解答
(1) ポテンシャル 21κx2 のカノニカル分布で、等分配則から 21κ⟨x2⟩=21kBT。⟨x2⟩=kBT/κ=4.14×10−21/(1.0×10−6)=6.44×10−8m=64.4nm。
(2) ζ=6π×1.0×10−3×1.0×10−6=1.885×10−8kgs−1。外力 F0e−iωt への応答を x=χF0e−iωt とおくと −iωζχ=−κχ+1 で
χ(ω)=κ−iωζ1,Imχ(ω)=κ2+ω2ζ2ωζ.
雑音 ξ のスペクトルは C~ξξ=2ζkBT(白色)で、x は ξ に χ(ω) を掛けたものだから
C~xx(ω)=∣χ(ω)∣22ζkBT=κ2+ω2ζ22ζkBT=ω2kBTImχ(ω)
で、揺動散逸定理が成り立つ。雑音の強さ 2ζkBT が摩擦 ζ と温度で決まっていること(3.9.4節の第2種の関係)が、第1種の定理を保証している。fc=κ/(2πζ)=1.0×10−6/(2π×1.885×10−8)=8.44Hz。スペクトルはこの周波数より上で 1/ω2 に落ちる。光ピンセットの実験では、測った揺らぎのスペクトルの角から κ を決める。
(3) C~xx(ω) を逆変換すると、tc=ζ/κ として Cxx(t)=κkBTe−∣t∣/tc(t=0 の値は (1) と一致する)。久保の公式から χ(t)=−βC˙xx(t)θ(t)=ζ1e−t/tcθ(t) で、その Fourier 変換は ∫0∞ζ1e−t/tc+iωtdt=ζ(1/tc−iω)1=κ−iωζ1 で (2) に一致する。tc=1.885×10−8/(1.0×10−6)=1.88×10−2s。回帰の式 (3.9.11) から ⟨x⟩(t)=βF0Cxx(t)=κF0e−t/tc で、初めのずれは F0/κ=1.0×10−7m、t=50ms では 1.0×10−7×e−0.050/0.01885=7.0×10−9m=7.0nm である。このずれは (1) の熱揺らぎ 64nm より小さいので、1回の測定では埋もれ、多数回の平均で初めて見える。
(4) ω=2πfc では ωζ=κ なので Imχ=2κ1、P=2ωF02Imχ=4κωF02=4ζF02=4×1.885×10−8(1.0×10−13)2=1.33×10−19W。時間 tc に吸収するエネルギーは 1.33×10−19×1.885×10−2=2.5×10−21J で、kBT=4.14×10−21J の 0.60 倍である。吸収したエネルギーは水へ熱として流れ、球の平均のエネルギーは増え続けない。
(5) D=kBT/ζ=4.14×10−21/(1.885×10−8)=2.20×10−13m2s−1(Einstein の関係)。2Dtc=2ζkBTκζ=2κkBT=2⟨x2⟩。罠の中の球は、自由に拡散したらおよそ tc で到達する距離のところで、ばねに引き戻されて揺らぎが頭打ちになる。球の質量は M=34πa3×2.0×103=8.4×10−15kg で、速度が緩和する時間 M/ζ=4.4×10−7s は tc=1.9×10−2s より5桁近く短い。したがって fc の付近の運動では慣性を無視してよい。