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比べる2つの分布:前向きの経路と逆回しの経路

2026年10月15日18分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第2章 ゆらぎの定理
目次
  1. 離散の状態と離散の時刻での設定
  2. 経路の確率と逆回しの経路の確率
  3. 過減衰の Langevin 方程式では
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第4部 第2章 §4.2.1 ★★★ 熱浴が局所詳細つり合いを満たすなら、経路の確率と逆回しの経路の確率の比は e−βQ\mathrm{e}^{-\beta Q} に等しい。この章のすべての等式の出発点

前の章 第4部第1章 では、熱浴に浸かった小さな系の1本の軌道に、熱 QQ と仕事 WW を割り当てた。同じ操作を何度繰り返しても軌道は毎回違うので、WW も QQ も確率変数になる。マクロな系では WW のばらつきは平均に比べて無視できるほど小さく、熱力学の第二法則 W≥ΔFW\ge\Delta F は毎回成り立つように見える。小さな系では WW のばらつきが kBTk_{\mathrm B} T と同じ程度になり、W<ΔFW<\Delta F となる試行が実際に起こる。この章は、そのばらつきの分布がでたらめではなく、厳密な等式に従うことを示す。

比べる2つの分布は、前向きの操作で経路 Γ\Gamma が実現する確率 P[Γ]P[\Gamma] と、操作を逆の順に行ったときに時間を逆にたどった経路 Γ~\tilde\Gamma が実現する確率 P~[Γ~]\tilde P[\tilde\Gamma] である。4.2.1 節で、熱浴が局所詳細つり合いを満たすなら、この2つの比が熱だけで e−βQ\mathrm{e}^{-\beta Q} と書けることを示す。4.2.2 節では、比の対数 Σ=ln⁡(P/P~)\Sigma=\ln(P/\tilde P) について、P~\tilde P が規格化されているという事実だけから ⟨e−Σ⟩P=1\langle \mathrm{e}^{-\Sigma} \rangle _P=1 が出ることを示す。この等式に Jensen の不等式を当てると ⟨Σ⟩=D(P ∥ P~)≥0\langle \Sigma \rangle =D(P\,\|\,\tilde P)\ge0 になるので、この等式は DD の非負性より1段強い主張である。出てくるものは3つある。初めと終わりを平衡分布にとると Crooks の定理(4.2.3 節)になり、それを WW で積分すると Jarzynski 等式(4.2.4 節)になる。操作を止めて非保存力で系を駆動し続けると、定常状態のゆらぎの定理(4.2.5 節)になる。4.2.6 節で、最大仕事の原理・詳細つり合い・Einstein の関係がこれらの等式の特別な場合として並ぶことを確かめる。

この章では、エントロピーと Σ\Sigma は自然対数で測り、単位は nat(kBk_{\mathrm B} の単位)とする。熱 QQ は系が熱浴から受け取る向き、仕事 WW は系が外からされる向きを正にとり、第一法則は ΔE=Q+W\Delta E=Q+W である。定義には記号 ≔\coloneqq を使う。この巻の約束どおり p,qp,q は確率分布に取っておき、系の状態は xx、経路は Γ\Gamma と書く。遷移確率の行列は、仕事 WW と温度 TT のどちらとも紛れないように KK と書く。

離散の状態と離散の時刻での設定

系は有限個の状態 xx をとり、状態 xx のエネルギー Ex(λ)E_x(\lambda) は外から動かせるパラメータ λ\lambda(ばねの位置や準位の高さ)に依存するとする。λ\lambda を固定したときの平衡分布と自由エネルギーを

pλeq(x)≔e−βEx(λ)Z(λ),Z(λ)≔∑xe−βEx(λ),F(λ)≔−kBTln⁡Z(λ)(4.2.1)p^{\mathrm{eq}}_\lambda(x)\coloneqq\frac{\mathrm{e}^{-\beta E_x(\lambda)}}{Z(\lambda)},\qquad Z(\lambda)\coloneqq\sum_x\mathrm{e}^{-\beta E_x(\lambda)},\qquad F(\lambda)\coloneqq- k_{\mathrm B} T\ln Z(\lambda)\tag{4.2.1}

と書く。外からの操作は、λ\lambda の値の列 λ0,λ1,…,λN\lambda_0,\lambda_1,\dots,\lambda_N(プロトコル)で与える。1歩目から NN 歩目までの各歩 nn で、次の2つをこの順に行う。

  1. 系の状態 xn−1x_{n-1} をそのままにして、λ\lambda を λn−1\lambda_{n-1} から λn\lambda_n に変える。系のエネルギーは Exn−1(λn)−Exn−1(λn−1)E_{x_{n-1}}(\lambda_n)-E_{x_{n-1}}(\lambda_{n-1}) だけ変わり、これは外がした仕事である。
  2. λ=λn\lambda=\lambda_n のまま、熱浴との相互作用で状態が xn−1x_{n-1} から xnx_n に確率 Kλn(xn ∣ xn−1)K_{\lambda_n}(x_n\,|\,x_{n-1}) で移る。エネルギーは Exn(λn)−Exn−1(λn)E_{x_n}(\lambda_n)-E_{x_{n-1}}(\lambda_n) だけ変わり、これは熱浴から受け取った熱である。

状態の列 Γ=(x0,x1,…,xN)\Gamma=(x_0,x_1,\dots,x_N) を経路と呼ぶ。経路ごとの仕事と熱は

W[Γ]≔∑n=1N[Exn−1(λn)−Exn−1(λn−1)],Q[Γ]≔∑n=1N[Exn(λn)−Exn−1(λn)](4.2.2)W[\Gamma]\coloneqq\sum_{n=1}^N\bigl[E_{x_{n-1}}(\lambda_n)-E_{x_{n-1}}(\lambda_{n-1})\bigr],\qquad Q[\Gamma]\coloneqq\sum_{n=1}^N\bigl[E_{x_n}(\lambda_n)-E_{x_{n-1}}(\lambda_n)\bigr]\tag{4.2.2}

で、和をとると途中の項が打ち消し合い、1本の経路ごとに第一法則

W[Γ]+Q[Γ]=ExN(λN)−Ex0(λ0)(4.2.3)W[\Gamma]+Q[\Gamma]=E_{x_N}(\lambda_N)-E_{x_0}(\lambda_0)\tag{4.2.3}

が成り立つ。これは前の章で Langevin 方程式の1本の軌道に割り当てた仕事と熱を、離散の時刻に書き直したものである。λ\lambda が動くあいだは状態が止まっているのでエネルギーの変化はすべて仕事になり、状態が動くあいだは λ\lambda が止まっているのですべて熱になる。

熱浴について仮定するのは次の1つである。

定義 4.2.1(局所詳細つり合い)

各 λ\lambda で、遷移確率 KλK_\lambda が平衡分布 pλeqp^{\mathrm{eq}}_\lambda について詳細つり合い

Kλ(y ∣ x) pλeq(x)=Kλ(x ∣ y) pλeq(y),すなわちKλ(y ∣ x)Kλ(x ∣ y)=e−β[Ey(λ)−Ex(λ)](4.2.4)K_\lambda(y\,|\,x)\,p^{\mathrm{eq}}_\lambda(x)=K_\lambda(x\,|\,y)\,p^{\mathrm{eq}}_\lambda(y),\qquad\text{すなわち}\qquad \frac{K_\lambda(y\,|\,x)}{K_\lambda(x\,|\,y)}=\mathrm{e}^{-\beta[E_y(\lambda)-E_x(\lambda)]}\tag{4.2.4}

を満たすとき、熱浴は局所詳細つり合いを満たすという。片方の向きの遷移確率が正なら、逆向きも正であるとする。

右の形は、xx から yy への遷移とその逆の遷移の確率の比が、その遷移で系が受け取る熱 Ey−ExE_y-E_x の Boltzmann 因子に等しいことを言っている。熱浴の側から見ると、遷移 x→yx\to y で熱浴のエネルギーは Ey−ExE_y-E_x だけ減り、熱浴のエントロピーは β(Ey−Ex)\beta(E_y-E_x) nat だけ減る。したがって式 (4.2.4) は「遷移の確率の比は、熱浴のエントロピーの変化の指数に等しい」とも読める。「局所」という語は、プロトコルの途中で系全体が平衡から遠く離れていても、各瞬間の λ\lambda の値での平衡分布についてだけ詳細つり合いを要求することを指している。

経路の確率と逆回しの経路の確率

初めの分布を p0p_0 とすると、前向きの操作で経路 Γ\Gamma が実現する確率は

P[Γ]=p0(x0) P[Γ ∣ x0],P[Γ ∣ x0]≔∏n=1NKλn(xn ∣ xn−1)(4.2.5)P[\Gamma]=p_0(x_0)\,P[\Gamma\,|\,x_0],\qquad P[\Gamma\,|\,x_0]\coloneqq\prod_{n=1}^NK_{\lambda_n}(x_n\,|\,x_{n-1})\tag{4.2.5}

である。Markov 性から、条件付きの確率は1歩ごとの遷移確率の積になる。

逆回しの操作は、前向きの操作の各段を時間について逆の順に行うものとする。λ=λN\lambda=\lambda_N から始め、まず λN\lambda_N のまま熱浴と1回遷移させ、次に λ\lambda を λN\lambda_N から λN−1\lambda_{N-1} に変え、λN−1\lambda_{N-1} のまま遷移させ、と続けて、最後に λ1\lambda_1 のまま遷移させてから λ\lambda を λ0\lambda_0 に戻す。前向きでは「λ\lambda を変えてから遷移」の順だったものが、逆回しでは「遷移してから λ\lambda を変える」の順になる。こうすると、前向きの nn 歩目の遷移と、逆回しで同じ状態の対を逆向きにたどる遷移が、同じ λn\lambda_n のもとで起こる。逆回しの操作を初めの分布 p~0\tilde p_0 から始めたとき、前向きの経路を逆にたどった経路 Γ~≔(xN,xN−1,…,x0)\tilde\Gamma\coloneqq(x_N,x_{N-1},\dots,x_0) が実現する確率は

P~[Γ~]=p~0(xN) P~[Γ~ ∣ xN],P~[Γ~ ∣ xN]≔∏n=1NKλn(xn−1 ∣ xn)(4.2.6)\tilde P[\tilde\Gamma]=\tilde p_0(x_N)\,\tilde P[\tilde\Gamma\,|\,x_N],\qquad \tilde P[\tilde\Gamma\,|\,x_N]\coloneqq\prod_{n=1}^NK_{\lambda_n}(x_{n-1}\,|\,x_n)\tag{4.2.6}

である。逆回しの経路 Γ~\tilde\Gamma について、式 (4.2.2) と同じ規則で仕事と熱を数えると、各項の符号がちょうど反転して

W~[Γ~]=−W[Γ],Q~[Γ~]=−Q[Γ](4.2.7)\tilde W[\tilde\Gamma]=-W[\Gamma],\qquad\tilde Q[\tilde\Gamma]=-Q[\Gamma]\tag{4.2.7}

になる。前向きに λ\lambda を上げて系に仕事をした段は、逆回しでは λ\lambda を下げて系が外に仕事をする段になるからである。

図 4.2.1 に、2つの操作の段の並びを示す。

図

図 4.2.1 前向きの操作(上)と逆回しの操作(下)。前向きは x0x_0 から始まり、各歩で λ\lambda を λn−1\lambda_{n-1} から λn\lambda_n に変えてから遷移 KλnK_{\lambda_n} を1回行う。逆回しは x3x_3 から始まり、同じ λn\lambda_n のもとで逆向きの遷移を行ってから λ\lambda を λn−1\lambda_{n-1} に戻す。経路の確率の比は、各矢印の確率の比の積になる。

定理 4.2.2(経路の確率の比と熱 ★★★)

局所詳細つり合い (4.2.4) のもとで、前向きの条件付きの確率と逆回しの条件付きの確率が正なら

P[Γ ∣ x0]P~[Γ~ ∣ xN]=e−βQ[Γ].(4.2.8)\frac{P[\Gamma\,|\,x_0]}{\tilde P[\tilde\Gamma\,|\,x_N]}=\mathrm{e}^{-\beta Q[\Gamma]}.\tag{4.2.8}

証明

式 (4.2.5) と (4.2.6) の比を1歩ずつ並べ、各歩に (4.2.4) を当てると

P[Γ ∣ x0]P~[Γ~ ∣ xN]=∏n=1NKλn(xn ∣ xn−1)Kλn(xn−1 ∣ xn)=∏n=1Ne−β[Exn(λn)−Exn−1(λn)]=e−βQ[Γ]\frac{P[\Gamma\,|\,x_0]}{\tilde P[\tilde\Gamma\,|\,x_N]}=\prod_{n=1}^N\frac{K_{\lambda_n}(x_n\,|\,x_{n-1})}{K_{\lambda_n}(x_{n-1}\,|\,x_n)} =\prod_{n=1}^N\mathrm{e}^{-\beta[E_{x_n}(\lambda_n)-E_{x_{n-1}}(\lambda_n)]}=\mathrm{e}^{-\beta Q[\Gamma]}

となる。最後の等号は熱の定義 (4.2.2) である。

−βQ-\beta Q は熱浴が受け取った熱を温度で割ったもの、すなわち熱浴のエントロピーの増え(nat)である。定理 4.2.2 は、前向きの経路が逆回しの経路より何倍起こりやすいかの対数は、その経路で熱浴のエントロピーがいくら増えたかに等しい、と言っている。熱浴へ熱を捨てる経路は、その熱を熱浴から吸い上げる逆回しの経路より起こりやすい。以下のすべての等式は、この非対称を書き直したものである。比に λ\lambda の動かし方(仕事)は入らない。仕事の段では状態が動かず、確率が掛からないからである。

過減衰の Langevin 方程式では

前の章の過減衰の Langevin 方程式γx˙=−∂xU(x,λt)+ξ(t)\gamma\dot x=-\partial_xU(x,\lambda_t)+\xi(t)、⟨ξ(t)ξ(t′)⟩=2γkBT δ(t−t′)\langle \xi(t)\xi(t') \rangle =2\gamma k_{\mathrm B} T\,\delta(t-t') でも同じ比が出る。拡散係数を Ddif≔kBT/γD_{\mathrm{dif}}\coloneqq k_{\mathrm B} T/\gamma と書く(相対エントロピー DD と同じ章に出るので添字 dif を付ける。第4部第1章の式 (4.1.26) と同じ)。短い時間 Δt\Delta t の1歩の変位 Δx\Delta x は、力 F=−∂xUF=-\partial_xU を1歩の中点で評価すると、平均 a≔FΔt/γa\coloneqq F\Delta t/\gamma、分散 2DdifΔt2D_{\mathrm{dif}}\Delta t の正規分布に従うので、1歩の遷移確率は exp⁡[−(Δx−a)2/(4DdifΔt)]\exp[-(\Delta x-a)^2/(4D_{\mathrm{dif}}\Delta t)] に比例する。逆向きの1歩は変位が −Δx-\Delta x で、中点は同じなので aa も同じである。比をとると

exp⁡[−(Δx−a)2/(4DdifΔt)]exp⁡[−(−Δx−a)2/(4DdifΔt)]=exp⁡(a ΔxDdifΔt)=exp⁡(βF Δx)=exp⁡(−β ∂xU Δx)(4.2.9)\frac{\exp[-(\Delta x-a)^2/(4D_{\mathrm{dif}}\Delta t)]}{\exp[-(-\Delta x-a)^2/(4D_{\mathrm{dif}}\Delta t)]}=\exp\Bigl(\frac{a\,\Delta x}{D_{\mathrm{dif}}\Delta t}\Bigr)=\exp\bigl(\beta F\,\Delta x\bigr)=\exp\bigl(-\beta\,\partial_xU\,\Delta x\bigr)\tag{4.2.9}

になる。∂xU∘dx\partial_xU\circ\mathrm{d} x(中点で評価した積、Stratonovich の積)は前の章で熱の割り当てとした量そのものなので、全部の歩を掛け合わせるとP[Γ ∣ x0]/P~[Γ~ ∣ xN]=e−βQ[Γ]P[\Gamma\,|\,x_0]/\tilde P[\tilde\Gamma\,|\,x_N]=\mathrm{e}^{-\beta Q[\Gamma]}、Q[Γ]=∫∂xU∘dxQ[\Gamma]=\int\partial_xU\circ\mathrm{d} x を得る。変数変換の Jacobi 行列式の因子 exp⁡(−12γ∫∂xF dt)\exp(-\frac{1}{2\gamma}\int\partial_x F\,\mathrm{d} t) は中点の評価では前向きと逆向きで等しく、比では消える。2乗の差 (Δx−a)2−(Δx+a)2=−4aΔx(\Delta x-a)^2-(\Delta x+a)^2=-4a\Delta x が、変位と力の積だけを残す仕組みである。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの m/(γτ)→0m/(\gamma\tau)\to0(慣性の緩和時間 m/γm/\gamma が力の変わる時間 τ\tau より短い) | 証明 要確認(位置の過程の収束は Smoluchowski–Kramers の極限として知られる。熱の割り当ての極限は温度が一様なときに限り、温度が場所で変わると消えない項が残る:Celani ほか(2012)、Phys. Rev. Lett. 109、260603) | 行き先 近似の数理 第7章

例題 4.2.1 2準位の経路で比を数える ★★

オリジナル状態 x∈{0,1}x\in\{0,1\} のエネルギーを E0=0E_0=0、E1(λ)=λE_1(\lambda)=\lambda とし、熱浴の遷移確率をKλ(1 ∣ 0)=12e−βλK_\lambda(1\,|\,0)=\frac12\mathrm{e}^{-\beta\lambda}、Kλ(0 ∣ 0)=1−12e−βλK_\lambda(0\,|\,0)=1-\frac12\mathrm{e}^{-\beta\lambda}、Kλ(0 ∣ 1)=Kλ(1 ∣ 1)=12K_\lambda(0\,|\,1)=K_\lambda(1\,|\,1)=\frac12 とする。プロトコルは λ0=0\lambda_0=0、λ1=ε\lambda_1=\varepsilon、λ2=2ε\lambda_2=2\varepsilon で、βε=ln⁡2\beta\varepsilon =\ln2 とする。

  1. KλK_\lambda が局所詳細つり合い (4.2.4) を満たすことを確かめよ。
  2. 経路 Γ=(0,1,1)\Gamma=(0,1,1) と Γ′=(1,0,1)\Gamma'=(1,0,1) のそれぞれについて、WW・QQ・P[Γ ∣ x0]P[\Gamma\,|\,x_0]・P~[Γ~ ∣ x2]\tilde P[\tilde\Gamma\,|\,x_2] を求め、式 (4.2.8) を確かめよ。
  3. 前向きを pλ0eqp^{\mathrm{eq}}_{\lambda_0}、逆回しを pλ2eqp^{\mathrm{eq}}_{\lambda_2} から始めるとき、Γ′\Gamma' について P[Γ′]/P~[Γ~′]P[\Gamma']/\tilde P[\tilde\Gamma'] を求め、eβ(W−ΔF)\mathrm{e}^{\beta(W-\Delta F)} に等しいことを確かめよ。
解答

(1) Kλ(1 ∣ 0)/Kλ(0 ∣ 1)=e−βλ=e−β(E1−E0)K_\lambda(1\,|\,0)/K_\lambda(0\,|\,1)=\mathrm{e}^{-\beta\lambda}=\mathrm{e}^{-\beta(E_1-E_0)} で、式 (4.2.4) の右の形が成り立つ。e−βλ≤1\mathrm{e}^{-\beta\lambda}\le1 なので確率は [0,1][0,1] に入る。

(2) e−βε=12\mathrm{e}^{-\beta\varepsilon }=\frac12、e−2βε=14\mathrm{e}^{-2\beta\varepsilon }=\frac14 である。Γ=(0,1,1)\Gamma=(0,1,1) では、1歩目は x0=0x_0=0 のまま λ\lambda を上げるので仕事 00、遷移 0→10\to1 で熱 E1(ε)−E0=εE_1(\varepsilon )-E_0=\varepsilon。2歩目は x1=1x_1=1 のまま λ\lambda を ε\varepsilon から 2ε2\varepsilon に上げるので仕事 ε\varepsilon、遷移 1→11\to1 で熱 00。よって W=εW=\varepsilon、Q=εQ=\varepsilon で、W+Q=2ε=E1(2ε)−E0(0)W+Q=2\varepsilon =E_1(2\varepsilon )-E_0(0) が第一法則 (4.2.3) である。確率は

P[Γ ∣ 0]=Kε(1 ∣ 0) K2ε(1 ∣ 1)=14⋅12=18,P~[Γ~ ∣ 1]=K2ε(1 ∣ 1) Kε(0 ∣ 1)=12⋅12=14P[\Gamma\,|\,0]=K_{\varepsilon }(1\,|\,0)\,K_{2\varepsilon }(1\,|\,1)=\tfrac14\cdot\tfrac12=\tfrac18,\qquad \tilde P[\tilde\Gamma\,|\,1]=K_{2\varepsilon }(1\,|\,1)\,K_{\varepsilon }(0\,|\,1)=\tfrac12\cdot\tfrac12=\tfrac14

で、比は 12=e−βε=e−βQ\frac12=\mathrm{e}^{-\beta\varepsilon }=\mathrm{e}^{-\beta Q} である。Γ′=(1,0,1)\Gamma'=(1,0,1) では、1歩目の仕事 E1(ε)−E1(0)=εE_1(\varepsilon )-E_1(0)=\varepsilon、遷移 1→01\to0 の熱 −ε-\varepsilon、2歩目の仕事 00、遷移 0→10\to1 の熱 2ε2\varepsilon で、W=εW=\varepsilon、Q=εQ=\varepsilon である。P[Γ′ ∣ 1]=Kε(0 ∣ 1)K2ε(1 ∣ 0)=12⋅18=116P[\Gamma'\,|\,1]=K_{\varepsilon }(0\,|\,1)K_{2\varepsilon }(1\,|\,0)=\frac12\cdot\frac18=\frac1{16}、P~[Γ~′ ∣ 1]=K2ε(0 ∣ 1)Kε(1 ∣ 0)=12⋅14=18\tilde P[\tilde\Gamma'\,|\,1]=K_{2\varepsilon }(0\,|\,1)K_{\varepsilon }(1\,|\,0)=\frac12\cdot\frac14=\frac18 で、比は再び 12=e−βQ\frac12=\mathrm{e}^{-\beta Q} になる。途中で熱を吸ったり吐いたりしても、比を決めるのは熱の合計だけである。

(3) Z(0)=2Z(0)=2、Z(2ε)=1+14=54Z(2\varepsilon )=1+\frac14=\frac54 なので p0eq(1)=12p^{\mathrm{eq}}_0(1)=\frac12、p2εeq(1)=15p^{\mathrm{eq}}_{2\varepsilon }(1)=\frac15、βΔF=−ln⁡5/42=ln⁡85=0.470\beta\Delta F=-\ln\frac{5/4}{2}=\ln\frac85=0.470 である。P[Γ′]=12⋅116=132P[\Gamma']=\frac12\cdot\frac1{16}=\frac1{32}、P~[Γ~′]=15⋅18=140\tilde P[\tilde\Gamma']=\frac15\cdot\frac18=\frac1{40} で、比は 4032=54\frac{40}{32}=\frac54。一方 eβ(W−ΔF)=2⋅58=54\mathrm{e}^{\beta(W-\Delta F)}=2\cdot\frac58=\frac54 で一致する。8本の経路のすべてで同じ等式が成り立つことは scripts/verify_ch4-02.py で確かめてある。この等式の一般形が 4.2.3 節の Crooks の定理である。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの 系と熱浴の結合の強さ λc→0\lambda_{\mathrm c}\to0、時間を tλc2t\lambda_{\mathrm c}^2 で測る(van Hove の極限。熱浴の自由度を消して、遷移確率の比を Boltzmann 因子で置く) | 証明 条件付き(有限次元の系・熱浴が熱平衡で相関が速く減衰する。この極限で Davies 1974 が導く遷移の速さは熱浴の KMS 条件から局所詳細つり合いを満たす。結合が強いと熱の定義から問い直しになる) | 行き先 近似の数理 第14章

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

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