA)が作れる。
- 中性・正イオンでは最小解が存在する(Lieb–Simon)。難所は最小化列から質量が無限遠へ逃げる可能性で、逃げた電子が正味の引力を感じることで排除される。負イオンでは保証が無く、H は HF では束縛されない。
- Koopmans の定理は凍結軌道の下での等式で、緩和(必ず を下げる)と相関(ふつう を上げる)の誤差が逆符号に働く。
- 相関エネルギー(He で hartree)は計算を精密にしても消えない。H の解離では RHF がイオン項を半分混ぜて誤った極限を与え、平均場では静的相関を表せない。
近似の3型との関係をまとめる。この章で扱った Hartree–Fock 法は、A 型(解を探す集合を狭める近似)のうち、集合が線型空間でなく曲がった多様体である場合にあたる。変分原理は上界を正当化し、Lieb の変分原理・aufbau 定理・Lieb–Simon の存在定理は、その上界を与える最小化問題が数学的にきちんと立っていること(解が存在し、Euler–Lagrange 方程式で特徴づけられ、凸問題として扱えること)を正当化した。軌道を有限個の基底関数で展開する段階は線型の A 型で、第4章の理論がその収束を正当化する。しかし Slater 行列式への制限そのものが小さな誤差しか生まないことは、A 型の枠組みの中では何も正当化されておらず、それを言うには第6章の B 型(極限)の視点が必要になる。
総合問題 2サイト Hubbard 模型で平均場の得失を測る ★★★
オリジナル2つのサイト 1, 2 に電子が2個(上向き1個、下向き1個)いる模型を考える。1粒子空間はサイトの基底 に限り、1体部分はサイト間の跳び移り ()、相互作用は同じサイトに2個の電子が乗ったときだけ働く反発 とする。§5.9 の H の最小基底模型から、サイトをまたぐ積分を落として残したものにあたり、サイト間の距離が大きいほど は小さい。数値は とする。
- (1) 合成スピン 0 の基底状態は、共有結合の状態 (各サイトに1個ずつ乗った一重項)とイオンの状態の対称結合 (2個とも同じサイトに乗る2つの状態の和)が張る2次元部分空間に入り、そこでのハミルトニアンの行列は である。基底エネルギー を求めよ。(使う道具:第4章の Rayleigh–Ritz 法、第3章の min-max 原理)
- (2) 2個の電子を結合性軌道 に上向きと下向きで入れた Slater 行列式(RHF)のエネルギー を求め、共有結合の成分とイオンの成分の重みを答えよ。(使う道具:第5章 §3 の Slater–Condon 則、§8 の H の例題)
- (3) 上向きの電子を 、下向きの電子を に入れた Slater 行列式(UHF)のエネルギーが であることを示し、 で最小化せよ。(使う道具:第5章 §3、§8 の UHF)
- (4) (RHF)は によらず の停留点であることを示し、 ではそれが極大であることを示せ。(使う道具:第5章 §5 の、SCF の不動点は停留点であって最小点とは限らないという注意)
- (5) での の大小を試行関数の集合の包含から説明し、RHF と UHF の相関エネルギーを求めよ。さらに での を求め、平均場の誤差が相対的にも消えないことを述べよ。(使う道具:第5章 §1 の変分原理、第1章の A 型の見方、例題 5.11 との対比)
解答
(1) 合成スピン 0 の状態のうち、イオンの状態の反対称結合はサイトの入れ替えで符号を変えるので 、 と混ざらず、基底状態は与えられた2次元部分空間に入る。この部分空間は で不変なので、第4章の Rayleigh–Ritz 法をこの部分空間で行えば近似でなく厳密な固有値が出る。行列の固有方程式 の小さい方の根をとって
(2) 1体部分は電子1個につき で、2個で 。2個がサイト1に同時に乗る確率は 、サイト2も同じで、反発の期待値は 。よって 。空間部分は で、例題 5.10 と同じく共有結合とイオンが ずつの重みで混ざる。 がどれだけ小さくても(原子をどれだけ離しても)この重みは変わらない。
(3) 上向き電子の1体エネルギーは 、下向きも同じで、合わせて 。スピンが逆なので交換項は無く、反発は2個が同じサイトに乗る確率に を掛けたもので
とおくと は を頂点とする放物線である。 なら頂点は区間の外か端にあり、最小は (、RHF)で 。 なら で
では 、、。上向き電子はサイト1に確率 で寄り、下向き電子はサイト2に寄る。左右の対称性を破った解である。
(4) とおくと で、 では なので によらず 0 になる。2階微分は で、 では 。したがって で、 では負( で )になり、RHF は 方向の極大である。RHF は Hartree–Fock 方程式の解(SCF の不動点)であり続けるが、最小解ではない。左右対称な初期値から Roothaan 反復を始めると対称性は反復で保たれるので、この極大から動けない。
(5) RHF の Slater 行列式は UHF の族の の場合で、UHF の族は合成スピンの 成分 0 の全状態の部分集合である。小さい集合ほど下限は大きいので 、数値では 。相関エネルギーは RHF に対して 、UHF に対して である。どちらの集合も線型空間でない曲がった集合で、A 型の制限として上界を与えるだけであり、この差の大きさについて変分原理は何も言わない。
では なので、 となる。対称性を破った UHF でも、原子を離した極限で残る結合エネルギーの半分しか取れず、RHF は と符号まで誤る。例題 5.11 では という極限で平均場の相対誤差が 0 に近づいたが、ここでの は H の解離と同じ向きの極限で、平均場の相対誤差は 0 に近づかない。極限をとれば平均場が正しくなるわけではなく、どの極限で正しくなるかを示すことが第6章の B 型の仕事になる。(検算スクリプト)
木下の勉強ステータス
木下はまだこの記事を勉強していません。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com
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