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この章で選ぶもの:秩序変数の自由エネルギー FL[m]F_{\mathrm L}[m]

2026年10月15日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第10章 相転移と Landau 理論
目次
  1. 秩序変数
  2. 拘束つきの自由エネルギーと Landau の展開
  3. 空間変化を許す: と作用
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部 第10章 §3.10.1 ★★★ 秩序変数を固定した自由エネルギーを対称性から多項式で書き、空間変化を勾配の2乗で足す。作用 S[q]S[q] と同じ形の汎関数になる

水が氷になる、鉄が磁石になる、ヘリウムが超流動になる。どれも温度をわずかに変えただけで、物質の性質が不連続に、あるいは折れ曲がるように変わる現象で、まとめて相転移と呼ぶ。第3部のこれまでの章で作った道具は、分配関数 ZZ を計算し、そこから F=−kBTln⁡ZF=- k_{\mathrm B} T\ln Z を微分するという手順だった(第3部第3章・第3部第4章)。相転移もこの手順の中に入っているはずだが、ZZ は有限個の正の項の和なので、有限の系では温度について解析的であり、折れ目も跳びも持たない。相転移は N→∞N\to\infty の極限で初めて現れ、そのために ZZ を厳密に計算する方針では扱いにくい。

L. D. Landau(1937)はここで別の物を選んだ。系を特徴づける少数の量(磁化 mm など、秩序変数と呼ぶ)を先に決め、その値を固定したときの自由エネルギーf(m)f(m) を、対称性だけを手がかりに mm の多項式で書く。さらに mm が場所によって変わることを許すと、自由エネルギーは関数 m(r)m(\bm{r}) の汎関数

FL[m]=∫ddr [κ2∣∇m∣2+a2m2+b4m4−hm](3.10.1)F_{\mathrm L}[m]=\int\mathrm{d}^d r\,\Bigl[\frac{\kappa}{2}\lvert \nabla m\rvert ^2+\frac{a}{2}m^2+\frac{b}{4}m^4-hm\Bigr]\tag{3.10.1}

になる。この形は、第1部で扱った作用 S[q]=∫dt [12Mq˙2−V(q)]S[q]=\int\mathrm{d} t\,[\frac12M\dot q^2-V(q)] と同じ構造を持つ。時間 tt の代わりに空間座標 r\bm{r} があり、運動エネルギーの代わりに勾配の2乗がある。したがって第1部の道具(汎関数微分・Euler–Lagrange 方程式・Legendre 変換)がそのまま当たる。

この章で選ぶものは FL[m]F_{\mathrm L}[m] である(3.10.1節)。当てる道具は2つで、1つは有限の系の ZZ から f(m)f(m) を作る数え上げと鞍点(Laplace の方法)、もう1つは f(m)f(m) から本当の自由エネルギーを取り出す Legendre 変換である。どちらも、相互作用の到達距離が無限大の Curie–Weiss 模型で、近似を使わずに組み立てる(3.10.2節)。出てくるものは3つある。第一は、mm が 00 から連続に立ち上がる2次相転移と、その臨界指数・比熱の跳び(3.10.3節)。第二は、凸でない f(m)f(m) の共通接線として現れる1次相転移・準安定状態・潜熱(3.10.4節)。第三は、FL[m]F_{\mathrm L}[m] の Euler–Lagrange 方程式の解としての磁壁と、停留点のまわりの揺らぎ(相関長と Ornstein–Zernike の形)であり、ここで Landau 理論がどこで成り立たなくなるかも分かる(3.10.5節)。最後に、Weiss の分子場・van der Waals の状態方程式と Maxwell の等面積則・Clausius–Clapeyron の式という授業で習う形と並べ(3.10.6節)、まとめと総合問題で終える。

記号の約束を書いておく。hh は秩序変数に共役な外場(磁性体なら磁場に磁気モーメントを掛けたもの)で、エネルギーの次元を持つ。この章には Planck 定数が出てこないので、hh をこの意味に使う。第3部第7章では外場のエネルギーを bb と書いた。この章では bb を Landau の4次の係数に使うので hh と書く。a,ba,b は Landau の展開係数(記法の正本の流儀)、κ\kappa は勾配の係数、dd は空間の次元、ξ\xi は相関長である。温度 TT が出てくるので、時間の長さに TT を使わない。臨界指数は慣例で α,β,γ,δ,ν,η\alpha,\beta,\gamma,\delta,\nu,\eta と書くが、β\beta は逆温度 1/(kBT)1/( k_{\mathrm B} T) と同じ字なので、この章の式では逆温度だけを β\beta と書き、臨界指数は表 3.10.1 の中でだけ名前として使う。

秩序変数

一軸性の強磁性体を例にとる。各原子の磁気モーメントは上向きか下向きのどちらかを向き、それを σi=±1\sigma_i=\pm1 で表す。高温ではモーメントの向きがばらばらで、平均の磁化 m=⟨σi⟩m=\langle \sigma_i \rangle は外場 hh が無ければ 00 である。温度を下げてある温度 TcT_{\mathrm c} を切ると、外場が無くても m≠0m\neq0 の状態が実現する。この mm のように、高温の相で 00、低温の相で 00 でない値を持つ量を秩序変数と呼ぶ。液体と気体の転移では密度の差、超伝導では Cooper 対の波動関数(第5部第6章 の Ginzburg–Landau の ψ\psi)が秩序変数に当たる。

外場が 00 のとき、Hamiltonian は全部のモーメントを同時に反転する操作 σi→−σi\sigma_i\to-\sigma_i で変わらない。この対称性があると、mm と −m-m の状態は同じ自由エネルギーを持つ。低温で m≠0m\neq0 の状態が選ばれるということは、Hamiltonian が持っている対称性を状態が持たなくなることを意味し、これを対称性の自発的な破れと呼ぶ。

拘束つきの自由エネルギーと Landau の展開

秩序変数の値を mm に固定したときの自由エネルギーを f(m)f(m) と書く(1スピンあたり、あるいは単位体積あたり)。この f(m)f(m) の作り方は次の節で Curie–Weiss 模型を使って具体的に示すが、Landau は作り方を問わずに、次の3つの仮定から f(m)f(m) の形を決めた。第一に、TcT_{\mathrm c} の近くでは mm は小さいので、f(m)f(m) を mm の冪で展開できる(ff が m=0m=0 で解析的である)。第二に、外場が無いとき f(−m)=f(m)f(-m)=f(m) なので、奇数次の項は無い。外場は −hm-hm という1次の項として入る(hh が mm に共役な変数であることの定義)。第三に、2次の係数は TcT_{\mathrm c} で符号を変え、4次の係数は正である。この3つから

f(m)=f0(T)+a2m2+b4m4−hm,a=a0(T−Tc),a0>0,b>0(3.10.2)f(m)=f_0(T)+\frac{a}{2}m^2+\frac{b}{4}m^4-hm,\qquad a=a_0(T-T_{\mathrm c}),\quad a_0>0,\quad b>0\tag{3.10.2}

を得る。f0(T)f_0(T) は mm によらない部分で、相転移の議論には現れない。aa が TT について線形なのは、TcT_{\mathrm c} のまわりで a(T)a(T) を Taylor 展開した最初の項だけを残したからである。

空間変化を許す:FL[m]F_{\mathrm L}[m] と作用

磁石の中には上向きの領域と下向きの領域(磁区)が共存することがあり、その境目(磁壁)では mm が場所によって変わる。m(r)m(\bm{r}) が場所の関数のとき、自由エネルギーは局所的な f(m(r))f(m(\bm{r})) を足し合わせたものに、変化することの損を足したものになる。隣どうしの向きをそろえようとする相互作用があるので、mm が急に変わるほど損が大きい。変化が緩やかなら、その損は勾配の冪で展開でき、対称性 m→−mm\to-m と空間の回転で変わらない最も低い次数の項は ∣∇m∣2\lvert \nabla m\rvert ^2 である。こうして式 (3.10.1) の Ginzburg–Landau 汎関数(ここでは f0f_0 を省いた)

FL[m]=∫ddr [κ2∣∇m∣2+f(m)],κ>0(3.10.3)F_{\mathrm L}[m]=\int\mathrm{d}^d r\,\Bigl[\frac{\kappa}{2}\lvert \nabla m\rvert ^2+f(m)\Bigr],\qquad \kappa>0\tag{3.10.3}

を選ぶ。

この式を、第1部第5章の作用(第1部第5章)と並べる。1次元(d=1d=1)で書くと

FL[m]=∫dx [κ2(dmdx)2+f(m)],S[q]=∫dt [M2(dqdt)2−V(q)](3.10.4)F_{\mathrm L}[m]=\int\mathrm{d} x\,\Bigl[\frac{\kappa}{2}\Bigl(\frac{\mathrm{d} m}{\mathrm{d} x}\Bigr)^2+f(m)\Bigr],\qquad S[q]=\int\mathrm{d} t\,\Bigl[\frac{M}{2}\Bigl(\frac{\mathrm{d} q}{\mathrm{d} t}\Bigr)^2-V(q)\Bigr]\tag{3.10.4}

で、x↔tx\leftrightarrow t, m↔qm\leftrightarrow q, κ↔M\kappa\leftrightarrow M, f↔−Vf\leftrightarrow -V と読み替えれば2つは同じ汎関数になる。ポテンシャルの符号が逆になるのは、SS が運動エネルギーから位置エネルギーを引くのに対して、FLF_{\mathrm L} は勾配の損と局所の損を足すからである。熱平衡でどの m(r)m(\bm{r}) が実現するかの確率の重みは、カノニカル分布(第3部第3章)の e−βH\mathrm{e}^{-\beta H} を粗く見たもので、e−βFL[m]\mathrm{e}^{-\beta F_{\mathrm L}[m]} に比例する。これは虚時間の経路積分の重み e−SE/ℏ\mathrm{e}^{-S_{\mathrm E}/\hbar}(SES_{\mathrm E} は Euclid 作用)と同じ形で、kBTk_{\mathrm B} T が ℏ\hbar の役をしている。最も重みの大きい m(r)m(\bm{r}) は FLF_{\mathrm L} の停留点であり、汎関数微分(第1部第3章)を 00 と置いた Euler–Lagrange 方程式(第1部第4章)

δFLδm(r)=−κ∇2m+f′(m)=0,f′(m)=am+bm3−h(3.10.5)\frac{\delta F_{\mathrm L}}{\delta m(\bm{r})}=-\kappa\nabla^2 m+f'(m)=0,\qquad f'(m)=am+bm^3-h\tag{3.10.5}

で決まる。一様な mm ではこれは f′(m)=0f'(m)=0 に戻り、f(m)f(m) の最小点が平衡の磁化を与える。Landau 理論は、この停留点だけを残して揺らぎを捨てる近似である。揺らぎを捨ててよい条件は3.10.5節で調べる。

例題 3.10.1 表面で固定した秩序の減衰 ★★

オリジナルT>TcT>T_{\mathrm c}(a>0a>0)で外場 h=0h=0 の磁性体が x>0x>0 を占め、表面 x=0x=0 で磁化が m(0)=msm(0)=m_{\mathrm s} に固定されている(表面の原子だけが強く秩序化しているとする)。mm は小さいとして f(m)f(m) の4次の項を省き、1次元の汎関数 FL[m]=∫0∞dx [κ2m′2+a2m2]F_{\mathrm L}[m]=\int_0^\infty\mathrm{d} x\,[\frac{\kappa}{2}m'^2+\frac{a}{2}m^2] を考える。

  1. (1) Euler–Lagrange 方程式を書き、m(∞)=0m(\infty)=0 を満たす解を求めよ。減衰の長さを ξ\xi と書く。
  2. (2) 式 (3.10.4) の力学の言葉で、この解を「時刻 xx の粒子の運動」として説明し、保存量を書け。
  3. (3) 解を代入した FLF_{\mathrm L} の値を求めよ。
  4. (4) κ/a=4 nm2\kappa/a=4\,\mathrm{nm}^2 のとき、表面から 5 nm5\,\mathrm{nm} の所の m/msm/m_{\mathrm s} を求めよ。
解答

(1) 式 (3.10.5) で f′(m)=amf'(m)=am なので κm′′=am\kappa m''=am である。一般解は m=Ae−x/ξ+Bex/ξm=A\mathrm{e}^{-x/\xi}+B\mathrm{e}^{x/\xi}, ξ=κ/a\xi=\sqrt{\kappa/a} で、m(∞)=0m(\infty)=0 から B=0B=0、m(0)=msm(0)=m_{\mathrm s} から A=msA=m_{\mathrm s}。よって m(x)=mse−x/ξm(x)=m_{\mathrm s}\mathrm{e}^{-x/\xi}。

(2) 「質量」κ\kappa の粒子が「ポテンシャル」−f(m)=−am2/2-f(m)=-am^2/2(上に凸の山)の中を時刻 xx で動く運動である。山の頂上 m=0m=0 に、無限の時間をかけてちょうど止まるように打ち出した軌道に当たる。時刻 xx を含まない Lagrangian なので、エネルギーに当たる E=κ2m′2−a2m2\mathcal E=\frac{\kappa}{2}m'^2-\frac{a}{2}m^2 が保存する(第1部第10章)。x→∞x\to\infty で m,m′→0m,m'\to0 なので E=0\mathcal E=0 で、確かに κ2m′2=κ2ms2ξ2e−2x/ξ=a2m2\frac{\kappa}{2}m'^2=\frac{\kappa}{2}\frac{m_{\mathrm s}^2}{\xi^2}\mathrm{e}^{-2x/\xi}=\frac{a}{2}m^2 である。

(3) E=0\mathcal E=0 から勾配の項と局所の項は各点で等しいので、FL=∫0∞ams2e−2x/ξ dx=aξ2ms2=κa2ms2F_{\mathrm L}=\int_0^\infty a m_{\mathrm s}^2\mathrm{e}^{-2x/\xi}\,\mathrm{d} x=\frac{a\xi}{2}m_{\mathrm s}^2=\frac{\sqrt{\kappa a}}{2}m_{\mathrm s}^2。表面で秩序を作ったことの損は κa\sqrt{\kappa a} に比例し、T→TcT\to T_{\mathrm c}(a→0a\to0)で 00 に近づく一方、ξ=κ/a\xi=\sqrt{\kappa/a} は発散する。

(4) ξ=2 nm\xi=2\,\mathrm{nm} なので m/ms=e−5/2=0.0821m/m_{\mathrm s}=\mathrm{e}^{-5/2}=0.0821。

木下の勉強ステータス

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